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iPhoneとマイナンバーカードで確定申告した。マイナポータル連携が便利(難しい)
2022年2月18日 08:15
2022年も2月に入り、確定申告の時期となりました。確定申告期間は2月16日(e-Taxを利用した電子申告は1月から)から3月16日までですが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、申告時に「コロナのため」と追記することで、4月16日までの延長も可能となっています。
しかし、なるべく早く済ませてスッキリしておきたいところ。また、国税庁による「確定申告特集ページ」も毎年強化されおり、2022年(令和3年度分)確定申告は、スマートフォンでのe-Tax操作の簡略化や、マイナポータル連携による控除証明書等取得、スマホのカメラで撮影した「給与所得の源泉徴収票」の自動入力などに対応しました。PCにおいてもICカード“無し”での申告に対応するなど、かなりの多くの改善が盛り込まれています。
弊誌では、初のスマホ対応となった2019年以来「スマホで確定申告」を紹介していますが、2022年もスマホ(iPhone 12 Pro)を使って確定申告してみました。なお、この記事では確定申告の書き方等についてはほぼ触れず、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」のスマホ申請における使い勝手を紹介します。
2022年確定申告の目玉「マイナポータル連携」
確定申告コーナーの今年一番のポイントは、PCにおいてICカードリーダーが不要になったことかと思いますが、今回はスマホ申告です。
スマートフォンを使った確定申告は、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」がありますが、将来的にはマイナンバーカード方式への集約が予定されています。今回はマイナンバーカード方式での申告について紹介します。
マイナンバーカード方式のスマホ申告は、今年主に以下の機能強化が図られています。
- スマホのカメラで「給与所得の源泉徴収票」を自動入力
- スマホ申告の対象範囲拡大。カード読取回数削減
- マイナポータル連携で自動入力が拡大
私見ですが、このうち目玉は「マイナポータル連携」の拡大です。マイナポータルは、マイナンバーカードと連携し、様々なサービスを紐付けて情報の取得や各種申請ができるサービスですが、新たに、ふるさと納税、地震保険料、医療費が「マイナポータル連携」対象になりました。
昨年('21年)から、生命保険料控除証明書や特定口座年間取引報告書の情報、住宅借入金等特別控除証明書などがマイナポータルから取得できるようになっていましたが、保険や住宅ローン等については、会社員の場合は「年末調整」で対応済みのケースが多いと思われます。
特に今年は「ふるさと納税」に対応したことで、「寄附金控除に関する証明書」をマイナポータルから自動取得できるようになります。この証明書は、ふるさと納税をした人に自治体から届く寄付の証明書で、これまでは証明書ごとに金額を転記する必要がありました。これがほぼ自動になることで、より多くの人が、確定申告の手間を減らせそうです(と考えました。使う前は)。
筆者の場合、会社で年末調整を済ましており保険等の連携は必要ありませんが、今年はふるさと納税を行なったため、このマイナポータル連携を試すこととしました。
結論から言うと、マイナポータル連携は結構ややこしい部分があります。ただし、今後、確定申告だけでなく年末調整等にも活用する可能性もあるので、この仕組に慣れておくのは良いと思います。
事前に流れをチェックしておこう
確定申告書の作成・e-Tax提出には、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」を利用します。また、申告書の作成の前に、「流れ」を一度確認しておくことをおすすめします。
マイナンバーカード方式のスマホ申告の流れ[マイナポータルと連携あり]
マイナンバーカード方式のスマホ申告の流れ[マイナポータルと連携なし]
