パナソニックのレッツノートシリーズは、言うまでもなく、ビジネスを中心としたモバイルユーザーに圧倒的な支持を得るPCだ。また、実用的なモバイル性能を追求し続けるレッツノートは、WiMAXのサービス当初から精力的にWiMAX対応モデルを送り出しており、現在はほとんどのラインアップがWiMAXに対応している。
今回は、「Let'snote CF-J10」の最新秋冬モデルを紹介していくとともに、WiMAXの使い勝手をさらに高める独自のユーティリティについて開発者に話を聞いてみた。
レッツノート CF-J10は、レッツノートラインアップの中でも最小・最軽量を誇るモバイルノートで、本革製のジャケットを装着する独自の「ジャケットスタイル」が特徴となっている。レッツノート伝統の高耐久性はもちろん健在で、76cm落下試験、100kgf加圧振動試験などをパスしている。
パフォーマンスの面では、CPUに標準電圧版の第2世代 インテル® Core™ プロセッサーを搭載。インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー2.0に対応(ハイパフォーマンスモデルのみ)し、最大クロック数は2.90GHz。また、デュアルコアCPU+ハイパースレッディング・テクノロジーにより同時4スレッドの処理が可能となっている。メインメモリーは最大8GBの搭載が可能なほか、ストレージにはSSDを採用することで、このサイズのモバイルPCとしては規格外のパフォーマンスを発揮できる。
レッツノートは全ラインアップにおいてWiMAXに標準対応している。WiMAXの最大のメリットはやはりそのスピード感であり、通信速度の速さは言うまでも無いが、「スタンバイから復帰した瞬間から」接続処理が開始し、即座に接続完了するそのスピーディーさは何物にも代えがたい。
しかし、現状の内蔵WiMAXモジュールには、無線LANとWiMAXを同時にオンできないという制約が存在する。標準の接続ツールでは、たとえばWiMAXではなく社内無線LANに接続したいときは、WiMAXから無線LANにいちど手動で切り替える必要がある。
そんな不便さを解消すべく、パナソニックのレッツノートシリーズは秋冬モデルにおいて、ネットワーク接続用の新ユーティリティとして「ネットセレクター3」のダウンロード提供を開始した。WiMAXをはじめ、各種ネットワーク接続をインテリジェントに自動切り替えする「おまかせモード」により、使い勝手が大幅に高まったといえる。
今回は、「ネットセレクター3」の企画、開発に関わったパナソニック株式会社AVCネットワークス社ビジネスソリューション事業グループITプロダクツビジネスユニットの作田繁昭氏(市場開発グループ商品企画チームチームリーダー)、向井雅樹氏(テクノロジーセンター先行開発チーム主幹技師)、笠松正紀氏(同 主任技師)らに話を聞いてきた。(インタビューワー:山田祥平)
― レッツノートはワイヤレスに非常に力を入れている印象があります。
向井私はレッツノートのワイヤレス全般を担当していますが、もともとワイヤレスには力を入れてきました。特に、ハードウェアを内蔵して、ソフトはハードにくっついてくるもの、という実装では差別化が難しいと考えています。ワイヤレスが得意といっているからには、ソフトで特徴づけることができないかと考えてツールを用意することが必要で、そういったところから開発されたのが今回の「ネットセレクター3」です。海外のお客様からはもともと要望があったものですが、国内のカンファレンスイベントなどでも各方面の要望をききながら、ソフトの仕様を固めていきました。
― ネットセレクター3ではどのような機能が提供されるのでしょう。
向井事前に複数のプロファイルを用意し、プロファイルごとに接続先を設定しておくことで、レッツノートを使う場所ごとに、もっとも適したネットワークに確実に接続できるようにしました。手動での接続もカンタンですが、新たに用意されたおまかせモードでは、プロファイルを優先順位順にスキャンし、インテリジェントに接続先が選択されるようになっていて、それが今回の新ユーティリティのポイントです。オフィスでは社内のイントラネット、外出先ではWiMAXへと、場所に応じてワイヤレスの接続先が自動的に切り替わります。
― おまかせモードを使えばWiMAXと無線LANも意識せず接続できるのですか。
向井WiMAXと無線LANは同時に使用できないことを知っているユーザーはそんなに多くないんですが、WiMAXが多く使われるようになるにつれ、そのあたりの不便さが気になってくるでしょうし、このふたつを簡単に、すぐに使いたいという要望が高まってきます。ネットワークにつなぐときに、WiMAXと無線LANを意識しなくてもよければ、使い勝手が向上すると考えています。
また、ワイヤレスに関しては、高いスキルを持ったお客様は実は少ないんです。大多数のお客様は、無線LANのつなぎかたすらわからない状況で、問い合わせの件数を見ても、無線LANがつながらないという単純な問い合わせが非常に多い。だからこそ、いろいろなツールを使い分けるよりも、ひとつのツールに統合したいというのも考えました。
今回のツールでは、切り替えの不便さを自動化で解消するとともに、OSや専用ユーティリティなどに分散していた接続ツールの役割をひとつにまとめることで、混乱を解消できているかなと思います。
― このようなユーティリティによるワイヤレス制御というのは技術的に難しいのでしょうか
向井自動切り替えというのは技術的にはそれほど難しくはないのですが、やはり苦労はしました。WiMAX、無線LAN、有線LANと、ネットワークごとに別の制御をしなければならないので、検証を含めて作業はけっこう大変です。
あとは、接続スピードと確実性のバランスでしょうか。インテリジェントな接続優先度判断においては、どれだけ速くつながるのかは重要ですが、あらかじめ設定した優先順位に確実にしたがうことがやはり優先されます。つながるのかどうかを判定するまでの時間は、まだまだ短くできるのですが、それで存在するはずのアクセスポイントにつながらなければ意味がありません。
笠松WiMAXとWi-Fiの切り替えには苦労しましたが、UQさん、インテルさんのご協力もいただきながら、完成度を高めてきました。
― WiMAXと無線LANがシームレスに行き来できるようになることで、やはりワイヤレスの使い勝手は大幅に高まる印象ですね。WiMAXの技術自体についてはどうでしょうか。
笠松WiMAXを最初から担当している立場としては、スループットはいいし、アクティベーションが簡単なのもメリットだと感じています。だから、使い勝手を高めて、もっとたくさんのPCユーザーに使っていただきたいと思っています。
作田レッツノートはWiMAXのアクティベーション率が高いそうです。なぜなのかといえば、リアルに外に持ち出して使う方が多いノートPCだから、ということになるのでしょうね。
― 今後のWiMAXパソコンの展開について、なにか展望はあるのでしょうか。
作田今後、レッツノートと、タブレットをはじめとした無線LANデバイスを併用するお客様も増えてくるでしょうから、WiMAXを使ったソフトウェアルータなどの機能が搭載できないかと考えています。
タブレットデバイスを使う方でも、また別にPCを携帯している場合が多いんです。だったら専用モバイルルーターではなく、レッツノートがルータになれば便利じゃないですか。セキュリティを確保したファイル共有など各種のサービスを統合して、企業向けのソリューションとしてのルータ機能を考えたいですね。
― WiMAXについて期待されていることは?
作田台湾、シンガポール、マレーシア、インド、東南アジアなど、アジア諸国での普及が待ち遠しいですね。WiMAXビジネスが広がる予感がしています。エマージング市場のみならず、企業では高くてもいいものはきちんと評価して買ってもらえるというデータもあることですし。
向井・笠松国内のWiMAXに関しても、もっと盛り上げていってほしいです。自分で使っていて、現状、これよりいいものはないと考えていますから。期待していますよ。
― 本日はありがとうございました。