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iPhoneで確定申告した ほぼ「書かない確定申告」に

2025年も確定申告が始まりました。確定申告期間は2月17日から3月17日までです。

国税庁による「確定申告特集ページ」も毎年強化されています。「令和6年分の確定申告書等作成コーナー」では、マイナポータル連携がわかりやすく改善され、多くの情報をマイナポータル経由で取得できるようになっています。

また、Androidスマートフォン向けのスマホ用電子証明書搭載サービスに対応。対応機種でスマホ用電子証明書を利用していれば、マイナンバーカードの読み取りと4桁の暗証番号の代わりに、スマートフォンの顔認証や指紋認証を使って確定申告を行なえるため、カードを“かざす”必要もなくなります。

今年の確定申告では、Androidスマホでスマホ用電子証明書搭載サービスに対応した

筆者の場合、会社員として年末調整済ですが、「医療費控除」(必要な場合)と「ふるさと納税」のためにほぼ毎年確定申告をしています。今年の確定申告もかなり機能強化されており、政府が標榜する「書かない確定申告」に近づいていると感じました。

細かな注意点はありますが、2025年もスマホで確定申告を試してみました。

マイナポータル連携が使いやすく

初のスマホ対応となった2019年以来「スマホで確定申告」を紹介していますが、2025年もスマホ(iPhone 15 Pro)を使って確定申告しました。この記事では確定申告書の書き方などには触れていません。うまく行かなかった部分も含め、簡単に流れを紹介してきます。

スマートフォンを使った確定申告は、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」が用意されていますが、将来的にはマイナンバーカード方式へ集約予定です。そのため、マイナンバーカード方式での使い方を前提とします。

今回、「確定申告コーナー」で強化されたのは「マイナポータル連携」です。

主な改善項目は以下の通り。

  • はじめてマイナポータルで証明書の取得をするときに、外部サイトと連携する手順を短縮
  • 証明書取得までのステップが理解しやすいように、証明書の種類別の表示に変更
  • 証明書取得の状況がわかりやすく確認できるように、案内を見直し

マイナポータルは、マイナンバーカードと連携し、自治体サービスの申請のほか、様々なサービスを紐付けて情報の取得などが行なえるサービス。ここから医療費やふるさと納税などのデータを取得できるのが「マイナポータル連携」です。

これまで確定申告したことがない場合は、マイナポータルへの紐づけはやや面倒かもしれませんが、一度設定してしまえば、翌年以降は何もする必要はありません。画面の案内に従って設定していきましょう。

マイナポータルを何度か使っている人はすでに設定済みかもしれませんが、初めての場合は、国税庁による動画を見ておくと良いでしょう。

マイナポータル連携(事前準備)

マイナポータル連携の強化 ふるさと納税も便利に

「マイナポータル」では、「確定申告の事前準備」という専用ページが用意されています。マイナンバーカードをかざして、4桁の暗証番号を入れてログインすると、「取得したい証明書等の種類」の選択画面が現れるので、取得に必要な設定を確認できます。

令和6年度は、この画面がかなりわかりやすく改善されているようです。

確定申告の事前準備

筆者の場合は、今回の確定申告で必要な証明書は、「ふるさと納税」(寄付金控除に関する証明書)と「給与」(給与取得の源泉徴収票情報)ですが、その他の「医療費通知情報」や「生命保険料控除証明書」、「iDeCo」、「住宅ローン」(住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書)なども、すでにマイナポータル連携済みで、その設定が確認できました。

会社員的には「給与所得の源泉徴収票情報」のマイナポータルからの自動取得がとても重要ですが、そのためには勤め先の対応が必要となります。弊社(インプレス)は対応しておらず、マイナポータルによる自動取得はできませんでした。そのため申告段階でカメラ撮影と確認が必要となります。

今年の確定申告では、画面のUIなどがわかりやすくなった気はしますが、昨年でもかなり使いやすかったため、今年のアップデートが凄いというわけではありません。一方、今年進歩を感じたのが、直接マイナポータルの機能ではないのですが「ふるさと納税」です。

筆者は、ふるさと納税のポータルとして、「ふるさとチョイス」を使っています。ふるさと納税のマイナポータルでの情報取得では、マイナポータル連携だけでなく、ふるさと納税サイト側での申請等の対応が必要となっています。

「ふるさとチョイス」では、寄付金控除に関する証明書を発行する「チョイススマート確定申告」を発行する必要があります。この発行が、昨年までは「1~3営業日」かかっていました。そのため、今すぐ確定申告を終わらせよう」と作業を開始しても、その日に完了できませでした。

しかし、今年は「チョイススマート確定申告」が証明書の即時発行に対応しました。ふるさとチョイスのマイページから「発行の申し込み」を押下するだけの作業ですが、実際に試してみまると、即座に発行され、マイナポータルから確認すると、データの取得が完了しています。

「チョイススマート確定申告」の即時発行に対応

この数年間、この点を忘れていてすぐに確定申告を終えられなかったので、これは大きな進歩と感じました。マイナポータルや確定申告書等作成コーナーだけでなく、周辺サービスの対応も進んできたと感じます。

なお、今回筆者は対象外ですが、マイナポータルで助かるのは、年間の医療費が一瞬でわかることです。

医療費控除は、年間の医療費(保険診療)が10万円を超えると、超えた部分の医療費を所得から控除する仕組みです。10万円を超えた場合、収めた所得税から一定額が返ってくるのですが、かつては、その集計のために1年分の医療費の領収書を集めて集計する必要がありました。1年間領収書を取っておくのも大変ですし、なによりがんばって集計した結果、10万円に満たない(控除の対象外)場合もありました。