なお、今回筆者はiPhone 12 Proを使っていますが、iPhone(iOS 15.3.1)でマイナンバーカード方式で申請する場合、ブラウザはSafariを使います。Chromeの場合、マイナンバーカード読み取り時にChromeでマイナポータルAPが起動してしまうため、推奨環境外となります。また、Safariを申告に使うことから不要なタブは作業前に閉じておきましょう。
確定申告書等作成コーナーでは、まず[作成開始]から[e-Tax(マイナンバーカード方式)]を選択。画面に沿って、項目を選んで進め、マイナポータルと連携してデータを取得する場合は「連携する」を選びます。
この後、「マイナポータル」アプリに移動します。マイナンバーカードをスマホにかざし、パスワード(4桁)を入れることで、マイナポータルに入れます。初めてのe-Tax利用の場合は、マイナンバーカードを読み取り、利用者情報の登録、提出先税務署の確認などを行ないます。
マイナポータル連携する場合は、この後がややこしいので詳しく書いていきます。
マイナポータル連携を試す
マイナポータル連携の主なメリットは以下の通りです。
- 事前の設定は初めて利用する1回のみで、次からは設定不要
- 毎年情報取得できる
- データ取得するので、書類の保管、管理が不要(e-Tax送信する場合のみ)
- 確定申告書作成コーナー等へ自動入力できる
- 今後、取得する情報を拡大していく予定(年金の源泉徴収票など)
つまり、自分のマイナポータルと関連サービスを連携すると、今後は保険やふるさと納税など、年末調整・確定申告などに必要なデータが自動取得できるようになるのです。課題としては、設定がややわかりにくい、ということです。
マイナポータル連携を行なう場合は「事前設定」が始まります。初めてマイナポータルを使う場合は、ここで利用者登録も必要です。
マイナポータルに表示される「利用者登録/ログインして使う」をタップし、表示される「ログイン」画面で「利用者登録」をタップすると、マイナポータルアプリが起動します。ここでマイナンバーカードの「利用者証明用電子証明書のパスワード(4桁)」を入力し、「次へ」をタップすると、マイナンバーカードの読み取りを促されます。カードをかざすとログインが完了し、利用規約に同意すると利用者登録の申込みが完了します。
その後、マイナポータルが表示され、サービス一覧の「もっとつながる」をタップし、「確定申告の事前準備をする」から、取得したい証明書を選びます。「医療費」「ふるさと納税」「住宅ローン控除関係」「生命保険」「地震保険」「株式の特定口座」などから必要な証明書を選びます。
筆者の場合年末調整済みのため、「医療費控除」と「ふるさと納税」のみONにして次に進みました。なお、マイナポータルからデータ取得した後で、申請に使うかどうかを選べるようになっています。
ふるさと納税では、寄付金の受領書が自動取得でき、ポータルのほか一部の自治体も対応しているようです。保険会社やポータルとの連携には、「民間送達サービス」との連携が必要です。
筆者の場合、ふるさと納税は、ポータルサイト「ふるさとチョイス」を使いました。ふるさとチョイスでは、民間送達サービスとして野村総研の「e-私書箱」というサービスを採用しています。そのため、まずe-私書箱と連携を行ないます。
e-私書箱とe-Taxを連携させるため、マイナンバーカードの利用者証明電子証明書のパスワードを入力すると、「つながり」が完了。そのあとで自分が連携したいサービスをe-私書箱に紐付けます。そのe-私書箱の中の対応サービスとして、ふるさとチョイスを運営する株式会社トラストバンクを選択しました。
なお、ふるさとチョイスのほかにも、ふるさと納税ポータルは多数ありますが、「さとふる」「ふるなび」「楽天ふるさと納税」の計4サービスがこのe-私書箱を使っている(2022年2月時点)ため、設定方法等は概ね共通かと思います。また、地方団体が証明書発行者となる「ふるさと納税e-Tax連携サービス」というサービスもスタートしています。マイナポータル連携の際には、ふるさと納税をした自治体やポータルが、これらのサービスに対応しているかどうかの確認が必要です。
加えて、ふるさとチョイス側で事前に「チョイススマート確定申告」という機能の発行申し込みが必要で、この機能では寄付金控除に関する証明書(XMLファイル)の発行が行なえます。2月4日(金)に申し込んだところ、2月8日(火)に証明書の発行通知がメールで届きました。ふるさとチョイスによれば、「申込日から1~2営業日後の朝8時にマイナポータル連携ができる状態になる」とのことで早めに申し込んでおいたほうが良さそうです。
