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「完全メシ」って何? 普通のラ王やカレーメシとの違い
2022年6月23日 08:20
日清食品から5月30日に公式オンラインストアで発売され、一部コンビニでも販売を開始した「完全メシ」をご存じでしょうか? 「栄養とおいしさの完全バランス!」をキャッチコピーに「カレーメシ 欧風カレー」、「豚辛ラ王 油そば」、2種類の「スムージー」、「大豆グラノーラ」の5品目がラインナップされています。いったいどのような背景からこの商品が生まれたのか、通常商品とはどこが違うのか、日清食品 ビヨンドフード事業部 マーケティング部 ブランドマネージャーの金子大介さんに、「完全メシ」の誕生秘話を聞いてきました。
「栄養とおいしさのバランスが完全であることを、『完全メシ』『完全メシ』というブランド名で表現しました。厚生労働省が定めた日本人の食事摂取基準で設定されている33種類の栄養素をバランスよく摂取できるだけでなく、たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素のバランスがパーフェクト。さらに、おいしさにこだわり抜いているのもポイントです。栄養素を摂取できる食品は色々と販売されていますが、『味はイマイチ』というイメージをお持ちの方が多いと思います。さらにドリンクやシリアルバーのような商品が多く、食事と呼べるものは意外と少ない。そこで我々はおいしさと栄養バランスが整った食品を目指し、開発を進めたわけです」
開発の背景にあるのは「飽食」という食生活の問題
開発の背景には、「飽食」や「新型栄養失調」という現代の食生活が抱える問題が大きく関わっています。
「日清食品は1958年に創業しました。当時は戦後間もない頃で国民の栄養不足が問題になっていたため『手軽でおいしく、安価で安全な食べ物』としてチキンラーメンを開発したんです。対して、今は飽食の時代です。オーバーカロリーにより肥満を引き起こし、世界では20億人以上が過体重や肥満というデータがあるほど栄養過多の問題が顕在化しています。世界での肥満による経済損失を換算すると2兆ドル以上になるというショッキングなデータもあるほどです。一方、ダイエットによるカロリー制限で栄養不足になるという問題もあります。そういった“栄養バランスの偏り”に起因する課題を解決したい、と考えました」
日清食品ではこのような現代の食生活が抱える問題に対し、見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質、たんぱく質などをコントロールし、日本人の食事摂取基準で設定された必要な33種類の栄養素をバランスよくすべて摂取できる食事の開発に取り組んでいます。
現在は、冷凍食品やフレッシュ調理のお弁当、お惣菜、ミールキットなど、多種多様なメニューを展開する準備を進めています。
あらゆるニーズを考えて5品をラインナップ
こうしたコンセプトを「完全メシ」も踏襲しているそうです。ターゲットはパッケージにもあるように「栄養バランスが気になる人」。例えば「健康診断で引っかかってしまい栄養バランスの良い食事を摂りたいけど、自分ではどうしたらいいのかわからない」といった健康を気遣う人への悩みにアプローチしていきたいと金子さんは話します。
「皮切りとしてこの5品を揃えたのは、あらゆるターゲットにマッチすると考えたからです。日清食品の代名詞であるカップ麺に限らずいろいろなカテゴリーに商品を展開することで、世代や性別を超えてニーズやライフスタイルに合ったものを提供できるのではないかと思い、スムージーやグラノーラも用意しました。この5品に留まらず今後はカテゴリーを広げ、フレーバーも増やしていきたいと思っています」
ガマンを強いられる食生活の改善は長続きしないものです。しかし、普段の食事を「完全メシ」に置き換えるだけで、行動変容を起こさずに必要な栄養素をバランス良く摂ることができる。日清食品は、あらゆる人の食生活に自然と入り込んでいけるような商品づくりを目指しています。
「商品ラインナップについては、シーンに合わせて選べることも意識しました。仕事が忙しくて食事が偏りがちな人、健康的にダイエットしたい人、体を鍛えたい人など、それぞれにマッチする商品が必ずある。今後も商品群を増やすことで、完全メシを活用できるシーンも広げていきたいと考えています」
油そばとカレーメシを実食! なんでカップヌードルではない?