しかし、マイナポータル連携が済んでいれば、1年間の医療費がマイナポータル上ですぐに確認できるため、自分が今年医療費控除の対象かどうかがすぐにわかります。筆者がマイナポータルのホームから「医療費」を開くと、2024年の筆者の窓口負担相当額は4万円程度。10万円以下なので、医療費控除の対象外ですので、申告の必要はありません。

マイナポータルでは、一昨年から1年間分の医療費取得に対応していますが、筆者は昨年からは紙の領収書を集める(残す)のを止めています。このあたりは、デジタル化のメリットだと感じます。

e-Taxで確定申告。画面に従って進めるだけ

あとは「e-Taxで確定申告をはじめる」を押して、確定申告を開始します。基本的には、画面に従って進めるだけで、申請までたどり着けるようになっています。

【確定申告書等作成コーナー】から作成開始をタップすると、作成のステップが示され、「次へ」を押すと、作成する申告書や申告書の提出方法の確認となります。筆者の場合、作成する申告書は「所得税」、提出方法は「e-Tax(マイナンバーカード方式)」です。

マイナポータル連携は「連携する」を選択し、「申告内容に対する質問」に応えると、マイナポータル連携が始まります。

ここからe-Taxへログインするためにマイナンバーカードの読み取りを行ない、「同意して次へ」をタップします。マイナポータル画面が表示され、マイナンバーカードを読み取り、暗証番号を入れてログインすると、マイナポータルとe-Taxとの認証が完了。名前などのe-Taxの登録情報が表示されます。

このマイナポータル連携で、本人情報を[取得する]にすると、先ほど準備した、医療費通知情報や寄付金控除に関する証明書等が取得できます。マイナポータルから取得可能な控除証明書等の一覧が表示され、必要な証明書だけをチェックして「次へ」をタップすると、確定申告コーナーの緑の画面に戻ります。

文章にするとややこしいのですが、実際には画面の指示に従うだけなので、それほど難しさは感じません。というか、数年前から比べるとだいぶわかりやすくなったと感じます。作成の流れは、国税等の動画が参考になります。

スマホ申告 マイナンバーカードでe-Tax

マイナポータルから取得したデータは、取得情報で確認し、削除も可能です。筆者の場合、医療費は控除の対象外ですので、削除する必要があります。

注意したいのは、マイナポータルからすぐにデータが取得できるため、会社員のケースでは「年末調整済み」のものまで確定申告に入れないようにすること。

筆者の場合、生命保険料控除証明書やiDeCoのデータもマイナポータルから取得できますが、これらは年末調整が完了しているため、確定申告では不要です。もし、年末調整で忘れてしまったものがある場合は、確定申告でカバーできるわけですが、ここまで自動取得が進むと、年末調整より確定申告のほうが楽なような気もしています。

あとは、給与の申請ですが、前述のとおり弊社ではマイナポータル連携による、源泉徴収票の取得には対応していません。そのため、今回は「カメラで読み取り」により、源泉徴収票のデータをカメラで読み取ることとしました。

マイナポータルから自動取得できれば、データとしても正確ですし、まさに「書かない確定申告」になるはずなので、この点は残念です。

「カメラで読み取り」は、源泉徴収票のデータをカメラで読み取って入力するというもの。この方式でも書かずに入力できるのですが、OCRの精度によってはデータが取得できないことがあります。

「カメラで読み取り」自体は簡単です。筆者の場合、PCに表示した源泉徴収票(PDF)をiPhoneのカメラで撮影したところ、「所得控除の合計額」、「源泉徴収税額」と「会社の住所」の3カ所が取得できませんでした。2回目はiPad Pro(11.9型)に表示した源泉徴収票(PDF)をiPhoneで撮影したところ、10秒ほどで取得が完了。今度は全てのデータが取得できていました。また、今年の確定申告のポイントでもある「定額減税」のデータも取得できていました。

ただし、「カメラで読み取り」の場合、「金額や住所等が源泉徴収票と相違ないか確認する」、カメラで撮影するために「(PDFを表示する)パソコンや紙の源泉徴収票を用意する必要がある」など、マイナポータル連携に比べると手間はかかります。やはり、データで自動取得できることが理想的です。

入力が完了すると、計算結果が表示され、還付金の受け取り方法を選択。受け取り方法は、銀行口座も指定できますが、個人の場合はマイナポータルに紐づけている「公金受取口座」で良さそうです。あとは申請内容や、本人情報を確認し、マイナンバーを入力(マイナンバーカードから転記)し、e-Tax送信の画面で[送信]をタップするだけ。送信結果の確認画面で、申告書の控えPDFや入力データを保存できます。

ほぼ「書かない確定申告」は実現 スマホのマイナカード搭載に期待

筆者の例は会社員のふるさと納税だけのため、申告はシンプルですが、それでもほとんどのデータはマイナポータルから取得でき、それを確認して提出したという形です。手動で「入力」対応が必要なのは、マイナポータルで連携できなかった源泉徴収票の確認・修正と、最後のマイナンバーの記入だけで、あとはチェックボックスを選んで「確認」するだけです。

マイナポータル連携も、数年前と比較するととても使いやすくなりました。スムーズになりすぎて、年末調整済みのものをやりそうになるのが困りどころです。

政府がアピールしてきた「書かない確定申告」にかなり近づいてきたと感じます。加えて、今年からAndroidスマホでは、「スマホ用電子証明書」を使った申告が可能となり、マイナンバーカードを“かざす”こともなく、申告書の作成やe-Tax送信が可能になりました。今春に実現予定のiPhoneのマイナンバーカード機能内蔵により、来年度はiPhoneでも“かざさない”確定申告が実現されるでしょう。確定申告はまだまだ楽になっていきそうです。

臼田勤哉