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文房具のひみつ 鉛筆誕生の裏にナポレオン、そろばん+電卓の合体アイテム

「ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典」。児童書(対象年齢:小学3年生〜)ながら大人でも楽しめる内容

普段使っている文房具は、いまではいろいろ便利な機能がついているのも多いですが、歴史を紐解くと「ウソでしょ!?」「なんでそうなった?」と思わずツッコミたくなるものや、いま見ても「すごい!」と驚くようなものまでいろいろあります。ボールペンや鉛筆、謎の合体アイテムまで、意外とも思えるひみつを見てみましょう。

この記事は講談社刊『ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典』(ヨシムラマリ 著 高畑正幸 監修)の一部を編集・転載しています(編集部)

カラフルなボールペンはこだわりまくる日本人が生んだ

ボールペンのインクは色をつける顔料や染料と、それをとかしこむための溶剤でできています。

最初のボールペンのインクは油性。油が溶剤なので、もったりとしています。そこで、溶剤を油から水に変えたのが水性インクです。日本のオート社が1964年にはじめて開発。さらに1972年にぺんてる社が水性インクの「ボールPentel」を発売すると、書きごこちがなめらかだと、世界中で大ヒットしました。

しかし、水性インクだけで満足する日本人ではありません。サクラクレパス社が新しくゲルインクを発明し、1984年に「ボールサイン」として発売。ゲルインクはペンのなかでは固体ですが、ペン先のボールが回転するとそのエネルギーで液体になり、紙の上でまた固体にもどります。早くかわき、にじまず、細い線で書けます。

また、ゲルインクだと顔料がインクのなかでしずまないので、鮮やかな色をつけたり、ラメを入れたりできます。1987年にサクラクレパス社が発売した「ボールサイン80」は、40色ものバリエーションがある画期的なものでした。

今の鉛筆はナポレオンのムチャぶりから生まれた

鉛筆ができる前、人びとは天然の石である黒鉛のかたまりを切りわけて、筆記用具にしていました。しかし、質のいい黒鉛はイギリスのボローデール地方でしかとれませんでした。1793年にイギリスとフランスの間で戦争が始まると、敵であるフランスには黒鉛が入ってこなくなります。

こまったフランスの皇帝ナポレオンは、戦争担当大臣のラザール・カルノーに、「フランス産の黒鉛芯を作って!」と命令。これは「黒鉛のカスや、質が悪いヨーロッパ産の黒鉛でなんとかしろ!」というムチャぶりです。

そこでカルノーが頼ったのが発明家・画家のニコラ・ジャック・コンテ。コンテは黒鉛の切れはしやカス、まざりものが多く質の悪い黒鉛を粉にし、まざりものをとりのぞいてから、粘土と水をまぜて型に入れて焼く方法を思いつきました。これは、お茶わんなどの陶磁器に近い作り方です。

この方法だと、黒鉛と粘土の割合を変えて、いろんな濃さの芯を作れます。当時39歳のコンテが、命令されてからたった8日で生み出したこの芯の作り方は、今の鉛筆でもほとんど変わっていません。

かつてそろばんつき電卓という謎の合体アイテムがあった

こちらをごらんください。

そろばんと電卓が合体した計算道具、その名も「ソロカル」です。

電卓は英語でカルキュレーターなので、「そろ」ばん+「カル」キュレーターでソロカル、というわけ。1978年から1984年ごろまで売られていました。「そろばんで計算した数字を電卓にうつせる」とか、そんな特別な機能はありません。ほんとうに、ただくっついているだけです。

そのころの日本人にとっては、そろばんをつかうことがふつうだったので、足し算や引き算なら、そろばんのほうが早かったのです。

それに、電卓の答えを信じられなくて、そろばんでたしかめ算をしたりしていました。今、私たちがAIの答えを「それってほんと?」とうたがってしまうのと、おなじような感じでしょうか。

クレームが来ることもあるカッターの刃のへこみの意味

新しいカッターナイフの刃を見てみると、前と後ろがちょこっと欠かけているのがわかると思います。後ろのへこみは、刃をひっこめるとき、ボディのカドにぶつからないようにするためのものです。

カッターナイフの刃は、工場で作っているとき、最初はなが~い状態です。なので、前のへこみは、後ろのへこみとつながっていた部分、というわけ。

「まだいちども折られていない新品ですよ」ということがわかる目印にもなるので、つけたままにしているんだとか。たとえるなら、「このトイレ、おそうじをしたばかりですよ」の目印として、トイレットペーパーを三角に折る、みたいなイメージでしょうか。

でも、そうとは知らないお客さんから、「新品なのに刃が欠けている!」と文房具メーカーにクレームが入ることもあるとか、ないとか。よかれと思ってしたことが、まさかクレームになるなんて……。ちょっぴりざんねんな話です。

ざんねん? びっくり! 文房具のひみつ事典

・価格:1,540円
・発売日:2024年5月30日
・ページ数:128ページ
・サイズ:四六
・著者:ヨシムラマリ
・監修:高畑正幸