ここからは商品それぞれの味づくりや完全メシならではの製法について聞いてみます。「カレーメシ」は通常商品もありますが、完全メシではあえて通常商品にはないフレーバー「欧風カレー」を選んでいます。
「欧風カレーは通常のカレーメシでも過去に発売したことがありますが、その時はチーズを入れて万人受けする味に仕上げていました。しかし今回はターゲットを大人に設定しているので、最初は甘みを、最後にはピリッとしたスパイシーさを感じられるようにしています。味づくりではコクや濃厚感、スパイス感といったおいしさに繋がる部分を意識しました」
実際に食べてみると、通常のカレーメシと変わらないおいしさ。王道の欧風カレーといった馴染みがある味わいで、最後にじんわりとくるスパイシーさに高級感も感じます。お米も通常品と変わらない食感とおいしさなのに、一体どこに栄養素が入っているのでしょうか。
「通常のカレーメシは精米したお米をガス炊きしていますが、完全メシはお米と栄養素を一緒に炊き込んでいるので、ご飯を食べればたんぱく質と食物繊維を摂取できるわけです」
続いて「豚辛ラ王 油そば」を試食。「これで塩分を抑えているのか?!」と思うほど味は濃厚で、油そばらしいガッツリとした食べ応えもある。これならカップ麺を食べ慣れている人でも違和感なく食べられそうです。しかし、日清食品ならカップヌードルからスタートするのが定石ではないかと思うのですが……。
「健康や栄養バランスに気を使う人にとって、カレーや油そばは敬遠しがちなメニューです。そうした健康とはかけ離れて見えるメニューの栄養バランスを整えて商品化すれば、『いきなりそこを攻める?』といった驚きがありますよね。油そばなのに塩分も油分もコントロールできるというギャップによって、完全メシのコンセプトである『栄養とおいしさのバランスが整っている』という部分をしっかりアピールできると考えました」
今まで培ってきた技術を結集して誕生した完全メシ
栄養素を料理の中に入れ込むことは、製造工程上いろいろな難しさがあったと金子さんは続けます。
「例えば麺に栄養素を入れると製造条件が変わってしまうため、製麺性が悪くなるなどさまざまな問題が発生しました。さらに、栄養素には独特の苦味やえぐみがあるため、普通に入れるだけでは味に影響が出てしまいます。そういう問題をひとつひとつ解決していくため、さまざまな技術を複合的に使用しているんです」
栄養素がたくさん入った商品をこれだけおいしくつくるには企画から販売まで、とてつもない時間がかかったのではないかと思いますが……。
「実はそんなにかかっていないんです。普通なら時間がかかると思いますが、日清食品にはこれまで即席麺で培ってきたさまざまな技術があるので、それを完全メシの技術に応用することができました。今までの経営資源を結集させたからこそ、このスピードで完全メシをつくることができたと思っています」
日清食品がインスタントラーメンなどで培った技術は数多くあるようです。
「技術の一例が、少ない塩でも塩味を感じられるようにする減塩技術。これは『カップヌードル ソルトオフ』にも使われている技術で、約170種類の塩を世界中から集めて分析し、ようやくたどり着いた素材を使った技術です。このほか、麺の中心層の一部に小麦の代わりに食物繊維とたんぱく質を入れる3層麺製法技術や、お米と栄養素を一緒に炊き込むことで、米本来のおいしさはそのままに栄養摂取も可能にした米の加工技術などを使用しました。既存の技術をそのまま使うのではなく、各メニューに最適化して使うことで栄養とおいしさを両立しています」
スムージーとグラノーラを実食! 朝食やおやつに最適
続いて、2種類のスムージーと大豆グラノーラを食べてみました。スムージーはどちらもトロリとした濃厚な飲み口。腹持ちも良さそうなので朝食代わりにこれ1本でもいけそうです。さらに、フレッシュなフルーツ感もおいしさを引き立てます。
「SNSでも『朝はこれだけでいいじゃん!』といったコメントを目にしますし、我々も朝食やおやつなどで食べて欲しいと考えながら開発した商品です。ドリンクタイプのスムージーは日清食品初で、我々があまり手掛けてこなかった朝食マーケットへのチャレンジにもなっています」
