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生まれ変わった「ANA Pay」を試す 実用的でANAユーザーにおすすめ
2023年6月19日 08:20
全日本空輸(ANA)は、同社のスマートフォンアプリ「ANAマイレージクラブアプリ」上で展開している決済サービス「ANA Pay」を、5月23日にリニューアルした。従来のANA PayはQRコードを利用したコード決済となっていたが、リニューアル後はVisaのタッチ決済と電子マネーのiDが利用可能となり利便性が向上した。
ANAを頻繁に利用し、ANAカードを日常的に使っている筆者にとって、魅力的な決済手段になるだろうか? リニューアルしたANA Payを試した。
Visaのタッチ決済およびiDに対応し利便性が大きく向上
ANA Payの詳しい仕様については関連記事を参照いただくとして、ここでは簡単に特徴を紹介する。
従来のQRコードを利用したANA Payは、利用可能な店舗が、ANAが就航している全国の空港にあるギフトショップ「ANA FESTA」と、JCBが運営するコード決済システム「Smart Code」を導入している店舗のみと少なかったことや、ANA PayへのチャージもJCBブランドのクレジットカードのみとなっていたことで、使い勝手が悪かった。
対してリニューアルしたANA Payは、決済方法としてVISAのタッチ決済と、電子マネーのiDが利用可能となったことで、利用可能な店舗が一気に拡充。使い勝手の悪さも払拭された。
加えて、チャージ手段としても、Visa、Mastercard、JCB、Diners Clubと4ブランドのクレジットカードが利用可能になるとともに、セブン銀行ATMを利用した現金チャージやApple Payからのチャージにも対応。また、2023年中には銀行口座からのチャージにも対応する予定。さらに、ANAのマイルから1マイル=1円としてチャージも可能となった。
このように、決済方法とチャージ方法が拡充されたことで、利便性が一気に向上した形だ。
この他、ANA Payでの支払時に200円に付き1マイルが付与されるとともに、ANAカードからの残高チャージ時にもマイルが付与される。
ただし、クレジットカード、Apple Pay、現金によるチャージは「ANA Payキャッシュ」、マイルからの移行チャージは「ANA Payマイル」として、それぞれ別管理となる。双方の同時利用は現時点では非対応となっているため、この点は少々扱いづらい。将来、双方の残高を同時利用できるようにしたいとのことだが、早急に実現してもらいたいところだ。
ちなみに、従来のQRコードを利用したANA Payは2023年11月にサービス提供が終了となる。そして、従来のANA Payから新しいANA Payへの残高移行は行なわれない。サービス終了後に残っている残高は返金対応となるが、従来のANA Payを利用している人は注意したい。
設定は「ANAマイレージクラブアプリ」から
ここからは、新しいANA Payの初期設定方法を紹介しよう。ただし、5月23日から新しいANA Payが利用可能となったのはiOS版のみで、Android版は6月下旬以降の対応となる。手順自体は大きな違いはないと思われるが、今回はiOS版を利用した手順を紹介する。
また、ANA Payを利用するにはANAマイレージクラブへの入会も必要となる。今回はANAマイレージクラブへの入会手順は省いているが、ANAマイレージクラブに入会していない人は、入会手続きも必要だ。本稿では、すでにANAマイレージクラブに入会し、アプリもログインした状態で進める。
iOS版の新しいANA Payを利用するには、5月23日より配布が始まっているANAマイレージクラブアプリの最新版をインストールする。
アプリを起動し、メインメニュー下部の「Pay」ボタンをタップすると、ANA Payのメニューへと切り替わる。初期設定を行なっていない状態では、ANA Payのメニュー下部に「新しいANA Pay(タッチ払い)をはじめる」というボタンが表示されるので、そのボタンをタップし、初期設定を開始する。
はじめにANA Pay会員規約が表示され、内容を確認して下部の「同意する」ボタンをタップ。続いて電話番号の登録を行なうため、利用しているスマホの電話番号を入力し「完了」ボタンをタップ。なお登録できるのは「090」「080」「070」から始まる番号のみとなっている。しばらくするとSMSが届くので、そちらに記載されている認証コードを入力すると、電話番号の登録は完了だ。
次にメールアドレスを登録する。こちらも手順は電話番号の登録とほぼ同じで、メールアドレスを入力し、そのアドレスに届く確認メールに記載されている認証コードを入力すればいい。
