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2024年10月28日   [各種サービス、インタビューなど

サードウェーブ設立40周年!“ドスパラ”の歴史と振り返る自作PC/PCパーツの歩み(2011~2024年)

 「ドスパラ」を運営する株式会社サードウェーブ。同社はこの2024年に設立40周年を迎えた。この40年の歩みは、日本国内の“自作PCの歴史”そのものとも言える。そこで本稿では、サードウェーブそしてドスパラの40年を、自作PCの歴史を中心に振り返っていく。後半戦となる今回は2011年から2024年までの動きを追う。


CPU、GPUの着実な進化で自作PC市場が成熟 2011~2017年

 2011年は、日本で暮らす多くの人にとって強く記憶に刻まれる出来事が起きた年だが、自作PC市場でも一つの大きなターニングポイントとなる年でもあった。Intelから、現在のCoreシリーズにつながる、コードネーム「Sandy Bridge」こと「第2世代Core」が登場した。評価は非常に高く、Intelは数世代にわたって自作PC市場のCPUにおける“覇権”を握る。

  • 2011年発売、Intel「Core i7-2600K」
  • 2015年発売、Intel「Core i7-6700K」
  • CPUの世代が進むに従ってマザーボードも進化していく。写真は2013年に登場したASRock「Z87 OC Formula」。最新マザーに通じる“片鱗”はこの頃にはすでに見られる
  • こちらは2017年発売のASUS「ROG STRIX Z270F GAMING」。最新世代のマザーボードに近い構成になってきているが、PCI-Eスロットの本数がだいぶ多い

 また、秋葉原のドスパラにもこの年動きが。「PCに関する相談ならなんでも受けられる体制に」という⽬標のもと、アドバイス専任スタッフ「PCコンシェルジェ」が当時あった店舗に登場。この姿勢は、現在の「ゲームアドバイザー」に引き継がれている。

 一方、自作PCの花形パーツのひとつであるビデオカード/GPUは、NVIDIAから2012年に「GeForce GTX 600シリーズ」、翌2013年に「GeForce GTX 700シリーズ」が登場。パフォーマンスだけでなく電力効率の向上が進展。さらに2014年登場の“Maxwell”こと「GeForce GTX 900シリーズ」および「GeForce GTX 750シリーズ」、2016年登場の“Pascal”こと「GeForce GTX 10シリーズ」で一つのピークに到達する。Maxwell~Pascal世代のGeForceは性能と電力効率のバランスがよく、ラインナップと価格構成にも隙がなかった。

  • 2014年、NVIDIA「GeForce GTX 970」搭載カード。基本構造は最新世代とほぼ同様に
  • 2016年、NVIDIA「GeForce GTX 1080」リファレンスカード
  • ビデオカード発売初日の深夜販売も実施されるようになり、その後すっかり定番化
  • CPUと並ぶ注目パーツということもあり、発売初日にイベントが併催されることも

  CPU/GPUが順調に進化するのと同時に、現在でもその名前を聞くPCゲームがこの時期に多数登場。現在もサービス中のMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」、オープンワールドRPGの大傑作「The Elder Scrolls: Skyrim」や「ウィッチャー3 ワイルドハント」、「グランド・セフト・オートV」、人気シリーズの「ファークライ3」や「Fallout 4」、「ウォッチドッグス」の1作目などがリリースされている。“ゲーミングPC”というジャンルもすっかり定着した。

 そんなPCゲームの隆盛に合わせ、2015年には秋葉原にゲーミングPCやデバイスの体験型ショップ「GALLERIA Lounge」がオープン。気になるキーボードやマウス、ヘッドセットなどの使い心地が実際に試せるショップとして好評を博した。このスタイルは体験型ショップと呼ばれる全国のドスパラに現在も継承され、口コミだけで買うというドキドキショッピングからの解放は、多くのお客様に喜ばれている。

 なお、同店はその後「GALLERIA esports Lounge」となり、PCとゲームの最新トレンドを取り込んで進化を続けている。地下にあるゲーミングPC「GALLERIA」が並ぶコーナーでは、店内にあるデバイスを実際に使いながら、時間貸しで好きなタイトルをプレイできるのだ。さらに2023年には、ゲーミングデバイスのフィッティングという無料サービスを開始。これは手の大きさやプレイスタイルに応じて、適切なデバイスを選択できるというものだ。このように、esports Loungeという名に恥じない進化はこれからも続く。

 2016年ごろには「VR」がキーワードに。高性能VRデバイスが登場し、高性能PCとの組み合わせによる新しい体験が話題になった。VRは「体験するとそのすごさが分かる」ものだったこともあり、普及に向けたさまざまな取り組みが行われたが、ドスパラは、VRを体験できるスペース「ドスパラ VRパラダイス」をオープンしている(秋葉原本店および札幌店)。本スペースは、自分の体験したいコンテンツを選び、予約時間いっぱい遊べるという無料とは思えない素晴らしいサービスであった。中でもゾンビとの戦いやジェットコースターなどは、あまりの恐怖に悲鳴が響き渡ったものだ。現在は役目を終え終了しているが、当時は取材が大挙して押し寄せた。

