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平成の「デコ」文化が推し活で再燃 ダイソーに人が集まるワケ
2024年2月27日 08:00
「推し活」という言葉が浸透してきていますが、最近の推し活は「デコ」がトレンドなのをご存知でしょうか。応援しているアイドルやキャラクターなど“推し”のブロマイドやグッズを、シールやラインストーン、レースでデコレーションして写真を撮りSNSで公開する、という活動が盛んに行なわれています。
デコレーションのための材料は100円ショップで調達するのが主流で、特にダイソーは品揃えが豊富と話題を集めています。独自の商品展開にも注力しており、開発のために実際の利用者や推し活をしている社員の声もかなり反映しているそうです。
そのなかでもDAISO 東武池袋店は、立地柄推し活をしている女性が集まりやすく、「日本一推し活に強いダイソー」と言われるほど。独自のフォトスポットは列を成すほど評判のようです。なぜ、“デコ”が盛り上がるのか、推し活におけるダイソーでの人気商品などについて、DAISO 東武池袋店で話を伺いました。
事務用品の「硬質ケース」が異例のヒット
推し活の“デコ”の主流はブロマイド。L版サイズの写真にラインストーンやシールで飾りつけをして、オリジナルのデコを各々楽しんでいます。グッズに直接デコレーションすると汚れてしまうので、デコる際は事務用品の「硬質カードケース」にシールなどを貼って行なうのが定番となっています。
ウェブ上で「硬質デコ」と検索すると、さまざまにデコレーションされた硬質ケースが検索結果に並ぶだけでなく、作り方を紹介した動画、デコレーションが苦手な人向けにハンドメイドサイトでの販売ページなども表示されます。
「硬質ケースにデコレーションするという流行りが生まれたとき、ダイソーでもL版に近いB7サイズの硬質ケースがいきなり売れるようになりました。硬質ケースは事務用品として展開しているものなので、普段と異なる売上動向に社内でもなぜ? と話題になり、調べたところブロマイドをデコレーションするために硬質ケースが使われている、ということがわかりました」(大創産業 広報課)
デコレーションに使われるシールはラインナップが豊富にあり、ストーンやジュエリー風など、立体素材のものが人気のようです。取材当日は平日の午前中でしたが、シール売り場は多くの女性で賑わっていました。
「もともとブロマイドのデコレーション用に販売していた訳ではありませんが、推し活でのデコレーションというトレンドとともに、そういった使われ方が増えたようです。立体シールは昔からある商品で、それこそ平成の時代にガラケーをデコるというブームがあったときからこれらのシールは使われていました。シールカテゴリ自体は根強い人気があり、手帳をデコるのに使う人、収集する人と、推し活としてのデコ以外にも多く需要があります」
硬質デコのトレンド起源は諸説あります。そのうちの1つが、2020年に韓国サムスンが発売した折りたたみスマホ「Galaxy Z Flip」です。ガラケーのように折りたためるGalaxy Z Flipでは、カバー側をシールやストーンなどでデコる人が韓国で続出しました。サムスン公式でも、オリジナルカバーやストラップを製作できるサービス「My Galaxy」を展開し、公式でも“デコ”ブームを後押ししていたようです。
昨今は韓国のトレンドが日本に流れてくることが当たり前となり、かつてガラケーをデコっていた日本人からすると「デコ」には馴染みがあり、推し活ブームと相まって推しのグッズをデコるようになったのではないでしょうか。
筆者もブロマイドのデコ写真がSNSで話題になっているのを2020年頃に見かけており、そのあたりから「硬質デコ」という文化が波及していったように感じています。Y2K(Year 2000=2000年前後のファッションや文化)トレンドとの親和性が高いのも、ブームを後押しした印象です。
独自の商品開発で「デコが苦手」にも対応
デコレーション文化の拡大によりダイソーでは独自の商品開発を行ない、2023年夏頃から推し活向けのデコ用品の展開も始まりました。オリジナルのデコレーションを活発にする人がいる一方、「ブロマイドやカードをデコりたいけど、不器用で上手くできない」という声も多くあったそうです。
そこで、自分でデコらなくても最初から可愛い絵がプリントされている「デザインスリーブ」の販売を開始。ブロマイドが入るL版だけでなく、トレーディングカード、チェキ、ミニ色紙用とサイズ展開も豊富です。
