WiMAXが2年前に登場したとき、「モバイル」ブロードバンドの最先端として話題になった。料金、速度、利用制限がないといった数々の魅力は、それまでのモバイルブロードバンドとは一線を画するものだったからだ。
だが今や、WiMAXの利用シーンは多様化し、新たなモデルを生み出している。「モバイル」ではない、自宅での利用などもそのひとつだ。今回は、「ウチ」と「ソト」、その両側面からWiMAXの新たな使い方について考えてみることにしよう。
WiMAXで得られる帯域幅は下り方向の理論値で最大40Mbpsある。この値は、一般的なADSLにも匹敵するものだ。そして、再来年にはWiMAX2がサービスインすることで、まだまだスピードは向上し、光ファイバに匹敵する速度が得られるようになっていく。
となると、WiMAXの高速スピードと低遅延、そしてパケット量の利用制限無しという特徴を考えれば、モバイルに用途を限定せずとも、通信量が多くなる自宅、つまり「ウチ」におけるインターネット接続の代替手段として十分に機能させられる。今や、固定電話回線を持たず、携帯電話だけが連絡手段だというスタイルが、一定の層を構成しているそうだが、インターネット接続に関しても、同様のスタイルをかなえることができそうだ。
たとえば、独身ビジネスマンが単身で賃貸マンションの一室に居住しているとしよう。マンションの一室にブロードバンドを引き込むには、マンションタイプの光接続や、ケーブルテレビインターネットなど、いろいろな手段があるが、工事が必要だったり、毎月高額な接続料金を支払わなければならないなどの制約がある。
毎晩の帰宅は遅く、インターネットを楽しむにしても長くて1時間程度、朝は、とてもそんな余裕がない。しかも、土日祝祭日はでかけていることが多いとなると、インターネット接続手段に使う時間当たりの単価は、とても高額なものになってしまう。メールなんて、携帯電話メールアドレスがあるし、各社の無料メールアドレスを使えればそれで十分と考えるユーザーも増えてきている。
毎月の通信費に使える金額には限度があり、インターネット接続以外にも携帯電話の利用料金なども必須の費用となる。できる限り、最小限に抑えたいというのが本音ではないだろうか。だったら、外出時におけるモバイルブロードバンドと、自宅でのモバイルブロードバンドを兼ねさせるというのは実に賢い選択だ。
WiMAXは接続のためのデバイスは多くあるが、そのどれでも、「ウチ」回線の代替としては有力だ。
WiMAXパソコンなら、「ソト」と「ウチ」で同じパソコンを使っているだけで、特に意識せずとも外出中、そして自宅でも、同じようにネットにつながる。
WiMAX Speed Wi-Fi(モバイルルーター)を用いれば、モバイルPCはもちろん、スマートフォン、ポータブルゲーム機といった複数デバイスのインターネット接続をすべて、WiMAXに一本化することで、高額な接続料金を最小限に抑えることができるようになる。「ソト」で使うケータイやスマートフォンでのデータ通信もこちらでまかなうことで、その料金も節約できてしまうのだから、一石三鳥といえる。もちろん「ウチ」では固定のルーターの代わりとしておおいに活躍できるだろう。
では、共働きの夫婦など、複数人でひとつのWiMAX回線を使用する場合はどうだろう。片方がWiMAXデバイスを持ち出すことになると、もう一方がインターネットを利用できないというのでは不便を感じる。そこでうまく活用したいのが、UQ WiMAXのオプションとして用意されている、「機器追加オプション」だ。
このオプションでは、ひとつの契約に対して、2台までの機器を1台あたり200円/月で追加することができる。夫婦がそれぞれモバイルルーターを持つ場合、1台分、すなわち200円の追加だけで、ふたりともWiMAXを利用できる。UQ Flat年間パスポートの月額利用料3,880円に追加しても、わずか4,080円でインターネットを使い放題だ。
ただし、同時に使用できるのは1台のみなので、たまたま偶然、別行動している昼間の同時刻に、二人が同時に接続しようとしたときは、早い者勝ちになる。つまり、回線の取り合いになってしまうわけだが、機器追加オプションでは、各機器に接続優先度設定機能があるので、自宅の機器が接続中であっても、あとで割り込んだ夫の接続を優先させる設定もできる。また、専業主婦と子どもが自宅にいて、夫が会社勤務といったパターンの家族の場合も同様だ。自宅にルーターを置き、夫は別のルーター、あるいはWiMAXパソコンを持ち出せばいい。優先度を設定しておけば、切断されては困る機器を常に接続しておくことができる。
この接続優先度設定機能では、デフォルトはすべての機器が同等(標準)の優先度になっている。その場合、先につながっている機器があっても、別の機器が接続しようとすると、前の接続が切断されて、新たな接続が確立する。また、離れた場所にある接続中の機器の切断操作をすることもできる。使用状況に応じて優先度を設定すれば、家族での共用も問題無いだろう。
上で解説したように、WiMAXで回線を一本化すれば、もちろん費用が安くなる。ほかにも、ウチとソトでデバイスの接続先アクセスポイントを切り替える必要がなくなる、というメリットもある。
WiMAXパソコンなら当然ずっとつなぎっぱなし。WiMAX Speed Wi-Fiにも、ずっとつなぎっぱなし。この「つなぎっぱなし」の快適さが、WiMAXの魅力といえるかもしれない。
(Reported by 山田祥平)