続いて、Apple PayにANA Payのカードを追加する。こちらは、画面に表示される利用規約への同意を行なう必要はあるが、特に入力作業はなく、画面の指示に従って作業を進めていけばApple PayにANA Payのカードが追加される。
最後にメインカードに設定するかどうかを選択する。ANA Payをメインカードとして利用したい場合には下部の「メインカードとして使用」ボタンをタップするとANA Payがメインカードに設定される。メインカードに設定したくない場合には「今はしない」ボタンをタップすればいい。
以上でANA Payの初期設定は完了。電話番号とメールアドレスの登録は必要だが、特に面倒な入力作業はないため、スムーズに登録できるはずだ。
ANA Payキャッシュのチャージ手順
ANA Payの残高は、前述のように「ANA Payキャッシュ」と「ANA Payマイル」に分けられている。ここでは、ANA Payキャッシュへのチャージ方法を紹介する。
「ANA Payキャッシュ」へのチャージ方法は、先に紹介したように4ブランドのクレジットカード、Apple Pay、セブン銀行ATMを利用した現金チャージの3種類を用意。このうち、ANA Payを利用する人の多くの人が選択するであろう、クレジットカードのチャージ方法をはじめに紹介する。
なぜチャージにクレジットカードを選択する人が多いと想定したのか。それはANAブランドのクレジットカード「ANAカード」からのチャージ時にマイルが付与されるからだ。それ以外のチャージ方法ではチャージ時のマイル付与はないため、ANAカードを持っている人であれば基本この方法を利用するだろう。
チャージ用クレジットカードの登録は簡単で、まず、ANA Payのメインメニューの中程にある「チャージ」ボタンをタップする。すると残高とともにチャージ手段のボタンが表示されるので、そこから「クレジットカード」をタップする。初めての利用時には「クレジットカードの登録が必要です」というダイアログが表示されるので、「クレジットカードを登録する」ボタンをタップして作業を進める。
作業自体は、クレジットカード番号、名義人、有効期限、セキュリティコードを入力するだけだ。入力内容が間違っていなければ、時間を置かずに登録が完了する。複数のクレジットカードを登録したい場合には、同様の作業を繰り返せばいい。
クレジットカードの登録が完了したら、チャージ金額を指定して「チャージする」ボタンをタップ。すると最終確認画面が表示されるので、下部の「チャージ」ボタンをタップするとチャージが完了する。チャージ画面を閉じると、メインメニューで指定した金額が残高としてチャージされていることを確認できるはずだ。
次にApple Payを利用したチャージ方法だ。こちらはApple Payでアプリ内課金の支払を行なう場合とほぼ同等の手順となる。クレジットカードチャージ同様にメインメニューからチャージボタンをタップし、チャージ手段としてApple Payを選択。あとは、Apple Payに登録してある決済手段から利用したいものを選択し、Touch IDやFace IDの認証を行なえばチャージが完了する。
最後にセブン銀行ATMからの現金チャージ。こちらは実際のチャージは行なっていないが、手順としては他のスマホを利用したセブン銀行ATMの入金作業と同等。ATMで「スマートフォンでの取引」を選択し、画面に表示されるQRコードをアプリで読み取る。その後、企業番号を入力し、現金を投入すればチャージが行なわれる。
「本人確認」でチャージ残高が拡張 オートチャージも設定可能に
ANA Payキャッシュへのチャージは、通常は1回あたり2万円まで、1日あたり2万円まで、1カ月あたり10万円までが上限となる。ただし、本人確認を行なうと、チャージ上限が1回あたり10万円まで、1日あたり10万円まで、1カ月あたり30万円までに引き上げられる。
さらに、クレジットカードを利用したオートチャージも利用可能となる。そのため、ANA Payを積極的に活用したいと考えるなら、本人確認も行なっておくべきだろう。
本人確認の手順は、オンラインでの携帯電話の契約や銀行口座の開設などと同じように、オンラインで行なわれる(いわゆるeKYC)。
はじめに氏名を入力。続いて本人確認書類を撮影する。本人確認書類として利用できるのは、運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、運転経歴証明書、特別永住者証明書の5種類のみ。用意した本人確認書類を、アプリの指示に従って表や裏、斜めなどから撮影する。
続いて、顔写真の撮影や、画面の指示通りに顔の向きを動かすリアルタイムチェックが行なわれる。
以上の作業が終了すると、実際の確認が行なわれ、確認結果がメールで連絡される。今回試した場合では、ANA Pay提供開始直後だったこともあって確認結果メールが届くまでに数日要したが、通常はそれほど時間をかけることなく結果が届くだろう。
