シャープのAndroid採用タブレット端末「メディアタブレット GALAPAGOS」シリーズは、当初、電子書籍端末として始まった。そのGALAPAGOSが、「コンパクトで片手に収まるサイズのタブレット型汎用通信端末が欲しい」という市場ニーズをもとに、WiMAXとAndroid™ 3.2搭載の7インチタブレットとして生まれ変わったのが今回の「メディアタブレット GALAPAGOS EB-A71GJ-B」だ。
自宅でも外出中でもちょうど良いサイズの7インチ液晶、Android 3.2とデュアルコアCPU(NVIDIA® Tegra™ 2)による高機能プラットフォーム、下り最大40MbpsのWiMAX通信モジュールが搭載される。通信機能が搭載されたことにより、電子書籍端末としての使い勝手が向上するのはもちろん、高速通信が制限なく利用できるメリットを生かして動画サービスの閲覧、大容量ファイルの転送、クラウドサービスの利用など様々なニーズを満たすことができるデバイスに仕上がっている。
WiMAX通信モジュールを搭載し、通信機能とテザリング機能を備えるため、別途モバイルルーターを持ち歩く必要はない。ルーターの電池残量を気にしたり、わざわざ電源オン/オフしたりする煩わしさから解放されるのに加え、GALAPAGOSをモバイルルーター代わりに、PCやスマートフォンなど他の多くのWiFi機器をネットに接続することが可能となる。
では、GALAPAGOS新モデルはどのようなコンセプトで開発されたのだろうか? 製品の最終追い込みをするメディアタブレットのふるさと、シャープ大和郡山事業所を訪れた。
シャープ通信システム事業本部でメディアタブレット事業推進センター 商品企画部 副参事の長島徹氏は「Andoridもタブレット対応の3.xになり、さらに改良を重ねて3.2まで進みました。プロセッサはAndroid 3.xのリファレンス機で採用されたNVIDIAのTegra 2。通信の高速化とあいまって、またスマートフォンよりも大きな画面のユーザーインターフェイスを持ち、時代がいよいよタブレットの良さを活かせる時代になりました」と話す。
「7インチという、持ち歩いても、また家の中で使っても、画面が見やすく使いやすいサイズに、タブレットに最適化されたAndroid、高速プロセッサが揃ったことで、その良さを実感できるタイミングになってきたと思います(長島氏)」
その7インチモデルがWiMAXを搭載した狙いは何なのだろうか?
長島氏は「タブレット端末は、まだまだこれからが伸びる製品カテゴリです。ホームネットワークの中で、あるいはクラウドを用いて他の情報機器と連携したり、あるいはストレージにアクセスして情報を表示したり、アプリケーションを通じてネットワークサービスを使いこなす。家の中でも外でも、コレ一台で何にでも使える。そんな良さが7インチモデルにはあります」と胸を張った。
画面サイズの大きさと使いやすさ、携帯性などのバランスポイントとして、7インチというサイズは、特に電車での通勤・通学時に使いやすいなどの理由で人気が上がってきているサイズだ。10インチでは大きすぎるが、4インチでは小さい。充分な視認性や操作性、軽さとバッテリー持続時間。様々なトレードオフの中でスイートスポットになっているのが7インチではないだろうか。
「手にするまでは、スマートフォンが少し大きいだけと思いがちですが、パワフルで使いやすく、Webにしてもアプリにしても、スマートフォンとは世界観が違う。一度購入したら、もう手放せない、生活になくてはならない製品になってしまう(長島氏)」
そんな、「外に持ち出したくなる」7インチのタブレットには、やはり単体での通信機能が必要だ。しかも、快適にWebブラウジングを行い、電子書籍や動画などの大容量のマルチメディアコンテンツを楽しめるタブレット端末だからこそ、高速かつデータ通信量の制限のない通信が必要となる。WiMAX搭載の狙いは、まさにそこにある。
この7インチタブレット。長島氏は携帯性の目安として500ミリリットルのペットボトルよりも明らかに軽いと感じる400グラム以下で、可能な限り大きく見やすいディスプレイを搭載することに力を注いだ。
