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カジュアルになったファン付きウェアの選び方 ワークマン「WindCore」を買った
2024年8月17日 09:30
ファンが付いたウェアと言えば、当初は作業着・作業服としてお目見えしたのち、一般ユーザがアウトドアでも着られるようなカジュアルタイプも多く登場し、現在では色やデザインから選べるようになりつつあります。この数年間の普及ぶりは、驚くべきものがあります。
なかでも一般ユーザ向きのカジュアルタイプに注力しているのがワークマンで、入手性の高さに加えてバリエーションの多さから人気を誇ります。筆者もこれまでなかなか手を出せずにいたのですが、今年は初夏に購入し、これまで2カ月近く使用しています。
今回は、こうしたファン付きウェアの経験がなかった筆者が実際に購入してわかったメリットやデメリット、選び方のコツについてお届けします。
ウェア×ファン×バッテリーで1セット
まずは構造から。これらファン付きウェアは、腰の部分に取り付けたファンを用いてウェア内部に風を送り込み、気化熱によって体を冷やす仕組みです。必要なのは、ファンを取り付ける穴が空いたウェア、ファン本体、そしてファンを動かすためのバッテリーの3点で、これらが揃って初めて製品として成立することになります。この構成はどのメーカーの製品でもおおむね同様です。
今回筆者が購入したワークマンの製品は、これらはセット売りではなくバラ売りがメインです。ホームページ上では対応する組み合わせが分かりづらく、実店舗に足を運んで製品を探したのですが、PC周辺機器などではおなじみの型番ごとの組み合わせ一覧のような表がなく、なおかつ型番がどれもよく似ていて紛らわしかったりと、迷う要素だらけでした。カルチャーの違いを感じます。
ファンの選択肢はひとつだけですが、バッテリーはフルサイズ(18.6V)とハーフサイズ(8V)の2種類があります。ファンを接続する端子が独自形状なのと、バッテリーの側で出力を切り替えて風量をコントロールする仕組み上、どちらも完全な専用品で、市販のモバイルバッテリーとの互換性はありません。ちなみに充電はUSB Type-Cポートで行ないます。
利用にあたってはウェア背面にファンを取り付け、そこから出たケーブルをバッテリーに挿し、ウェア内側のポケットに収納します。あとはバッテリーのボタンを押せば、ファンの送風が始まるという流れです。今回購入した18.6Vバッテリーは風量は4段階、8Vのハーフバッテリーは風量は2段階での調整が可能です。
ちなみにこうしたファン付きウェアには、筆者が今回購入した長袖タイプ以外に、ノースリーブのベストタイプ、さらに半袖タイプなどもあります。筆者は今回、虫刺され防止などの目的もあって長袖を選びましたが、ふだん街中で着るのが目的であれば、見た目もスッキリしたベストタイプや半袖タイプのほうがよいかもしれません。このあたりは好みと目的次第です。
実際の着心地は? 見た目はどのくらい変わる?
着心地は一般的なジャケットと同様……と言いたいところですが、ポケットの中に入れているバッテリーがスマホ1.5台分ほどの重さ(約244g)ということもあり、非常にかさばります。
厚手のジャケットならばポケットに重量物を入れていてもたいして気にならないのでしょうが、今回のジャケットはペラペラで薄いため、バッテリーの重量で下に引っ張られる感覚があります。こればかりは慣れるしかありません。
一方のファンについては、着用していてもそれほど違和感はありません。外側にではなく内側に出っ張っているので、邪魔になってもおかしくないのですが、運転を始めるとジャケット自体が膨らんで外に押し出される形になるので、体に当たることがなく、気にならないというわけです。このあたりは実際に使ってみて意外だった部分です。
以下はそれぞれ、ファンの運転をしていない状態・している状態の写真を並べたものです。実際に着用していると、風船を抱き込んだかのようにパンパンに膨らんでいるように感じますが、実際にはそれほどではありません。もっとも、ジャケットのシワが完全になくなっているくらいなので、相当な量の空気が、ウェア内を循環していることがお分かりいただけると思います。
着てわかったこと
筆者はこうしたファン付きウェアの利用が初めてだったため、実際に使ってみて多くの知見が得られました。ざっと紹介していきましょう。
まずひとつは、ただ炎天下で着用するだけでは、熱風が吹き込んでくるだけで、まったく涼しくないということです。そもそもこうしたファン付きウェアは、汗を気化させることで涼しく感じられる仕組みなので、そうでない時にファンを回しても、熱い外気が入ってくるだけです。少し歩いて、汗をかいてから初めてファンを回すのが正解です。
一方で、冷房が効いている場所であれば、すでに冷えている空気を外部から取り入れて循環させられるため、汗をかいていなくても、かなりの冷房効果が期待できます。ただそうした場所は、ファンウェアがなくても十分に涼しいはずで、着用する必要性自体がそれほどありません。
