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「8割がコンビニ受取」 台湾文化と“推し活”で越境取引強化を狙うメルカリ
2024年10月31日 08:40
メルカリは、台湾市場での越境取引サービスを強化するため、台湾最大のコンビニエンスストアチェーンであるセブンイレブンと提携した。これにより、台湾のユーザーは日本のメルカリに出品されている商品を購入し、現地セブンイレブンの7,000店舗以上で受け取ることが可能となった。
1カ月で5万人が登録。台湾市場での好調なスタート
メルカリは8月、越境取引を通じて台湾市場へ進出した。進出から約1カ月で登録者が5万人を超えるなど、順調な滑り出しを見せている。メルカリのCross Border Business Director(台湾事業責任者)石川佑氏は、計画以上の好調な結果であり、台湾の人口が日本の5分の1であることを考えると、新規市場の開拓としてポジティブに評価していると述べた。
越境取引量では中国市場が最も多く、次いで台湾市場が続く。今回、台湾市場を選んだ理由について石川氏は、中国市場は人口や市場規模の大きさから候補に挙がるものの、それが親和性の高さを直接意味するわけではないと指摘する。台湾では人口の約3分の1が訪日経験を持ち、越境取引のデータからも非常にポジティブな結果が得られているため、台湾市場を選んだと説明した。
台湾に7000店舗超えのセブンイレブンで受け取りを実現
台湾セブンイレブン全店舗で「メルカリ」で購入した商品を受け取ることが可能になり、ユーザーは近隣のコンビニで手軽に商品を受け取れるようになった。これにより、宅配の不在問題や住宅事情による受け取りの困難さが解消される。
台湾のコンビニでは日本と同様に公共料金の支払い、荷物の郵送・受け取りなど生活インフラの役割を担っている。特にECサイトで注文した商品の受け取りをコンビニで行なう割合は約8割に達するといわれている。
このように、コンビニ受取というニーズは、台湾の生活・住宅環境に起因していることがわかる。石川氏は、日本と大きく異なる点として、台湾の外食文化やエレベーターのないマンションが多いことを挙げる。これにより、日本のように宅配で玄関まで届けるよりも、帰宅途中に近くのコンビニで受け取る文化が根付きやすいと分析している。「いわゆるラストマイル配送を行なうというよりは、帰宅ついでに近くのコンビニで受け取るのが文化的にも根付きやすい」と石川氏。
さらにメルカリは台湾向けの送料を61%削減。日本から台湾までの送料は台湾の購入者が負担する。もともとは日本円で1,560円だったものが608円まで削減。価格的なインパクトも大きい。特に台湾は価格や配送コストに対するセンシティビティが高く、さまざまなECサイトの送料を比較した上で購入するという。
送料削減にいたるまで、さまざまな課題もあったという。石川氏は、「SNSやユーザーインタビューでも送料に関する声が多く寄せられていたことを認識していた」とし、「適切な価格設定にするため、パートナー企業と協力して送料を削減した」と語る。送料にもテコ入れを行ない、より気軽に購入できる環境を整えて利用を促す狙いがある。
日本の「推し活」文化が国を超えてトレンドに
メルカリは、日本で開催した「超推し活展」などのイベントが台湾のSNSで話題になったことを受け、台湾でも同様のコンテンツ「跨時空尋寶之旅(時空を超えた宝探しの旅)」を開催。石川氏は、日本のコンテンツに興味を持つ台湾ユーザーに向けて、同じモデルを台湾で展開することで相乗効果を生み出せると期待している。
実際に、台湾でも「推し活」がトレンドとなっており、関連商品やイベントへの関心が高まっている。例えば、台北・中山地下街には、VTuberやアニメ、ゲーム、トレカ(ポケモン、遊戯王など)など、さまざまなグッズを販売している店舗が多数あり、日本の中野ブロードウェイのような雰囲気があった。
また台湾ならではの文化として、個人経営しているような店舗が日本で販売している商品の代理購入を行なっているという。
日本でしか販売していない商品や日本限定の予約特典、日本版のトレカをコレクション目当てで購入するなど、さまざまな目的で利用しているという。このように、国を超えたやりとりはメルカリが越境取引を開始する前からすでに存在していたといえる。こうした文化的背景を活かし、メルカリは日本のポップカルチャーを生かしたユニークな商品を台湾ユーザーに提供している。
台湾モデルを成熟させ、さまざまな国に展開したい
一方、日本のユーザーの中には、メルカリの越境取引がCtoC(個人間取引)であると誤解する声も少なからずある。現時点で台湾のユーザーは「購入」のみが可能であり、台湾からの「出品」はまだできない状況だ。
石川氏は、「台湾向けのCtoCはまだ考えていない。まずは日本の商品を台湾のユーザーに購入してもらうことに注力している」と説明。また、グローバル事業全体を統括するメルカリ執行役員 兼 General Manager Cross Border 迫俊亮氏も「将来的には国境を越えて、さまざまな国のユーザーが自由に取引できるプラットフォームにしたい」と展望を語った。
今回、台湾からの「購入」のみにした理由について迫氏は、「スピード感を重視した。CtoCまで展開すると、開発や法規制の対応に時間がかかる。まずは越境購入のサービスを早期に立ち上げ、ユーザーの反応を見ながら将来的な展開を検討したい」と述べた。
将来的な展望について、迫氏は、メルカリでしか手に入らないユニークな商品を世界中のユーザーに届けたいと述べる。例えば、アメリカの商品が日本で買えるようになるなど、国境を越えたマーケットプレイスの構築を目指している。
また、グローバル展開におけるメルカリの強みについて石川氏は、「ありとあらゆるジャンルの商品が揃っていること。推し活だけでなく、多様なニーズに応えることで、世界中のユーザーに価値を提供していきたい」と言及。
台湾市場での成功を足掛かりに、メルカリはさらなるグローバル展開も視野に入れている。「台湾市場はメルカリにとって大きなチャレンジ。今回のセブンイレブン提携を通して、顧客層を広げたい。その上で、台湾のモデルを成熟させ、これをさまざまな国に提供するという構想は当然ある」と石川氏。
また、CtoC取引の導入について迫氏は、「ユーザーのニーズを見ながら慎重に検討していく。現時点では購入機能に注力し、サービスの安定化とユーザー体験の向上を目指す」と言及した上で、「台湾やアジアだけでなく、世界中にメルカリの越境ECを通じた事業をもっと大きくしたい。それが海外の購入者に喜んでいただくだけでなく、日本の出品者にとっても今まで売れなかったものが売れるような市場を目指したい」と話した。
協力:メルカリ