メディアタブレットとしてサクサクとアプリケーションが使えるのはもちろん、電子書籍などとして長時間使う際にも、手首に負担のかからない重さでなければならないと考えたからだ。その結果、重さはWiMAXモジュールを内蔵し、アンテナを追加した新モデルでも396グラムに収められた。
もちろん、WiMAXの利用にはアプリケーションによる制限はない。Skypeでも、YouTubeでも、そしてテザリングも、Androidで動くアプリケーションならば、なんでも利用出来てしまう。特に期待が大きいのは、やはりテザリングだろう。
同事業推進センター商品企画部主事の福富浩氏は、自分自身で試作機を使い始め、通勤時やプライベート、会社と色々な場面で活用し、改めてテザリングの良さを確認した。
「通勤電車の経路はほとんどWiMAXが使えますから、もちろん直接GALAPAGOSを使ってもいい。でも場合によってはスマートフォンの方がいい場合もあります。そんなとき、GALAPAGOSのWi-Fiテザリングをオンにして、スマートフォンからWi-Fiでアクセスすればいいと気付いたんです(福富氏)」
スマートフォンよりもサイズが大きく、バッテリー容量も大きなタブレットをWiMAXルーターとして使うことで、タブレットを中心にパソコンやスマートフォンの通信をカバーする、タブレット中心の使い方という提案だ。
「WiMAXルーターはとても便利ですよね。でも、WiMAXルーターの予算に少し加えると、ルーター機能を包含する、高性能な7インチタブレットが手に入ります。(福富氏)」
なるほど。これは盲点。確かにタブレットとスマートフォンを、クラウド型サービスを中心にしてデータ共有しつつ、高速なWIMAXの接続を、ひとまとめにできるというのは、なかなか魅力的な話と言えるだろう。
WiMAXでは、手軽に積極的にテザリングで通信を楽しんで欲しい。そのために、テザリング機能のオンオフを、簡単にウィジェットで行えるようきちんと設計してある。当たり前というなかれ、切り替えはスムースで手早く行えるので、テザリングの利用率はかなり高くなると思う。その上、バッテリーサイズはスマートフォンの2倍ぐらいあり、約6時間程度のテザリング使用が可能。テザリング同時接続台数も最大7台と十分だ。
また、本機はBluetoothで機器と接続し、WiMAXへとルーティングするBluetoothテザリングもサポートしている。いろいろな使い方があるだろうが、私の場合はWi-Fiがとても混雑している状況の中で、混信せずに確実につながる経路として重宝したことがあった(最近は記者会見場など、モバイルルーターだらけで無線LANが使い物にならないことも少なからずある)。
“ちょうどいい”サイズの液晶パネルとともに、スマートフォン+メディアタブレット、メディアタブレット+パソコンといった使い方がしっくり来る。どちらとも良く合うし、もちろん単独でも使える。こうした感覚は、スマートフォンにも、WiMAXパソコンにもない独特のものだと思う。
長島氏は「実は自分でWi-Fiモデルを購入して使っているのですが、タブレットはすでに一番手近なところにある、もっともよく使うコンピュータになりました。食事をする際にも、食卓の上に置いてアクオスのリモコン代わりにしたり、何かの話題についてネットで調べたり。これはWiMAXモデルでも同じなのですが、通信が高速になると、さらに使う量、回数が増えてきます」と話す。
利用制限がなく高速なWiMAXが内蔵されることで、新しい使い方を、今後は色々な人が考えつくに違いない。アプリケーションも、より高速なネットワークを意識した、もっとリッチなものになっていくだろう。
そんな近未来を垣間見る。WiMAXは今、まさに旬と言える時期を迎えているように感じた。スマートフォンに似たアーキテクチャながら、明らかに世界観が異なる。次世代のスマートフォン/タブレットはどうなっていくのだろうか?WiMAXを通じて次世代に触れあうことで、従来とは違う使い方、アプリケーションを生み出す基盤に、WiMAX内蔵タブレットはなっていくのかもしれない。
(Reported by 本田雅一)