LaVieやVALUESTARには、オフィススウィートの最新版、Microsoft Office Home and Business 2013やMicrosoft Office Personal 2013がプリインストールされている。この新しいOfficeは、Windows 8に完全対応し、MicrosoftのクラウドストレージサービスであるSkyDriveと統合されている。前回は、NECパーソナルコンピュータのコンテンツナビとSkyDriveを使ったデータ連携を紹介したが、今回は、新しいOfficeとSkyDriveの連携について見ていくことにしよう。
LaVie ZやLaVie Xのような軽くて薄いパソコンが登場したことによって、パソコンを外に持ち出すという行為の敷居が一気に低くなった。何しろ、ちょっとした書類の束を持ち歩くより軽いのだ。しかも、バッテリーだって長持ちで、一般的な使い方なら出先で特に電源コンセントを探す必要もないくらいだ。
パソコンは情報を生産するための道具として、今、トレンディなタブレットなどのデバイスとは、その性格を異にする。いつでもどこでも情報を生産したいのなら、これからもパソコンは欠かせない存在として君臨するはずだ。そして、LaVie ZやLaVie Xといった最新鋭のモバイルノートパソコンは、そのための環境を強力にサポートする存在だ。
かつては、1台のパソコンにすべての情報を集約し、それを唯一無二の存在として片時も手放さず、自分の分身のように使いこなすのが、いわゆるモバイラーのスタイルだった。でも、今はちょっと違う。クラウドを利用することで、データの分散を回避できるようになってきたため、複数の機器を併用する方が便宜を得やすいようになってきているからだ。競合から共存へ時代は推移し、そして今、協調の時代に入っているということだ。
たとえば、新しいOfficeでは、通常通りに文書を作成し、それを保存しようとすると、Windows 8にログオンするときに使っているMicrosoftアカウントに紐付いたSkyDriveが既定の保存先になる。これまでなら、手元のパソコンのドキュメントフォルダを保存先にしていたはずだが、これからは、SkyDriveに保存するというわけだ。
SkyDriveはインターネット経由で使える仮想的なハードディスクのようなもので、7GBまでの容量が無料で提供される。一般的な文書の保存には必要十分な容量だといえる。さらに、どうしても必要なら、追加の料金を支払うことで、20GB、50GB、100GBを1年単位で購読を申し込んで利用することができる。なにせ、電源が入りっぱなしでいつでもどこでも参照できるハードディスクなのだ。バックアップ体制も万全で、クラッシュして大事なデータがすべて失われるといった可能性はまずない。自分で入念なバックアップをとっているつもりになっているよりもずっと安全だ。
また、いままでは、クラウドにアクセスするためにはURLを打ち込んで接続後に利用していたが、仮想的なハードディスクのような感覚で使えるということは、パソコンのファイルを開いたり保存したりする感覚でクラウドを使えるということだ。
クラウドにデータを保存することで、まず心配してしまうのは、サイズが大きなファイルを編集して、それを保存するたびに、ファイルを丸ごとやりとりしなければならないんじゃないかということだ。ファイルサイズが1MBあったとして、1文字修正しても、ファイルを丸ごとやりとりしなければならないとしたらたいへんだ。また、出先で作業の続きをしようとしていたのに、行ってみたら、そこではインターネットが使えなかったということもあるかしれない。
新しいOfficeのSkyDrive統合は、これらの問題をうまく解決している。ファイルの変更については変更部分だけをやりとりするために、転送もきわめて高速だ。また、直近に参照したデータはローカルストレージにキャッシュされているので、ネットワークが使えなかったとしても参照できる。万が一のために、出先で使うパソコンで、一度は読み込んでおくと安心だ。
さらに、SkyDriveには、デスクトップアプリが提供されている。この無償アプリを各パソコンにインストールしておけば、ローカルのハードディスク内にある特定のフォルダとSkyDriveの内容を同期することができる。ハードディスクの容量によってはすべてを同期するのが難しいこともあるかもしれないが、その場合は、同期するフォルダを絞り込むこともできる。
これによって、Officeドキュメントのみならず、他の種類のファイルにおいても、常に、いつでもどこでも参照できるような環境を作っておける。だから、満員電車の中ではスマートフォンで文書を参照し、気になるところがあれば、電車を降りてから、カバンの中からパソコンを取り出して修正を加えるといったことができる。
もちろん、でかけるギリギリまでデスクトップパソコンで作業をしていて、でかける時間になったら、そのまま外出し、続きをノートパソコンで仕上げるといった使い方もありだ。でかけるからといって、編集中のデータを、パソコンからパソコンにコピーしてといった作業はいっさい必要ない。なにせ、オリジナルのファイルの実体はクラウドにおかれていて、必要なときに必要な機器でいつでもどこでも参照できるのだ。
また、SkyDriveは、Windows 8の新しいUI用のアプリ、ブラウザを使ったウェブアプリ、AndroidやiOSのスマートデバイスなどを使っても参照できる。まさに、いつでもどこでも使えるストレージだ。ノートパソコンのストレージがHDDからSSDになって、容量が少なくなったことを嘆くモバイラーもいるのだが、こうしたクラウドストレージサービスをうまく使えば、SSDの高速性、そして、耐衝撃性の方が重要な要素なのだということが実感できるだろう。
さらに、SkyDriveに置いたファイルやフォルダは、他のユーザーとの共有も可能だ。誰に公開するかを設定しておくことができ、表示のみ、表示と編集、検索エンジンに公開など、用途に応じて使い分けることができる。たとえば、いっしょに旅行に行くことになった仲間と、ひとつの文書を共有し、それぞれが情報を持ち寄って、単一の文書に書き込み、最終的な日程表を作り上げるといったことが簡単にできるのだ。
こうした環境が整ってきたことで、モバイルノートパソコンに求められる要素にも変化が現れてきた。かつてのノートパソコンは、パワフルなデスクトップパソコンを、いかにコンパクトなオールインワンボディに凝縮するかが求められてきたように思う。なにしろ、それ一台で完結するオールインワンでなければ使いにくかったからだ。
だが、LaVie ZやLaVie Xのような先進的な製品を見ればわかるように、クラウド時代になれば、ハードディスクからSSDへシフトすることで、軽さや薄さを実現できるようになった。これからの時代のノートパソコンには、ちょっとした変革が訪れようとしている。一台のノートパソコンにすべてを求める時代は遠ざかろうとしているのだ。毎日の持ち歩きにはLaVie Z、数泊の旅行にはLaVie X、リビングで使うにはVALUESTAR N、寝室にはLaVie Lといった使い方もありだ。これら複数のパソコン、そして、あまたのスマートフォンやタブレットを協調させ、適材適所で使い分けていくというのがこれからの賢いパソコン利用法であり、そのためにNECパーソナルコンピュータは、さまざまなフォームファクタのパソコンを提供してくれるというわけだ。
■関連情報
図解でわかる!ホームネットワークの仕組み
(山田 祥平)