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共通テスト「情報I」の問題解けますか? 社会人も“リスキリング”の時代

大学入試において、全国一斉に実施される「大学入学共通テスト」。2025年度の共通テストは、学習指導要領の改訂に伴って、新しく「情報Ⅰ」が出題科目に追加されました。

本記事では、この新しい出題科目の情報Ⅰについて、試験の概要やどのような問題が出題されたのかを紹介します。初めて実施された情報Ⅰですが、SNSなどで受験生から「簡単だった」という感想が目立った印象です。

しかし、以前の「大学入試センター試験」の世代では、「情報」の授業を受けていない人も多くいます。こうした世代のビジネスパーソンにとっても、はたして簡単な問題であったかどうか、ぜひ確認してみてください。

大学入試共通テストに新たに追加された「情報Ⅰ」

高校では22年4月から新しい学習指導要領が施行され、この教育課程を学んだ高校生たちが25年3月に卒業を迎えます。2025年度の共通テストでは、新学習指導要領に対応する形で情報Ⅰが新たに出題科目として追加されました。情報Ⅰは新学習指導要領で必履修科目となり、それに伴い共通テストの出題科目にも加えられたのです。

独立行政法人 大学入試センター「令和7年度 受験案内」(P.5)より抜粋

なお、旧課程履修者に対して旧課程科目で受験できる経過措置が講じられており、情報では情報Ⅰ(新課程科目)と旧情報(旧課程科目)から選択して受験できます。情報Ⅰは情報の出題科目として、共通テスト2日目の最後に実施されました。ほとんどの国立大学が情報Ⅰを必須科目としており、多くの公立大学でも利用されます。大学受験において、情報の知識が必要な時代が到来したといえるでしょう。

実際の配点は大学によって異なる

25年度の情報Ⅰは、大問4つで構成されていました。これは、先だって大学入試センターから公開されていた試作問題と同じ構成です。どのような問題が出題されたのか、いくつか見てみましょう。共通テストの出題をもとに、問題を改変して掲載しています。

知識問題

「情報通信ネットワークとデータの活用」「コミュニケーションと情報デザイン」などから、知識を問う問題が出題されています。たとえば、第1問では「デジタル署名」の機能について出題されました。皆さんも、「インターネットで情報をやり取りする際、デジタル署名を用いると可能なことはどれか」という問いについて、次のうちから2つ選んでみてください。

デジタル署名は、やり取りする情報に電子的な署名を付与することで、発信者が本人であることを確認するために利用します。また、情報が途中で改ざんされた場合、それを検知することができます。よって、正解は「エ」と「カ」です。皆さん、正解できましたか?

プログラミング

共通テスト独自のプログラム言語を使った、プログラミングの能力が問われます。試作問題も本試験でも第3問で出題されました。問題文の処理手順を理解して、ソースコードの穴埋めを行ないます。あらかじめプログラム言語のルールを確認しておくことや、「変数」「配列」「添字」などの基礎知識が必要です。

大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報Ⅰ』」 P.22より

データの活用

棒グラフや帯グラフ、箱ひげ図、散布図、相関係数などから、正しくデータを読み取り、考察する問題が出題されています。知識をただ暗記するのではなく、データを活用する実践的な力が必要です。

大学入試センター「サンプル問題 『情報』」 P.16より

ここで紹介した以外にも、情報やメディアの特性、情報に関する法規や制度、情報セキュリティ、情報デザイン、シミュレーション、コンピューターの仕組み、データの蓄積と管理など、多様で幅広く内容が出題されます。大学入試センターでは、情報Ⅰの試作問題やサンプル問題も公開しているので、興味のある方はアクセスしてみてください。

情報Ⅰの知識は、これからの社会で必要なITリテラシー

共通テストの新しい出題科目の「情報Ⅰ」について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。おそらく「イメージしていたものとは異なっていた」という方が多いかと思います。

そもそも情報Ⅰが高校で必履修科目になった理由は、「Society 5.0」に向けて変化していく社会で、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身につけるためです。つまり、情報Ⅰの知識は、これからの社会で必要なITリテラシーであり、社会で活動しているビジネスパーソンにも求められるものです。また、現在の高校生は情報Ⅰの授業を受けて社会に出ることになりますが、迎える側はどうでしょう。高校でITリテラシーを学習した世代と、一緒に仕事をする時代は目前にせまっています。これらの知識は、ビジネスパーソンにとってもとりわけ重要なものなのです。

このように社会においても、ITリテラシーの重要性はますます高まっています。リスキリングの一環として、ITに関する基礎知識を身につけることが求められる場面も増えています。「ITパスポート試験」は、業務で必要な基本的なITリテラシーを証明するもので、企業のDX推進にも役立ちます。

また、「基本情報技術者試験」は、プログラミングやネットワーク、データベースなど、より専門的な知識を問う試験であり、ITエンジニアに限らず、業務でデジタル技術を活用する多くのビジネスパーソンにとって有用な資格といえます。

特にITパスポート試験は、情報Ⅰが高校の必履修科目になったことに対応し、出題範囲が情報Ⅰに基づいた内容に改訂されました。情報Ⅰを学習していないビジネスパーソンが、対象知識を習得するのに役立つでしょう。

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)(2021年10月8日)より

情報Ⅰを履修した世代が社会に出ることで、ビジネスの現場におけるITリテラシーの基準も変わっていくでしょう。社会人も学び続ける姿勢が求められる時代になっています。また、文部科学省が提供する「高等学校情報科『情報Ⅰ』『情報Ⅱ』授業・研修用コンテンツ」では、どのような内容が学ばれているのかを確認することができます。これをチェックして、今の高校生がどんなITリテラシーを身につけているのかを知るのも良いでしょう。

間久保 恭子

ソフトウェアメーカーでユーザーサポートや教材開発に従事した後、フリーランスのテクニカルライターとして独立。IT教育コンサルタントとして企業研修やセミナーを展開し、情報リテラシー向上に取り組む。著書に『かんたん合格ITパスポート過去問題集 令和6年度 秋期』『できるポケット 時短の王道 ショートカットキー全事典 改訂4版』(インプレス)ほか多数。