他社の100円ショップでも推し活に特化した商品は展開されていますが、ダイソーは独自の商品が多いのも特徴。プライベートブランドでの推し活グッズの商品数は他社と比較しても多くあります。商品開発には力を入れているようで、大切なのは「市場をリサーチすること」(大創産業 広報課)と話します。
「アイドルやアニメのキャラクター、推し活をする人の推しはさまざまで、グッズも多岐にわたっています。どんなグッズがあるのかを開発部門が調査するほか、実際に推し活をしているスタッフに話を聞いて、あらゆるグッズに対応できるようさまざまなサイズで展開しています。
ブロマイドやカードだけでなく、最近は『推しの証明写真』というグッズもあります。CDの特典としてトレーディングカードはよく聞きますが、最近は証明写真という特典があるようです。それらに対応できるよう、証明写真を16枚入れられるアルバムキーホルダーを開発しました」
こうした推し活グッズを広く展開できるのは、ダイソーがもともとコンサート用の商品を手掛けていたことも関係しています。
「ダイソーでは『コンサートグッズ』から、いわゆる推し活関連グッズの展開が始まりました。まだ推し活という言葉のない、2011年からの展開です。コンサートグッズも拡大を続けており、昨今のデコレーション文化のトレンドとともに『推し活市場自体が拡大し続けている』印象があります」(大創産業 広報課)
「色」にこだわるのが推し活
デコ用品はブロマイドだけではありません。最近はスマホケースをあえて透明にし、スマホとケースの間に推しの写真を挟んでいる人をよく見かけます。その際に、単に写真を挟むのではなく、写真の周りにシールやステッカーなどをあしらってデコるのが流行っているそうです。
「こちらはデコというよりはコラージュですが、コラージュ用で人気なのが『わたしの推し活』シリーズです。2023年7月からはダイソーの独自商品として販売しているものですが、特徴はカラーバリエーションが豊富な点です。推し活をする方にとって大事なのが、推しの“メンバーカラーがあること”なので色は多く取り揃えています」(大創産業 広報課)
アイドルグループなどでは各メンバーごとにモチーフとしている色があり、漫画のキャラクターなどもイメージとなる色が決まっていることが多くあります。スマホケースでコラージュする際、「推し色で統一したい」という要望は高いそうで、さまざまな色を取り揃えているようです。
「推し色」はDAISO 東武池袋店でもこだわっている点で、店内の推し活コーナーでは色ごとに商品を陳列しています。
「推し活グッズは『自分の推し色が販売されているか』が大きなフックだと考えていますが、小規模な店舗ですとそもそも色をアソートで陳列せざるを得なかったりします。その点、池袋東武店は推し活グッズだけでここまで大きくコーナーを展開していますので、お客様のお買い物のしやすさにも繋がっていると考えています」(大創産業 広報課)
池袋店だけの珍しい取り組み
「推し活コーナー」は全国のダイソーでも珍しい取り組みだそう。
「本来ダイソーでは、キッチンや文具、ハンドメイドなど、カテゴリごとの商品陳列しか行ないません。ですが東武池袋店では『推し活コーナー』を作るにあたり、ペンケースや靴下、シール、造花と、カテゴリを横断した商品が同じエリアに陳列されています。これまでになかった取り組みなので最初は社内から戸惑う声もありましたが、今は他店からも希望する声が挙がっています」
DAISO 東武池袋店は比較的新しい店舗で、2023年2月にオープン。東武池袋に出店するにあたり、目玉商品を何にするかと考えた結果、池袋=推し活をする女性が集まる場所という観点から推し活コーナーができました。
さらに特徴的なのは「フォトスポット」がある点。持ってきたグッズなどを自由に置いて写真を撮って良いスポットで、ここも「推し色」で撮影できるよう9色のスポットが用意されています。推し活はデコ以外にも、推しのぬいぐるみを撮影する「ぬい撮り」という文化もあり、フォトスポットにぬいぐるみを置いて撮影する人も多いとのこと。
フォトスポットのデザインは季節ごとに変わり、2月上旬の取材時はバレンタイン仕様でした。過去にはクリスマスやハロウィンデザインも用意し、休日は列ができるほどの人気スポットになっています。
こうした取り組みもあり、DAISO 東武池袋店はオープンから1年も経たないうちに話題となり、「日本一推し活に強いダイソー」とも言われているそうです。
DAISO 東武池袋店は筆者も初めて訪れた店舗だったのですが、確かに推し活用品の品揃えの豊富さは群を抜いていました。普段使っている自宅最寄りの小規模な店舗では見たことのないアイテムが多く揃っています。
店舗販売のほか、オンラインストアがあるのもダイソーのありがたいところ。店舗が近くにないという方はオンラインストアもぜひチェックしてみてください。