本人確認が完了したら、必要ならばオートチャージの設定を行おう。本人確認が完了していると、ANA Payメインメニューの「オートチャージ設定」ボタンが利用可能となるのでタップ。そして、「オートチャージを有効にする」スライドボタンをタップしてオートチャージ設定を有効にするとともに、オートチャージ判定残高とチャージ金額、引き落としのクレジットカードを設定する。
オートチャージ判定残高はオートチャージを行なうしきい値で、ANA Payキャッシュ残高がその金額を下回ったら、設定で指定した金額が自動的にチャージされる。
ANA Payマイルは端数マイルの活用に便利
次に、ANAのマイルからの移行となる「ANA Payマイル」のチャージ方法。こちらはANA Payキャッシュとは別枠の残高となるため使い勝手は悪いものの、これまで特典などに交換できず有効期限(最長36カ月後の月末まで)で消滅していたマイルの端数を有効活用できるという点でありがたい機能だ。
ただし、全てのマイルを移行できるわけではない。ANAのマイルはフライトやショッピングなどで付与される通常マイルと、キャンペーンなどで付与されるマイルがあり、それぞれグループ1から4までにグループが分けられている。そしてANA Payマイルに移行できるのは通常マイルのグループ1と、キャンペーンなどで付与されるグループ2と3のマイルのみとなる。全マイルが移行できないのは残念だ。
では、マイルからの移行手順だ。まず、ANA Payメインメニュー上部の「マイル」ボタンをタップしてANA Payマイルに切り替える。そして、チャージボタンをタップし、移行させたいマイル数を入力する。これでマイルがANA Payマイルに移行される。
ちなみに、マイルからの移行は、通常は1回あたり5,000マイル、1日あたり5,000マイル、1カ月あたり3万マイルが上限となる。そして、本人確認を行なうと、1回あたり1万マイル、1日あたり1万マイル、1カ月あたり5万マイルが上限へと引き上げられる。
決済はApple Pay経由なので非常に簡単
さて、チャージした残高の使い方だが、iOS版の場合はApple Pay経由となるため、通常のApple Pay決済と全く同じと考えていい。
Apple Payに登録されたANA Payカードは、VISAのタッチ決済とiDに対応。決済時には、Apple Payで支払うか、VISAのタッチ決済またはiDで支払うことを伝え、Touch IDやFace IDでの認証を行なったうえで決済端末にタッチするだけだ。ANA Payだからといって他の決済方法と違った操作は不要で、簡単に利用できる。
実際に、コンビニや自販機、カフェや飲食店など、いくつかの場所で利用してみたが、もちろん全くトラブルなく利用できた。
また、バーチャルカードを利用することで、オンラインショッピングサイトなどでの決済にも利用可能。ANA Pay上部のカード型ボタンをタップし、Touch IDやFace IDで認証すると、カード番号や有効期限などの情報が表示される。その情報を利用して、通常のクレジットカード同等の決済が行なえる。なお、カードのブランドはVisaとなる。
“使おう”と思える決済手段になった
従来のQRコードを利用したANA Payは、航空会社による独自の決済サービスということで、開始直後にはそこそこ注目された。ただ、利用場所が限定的で、チャージもJCBカード経由のみのため、利便性が悪く、空港のANA FESTAでも使っている場面に遭遇することは全くなかった。筆者も、当時JCBブランドのクレジットカードを持っていなかったこともあり、1度も利用することはなかった。現在はJCBブランドのクレジットカードを所有しているものの、ANA Payについては存在そのものを忘れていた。
それに対し新しいANA Payは、VISAのタッチ決済とiDが利用可能になり、使えるお店が増えたのはもちろん、決済自体も非常にやりやすくなった。
ANA PayキャッシュとANA Payマイルが別残高で管理されるなど、改善すべき点も残されている。また、筆者のようにAndroidスマホをメインで使っている人にとって、iOS版が先行という点も残念な部分だ。
それでも、利便性が大きく向上したANA Payは、日常使いの決済手段として十分活躍できそうで、これなら使ってもいいと思える決済手段になった。
とはいえ、ANA Payを万人におすすめしようとは思わない。なぜなら、ANA PayはANAを使わない人にとってそれほど魅力のある決済手段ではないからだ。ただし、筆者のように日常決済のほとんどをANAカードに集約してせっせとANAのマイルを貯めている人にとっては魅力的な決済手段だ。そうした人には、ANA Payでの決済だけでなく、ANAカードからのチャージにもマイルが付与されるという特徴も合わせ、積極的な利用をおすすめしたい。