先日、133万超契約達成を発表したばかりのWiMAXだが、その勢いは止まらない。UQコミュニケーションズは、これを機に、さまざまな施策を発表、また、同時に今後の取り組みに関するロードマップを紹介し、「エリア全力宣言」を高らかにうたいあげた。今回は、それらのトピックスについて紹介することにしたい。
今回の発表における大きな話題のひとつは、新サービスとして「ファミ得パック」が12月1日から提供されることだ。このパックは、WiMAXを2回線同時に使える新サービスで、自宅とモバイル、夫と妻、親と子など、複数の端末を同時に利用したいニーズがあるさまざまな利用シーンにおいて、魅力的なコストメリットを提供する。
UQコミュニケーションズのサービス料金プランには、「UQ Flat」や、「UQ Flat 年間パスポート」(1年間継続利用で月額3,880円)、「UQ Step」といったプランが用意されているが、どのプランでもこのパックを組み合わせることができる。そして、このパックを組み合わせることで、2回線目が2,480円で利用できるようになる。
これまで、WiMAXを2回線使うための、もっとも安上がりな方法は、2回線共に、UQ Flatの年間パスポートを契約し、3,880円×2で使う7,760円だったわけだが、今回のパック登場により、3,880円+2,480円=6,360円となる。一回線あたりの金額が、3,180円まで下がることになる。この金額は従来の約2割引だ。
ひとつの契約のもとに、複数の機器でWiMAXを使うためには、これまで「機器追加オプション」が提供されてきた。「機器追加オプション」は、200円/台の利用料金で、1契約につき2台までの機器を追加し、合計3台でWiMAXを利用できるというものだ。ただ、これまではメイン機器と追加した機器を同時にWiMAXにつなぐことはできなかった。どれかがつながれば、他の機器は切れてしまう。結果として回線の奪い合いが起こる。一人のユーザーが、複数の機器をとっかえひっかえ使っている場合はWiMAX接続の優先順位を設定したりすることで、接続/切断のコントロールも容易だが、家族などが、それぞれ別の機器で利用している場合は困ることもでてくる。
だがファミ得パックを利用すれば、2回線同時に接続でき、回線の奪い合いが起きることもない。自分は外でWiMAXをモバイル利用する一方で、自宅の家族もWiMAXの高速インターネットを利用する――といったことをリーズナブルな価格で実現できる。
「ファミ得パック」は、「機器追加オプション」のさらなる細目オプションだと考えていい。実際、2,480円という価格も「機器追加オプション200円」に「ファミ得パック利用料2,280円」を加えたものとなっている。
このプラン、スタートはUQ コミュニケーションズのみだが、各MVNOからのサービス開始も予定されているそうだ。複数機器でWiMAXを使いたいユーザーにとっては、実にお得なサービスとなるはずだ。
「ファミ得パック」の登場によって、自宅とモバイルといった複数機器での利用時におけるコストに関するハードルが一気に低くなった。まるでそれを見越していたかのように登場したのが「URoad-Home」だ。連載第9回では、この機種の開発にかかわったシンセイコーポレーションとUQコミュニケーションズの関係者にインタビューしたが、そこで明らかにされたように、この製品は、さまざまな先進機能を先取りしているため、買ってすぐにWiMAXのイノベーションを手に入れることができる。
ホームルータとしての利用が想定されるため、2個の有線LAN端子が用意されているほか、WiMAXとWiFi双方共にハイパワー化が実現され、WiMAXを安定して利用できることに加え、宅内でのWiFi利用も快適だ。今年の春に改正された総務省令により、WiMAX無線のアンテナ利得や最終出力を高めることが認められたが、URoad-Homeは、この省令に準拠した最初の製品となる。
「ファミ得パック」を利用すれば、自宅では固定機器をインターネットにつなぎっぱなしにしておいたまま、モバイルルータやWiMAX内蔵PC、タブレットなどを外出時に持ち出し、自宅の接続状況を気にすることなく、いつでもどこでもWiMAXに接続してインターネットを楽しめる。これなら自宅も外出先も全部WiMAXという選択肢も現実的になってくるというものだ。
WiMAXのユーザーにとって悲願といってもよかった地下鉄WiMAXが、ついに年内に利用できるようになる。地下鉄といっても駅構内で利用できるようになるだけでは、そこまで騒がない。今回のエリア拡張では、駅間トンネルを走行中の地下鉄車内でも利用できるようにすることが目指されているのだ。
最初にこの素晴らしい体験ができるのは東京都営地下鉄三田線の大手町駅付近だ。11/28に着工し、順次作業を進め、今後は隣の日比谷駅と神保町駅間で利用が可能になる。これは大きな一歩であり、本当に嬉しいニュースだ。
WiMAXは2.5GHz帯という強い直進性を持つ周波数を使っている。このため、駅のホームの端に基地局を設置し、地下鉄トンネルの両端から内部に向けて電波を発射することで、トンネル間での利用が可能になる。この方法なら、トンネル内に漏洩ケーブルを敷設する工事よりも、コスト的にも安上がりで、何よりも、工期が短くてすむ。着工からサービスインまでの時間が短ければ、それだけ早く、サービスの恩恵を得られることになるのは、利用者側にとってはうれしい限りだ。
ちなみに日比谷-大手町-神保町間の営業キロは3.2キロある。特に大手町-日比谷間は1.4キロと、地下鉄駅間トンネルとしては比較的長い距離になっている。実験では実証済みだそうだが、この駅間でのWiMAX利用が可能になれば、他の駅間での利用にも大きな問題がないことがわかるだろう。順次各駅で着工され、2012年内には、都営地下鉄全区間のエリア化が完了する。また、東京メトロや各地方都市の地下鉄事業者との交渉も進んでいて、許可が得られ次第、着工していくとのことだ。ぜひ、スピーディな工事を望みたいところだ。
地下鉄間トンネルほどではないが、アーケード内など、電波が届きにくいエリアの対策も進んでいる。サムスン製の超小型基地局が開発され、家庭用の無線LANルータを少し大きくしたようなサイズの基地局が、各所に配置されることになっている。これらによって、WiMAXが使えるエリアが地図上で広がるわけではないが、実際の使い勝手は明らかに向上するにちがいない。点を線にし、線を多面体に変え、それが都市をスッポリとくるんでいくことで、WiMAXが豊かなインターネットライフを提供しようとしていることが伝わってくる。
WiMAXは今なお日々進化を続けている。たとえば、これまでのWiMAXは、上り速度の理論値が10Mbpsだった。そして、この12月、上り速度は15.4Mbpsと、これまでの1.5倍になる。
アップリンク速度が向上することで、写真をクラウドのSNSサービスにアップロードしたり、大きなファイルを添付したメールをスピーディに転送できるといったメリットが出てくる。現在のクラウドの使われ方を考えれば、実に、うれしい進化だ。
このアップリンク速度向上は、64QAMという技術によって実現される。比較的電波が強いエリアにおいて、従来の16QAMから64QAMにシフトすることで、一度に転送できるデータ量が4ビットから6ビットになり、従来に比べて1.5倍のアップリンク速度が得られるようになるそうだ。ちょうど、クルマのギアをオーバードライブにセットするようなイメージだ。
また、弱電界のエリアにおいては、先の総務省令改正によって、端末側のアンテナ利得、送信出力の向上がかない、これまで圏外だったところが圏内になるところがでてくる。
以上のように、料金プラン、エリア拡大、規格のアップデートなどにより、WiMAXは進歩を続けている。今後も最新の動向に注目していきたいところだ。
(Reported by 山田祥平)