スムージーは常温で6カ月もの長期保存が可能です。家に何本も常備しておいて、飲みたい分だけ冷やしておくこともできます。
大豆グラノーラは牛乳をかけて試食。きなこの風味に黒大豆が加わり、豊かな味わいに仕上げられています。食感もよく飽きの来ない味で、個人的にはかなりの高評価です。
「実は牛乳をかけなくても、カルシウムやたんぱく質を含めた栄養素をバランス良く摂れるようになっています。きなこだけでなくアーモンドの粉末も入れて香ばしさをプラスし、クルミと黒大豆を食感のアクセントにするなど、味にも食感にも徹底的にこだわっています」
使いやすいように1食分の食べきりになっているのもいいところ。こちらもスムージーと同様に朝食にもおやつにもなりますね。
もっとも苦労したのは味と栄養バランスの調整
栄養素とおいしさの完全バランスに関しては日清食品の技術で実現することができましたが、肝心の味についてはどのように作り上げていったのでしょうか?
「味は人それぞれに好みがあるので数字だけでは計りきれません。さらに食感によっても味の感じ方は変わってきますから、研究所でもマーケティング部でも、“食べること”が何よりも重要な仕事です」
完全メシの「味」の部分で難しかったのは、味を変えると栄養バランスまで変わってしまうことだったそうです。
「味が物足りないからといって何かを足すと、栄養バランスが変わってしまうので、商品全体を調整し直さなければならないんです。栄養が調整できたと思ったら、今度は味に問題が出たり……。開発では味と栄養バランスの地道な調整が一番苦労したところですね」
フレッシュなフルーツを使っているスムージーは、素材本来の味や香りを損なわないよう気を配った、と金子さん。完全メシには「お客様においしいものを届けたい」というメーカーの情熱や努力が詰まっています。
管理栄養士の9割が推奨している完全栄養食
栄養素がバランス良く入っているだけでなく、おいしさへのこだわりも実食により体感することができました。さらに、完全メシは、管理栄養士のお墨付きをもらっているそうです。
「カレーメシ 欧風カレーと豚辛ラ王 油そばについて、管理栄養士の方々にアンケートを取ったところ、9割の方から『食事の選択肢の一つとして活用してほしい』という意見をいただくことができました。栄養バランスを整えることの難しさをご理解いただいている方々ですので、『おすすめできます』という声をたくさんいただけたことはとてもありがたいです」
たんぱく質をしっかり摂れるところも評価されたのではないかと金子さんは推測します。
「この1食でカレーメシは20.9g、豚辛ラ王は20gのたんぱく質を摂ることができます。多くのたんぱく質を摂ろうとすると、ほかの栄養とのトレードオフになって、栄養バランスが崩れてしまう可能性が高いんですよね。1食で栄養バランスのいい食事が摂れる点を評価いただけたのではないでしょうか」
カップ麺で健康を目指そう! ラインナップも拡充へ
発売して間もないながらもSNSを分析したところ9割以上がポジティブコメント。想定の2倍以上ものオーダーが入ってきていて幸先の良いスタートが切れたようです。少し気が早いですが、今後の展開についても金子さんに聞いてみました。
「今まで日清食品が手掛けていないようなカテゴリーに挑戦していく予定ですので、意外性のある商品展開にもご期待ください。もちろん日清食品らしい商品もどんどん登場すると思いますので、両方を楽しんでもらえるとうれしいです」
これなら罪悪感、背徳感なく思い切りおいしいカップ麺を食べられそうですね。
「食べるからには、おいしくて栄養もあるというトータルでの満足感を味わってもらいたいと思っています。ゴールは普段の食生活の中に完全メシを取り入れていただき、無理なく、ガマンをせずに、栄養素をバランスよく摂っていただくこと。そのためにもラインナップの拡充にしっかりと取り組んでいきたいと思っています」