2012年2月26日、東京マラソンが行われたその日、UQコミュニケーションズのWiMAXサービスが累計契約者数200万件を突破した。2009年2月26日は、奇しくもWiMAX正式ローンチ前の試験サービス開始日でもあり(正式サービス開始は2009年7月)、そこから数えてちょうど丸3年での200万契約達成となった。今回は、緊急号外として、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏に、その喜びの声を聞いてみた。
―まずは200万人突破、おめでとうございます。
野坂ありがとうございます。2009年の2月26日に試験サービスを開始してから、ちょうど3年目で200万契約突破することができました。本日、今まさにプレスリリースとして発表しました(※注:本取材は2012年2月27日15:00に実施された)。ここまでは山あり谷ありという感じでしたね。
―とんとん拍子ではなかったということですね。どのようなところで苦労されましたか。
野坂私は2010年6月に社長に就任しましたが、その当時はまだ「つながれば速いけれど、エリアが十分じゃない」という評判がありましたので、当初はとにかくそれを払拭するために尽力してきました。その甲斐あり、2010年の8月に基地局10,000局を突破し、その年末から年明けにかけてエリアがグンと広がってきました。また、同年11月には新たな料金プランとして月々3,880円の「年間パスポート」を提供開始したことで、「もっとも速いサービスが、もっとも安く」というアピールができました。直近ではauスマートフォンにWiMAXが搭載されたことや、人口1億人カバー達成などにより、勢いがつきました。
とはいえ決して順風満帆とはいかず、波もありました。なにしろ常に新しい競争相手が出てきますから。全体を振り返ると山あり、谷ありでしたが、200万突破を素直に喜んでいます。また、地下鉄トンネル間エリア化の発表などで、ずいぶんとWiMAXにも「メジャー感」が出てきたように感じています。
―認知度が上がってきたということですね。
野坂はい。メジャー感が出てきたことで、引き合いも多くなりました。たとえば最近では、札幌駅周辺地下街や横浜市営地下鉄さんなどが、とにかく早くWiMAXをつなげてほしい、と先方からご要望いただきました。世間一般での認知度はまだまだだとは思いますが、着実に前進できていると思います。
―これまでのWiMAXの歩みの中で、もっとも印象に残っているのは何でしょう。
野坂こう言うと意外に思われるかもしれませんが、昨年7月のWiMAX2実証実験です。研究開発の結果をお客さまに見ていただくことは本当に喜ばしいことですし、実際に実験してみてわかることというのもたくさんあります。そして、こうした先進技術を、現実の社会に根付かせようとすることに、意義を感じています。WiMAX2実証実験の際には、海外の機関などからの反響も大きかったですね。
―UQに業界を牽引してほしい、という期待感もあるようですね。
野坂WiMAXは、もともと米国発の技術でしたが、UQとしては、国際社会の中で、特にアジアでこの分野のリーダーとならなければならないという使命感がありますし、各国キャリアからの期待も大きいです。だからこそ、グローバルスタンダードにならなければなりません。だから、世界に先駆けてWiMAX2のような先進技術を実験とはいえ世に出せたのは意義深いです。
「お客様の会」に来てくださっている皆様の声をうかがっても、UQは先進的で、しかも良いサービスを維持しているという声があり、嬉しい限りです。WiMAXのユーザーは、これまでかなりアーリーアダプター層の方が多く、きちんといろんなサービスを比較されるし、最新情報も積極的に仕入れるので、WiMAXがダイナミックに進化していることや、UQがいつも先進的なことをやっている、というのをご存じなんですね。それに、お客様からの不満や要望が出てくれば、とりあえず改善方法をみんなで考えてみる、そんなオープンマインドも評価していただいていると思います。
―これからUQはどう進化していきますか。
野坂インターネットはよくわからないけれど便利だから利用されている一般の方々に認知を広げて、WiMAXの「広がり感」を出していきたいですね。具体的な試みとしては、WiMAX女子会やパソコン女子部といった広報活動や、シニアサポートなど、セグメント別の訴求を始めています。これまでは30代、男性、ビジネスマンといった層が主要ユーザーでしたが、今はユーザー層がずいぶん広がりつつあり、これをもっと目に見える形で強化していきたいと考えています。