  • 2015年に「GALLERIA Lounge」としてオープンした「GALLERIA esports Lounge」(サードウェーブ提供)
  • ドスパラ秋葉原本店の5階に作られた「VRパラダイス」。VRの体験コーナーとしてテレビを始め取材が殺到した

2017年の「Ryzen」登場で輝きを取り戻したAMD

 さて、自作PCにさまざまな動きが起きたこの時期だが、ビッグネームのひとつであるAMDは2016年まで市場で大きなインパクトをなかなか残せずにいた。2014年には、現在も利用されている長寿のCPUソケットであるSocket AM4が登場したが、その初期には肝心のCPUも目立った製品がない状態だった。

  • 2017年発売、AMD「Ryzen 7 1800X」
  • 2018年発売、AMD「Ryzen Threadripper 2990WX」

 ところが、ライバルのIntelもプロセスルールの進化が足踏み状態に。そんな2017年に衝撃的なデビューを果たしたのが、AMD起死回生の一撃、Zenアーキテクチャー採用の「Ryzen」だ。初代Ryzenはメインストリーム向けの上位モデルは8コア16スレッド仕様。コア数/スレッド数は同時期のIntel Coreシリーズを上回り、特にマルチスレッド性能でライバルを圧倒。さらにエンスー向けのメニーコアCPUとして、当時としては圧倒的コア数である16コア搭載の「Ryzen Threadripper」を投入。長いトンネルを抜け、自作PC市場に非常に大きな存在感を示した。

  • 初代Ryzenデビュー時には秋葉原のドスパラで深夜販売も
  • 評価は非常に高く、上位モデルは即完売だった

 AMDの超復活という話題でにわかに活気付いた2017年。PC/IT業界的には、非常に大きなインパクトとなるトピックとして“暗号通貨”や“マイニング”も大きな注目を集めた。PCを使ったマイニングも話題になったため、自作PC市場を活性化する新しいテーマとして期待された。

 活性化という側面からはプラスの影響もあったのだが、ビデオカード(=GPU)をブン回すマイニングが注目されたことで、後年にはビデオカードが市場から消えさるほどに需要が急上昇。在庫状況の悪化、価格の高騰など、一般ユーザーとしては歓迎しにくい“狂乱ぶり”に。世界的な半導体不足などの影響もあり「ゲーミングPCを組みたいけど肝心のビデオカードは買えない」という事態に陥った(2021年ごろ特に厳しい状況に)。


そして現在、未来へと続く自作PC 2018年~2024年

 RyzenのデビューでCPUの勢力図に大きな変化が生じる中迎えた2018年。第2世代(Zen+)「Ryzen 2000」が登場し、再び市場で高い評価を得る。その後製品と世代を重ねつつ、2022年にはソケットをSocket AM5に更新。2024年現在は第6世代(Zen 5)「Ryzen 9000シリーズ」がリリースされている。

 これに対してIntelも同年に最大8コアの「第9世代Core」をリリース。コア数でRyzenに追い付き、さらに最大クロックが初めてブースト時5GHzに到達。2021年後半に最大16コアの「第12世代Core」で“性能重視”の高性能コア(Pコア)と“効率重視”の高効率コア(Eコア)を組み合わせたハイブリッド構成を採用。従来よりもコア数を積み増すことに成功し、AMD Ryzenへの強力な反撃となるなど、AMDとIntelの一騎打ちはこの後も現在にいたるまで継続中だ。

  • 2023年発売、AMD「Ryzen 7 7800X3D」。AM5に移行した第5世代、後期の傑作
  • 2021年発売、Intel「Core i9-12900K」。16コア24スレッドを実現した

 パフォーマンスを上げつつ世代を重ねている両者だが、高パフォーマンス化の代償として消費電力の増大=発熱の増大という難題も抱えている。そのため、近年は冷却性能の高い水冷CPUクーラーが本格的に普及したほか、各部にスリットやメッシュを配して通気性を確保しつつ、多数のファンや水冷ラジエーターを取り付け可能な“冷却性能重視”のPCケースが人気だ。

 また、2010年代後半から“PCの内部が見えるPCケース”が登場し始め、内部パーツに組み込まれたLED、パーツそのもののデザイン(オールホワイトのような配色の組み合わせなど)を活かして“映えるPC”、“魅せるPC”を作る、という自作PCカルチャーが話題に。SNSブームとの相乗で広く浸透するにいたっている。見た目、デザインがパフォーマンスに大きな影響を与えることは少ないが、こういう自作PCの楽しみ方が一般的になったことは、自作PCの未来にプラスの要素になってくるだろう。

  • 近年は三連ファン+36cmラジエーター搭載の水冷クーラーが“一般的”に。冷却機構の大型化=高性能化が重要に
  • PC内部が見えるガラスやアクリルパネルを多用したPCケースが人気に。冷却と“映え”が近年の自作PCのトレンド
  • 各部にLEDを組み込んだマザーボードが2017年ごろから増加。近年は細かな発光制御が可能なアドレサブルRGB LEDに進化

