次世代の高速ワイヤレスデータ通信の動向に注目している読者なら、一気に4機種が発売されたauのWiMAX搭載スマートフォンに注目している方は多いと思う。とりわけパソコンとスマートフォンの両方を使い分けている読者は、WiMAX搭載スマートフォンのテザリング機能の使い勝手が気になるところではないだろうか。
今年春、WiMAX搭載のHTC EVO WiMAXをリリース。cdma2000+EV-DOの3G回線に対応した高機能Android端末として使えるだけでなく、WiMAX回線に対応してWiMAXエリアでの高速通信に対応。Androidのテザリング機能を利用し、USBあるいはWi-Fiを通じてパソコン向けの通信回線として、WiMAXと3G回線の両方を利用できる魅力的な料金プランを提示した。
この料金プランのスゴイところは、追加料金がたった525円(税込、来春までは無料)ということだ。WiMAXと3G、両方の回線でテザリングが525円というのは、控え目に捉えてもかなりのお得感ある設定である。
525円でWiMAXが使え、さらに3G回線を含めたテザリングまででき、3G回線のみの端末ではテザリングが可能になる追加オプションがないのは、それだけWiMAXを積極的に活用してほしいというKDDIからのメッセージとも言えるだろう。
KDDIコンシューマ事業企画部事業戦略1グループリーダー・担当部長の前田大輔氏は「スマートフォンの普及で3G回線は混雑してきています。 今のところ、我々のネットワークは品質を維持していますが、さらにスマートフォンの比率が高まってトラフィックが膨大に増えると、速度やつながりやすさに問題が出ることが想定されます。WiMAXが利用できるエリアと、3G回線の混雑するエリアは重なっていますから、お客様にWiMAXを積極的に使ってもらうことで3G回線の混雑を緩和します。高速回線のWiMAXを安価に使っていただくことで、ユーザーにも満足いただけますし、たくさんのユーザーがWiMAXを使うことで、既存端末のユーザーの快適性も上げることができます」と話した。
スマートフォンによる3G回線の極端な混雑は、都内の一部人口密集地だけでなく、地方都市の繁華街などでも報告されるようになってきている。活動する人の多い地域からエリア拡大をしてきたWiMAXの活用は効果的だ。
さらにKDDIでは、WiMAX搭載端末のラインナップを拡大するにあたって、UQコミュニケーションズと連携。スマートフォンによるデータ通信が多いスポットを抽出し、現在のWiMAXのエリアに対し、どのようなエリア拡大をすればユーザーの利便性が上がるかをアドバイスしているそうだ。
こうしたリアルな利用状況に関する情報がKDDIからももたらされることで、スマートフォンの利用者が、よりWiMAXを効果的に活用可能になるとともに、従来のWiMAXにも”より実用度の高いエリア設計”という形での恩恵がもたらされることになるだろう。
「 WiMAXは、現在BWAや3.9世代と呼ばれる高速通信規格の中でも、実効通信帯域や通信可能なエリアにおいて明らかに有利です。KDDIは2012年末にLTE回線の導入も進めていますが、WiMAX回線とLTE回線にうまく混雑を振り分けることで、より高い利便性と使いやすさを実現していきます。携帯電話事業者だけでなく、利用者にとっても、エリアが広く実効通信速度が速いWiMAXを最大限に活用することがメリットをもたらすと思います(前田氏)」
実際にIS12HT、IS11M、IS11Kと三つの機種を使ってみたが、どの端末でもWiMAXエリアでの「待たされない」感覚は、3G回線専用機に比べて圧倒的。私の場合、自宅から都心に出かけ、山手線管内で移動しながら使っている際、屋外や電車の中では、ほとんどWiMAXでの通信が行えた。
電車に乗って使い続けたとき、接続が切れる場合もあるが、その際はおおむね20秒以内には3G回線へと切り替わってくれるため、通信ができずにイライラすることは少ない。これは屋内での利用時も同じだ。WiMAXのエリアが行動範囲になるのなら、WiMAX搭載スマートフォンを活用しない手はない。
テザリングのことを考えれば、パソコンをモバイル環境で活用している人に圧倒的な利便性を提供してくれるが、スマートフォン単体で使っている場合でも、何かアクションを起こそうとした時の”待たされ度”の低さ、データ転送の速さは充分にメリットをもたらしてくれると思う。
実際、コンシューマ向けの端末、サービスを担当するKDDI商品統括本部プロダクト企画本部パーソナルプロダクト企画部長の尾崎高士氏は「来年もWiMAX対応端末がたくさん出てきます」と、WiMAX搭載機種の幅が、さらに拡がっていくことを今から宣言した。
「実際にテザリング対応のHTC EVO WiMAXを発売し、我々が予想した以上にテザリング機能に注目して選んでくださる方が多かったんです。そこで今回、富士通、京セラと日本メーカーから、日本向け機能を搭載した上で発売していただき、この世界へと踏み込む閾値(しきいち)を下げようと考えました。今後、さらに拡げて、普通のケータイユーザーが、当たり前にWiMAXを活用できるよう、幅広いユーザー層に向けたWiMAX搭載端末を準備を整えていきます(尾崎氏)」
尾崎氏によると、スマートフォンに取り組み始めてから増えたトラフィックは、大方の予想通り、映像とSNSのものが多いそうだ。特に20代~30代の女性、30代~40代の男性といった年齢層におけるSNS利用率の向上が大きいという。カメラの画素数が重視されたフィーチャーフォンのころに比べ、SNSでの使いやすさ(通信速度、写真のアップロード速度、素早いカメラの利用などを含む)を重視するユーザーが増えたという。WiMAXによる通信速度の向上は、こうしたユーザーにとっても非常にうれしいことだ。
また、WiMAX利用が進むことで、コンシューマ向けのネットワークサービスを、次のステップへと進められる手応えも感じているようだ。「すでにLISMO Unlimtedという音楽の定額サービスは開始していますが、定額でコンテンツを自由に楽しめるサービスをKDDIとしても色々と考えていきたいですね(尾崎氏)」と、積極的にWiMAXの広帯域を活用したサービスの展開に意欲を見せる。
このようにWiMAXを用いたデータ通信サービスが増え、どんどん高速通信を使うようになると、次に心配されるのがバッテリ。「たくさんの通信とコンテンツ再生をすれば、省電力化を進めてもバッテリは減ってしまいます。さらに電力を下げていく頃には、また速度が上がってメディアリッチになる。モバイル機器の永遠のテーマです(前田氏)」とのこと。もちろん、これはWiMAX搭載スマートフォンだけでなく、あらゆるスマートフォンのテーマだ。特にテザリング利用時のバッテリの減りが気になるところだろう。試しにIS11Mを満充電とした上で、2時間15分ほどパソコンからWi-Fiテザリングを利用し続けてみた。残りは半分ぐらいかな?と見てみると、まだ60%が残っている。
テザリング利用前提ならば、充電用の予備電池を一緒に持ち歩く方がいいだろう。とはいえ、想像したよりもバッテリは粘ってくれそうという感触も持てた。
「KDDIにとって、実効速度が速く、エリアも広い4GネットワークのWiMAXは、スマートフォンをさらにたくさん売っていくために重要なインフラです。auの端末にWiMAXを搭載して、より幅広い方々にWiMAXの魅力を知ってもらえるよう、店頭などでも積極的に”+WiMAX”キャンペーンを展開していきたいと思います(両氏)」
(Reported by 本田雅一)