マイクロソフトがUQコミュニケーションズと急接近、互いに協力しあいながら、コンシューマー戦略を推進していくことで合意したという。これから出てくるWindows 8のこともあり、同社の動向からは目が離せない。そこにWiMAXがどのように絡んでくるのかも気になるところだ。そこで今回は、UQコミュニケーションズの西山暢一氏(販売促進部 販売促進グループ マネージャー)同席のもと、日本マイクロソフトの勝俣喜一朗氏(業務執行役員 OEM統括本部マーケティング本部長)に話を聞いてきた。
― 今、マイクロソフトは急速にコンシューマーに向けてのメッセージを強く押し出し始めているようですね。
勝俣マイクロソフト全体のコンシューマー戦略が刷新されたことによるものです。といっても、もともとマイクロソフトはコンシューマーに育ててもらった企業です。ですから、コンシューマーに対する戦略を見直したといっても、原点に回帰したということにすぎません。そのポリシーの元に、コンシューマーに今まで以上に訴求していきたいと、組織を再編成しました。
たとえば、OfficeスウィートやXbox、Windows Phoneは、これまで個別に訴求してきたのですが、今後はWindowsに付随する製品群として、OEM様や、量販店様、通信事業者様など、川上から川下までの重要なパートナーの方々ときっちりと連携していくことになります。
今日は、UQコミュニケーションズさんとの協業のお話なので、通信事業者様とのビジネスにフォーカスすると、今まで、通信事業者に対するマイクロソフトは、ホスティングビジネスなど、比較的企業寄りの部分としてのおつきあいが多かったんです。今回は、それをコンシューマー寄りに位置づけようとしています。すでにある例を挙げれば、Windows Phoneにおいては、まず、KDDI様と展開させていただいているのはご存じの通りです。
その次の段階として、Windows PCを中心にマーケティングを展開していくときに、どこの事業者と協業するかということになれば、やはり、UQコミュニケーションズさんであろうということで、アプローチしました。
戦略的にコンシューマーを取り込むというのは、真のモバイルPCを普及させることにあります。私たちの強みは、PCメーカーや量販店との強い結びつきがあることです。そこでさらに通信事業者とタッグを組み、きっちり戦略を展開していくことで、基盤を強化していきます。
― 具体的にはどのような施策を展開されていくのでしょう。
勝俣来春からは、UQコミュニケーションズさんがアピールしている「すぐネットPC(WiMAX内蔵PC)」を打ち出していきます。そこを互いに共同でマーケティングし、プロモーションしていく予定です。また、先日、ウィンドウズデジタルライフスタイルコンソーシアムの事務局長に就任したのですが、そちらでは、学生に対するアピールとして「Digital Youth」プロジェクトを展開していきます。その一環であるSUPER ROOKIESキャンペーンでは、モバイルPCで実践してもらいたいシナリオを提案していきます。
各PCメーカーの製品をプッシュしながら、共同訴求していくのですが、そこで各社に、いつでもどこでも快適ネットができるWiMAX搭載モバイルPCを少しでもたくさんラインアップしていただけるように要望していきます。
― コンシューマーにとって、インターネットにすぐにつながるPCはとても大事な要素です。
勝俣「すぐネットPC」、つまり、すぐネットにつながるPCというのは、メッセージとしてもわかりやすいんじゃないでしょうか。つながった世界に、Windows PCというメッセージがさらに浮かび上がるんです。Windowsのデスクトップが目の前に出てきた時点で、もうつながっているというイメージでしょうか。
そのために、今は、いろいろなキャンペーンの仕込みをしている真っ最中です。来春に向けて、量販店頭に若いユーザーに来ていただけるようにするための施策をいろいろと考えています。
そもそも、それはマイクロソフトのWindows戦略の大きなゴールでもあります。こうしたマーケティングによって、PCの個人所有率をあげたいと思っているんです。
たとえば、マイクロソフト内部では、アメリカやイギリスといった先進六カ国の各ブランチが比較されることが多いのですが、もちろん日本もそこに入っていて、各国と、いつも比べられています。
そこでわかったのは、日本が著しくPCの個人保有率が低いという事実です。世帯普及率はいくところまでいった感がありますが、個人が自分専用のPCを持つところまでいかないのです。このままではいけない。だから、PCの普及率をあげるために、モバイルパソコンに対して、日本のメーカー様といっしょに、各種の提案活動を以前からやっているのですが、今回は、その取り組みをもっと踏み込んでやろうというわけです。そして、個人でパソコンを保有する価値を提案していきます。
― やはりモバイルパソコン市場の拡大が今後のカギとなるのでしょうか?
