情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●「森降ろし政局」の帰趨が見えてきた?
政治家よりもブリーファー(背景説明者)の方が向いている、と皮肉られ続けてきた加藤紘一氏が森喜朗首相に降板を求めて1週間余。自民党内の支持は広がらず、苦しい戦いを強いられているが、それでも何となく流れが見えてきたようだ。
<首相交代論強まる、後継、加藤氏以外から、自民主流派>
<主流派にも首相退陣論、橋本派幹部「支持」明言せず>
この問題を1面トップで取り上げた4紙(朝日・読売・毎日・東京)は、森首相の早期退陣を強く示唆する見出しと記事を掲げている。「後継は加藤氏」と報じている新聞はなく、「森降ろし政局」は「森首相辞任、後継は“第3の候補”から」という流が固まりつつある印象を受ける。
「森降ろし」に積極的に与する読売は、題字の真下に<帰って来たら席ないかも…>の見出し。ダメを押すかのように気弱な表情でAPECに旅立つ首相の写真を掲載している。
さらに政治面には<毎夜の会合減らします、首相、週に1回に自粛>の記事。40度近い高熱を出した時も欠かさなかった夜の宴会を、ようやく自粛する気になったというのだが、首相自身は記者団に対し「私はマイペース」と「自ら回数を減らす考えがないことを明らかにした」(東京)。彼の宴会好きは食欲や性欲と一緒、本能のようだ。
親が親なら子も子か。首相がAPEC首脳会議に旅立った直後、森派の幹部たちが都内の小料理屋で「頑張っている森がいる~」とカラオケに興じた(日経)そうだが、その輪に小泉純一郎が加わっていたとなると話は違ってくる。一言で表現するなら、「脳天気」でも「虚勢」でもなく、「諦観」といったところか。
◇市場も家庭も、居酒屋でも話題は「森降ろし」。しかし、そんな中でも経済紙は我が道を行く、である。日本経済新聞は<独アリアンツ、日本で信用取引保険、丸紅と年内に合弁>、産業経済(産経)新聞は<ドコモ4兆円企業へ、iモード効果、空前の好業績>を1面トップに持ってきた。
日経はともかく、産経までもが・・・。いくらNTTドコモ(9437)が空前の好業績をあげたからとはいえ、政治大好きの産経が、政局報道をわざわざ押しのけてまで1面トップで報じる内容か。
【IT】
●えっ、たった256キロビットなの?
政府がIT戦略の一環として進めている「電子政府」構想の裏側はお寒い限り。毎日新聞が各省庁のインターネット回線容量を調べたところ、金融庁、自治省、法務省の3省庁の容量がメガビットにも満たないことが明らかになった。
最小の金融庁(256キロビット)は、最大の科学技術庁(70メガビット)のわずか270分の1。「回線容量の確保は、2003年度までに申請・届け出といった行政手続きをオンライン化するなどの電子政府実現に不可欠」(毎日)なだけに、早急な対応を迫られそうだ。
◇日本語ドメインを巡る混乱が続いている(読売)が、東京によると、有名企業のドメイン名が勝手に第三者に登録され、ネット上で競売にかけられていることが明らかになった。
一儲けを企む連中がきっと出てくるとは思ってたが、証券準大手の国際証券(8615)と丸三証券(8613)の売値は1億円。地方銀行クラスでも関東銀行(8338)が7,000万円、七十七銀行(8341)が5,000万円と、どう考えても法外、高過ぎるよ!
【トピック】
●「森降ろし政局」の余波
「経済政策はいい線行っている。田中康夫さん(長野県知事)みたいな部分、ムード的な問題が多い」
堺屋太一経企庁長官が14日の会見で、財政悪化を伴う政府の景気刺激策が昨今の不支持率上昇の原因だとする加藤氏の批判にこう反論した(読売)。マクロ政策はオレが仕切っていると自負する堺屋氏。加藤氏の批判によほど腹が立ったのだろう。
不支持率上昇の背景には、確かに堺屋氏が指摘しているように「ムード的な問題」がある。が、「私たちの早手回しが間違っていなかったことが、かなり理解されきてた」と言えるだろうか。
堺屋氏の経済政策に対する評価は、同氏が辞任した後にハッキリする。出版する本が瞬く間にベストセラーになり、方々から講演会やテレビ出演のお呼びがかかるかどうかによって、である。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/11/15
20:32
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