―今後の目標はどこに置かれますか。
野坂2月末で200万契約まできましたが、3月は一般的に言って、契約者数が伸びる月です。このままいくと、年度内に220万契約くらいはいくんじゃないかと予想しています。当然、目標としては300万、330万といったところでしょうか。それを今年度、つまり来年の3月末までの目標に設定したいですね。
ただ、環境状況がどんどん変わっていき、競争も激化していくので、とにかく他社に先駆けてどんどん先にいくことを考える必要があります。
―ユーザーが増えることによるサービス面での影響はありますか。帯域が狭くなるなどの懸念もありますが。
野坂ユーザーが増えることによるコストメリットは当然出てきます。また、ユーザー増によってメジャー感が出てくると、先ほどお話したように引き合いも多くなり、基地局建設も拡大していけます。基地局建設は、交渉ごとなんですよ。つまり、ビルなどのオーナーのOKをとらなければなりません。でも、メジャー化によって、その交渉もはかどります。UQはそれほど巨大な組織ではありませんから、営業部門、技術部門、建設部門のあいだで意思疎通が円滑で、相互のフィードバックが盛んなのもメリットです。
帯域に関しては、電波は有限の資源ですが、WiMAXは効率の良い周波数だと言えます。歌舞伎町、秋葉原駅前、渋谷パルコ前など、人の多いところで帯域が逼迫するという現象はもちろんありますが、逆に言ってしまうと、そうした混雑は特定の場所と時間帯に発生することがほとんどなので、対策を打つことができます。たとえば、ピンポイントなエリア対策のためのストリートセルなども用意しました。また、一般的な基地局は3セクタなんですが、規模が大きくて簡単には増設できません。だから1セクタだけを担う小型の基地局に分けるといったこともやっていきます。今はそうしたことに着手しはじめているところです。
―次のステップはやはりWiMAX2でしょうか。
野坂はい。2013年の早い時期にサービスインを実現したいですね。通信のキャパシティは、効率の良い電波をいただければそれで解決できますし、WiMAX2は、とにかく効率が良い通信です。WiMAXは、たくさんのユーザーに支えられ、今回200万人契約を突破しましたが、それがWiMAX2への後押しになるはずです。
とにかく、今の日本はもっともっとイノベーションを起こしていかなければいけない。せっかくWiMAXのようなインフラとしても技術としてもいいものがあるのだから、それを様々な分野に拡げていきたい。たとえば、組み込み型のWiMAXでBtoBのビジネスや、マシンtoマシン、そして新しいデバイス。とはいえ、結局は「コンテンツ」がカギとなるはずです。デバイスは機能を提供しますが、それで消費するのは結局はコンテンツですから。デバイスはコンテンツと結びつけられてこそです。詳しくは話せませんが、そういった部分での各方面との話し合いはずっと続けています。
既存の枠組みや慣習をブレイクしていくのは大変です。でも、時にはそこを意識して打破していかないとイノベーションは起こらないんじゃないでしょうか。その小さな声が大きな声になっていけば必ず改革はできるはずです。そのためにも、もっと認知を得たい。2013年はUQにとって次の節目であり、WiMAX2はもちろんですが、IPv6やマルチキャストなども視野に入れたビジネスを推進していきたいです。
―直近ではどのようなことを期待していいですか。
野坂とにかくシティライフに強いWiMAXをきちんと仕上げていくことをめざします。また、グローバル化という点では、モバイルルーターを海外に持って行ってそのまま使えるといいよね、というのも考えています。本当の意味での国際化をめざすというのがUQ的な第2ステップだということです。
これからさらにモバイル通信のすそ野を広げていきたい。200万人突破は、その通過点に過ぎません。2年くらい前って、モバイルルーターってかなり珍しいものだったと思いますが、今はカフェなどでかなり多く見かけるようになったんです。これは世の中が変わってきている証拠です。たとえそのモバイルルーターが他社の通信サービスであってもうれしくなってしまいます(笑)。
―ありがとうございました。
(Reported by 山田祥平)