まあ、そう考えていただいてかまわないですね。その中で、現状、そのモビリティによって、携帯電話だけですませてきたようなネットライト層を取り込んでいくために、Windowsの価値をアピールするにはどうすればいいのかということです。
マイクロソフトからのメッセージとしては「スマートフォンを持っているのは当たり前、それならPCは持っていますか」を問いかけていきます。そのときに、スマホありでPCレスのユーザー層があったとして、その層は、米アップル社を選ぶケースが増え始めているわけですよ。その層にむけて何をどう提案するかはとても重要です。そこに関して、UQコミュケーションズさんといっしょにやっていこうとしています。
― インターネットにいつでも、どこでも、しかも、すぐにつながるのはWindows PC(すぐネットPC)、ということですね。
勝俣そうです。それに、デザインや価格、入っているソフトなどの多様性もWindows PCならではです。今後はそうした付加価値の訴求もしていきます。また、マイクロソフトは先日、Skypeを買収完了しましたが、こちらもほぼ同時に打ち出していくつもりです。
いずれにしても、PCの付加価値をいかに高めるかを考え、WindowsとWiMAXがベストマッチングであり、互いがファーストプライオリティになることを強く打ち出していこうと思っています。マイクロソフトとUQコミュニケーションズ、WindowsとWiMAX、両者ともに、ベストパートナーだということです。
西山UQコミュニケーションズは、いろいろなデバイスを提供しています。なかでも、我々の強みであるWiMAX搭載モバイルPC、つまりWindows PCがもっともっと増えて、WiMAXを使って、いつでもどこでも快適インターネットされるようになれば、お客様の生活スタイル、そしてUQコミュニケーションズそのもののバリューも高まりますから、今回の協業は願ってもないことです。勝俣さんがおっしゃるとおりベストパートナーといえるでしょう。
勝俣日本ならではの付加価値が何であるかも考えていく必要があります。日本は、イノベーティブな製品を持っているPCメーカーが他国にくらべても非常に多く、エンドユーザーが見たときの商品選択肢がきわめて豊富なんです。製品バリエーションでは明らかに米アップル社以上ですし、米アップル社にない商品訴求ができているはずなんです。
そこで、きっちりと付加価値の高いPCを購入していただく提案が、量販店様とOEM様とマイクロソフトの中でできているわけです。この連携は他国にはないことです。他国では安価でベーシックなパソコンしか売ろうとしていませんからね。そういう意味では付加価値訴求はきちんとできているはずなんです。
さらには、ウィンドウズデジタルライフコンソーシアムのような組織もあります。PC業界が中心になって、家電や行政など、異業種との連携をしながら、デジタルライフの推進をやっているわけです。これも競合他社には真似できないところです。
― 実際のWiMAXの使い勝手などはいかがでしょうか。
勝俣使ってみて、WindowsにとってWiMAXは、欠かすことができない存在だと感じています。付加価値をさらに高める要素です。だから、いっしょにやっていきたいと考えています。WiMAXはサービス開始当初の変な先入観に阻まれている部分も一部あるようですから、その部分を払拭していきたいと思いますね。実際、使う前は自分自身でも半信半疑なところはあったのですが、一度体験したら、もうダメです。虜になってしまいました。もうWiMAXなしではやっていけませんね。
― ありがとうございました。
(Reported by 山田祥平)