これを解決するには、ウェアの中に保冷剤を入れ、そこに空気を循環させることで、ウェア内をクーラーのようにしてしまうという方法があります。市販のメッシュ製のベストを中に着込み、そこに保冷剤をセットしておけば、かなりの冷却効果が期待できます。保冷剤になるべく風が当たらなくてはいけないため、バックパックで上から押さえるのは極力避けたいところです。
ウェアの袖や胸元はしっかり閉めておいたほうが冷えやすいように感じますが、実際には空気の通り道ができるよう、適度に緩めておく必要があります。袖から抜けたほうがよいのか、胸元から抜けたほうがよいのかはケースバイケースです。余談ですが、バックパックを背負っていると、肩のところで空気の流れがせき止められ、効果が半減してしまうので要注意です。
一方で、ウェアで覆われていない首から上は、当然のことながら冷却効果がまったくありません。そのため夏場の暑い時期にこれらを着て外出すると、体は非常に涼しい一方、首から上は滝のような汗をかくことになります。このあたり、ハンカチやタオルが不要になるような効果がないことは、知っておく必要がありそうです。
ファンは腰の位置に取り付けられているため、身体の側面から空気を取り込むことになります。製品の性質上、換気の悪い屋内などでも、構わず空気を吸い込んでしまうので要注意です。現在はコロナ禍が継続していることもあり、人が密集した場所での利用は考えものですし、咳き込んでいる人が近くにいる場合はなおさらでしょう。
もっともそれ以前の問題として、ファンの2段階目くらいからは風切り音もかなり大きくなるので、人の多い場所での利用はややためらわれます。ファンを着用している間は必ずファンを回しておかなくてはいけないわけではないので、こまめにオンにしたりオフにしたりと、臨機応変に対応するとよいでしょう。
また、ファンを覆う保護ネットは必ず装着しておきたいところです。雑草取りの作業を行なったあとにこのネットを見ると、綿毛などがびっしりと付着していて驚かされました。ネットがないとこれらはもちろん虫なども吸い込んでしまいかねないので、装着はもちろんのこと、粘着クリーナーなどを使ってのメンテナンスは必須でしょう。ちなみにこのネットは付属しない製品も多くあります。
バッテリーについては、各社の製品で仕様が異なりますが、筆者が今回購入したワークマンの製品については、大小2つあるバッテリーのうち、「大」を購入して正解でした。というのも「大」であれば8V/12V/15V/18.6Vと4段階で切り替えられる風量が、ハーフタイプ、つまり「小」だと6V/8Vの2段階止まりで、風量をどれだけ上げても「弱」相当にしかならないからです。
運転時間は、風量「弱」にあたる8Vで24時間、一般的な「中」でも8.5時間持ちます。筆者のように屋外で掃除をしたり雑草取りをしたりと、1時間もかからないような作業を繰り返すだけならば、まったく充電しなくても1週間は余裕で持ちます。風量を最強にすれば2.5時間でバッテリーは尽きるようなのですが、そこまでする機会はあまりなさそうです。
予算は2万円弱 万能ではなく自分で使いどころを見出していく製品
最後に各製品の価格ですが、ジャケット(WZ1950)が3,900円、バッテリー・充電器セット(WZ4450)が9,800円、ファン・ケーブルセット(WZ4550)が4,980円で、しめて18,680円。モデルにもよりますが、おおむね1.5万~2万円の予算が必要となります。
バッテリ―をハーフタイプにすれば1万円台前半になりますが、風量の関係であまり積極的におすすめできないのは、上で紹介したとおりです。
さて今回は長袖タイプを購入して試用したわけですが、屋外の狭い場所でウロウロしながら掃除をしたり雑草を抜いたりするような作業においては、まったく風がない日であっても、空気が循環してくれる快適さは想像以上です。虫に刺される心配もなく、また日焼けもしないなど、目的にフィットした製品といえます。普通に着られるデザインであることもプラスです。
一方で、日焼け防止や虫刺され予防など、腕をしっかり隠さなければいけない理由がない場合は、いくら袖まで空気が行き渡るにしても、夏場に長袖を着ることによる暑苦しさは否めません。こうした場合は、半袖タイプやベストタイプのほうが適切なほか、ファン付きウェア以外の選択肢、具体的には水冷服や、ペルチェ素子を使ったペルチェベストという選択肢もあります。
総じて言えるのは、あらゆるシチュエーションで役立つ万能製品ではなく、実際に使って経験値を貯めることで、適切な使いどころを見出していくタイプの製品であるということです。仮に想定していた用途にフィットしなくても、活かせる場はほかにあるかもしれず、それらは使ってみなければなかなか分かりません。
そうした意味でいうと、各社から製品が出揃って選びやすくなった現在は、ファン付きウェアを試すよいタイミングのように感じられます。筆者も今回試さなかったベストタイプや、今回のバッテリーが流用できる同じWindCoreシリーズの冬用ヒーターウェアなど、この手の製品をいろいろと試して経験値を上げていきたいと考えています。