LaVie Zは、NECパーソナルコンピュータが世に問う究極のUltrabookだ。13型ノートPCとして、その軽さ、実に約875gという前人未踏の領域に達し、第1世代のUltrabookはもとより、最新の第2世代プラットフォームを見ても他の追随を許さない完成度だ。今回は、このイノベーションの陣頭指揮をとった同社執行役員小野寺忠司氏に、その概要をきいてみる。
小野寺 やるからには世界ナンバーワンの勲章を取りにいこうと考えていました。軽さ、薄さはNECがやるとトップクラスになるんだということを証明したかったのです。普通のUltrabookを出してもつまらないじゃないですか。今、Ultrabookというプラットフォームが一気にメジャー化する中で、こうしたチャンスがあればNECの技術力の素晴らしさを出せるんだということが証明できたと思っています。
小野寺 普通の最軽量ではなく、一つの壁を乗り越えることができたと思っています。重量というのはとても難しいんですよ。軽くすることができてもバッテリが保たなければ意味がありませんし、小さすぎる筐体も実用性で劣ります。本体が熱くて不愉快になるようでも困りますからね。
これまで、いろんな商品を開発してきましたが、12インチで1kgの壁をきるのがやっとでした。13インチでは不可能に近いと考えていたのですが、今回、13インチで900gを切る875gを実現することができました。われわれの調査でも、モビリティでもっとも重視する項目として、その軽さがダントツに重視されていますから、まさにモバイラーが求める製品が完成したことになります。
小野寺 今、LCDのトレンドは13インチです。LaVie Zは、13インチ液晶を使いながら12インチクラスのフットプリントしかありません。ちょうどA4クリアファイルの大きさだと考えてください。ここだけの話ですが、13インチあるのに、代表的な11インチモデルとサイズ感はあまり変わりません。横幅313ミリ×奥行き209ミリなんですが、ここまで小さくできたのは、ごらんになってわかるように、極端に液晶の額縁が狭いからなんです。
フットプリントを大きくすれば重くなるのは当たり前です。でも、画面サイズは大きい方がいいし、少しでも軽い方がうれしいはずです。相反する条件です。持ち歩いて使うモバイルの限界を考えたときに、13インチがもっとも適切なんじゃないでしょうか。解像度も1600×900を確保しましたから、モバイルだからといって、何かをガマンすることなく、快適に使えるはずです。
小野寺 今回は、マグネシウムリチウム合金という新規開発の合金を筐体に使うことができました。これは、弊社が独自に開発を行った超軽量の合金で、それを底面に採用することで、この軽さが実現できました。一般的なPCに使われているマグネシウム合金に比べて比重は75%しかありません。アルミニウム合金と比べれば半分の重さです。
さらに、液晶は、筐体と一体型で設計した結果、金属フレームを使わないですみ、軽量化に貢献しています。基板も0.8ミリの8層基板を使っています。通常は基板の面積を小さくして層数をあげることでコンパクト化するのが一般的な手法なのですが、あまり層数をあげすぎると、銅箔をたくさん使うことになって、重くなってしまうんです。
小野寺
マグネシウムリチウム合金は、パートナー企業と3年かけて共同開発しました。素性としてはけっこう古く、60年代にNASAが最軽量の金属として紹介したものなのですが、実用化に相当の時間がかかったことになります。
他社が開発するとしても、それ相応の時間がかかるのでしょうか。また、マグネシウムリチウムは加工が難しく、当面、優位が保てると思います。
小野寺 ずっとモバイルの市場をにらんできましたが、だから今なのかなとも思っています。Ultrabookのカテゴリは、今がもっともホットですし、後発でもしっかりといい商品に仕上がっていれば受け入れてもらえるはずです。部品メーカーからパーツを仕入れてきて、単純にパズルのように組み合わせて製品にするわけではありません。いいかげんなものは出さないという自負もありますし。
小野寺 そうですね。たとえば、代表的な「タブレット」は、約600g~約650gじゃないですか。それを使って、モバイルPCと同じような環境でバリバリ仕事をしようと思うと、どうしてもキーボードが必要になって、外付けのものを持ち歩くことになるわけですが、そうすると、今回のLaVie Zとだいたい重さが同じになってしまいます。だったら、PCの方がずっといいじゃないですか。
あるいは、PCに加えてタブレットを併せて持ち歩くとどうなるかを考えてください。これまでは1台のPCを持つだけでも、けっこうな重量でした。
情報を消費するのがタブレット、生産するのがPCだというのは、よくいわれることなんですが、タブレットを2台目のディスプレイとして持ち歩くという考えも現実的なものになってきます。つまり、デバイスが軽くなるといろんなスタイルが変わってくるんです。
たぶん、今までPCを持ち歩くことがなかった人が持ち歩くようになるでしょう。これだけインフラが発達すると、当然、どこでもPCを使いたいと思うようになります。そのときに、いちばんのネックになるのは、バッテリ駆動時間よりも、やはり重量なんです。もうバッテリは十分過ぎるくらいにもつようになったようにも感じています。だからこそ、カバンに入れたときにPCが入っているかどうかわからないような感覚が欲しかったといえます。実際、カバンに入れて持ち上げてみても、中にPCが入っているかどうかよくわかりません(笑)。
小野寺 コンシューマーとコマーシャルの両方に受け入れられると考えています。多少はリテラシー的に高いところを狙っているかもしれませんね。そこがこの製品のコアユーザーだと感じています。
ノートPCといえば、LaVie Lのような15インチのスタンダードノートPCが日本では圧倒的なシェアで受け入れられていますが、あれはご自宅で使っていただいて、外出用にはもう一台買ってもらえばいいと考えています。やはり、個人が外で使うパソコンと、部屋で使うパソコンは違うんじゃないですか。Network Duetや、クラウドがあれば、複数のPCを持っても不便を感じることはなくなっていますしね。
Ultrabookについては、新しいものを生み出せるタイミングを作ってくれたインテルに感謝したいですね。このトレンドには、当然のるしかないという考えです。でも、彼らのいうスペックをそのままやってもおもしろくありません。やるからには、世界に認められるようなものを作りたいと考えました。
マグネシウムリチウム合金は、ちょうどいいタイミングで実用化できました。それがUltrabookに合致したということです。この軽さを自分のものにして、新しい世界を体験していただきたいですね。いずれにしても、現在のUltrabookのカテゴリではダントツのポジションで勝てると考えています。ぜひ、よろしくお願いします。
次回以降は、このLaVie Zの開発に関わった技術者に話をきき、軽くて華奢な画期的なUltrabookの開発舞台裏で展開された、さまざまなエピソードを探っていきたい。NECパーソナルコンピュータが持つ技術的な優位性を、惜しみなく注ぎ込んだ、この製品の秘密に迫ってみることにしよう。
(山田 祥平)