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なぜ「キラキラ」に? ドンキ新業態「キラキラドンキ」の狙い

キラキラドンキ ダイバーシティ東京 プラザ店

ドン・キホーテが'22年5月にオープンした「キラキラドンキ」をご存知でしょうか。Z世代をターゲットにしたドン・キホーテの新業態店舗で、SNSで話題の食品やコスメを中心に取り扱っています。

通常のドン・キホーテは路面店がほとんどですが、キラキラドンキは東京・台場エリアの「ダイバーシティ東京 プラザ」内にあります。外観も白とパステルカラーを基調にしており、これまでのドン・キホーテとはかなり異なる印象です。

なぜ、「キラキラドンキ」という名前で新業態の店舗をオープンしたのか、これまでのドン・キホーテから何を変えたのか、その狙いを聞いてみました。

扱う商品は食品とコスメが中心
外観は白とパステルカラーを基調にしており、これまでにないデザイン

始まりは「お菓子ドンキ」「お酒ドンキ」

キラキラドンキで取り扱っている商品は、お菓子などの食品や化粧品、雑貨がメイン。通常のドン・キホーテは日用品から家電までなんでも売っていますが、キラキラドンキは「カテゴリ特化」を特徴としています。

この「カテゴリ特化店舗」として最初に展開したのは、東京駅八重洲地下街(ヤエチカ)の「お菓子ドンキ・お酒ドンキ」。'21年5月にオープンしています。

「八重洲地下街へ出店することになり、どんな店舗にするか話し合う中で、最初はコンビニのように最寄品を集めた小さいドンキを作ろうかなど、様々な意見が出ました。ですが、半端な品揃えでは、中途半端な店になってしまう、と方向を改め、1つのカテゴリに特化してみようという結論に至りました。そうして生まれたのが『お菓子ドンキ・お酒ドンキ』です」と、ドン・キホーテを運営するパン・パシフィックインターナショナルホールディングスの広報担当は話します。

'21年5月に八重洲地下街にオープンしたお菓子ドンキ・お酒ドンキ

ショッピングモールでの特化型業態に手応えを感じ、「○○ドンキ」としてさらに出店していくことを決定。千葉県のショッピングモールに化粧品専門店の「コスメドンキ」、さまざまな種類の辛さを集めた「驚辛(きょうから)ドンキ」などを展開していきます。

そしてダイバーシティ東京 プラザへの出店が決まり、どのカテゴリに特化するかを協議。お台場エリアを観光地、デートスポットと捉え、若年層との親和性が高いカテゴリとして、お菓子やコスメを中心に扱うことが決まりました。

「キラキラドンキ」はZ世代社員の提案

店名はこの時点では決まっておらず、当初は「ガールズドンキ」や「オトメドンキ」といった案がありましたが、Z世代の社員からダサいと反対意見が多かったそう。

「キラキラドンキ」という店名は、現場のZ世代の社員から提案があり、反対にこちらは上層部から難色を示されたようです。「40~50代の男性からすると“キラキラネーム”のイメージが強いらしく、反応はイマイチでした。けれど若い世代にはキラキラという言葉に悪いイメージはなく、“ここに来ればキラキラになれる”と思ってもらえています」と、店長の沢里 優美さんは話します。

実際に店舗取材をしている最中も、通りすがる人から「キラキラドンキだって」という声が何度も聞こえ、そのまま店内に入っていく人も多くいました。

外観デザインも、ネオンカラーを使うと方向性が決まった後、上層部は黒背景を提案。ですが現場スタッフが「黒背景にネオンカラーはZ世代が考えるキラキラではない」と掛け合い、今のデザインになったそうです。

キラキラドンキ ダイバーシティ東京 プラザ店 沢里 優美店長
外観デザインも現場スタッフの意見を反映

店内で目立つ場所に陳列されているのが、お菓子類の食品と、韓国や中国発のアジアンコスメ。お菓子は特にグミが人気なこともあり、輸入菓子を含めさまざまなグミが並んでいます。

「今の若い人たちはアメやガムを食べません。口の中に長く残ることを嫌がるようで、売り上げにもその傾向が現れています。販売するグミの種類はSNSで人気なもののほか、自分たちで調査して仕入れているものもあります」(沢里さん)

店頭のお菓子売り場
さまざまなグミが売られています

アジアンコスメも、定番の韓国コスメやトレンドの中国コスメなどが目を惹きます。これらの商品は購入できる場所が限られており、若い世代はアジアンコスメを買う際に、ECサイト「Qoo10(キューテン)」を利用する人が多いそう。

「店舗に訪れたお客様からは“Qoo10で売ってる商品の実物が見れる”と喜んでもらっています。ECサイトで販売されている商品の実物を試せるのもキラキラドンキの特徴です」(沢里さん)

コスメコーナーの一番目立つところにはトレンドの中国コスメが陳列されていました
中国将棋をイメージしたコスメ

通路を広くし、清潔感のある店内

売り上げの構成比は、半数をお菓子(食品)が占めており、残りの3~4割がコスメになるそうです。また、来店層に関しても、当初はZ世代をターゲットにしていましたが、実際はファミリー層も多く訪れることがわかったそうです。

店舗作りで意識している点について聞くと、「通路を広くし、清潔感がある店内を心掛けています。ポップも通常のドンキは安さを押し出していますが、キラキラドンキでは商品の魅力が伝わるように通常よりもコメント量が多いのも特徴です。また、子供も多く来店するので、陳列棚の高さはあまり出さず、子供の視界に入るまでの商品陳列をするようにしています」とコメント。

店頭ではお菓子類が目立つ位置に陳列されていますが、ドン・キホーテのPB商品である「情熱価格」の食品も店内で扱っています。「ファミリーでの来店も多いため、子供はお菓子コーナー、親は食品コーナーで買い物というパターンもよく見かけます」(沢里さん)

通路が広く清潔感があります
ポップも安さではなく、商品の魅力が伝わるように通常よりもコメント量が多いのが特徴
PB商品の「情熱価格」食品は店内に
その場で食べられるスイーツの提供もあります
ワッフルサンドやワッフルバーなど

お菓子ドンキにお酒ドンキ、キラキラドンキと「○○ドンキ」は今後も広がっていくのでしょうか。

「特化型ドンキを広げていったのは、最初のお菓子ドンキとお酒ドンキに手応えがあったのはもちろん、既存のドン・キホーテにも副次的なメリットがあったからです。品揃えが豊富で価格が安いというドン・キホーテの特徴はお客様に十分に伝わっており、ドンキブランドをさらに尖らせていきたいという思いから、『○○ドンキ』を展開していきました。

『○○ドンキ』で培ったノウハウは既存のドン・キホーテにも活かし、店舗の一部をコーナー化するといった広がりも始まっています。なので、『○○ドンキ』はどんどん広げていくという訳ではなく、実験型店舗という位置付けで実用的なものはそのまま残していく可能性もありますが、特化型店舗により既存のドン・キホーテの魅力向上につなげていくという考えで展開しています」(広報担当)

あくまでも実験型店舗という位置付けですが、キラキラドンキはこれまでのドン・キホーテとは異なる雰囲気で、実際に筆者も買い物をしてみましたが、商品が見やすく手に取りやすいのが印象的でした。

実物を見る機会がなかなかなかったネットで話題の商品も豊富で、値段が安くポップの説明も魅力的なので試しに買ってみようと思えます。既存のドン・キホーテに今度どんな変化をもたらすのか、今後の動向に期待が膨らみます。

西村 夢音