UQコミュニケーションズ(以下UQ)は「UQお客様の会」と称するイベントを1年に1~2度を目処に開催しており、この2月には第7回目となる会が開かれた。今回はそのミーティングの様子をレポートしよう。
「UQお客様の会」は、ユーザーとの密接なコミュニケーションによって、UQから新サービスなどの情報を伝えるとともに、ユーザーの意見や要望をその場でダイレクトに聴き、今後のサービス展開に役立てることを目的に開催されるものだ。
2月のとある日曜日の正午、会場に設定された東京・青山のレストランには、33名のWiMAXユーザーが集まった。その男女比は3:1といったところだろうか。
まず、UQの代表取締役社長・野坂章雄氏による冒頭挨拶において、WiMAXがもうすぐ200万契約を突破しようとしているというアナウンスがあった。WiMAX搭載スマートフォンの好調な売れ行きの助けもあるという。さらに、人口カバー1億人を達成したことも報告された。エリアは全国79%、東名阪99%、政令指定都市95%となる全国840市町村区に展開済みであり、さらにこの勢いは止まらず、WiMAXは、さらに広く、さらに快適になっていくと語る野坂氏。
加えて、地下鉄駅とトンネル部分のエリア化についても、その進捗が報告された。都営地下鉄は、三田線大手町駅が昨年12月末にエリア化完了しているが、順次、全区間がエリア化されていく。2月23日には、大手町、神保町に続き、日比谷駅のエリア化も完了し、サービスの提供が開始された。また、東京メトロのエリア化も準備が進んでいるとのことだ。
地下鉄エリア化計画は首都圏だけにとどまらない。横浜市営地下鉄グリーンラインを皮切りに、大阪市営地下鉄、福岡市営地下鉄もすでに調整中で、サービス開始まで間もない。実は、地下鉄を持つ各政令指定都市が、UQに対して、早期にWiMAXの地下鉄エリア化を実現してほしいと、かなりアグレッシブな要望を出してきているという。実に嬉しいニュースだ。
もちろん、各種端末の紹介もあった。WiMAXとauの3Gネットワークの両方を利用できるハイブリッドモバイルルーター「Wi-Fi WALKER DATA08W」や、WiMAXハイパワー対応で最大約170時間の待ち受け時間を誇るNECアクセステクニカ製の最新モバイルルーター「AtermWM3600R」が披露された。新型ルーターは、64QAM対応により上り速度が向上していたり、WiMAXハイパワー対応で、接続がつながりやすく、切れにくくなっていることもアピールされた。
そのほか、ホームルーターの「AtermWM3450RN」や、ASUSのWiMAX内蔵タブレット「TF101-WiMAX」、そして数々のWiMAXパソコンも紹介された。これらの端末はすべて会場入り口の展示スペースに陳列され参加者の興味をひいていた。
野坂氏は、日本マイクロソフトとのモバイルPC拡販における協業連携についても触れ、この春の新生活シーズンに向けた意気込みを語った。また、京都大学のキャンパスネットへの接続サービスが開始されたことを報告し、慶応大学に続く大学向けのWiMAXという新たな展開の可能性を語った。
この春はPlay WiMAXを合言葉に十二分にインターネットを楽しんでほしいと野坂氏。たった20分間を、実に40枚のスライドというジェットコースターのような勢いのプレゼンテーションだった。その勢いは、今のWiMAXの元気を伝えるバロメーターそのものだといえるだろう。
続いてプレゼンテーションに立ったのは、UQの技術部門副部門長兼ネットワーク技術部長、要海敏和氏だ。
そのタイトルも「WiMAX技術向上の裏側」。会場の参加者は興味津々の様子だ。
要海氏は、まず、昨年末に開始された64QAMによる速度向上を技術的に解説し、電波状況の良いところでこの技術の恩恵を受けることができることをアピールした。
ほかにも、通信スループット計測の技術検証に関する話や、端末バッテリ寿命の拡大に貢献するWiMAXのアイドルモード、現状設備のままでエリア拡大ができるHARQ機能、ハンドオーバー時の速度劣化を防止するパケットの物理層転送処理救済機能などが紹介された。そして、今後のWiMAX2に向けたロードマップやサービスイメージなどを明らかにしていった。WiMAXユーザーなら誰もが気になる技術的なバックグラウンドが、わかりやすく説明され、参加者もおおいに納得していた様子だ。
最後のプログラムは、野坂社長と取締役執行役員副社長の片岡浩一氏、そしてジャーナリストの本田雅一氏と、このレポートを書いている山田の4名によるトークセッションだ。もちろん、本田氏も山田もWiMAXについては古くからのユーザーだ。
野坂氏に昨年のハイライトを尋ねられた本田氏は、ホームルーターURoad-Homeの登場をあげ、ワンストップサービスとしてのWiMAXの可能性が具体化したことについて言及した。そして、こうしたルーターが登場したのなら、まるで家庭内LANの中にいるかのように、同じ契約のWiMAX端末同士が、セキュリティに守られた上で相互通信ができる仕組みが提供できないものかと提案した。
山田は山田で、地下鉄エリア化をハイライトとして挙げ、早期の整備を要望した。第3回で紹介したソウルでのWorld WiMAX体験を例にあげ、韓国WiMAXの精神性とその便利さを、少しでも早く日本でも実現してほしいと発破をかけた。また、どんどん新規端末が登場する中で、サービス開始当初からWiMAXを使ってきたユーザーが、新しい端末に乗り換える場合の優遇措置を検討してほしいとお願いもしてみた。
本田氏からは、各種タブレットやWindows 8 PC、Ultrabookへの期待と、それらとWiMAXの親和性が述べられ、山田からはWiMAXが人の集まる観光地などにもエリア展開してほしいことなどを要望しながらトークセッションはお開きとなった。
そして、最後は、テーブルごとのフリーディスカッション。参加者が席についている各テーブルに、UQの役員や社員が加わり、みんなでじっくりと話をする。本田氏や山田にも席が与えられ、参加者の生の声を聞くことができた。ユーザーそれぞれが、大きな期待をWiMAXに寄せていることがダイレクトに伝わってくる。ここでの苦言、賞賛さまざまな声が、今後のWiMAXサービスに活かされていくことになるのだろう。
ISPのようなビジネスは、いったん加入して利用を始めたら、その存在感を消してくれるのがいい。特に意識することなく、月末にクレジットカードの明細に見かける程度というのが理想だ。つまり、忘れるくらいに透明であるのが望ましい。
ところが、現在のWiMAXは、日進月歩で進化を続けているから、そういうわけにもいかない。新端末の導入によって得られるメリットや、既存ユーザーが端末アップデートで得られる恩恵も多い。料金プランなどの施策もダイナミックに変わっていく。だからこそ、ユーザーは、WiMAXを常にウォッチしているし、こうした会があれば、積極的に参加を希望する。UQサイドも、積極的にコミュニケーションの場を設け、よりよいWiMAXのための材料を集める。だから、WiMAXはダイナミックに成長していけるのだ。ここで集まったさまざまな意見の多くが、明日のWiMAXを作る。そういう意味では、WiMAXは、その契約ユーザーとUQコミュニケーションズとのコラボレーションによって成り立っているサービスだということができるかもしれない。
(Reported by 山田祥平)