【今後の政局見通し】
●後継は河野外相を軸に
政局は、主流派の自民党橋本派などから森喜朗首相の退陣を求める声が上がり始めたことから、事態が急変してきた。総裁選の来春前倒しで妥協する可能性もあるが、これでは事実上政権が死に体になることから、森首相が政権継続を断念、早ければ28日とみられる内閣不信任決議案否決後に退陣を表明する可能性がある。後継には、加藤紘一元幹事長ではなく、主流派の河野洋平外相を軸に検討されることになろう。
●衆院解散・総選挙を回避
橋本派から首相退陣論が出てきた背景には、このまま内閣不信任案採決に突入した場合、同案可決ー衆院解散・総選挙という不測の事態に陥ることを恐れたことが最も大きい。仮にこの時点で衆院選となれば「首都圏では1議席も取れない自民党大敗」となる可能性が非常に高く、何としてもこれだけは避けたいとの意識が強く働いたもとみられる。
また、森首相では「来夏の参院選も戦えない」とする意見が依然根強いことも作用した。
●総裁選の4月前倒し案も
橋本派や江藤・亀井派などの若手の間には、来年9月の総裁選を2001年度予算成立後の4月に前倒しする案も浮上している。しかし、それまでの間、森政権が続いても期限が切られた事実上の「死に体政権」となるため、年内にいったん「選挙管理内閣」を作り、その政権で参院選に臨んだうえで、その後改めて総裁を選び直すなどのシナリオも検討されている。
●公明も首相退陣容認
また、橋本派と並び政局のカギを握る公明党にも森首相退陣を容認する声が出始めている。この背景には、同党の支持母体の創価学会が(1)衆院解散を何としても回避してほしい(2)森首相で参院選に臨みたくない(3)加藤氏の芽を潰さないで欲しい――などと要望してきているためで、こうした考えは既に野中広務幹事長にも伝えられているという。
●首相は強気と弱気が交錯
では、森首相が早期退陣論をすんなり受け入れるのかといえば、その判断は難しいところだ。首相は14日深夜、ブルネイに向かう政府専用機内で記者団に対し、「政治に空白は許されない」と、政権維持の考えを改めて強調した。しかし、これより先、官邸では思わず「(クリスマスイブには首相の椅子に)座っていられないかも知れない」と述べるなど、強気と弱気が交錯しているようだ。
また、亀井静香政調会長をはじめ、これまで加藤氏と対峙してきた主流派幹部は、自らの地位をも揺るがしかねない森首相退陣をそう簡単に容認するわけにはいかず、今後、猛烈な巻き返しも予想される。
●加藤氏には一応「勝利」
一方、今回の政局の火付け役となった肝心の加藤氏にとっては、直ちに自分が首相になれなくても、森首相を退陣に追い込めれば、一応の「勝利」と言える。内閣不信任案採決に突入し、自民党離党に追い込まれた場合、加藤派から何人ついてくるか定かでなく、最悪のケースでは政治生命を断たれる可能性もある。来春もしくは参院選後の総裁選でもう一度勝負できるとなれば、加藤氏の目的は半ば達成されたことになる。
[政治アナリスト 北 光一]
2000/11/15
12:07
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