国内地デジチューナー付きパソコンのシェアナンバーワン(2011年1月~12月GFKジャパン調べ)、そして各社テレビソフトの満足度調査でもナンバーワン(2011年9月NEC調べ)を誇るNECのテレビパソコン。それをソフトウェアとハードウェアの両面から支える基幹技術がSmartVisionだ。大久保めぐみ氏(商品企画担当/コンシューマーPC商品企画本部、コンシューマー商品企画部)と、澤田英樹氏(開発担当/商品開発本部メディアプラットフォーム開発部)にその先進性と使い勝手の秘密を聞いてきた。
澤田 その98MULTiCanBeが元祖とすると、その5年後の2000年に、ソフトウェアMPEG2エンコード/デコードによる低価格テレビパソコンを出しています。これで低価格パソコンでも機能搭載の道が拓けました。このとき、タイムシフト再生をできるようにしたのですが、それがMPEG2準拠では業界初ということで話題を呼びました。同年にはTV機能内蔵ノートPCもリリースしています。
私自身としては、SmartVisionの立ち上げから関わっているのですが、パソコンテレビとしてさかのぼると、Windows 95 のときに始まった当初から、2000年の時点で録画の仕組みが大きく変わっているんです。MPEGの仕組みが一般的になって、2000年にMPEG2で録画ができるようになりました。同じようなタイミングで、他社製品でも出てきてはいますが、ソフトウェアによるMPEG2準拠の処理を最初にやったのはNECです。
澤田 タイムシフトは、特許化もいろいろトライしたんですが、オリジナルにするのは断念しています。今では当たり前の機能になっていますよね。受信したデータを書きながら読むという処理をさせなければならないので、いろいろ苦労したのを覚えています。アッと思ったときに止めたいじゃないですか。そのタイミングが難しくてたいへんでした。
2002年にはAX10というレコーダー専用機も出しました。NECといえばパソコンですが、当時はまだ、HDDレコーダーとしてもやっていこうとしていたんですね。
澤田 日本はテープ文化のある国で、テレビ録画へのこだわりという点では相当レベルが高いと感じています。業界初の技術についてはチャートをご覧いただくとして、主だったところでは、ハイビジョン長時間録画(2008年)や、電源を入れてすぐにテレビが視聴できる「初代パッと観」(2006年)。「ワイヤレスTVデジタル」(2009年)といったところでしょうか。2004年に地デジ対応したのもSmartVisionが業界初です。
澤田 なにしろ歴史として12年ですからね。規模としては相当大きくなっているのですがソフトウェアのベースとしては生きたままのところも残っているんです。たとえば、アナログ地上波の停波に伴い、今はアナログ対応をやめてしまっていますが、かつて、SmartVision搭載機を購入したユーザーはたくさんいるわけです。当然、録りためたコンテンツがたくさんあるはずです。それをパソコンを買い換えたときにも、資産として読めるようにしたいという想いがありました。だから、今も、ディスクを接続すれば、そのまま再生できるんです。受信機能はもうありませんが、再生する部分のコードは以前のまま、そっくりそのまま入ってるんです。
実は、そのアナログ録画済み番組の再生機能を残すか残さないかを決めるときに、大久保から、絶対残してくれといわれました。
大久保 あのときは、過去のユーザーを大事にするべきだと主張したのですが、実はそれは自分だったんですね(笑)。うちには、そのころ、男の子と女の子がいて、日曜日の戦隊シリーズやアニメ、自分が好きなドラマとかが大量にハードディスクに残っていました。DVDにダビングしようとはとても思えない分量です。外付けのハードディスクにたっぷりと録画していましたから。
澤田 パソコンですからね、外付けのハードディスクが使えるのは当たり前でしょう。でも、それをやったのはNECが初めてなんです。
パソコンを家族で使うことを重視していた時期で、いろいろなスタイルが想定されました。たとえば、予約を入れるときに、自分専用の領域がほしいと思うんじゃないかとか。そこで、単純に自分の番組は自分専用のハードディスクに録画できるようなことができるようにしました。接続できるハードディスクの台数に制限はありません。物理的にはドライブレター分はつながるはずですよ。
澤田 あまり、物理的なウィンドウズのファイル名を意識させたくないということから、そうしています。編集するときなどに煩わしさを感じられるかもしれませんが、それは編集ソフトウェアを別途調達しての場合で、SmartVisionでも編集ができるようにしたことや、連携をして、バンドルしているアプリを呼び出せるようにして、内部的にはファイル名をわたすのですが、ユーザーから見れば、番組そのものをわたす導線を用意しています。
大久保 家電、テレビ、レコーダーなど、いろいろ見ることは見ますね。家電製品とは単機種あたりの売れる台数が比較にならないので、なかなか真っ向からの勝負はできません。だから、企画書を書くときには、競合他社のパソコンも比べてみます。その上で、家電にはできないことはなにかを考えます。
ここ最近は、ネットサービスとの連携ですね。つまり、クラウド連携として、つぶやきプラスなどのアイディアが出てきています。今後は、Facebookなどとの連携も考えていく必要がありそうです。
澤田 つぶやきプラスは、技術の若い人間がもってきた企画なんです。若者はそういうところに柔軟で機動力があります。わりと最近の企画で、この2月に提供を開始したばかりなのですが、開発が動き出してから1年もたっていません。かなりスピーディに完成した企画です。
サッカーの試合を見ているときに、スマートフォンで、友人がつぶやいているのを見て、ものすごく楽しかったことで、それを活かしたいと思ったんだそうです。
はっきりいって、我々の年代だと、そのアイディアを初めて聞いたときは、テレビを見ながらそんなことやって何が楽しいのかと思いましたね。
だから、最初は実況くらいじゃだめだ、もっと考えてみろと企画を却下したんです。そうしたら、単純につぶやくだけではなく、録画機能と連携させ、つぶやきをタグにすることで、過去の録画番組と過去のつぶやきを関連づけ、あたかもリアルタイムであるかのようにタイムラインが流れ、あるつぶやきをクリックすれば、その30秒前の再生に飛ぶような機能を考えてきました。きわめつきは、自分のつぶやきをトリガーにして、自動的に録画予約するという機能でしょうか。
本当は、この夏モデルにのせるつもりだったのですが、社内でもウケがよかったため、すぐに出せということで、ウェブでの公開となりました。
大久保 スマートアップデートの仕組みがありますから、自分で入手しなくても、知らずに入っているはずなんですが、いろいろと露出は工夫しています。
(つづく)
(山田 祥平)