 この間、ビデオカード/GPUも重要な進化の局面に入っている。キーワードは「AI」だろう。マイニングでGPUの演算能力の高さに注目が集まったが、近年はAI分野でのGPU活用が非常に進んでおり、ゲームやクリエイティブアプリのパフォーマンス向上といった個人ユーザーレベルでの利用から、データセンターなどの環境で大量のGPUを使用する大規模な運用まで、さまざまなレベルでGPU需要が高まる状況になっている。

 自作PC市場での製品としては、NVIDIAのGeForceが引き続きトレンドの中心。従来以上にリアルな光と影の表現をリアルタイム処理できる“リアルタイムレイトレーシング”に対応した「GeForce RTX 20シリーズ」を2018年に投入。その発展形である「GeForce RTX 30シリーズ」を2020年に、AIを活用してフレーム生成を行いゲームのパフォーマンスを大幅に向上させる機能にも対応した「GeForce RTX 40シリーズ」を2022年にそれぞれ発売した。

  • 2018年発売、NVIDIA「GeForce RTX 2080 Ti」(写真はNVIDIA製のFounders Edition)。リアルタイムレイトレーシングに初めて対応
  • レイトレ非対応の「GeForce GTX 16シリーズ」も2019年に登場。一部製品が廉価モデルとして2024年も現役

 ゲーミングPCのパフォーマンスはGeForceの進化とともにぐんぐん向上。かつての環境では描画が非常に重かった超美麗映像のゲームのフレームレートが劇的に伸びる、超高速描画のゲーミングモニターで非常に滑らかで遅延のない映像表示を実現する、といったプラスの変化が見られた。一方で、AI分野でのGPU活用の広がり、供給を上回る需要の急増などの影響で、入手難や価格の上昇といった状況も起きている。また、上位モデルを中心にCPUと同様に消費電力の増大傾向が続いているのも、自作PCユーザー的には注意すべきところだろう。

 GPU分野はNVIDIAが圧倒的に強いという状況が長らく続いているが、ライバルであるAMDの「Radeon」も順次世代を重ねる。性能や数の面で苦戦は強いられているが、専用機能による囲い込み戦略を取るNVIDIAに対して、AMDはオープンな高画質化・高速化機能を展開するなどの動きを見せている。また、2022年には四半世紀ぶりにIntelが独立したGPUを自作PC市場に投入したことも話題になった。

  • 2022年発売、Intel「Arc A770 Limited Edition」

全国展開をさらに強化したドスパラ

 激動の2018年以降の自作PC市場を振り返ってみたが、同時期のドスパラの動きも見てみよう。ドスパラ店舗に過去、VR体験コーナーが設置されたことは前述したが、近年は、単なる“売り場”にとどまらない、PCカルチャーの発展をサポートするような新スタイルの店舗の展開が行われている。たとえば、2016年に札幌店、2018年に大阪・なんば店が大型リニューアルされ、イベントスペースや体験ブースが併設された。また両店は、2023年に札幌店が、2024年に大阪・なんば店は売り場増床のリニューアルを行っている。さらに2022~2023年には、前橋インター アカマル店と長野稲里店に配信レンタルルーム「ドスパラプレイスタジオ」がオープンしているのが象徴的だ。

  • ドスパラ札幌店
  • ドスパラ大阪・なんば店(サードウェーブ提供)
  • 前橋インターアカマル店に設置された「ドスパラ前橋プレイスタジオ」。動画配信、ゲーム実況などに利用できる防音個室、配信機材、ゲーミングPCやネット回線を提供

 VRや配信/動画収録といったPCの用途は、求められるPCスペックの高さだけでなく、スペシャルな機材やアプリが必要だったり、周囲の環境に配慮した運用(防音など)が必須だったりと、特に“これからPCも用意してチャレンジしてみたい”、“やってみたいけど右も左も分からない”という初心者にはかなりハードルが高い。そんなときには、こういったコーナーをぜひとも活用してみてほしい。もちろん、どの店舗でもスタッフに相談すれば適切なアドバイスがもらえる。

 ECサイトも古くから取り組むなど、インターネット全盛の時代にもマッチしたドスパラだが、2020年以降、店舗展開をさらに拡大しており、現在は全国に50に迫る店舗と、8つの修理・サポート専門店「デジタルドック」を構える。このメリットは、自宅やオフィスの近所に、頼れるリアル店舗がある、という点だろう。

  • 自社ブランドはもちろん、自作PCも含めた修理やアップグレードの相談も対応してくれるのがドスパラのサポートサービスの強み

  前述のPCコンシェルジュやPCゲームに精通した認定スタッフ「GAME アドバイザー」といった“何でも知っているショップスタッフ”、プロの手ほどきを受けながら自作PCが組み立てられる「自作パソコン組立イベント」などのユーザー参加型のイベント、PCクリーニングや中古買取などの店舗サービスなどを手掛ける。PCパーツのショッピングはもちろん、スタッフやサービスも充実しているのだから、リアル店舗の存在は初心者から上級者まで心強いもの。自作PCカルチャーを、表はもちろん裏からも支える存在として、今後もドスパラの取り組みには注目していきたい。

サードウェーブの企業情報「あゆみ」
https://info.twave.co.jp/company/history.html

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