UQコミュニケーションズがWiMAXの本サービスを開始したのは2009年7月1日。東京都市部におけるほぼ半年のモニターサービス期間を経てのサービスインだった。Windowsのネットワーク全般に多くの著書を持ち、また、INTERNET Watchをはじめとする媒体での製品レビューなどでお馴染みの清水理史氏は、サービス開始当初から公私の両面でユーザーとしてWiMAXを使い続けてきた。今回は、清水氏にWiMAXの魅力や最近の事情について聞いてみた。(インタビュアー:山田祥平)
― 最近のWiMAX、どういうイメージで見てますか。
使える場所が増えたという確実感が増してますね。なにしろ、自宅での転送速度が明らかに早くなってます。とにかく、新しい通信サービスが出てきたら、仕事上、評価に使ってみないわけにはいかないので、真っ先にユーザーになりました。サービスインと同時ですね。当時は、自宅で使うと最初は1Mbpsくらいしかでなかったし、こんなもんかと思っていたんですが、今は、10Mbpsくらいはラクに出ています。
以前は、屋内の奥まったところにいるとつながりにくい印象がありましたが、今はそうでもないです。私の仕事場は家のいちばん奥まったところにあるんですが、特に電波が弱くなることなく使えています。
PCを持ち出すのは、主に出先で原稿を書かなければならないときなんです。出先で缶詰になって原稿を書いているようなときに、急にあの画像が欲しいとか言われることがあるじゃないですか。そうすると、出先から自宅のPCの中をのぞいて、その画像を探してアップロードするなんてことをやるわけですね。
WiMAXを使うまでは3Gデータ通信を使っていました。悪くはなかったんですが、やはりスピードが遅かった。特に上りですね。何かファイルを送るときに、かなり待たされるんですよ。WiMAXでは、それが改善されたのが大きいかな。
― スピードは大事ですよね。モバイルに100Mbps超なんていらないって人もいますけど、スピードが上がることで、ひとつひとつのトランザクションが短時間で終わるので、ネットワークに余裕ができて、みんなが快適に使えます。
そう。スピードがWiMAXの最初のインパクトですね。これ以上のスピードは特に必要ないかもと思うことはあるんですが、それでも、現状30秒かかっている転送が10秒で終わるとなれば、やはりありがたいでしょうね。
― 家の固定回線としても実用的だと思いますか?
このパフォーマンスだと家での回線としても全然アリでしょうね。学生や独身サラリーマンならWiMAXだけですませるのもありだと思います。3Gデータ通信だと、あまり使いすぎると速度制限がかかったりしますけど、WiMAXはそれが無いのもイイですね。
― 普段のWiMAXをどのように利用しているのですか。
家でテスト用やバックアップ回線として使うことが多いです。こういう仕事をしていると、家にいながらLANと切り離された環境がほしいケースがかなり頻繁にあるんです。
仕事場は東京都下の私鉄沿線にある自宅を兼ねた一軒家で、1Fの奥まった部屋なんですが、窓から見えるマンションの上あたりに、たぶんWiMAXの基地局だな、というアンテナがあります。近くにヘビーユーザーがいないから、というのもあるかもしれませんが、安定して高速転送を享受できています。
自宅は、たまに光回線が落ちるんですよ。レンタルのルーターが暴走するとか、いろんなトラブルを経験しています。とにかくネットワークというのは、トラブルの発生時、デバイスが悪いのか、回線そのものが悪いのか、はたまた相手先サーバーが悪いのかの切り分けが難しいです。
もし、光回線がおかしいときには、WiMAXでプロバイダーのサイトを確認するという使い方もしています。自宅でも安定して使えるので、こういったトラブルのときにも重宝しています。
― WiMAXの今後について、どんなことを期待してますか。
やはり、屋内でもっと使えるようになってほしいということでしょうか。WiMAX2にも期待していますが、WiMAX1での屋内対策は重要なテーマだと思います。
― WiMAXは屋内対策にはかなり力を入れていますね。WiMAX Watchの記事にも書きましたが、カフェやイベント会場、駅、空港等のスポット対策を順次進めていますし、地下鉄トンネル内での対策に関しても、計画があるようです。
たしかに、基地局の増設や微調整などは頑張っている印象ですよね。このままエリアがどんどん広がっていけば、ますます便利になるかな。WiMAXは料金プランもわかりやすいし、月額3,880円になる1年契約プラン(UQ Flat 年間パスポート)も、縛りがゆるいのは良いですよね。なにしろ、仕事柄、いろんな回線を維持しているので、安くあがることは重要ですし、回線契約はある程度自由になっているとうれしいですから。
― ポートや転送容量の制限がないのも気がラクですね。
そう。テストに使う回線は、できる限り、トランスペアレントなものが望ましいですから。ぼくらのような用途は特殊かもしれませんが、普通の人が、何かをやろうとして、それができないという状態に陥ったときに、問題解決をするのは難しいじゃないですか。悩みに悩んで調べていったら、結局ポートが閉じられていたってオチは、ないにこしたことはないですよね。それに普通解決できないし…。VPNが使えない接続サービスが、少なくないので特にそう思います。ユーザーに、どんな回線を使ってつながっているのかというのを意識させるっていうのはまずいと思います。その点、WiMAXはポートの制限や転送容量の制限が無いので、自由に何かをしたいときに便利です。急にテストをしたいといったときにも、設定をいろいろといじる必要が無いのが気に入っています。
― 今、WiMAX機器についてはモバイルルータータイプが人気だそうですよ。
屋外でも使えるサービスですからね。持ち歩けるモバイルルーターが人気なのは納得です。それでも普通の人は持ち出すのを忘れたり、充電を忘れたりなどするかもしれません。モバイルルーターに抵抗がある人は、WiMAXを搭載したスマートフォンや、WiMAX搭載パソコンがいいと思いますよ。
でも、今よりもっとバッテリが保つようになれば、いろいろな用途が考えられますね。うちを出るときにルータの電源を入れて、そのままで10時間使えるなら、もっと楽しいことができそうです。たとえば、SDカードスロットがあって、そこにコピーしたファイルを参照できるNASのように使えたりね。
そして、常に通信できることを前提にすれば、使い方のモデルは大きく広がるはずですよ。今後は、アンドロイドタブレットなどにもWiMAXが内蔵されてくるはずですし、それをルーターにすれば、すべてのインターネット接続をワンストップですませることができるはずじゃないですか。そうなると世界も変わるかもしれませんね。
― WiMAXにあったらいいなと思うサービスは何でしょう。
固定IPサービスとか、IPv6とかはいいかもしれませんね。WiMAXは、回線にポート制限やらなにやらがかかっていない、古きよき時代のインターネットが残っている希有な接続サービスだと思うんですよ。ちゃんと使える回線という印象があります。だからこそ、新しいチャレンジをしてほしいです。
そのためにも、もっとたくさんの人にWiMAXの良さを知って欲しいです。やはり、知名度は重要です。今は、WiMAXをワイマックスと読める人も少ないんじゃないですか。ウィマックスと発音される現場も目撃したことがあります。
デバイス的には、PCに全搭載してほしいですね。理想的にはすべてのデバイスが内蔵するべきです。そして今の機器追加オプションに、ちょっと余分にお金を追加するだけで、マルチセッションができるとか。
やはり一般受けを狙うべきでしょう。これからは、タブレット時代になるとも言われています。10型タブレットが3万円とかになれば。普通の人は使ってみたいと思うかもしれません。ただ、家族みんなのタブレットってのはありえなくて、やっぱりパーソナルなデバイスとして一人一台持つべきです。だからこそ、WiMAXが同時通信を許してくれたらいいと思います。タブレットはPCの置き換えじゃなくてプラスです。タブレットだけじゃ、いろんなことができなくてきっと困るでしょうし。
まあ、リビングの家電、たとえばテレビに内蔵してしまうっていうのはありかもしれませんね。そのまま。ルータになるわけですよ。そうなれば、煩わしい配線もしなくていいし、引っ越しても何も考えなくてよく、そのままインターネットに接続できるじゃないですか。
そのためにも、さらにエリアを拡げてほしいですね。そして、契約のしばりや各種の制限がないことをもっと大きな声でアピールするべきです。エリアについては、ユーザーが数人いれば対策をしてくれるとかね。そのために一ヶ月10円のユニバーサル費くらいなら出しますよ。それを使って基地局をどんどん設置していってほしいです。
― 地球が丸ごとWiMAXに覆われて、エリアという概念すらなくなってしまうといいですよねえ。本日はありがとうございました。
(Reported by 山田祥平)