今回の設定をまとめると、主な流れは以下の通り。
- マイナポータルに利用者登録をする
- マイナポータルのもっとつながるページで、「マイナポータル」と「e-私書箱」をつなぐ
- ふるさとチョイスのマイページ>チョイススマート確定申告ページ>電子ポストページ>e-私書箱連携ページで、「ふるさとチョイス」と「e-私書箱」をつなぐ
- マイナポータルのもっとつながるページで、「マイナポータル」と「e-Tax」をつなぐ
- 確定申告書等作成コーナーで、「マイナポータルと連携する」を選択すると、「寄附金控除に関する証明書」のデータを取得し、寄附金額が自動入力される
まとめるとシンプルなのですが、今回の例だとマイナポータル、e-私書箱、ふるさとチョイスとそれぞれの設定が必要で、その関係性を理解するのがなかなか難しいと感じました。また、2月4日にe-私書箱の連携やチョイススマート確定申告を申し込んだあと、12日(土)に本格的に確定申告の作業を始め、マイナポータル連携でデータ取得を試みたところ、まだデータが取得できず、データ取得できたのは14日の夕方でした。
設定ミスやトラブルではなく、単に設定やデータが反映されていなかっただけのようのですが、関係する事業者が多く、「いまどういうステータスなのか」がわかりにくい点は課題と感じます。
マイナポータルからデータ取得! 源泉徴収票を“カメラ”読取
マイナポータル連携はややこしかったのですが、確定申告コーナーからの申告の流れはシンプルです。
まずは、e-Taxに登録されている情報が表示されるので誤りがないか確認し、「次へ」をタップ。するとマイナポータル連携の画面がでるので、データ取得する場合は[取得する]を選びます。
次へ進むと、マイナポータルから取得したデータのリストが表示されます。今回は「寄付金受領証明書」のほか、「医療費通知」も取得できましたが、医療費控除額に満たないため解除しました。金額がOKであれば、そのまま次に進みます。
戸惑った点は、前述のようにここに寄付金受領証明書がしばらく出てこなかったことです。複数の事業者が関わるため、どこにミスがあったのか、いつになると証明書が連携されるのか、などが把握できません。今回は数日待つことで無事データ取得できましたが、いずれにせよ早めに確定申告に手を付けておいたほうが良さそうです……。
なお、ふるさとチョイスの例では、マイナポータル連携しなくても、「チョイススマート確定申告」により申告用のXMLデータが取得できます。申告時にアップロードするだけなので、今年1回であればそちらのほうがかんたんです。ただ、来年以降も同じサービスを使うのであれば、先に設定してしまったほうが、あとあと楽になるかとは思います。今回苦労しましたが、マイナポータルからデータ取得できた時は少し嬉しかったです(余談)。
ともあれ、これでマイナポータルからの関連サービス情報は取得できました。
続いては給与取得の入力です。
ここには新たに「カメラで読み取り」で源泉徴収票のカメラでのデータ取得が可能になりました。つまり、源泉徴収票を見ながら、数字を転記する必要なく進められます。
[カメラで源泉徴収票を読み取る]をタップするとカメラへのアクセスを求められます。カメラが開くと、明るいところでフレーム内に源泉徴収票の全体が映るように撮影するよう促されます。
筆者は、源泉徴収票はPDFで取得しているため、紙ではなくパソコンに表示したPDFを撮影しましたが、10秒ほど解析して数値を取れました。最初は複数箇所で数字が取れていなかったため、より大きくPDFを表示して再撮影したところ、金額や社名などは正確に取得できていました。唯一、住宅の「居住開始年月日」のみ空欄になっていたため、その部分だけスマホで入力して完成しました。
これまでは源泉徴収票をにらみながら慎重に転記(入力)、確認する必要がありましたが、カメラ読み取り(OCR)により、確認して足りないところだけ修正・入力になったので、かなり楽です。
あとは、控除額や寄付金控除額などを確認し、住民税等に関する事項などの項目を選ぶだけで、申告書の作成は完了です。ここで還付金の受取口座を公的給付支給等口座として登録するか? という項目が出てくるので、希望する場合は登録しておきます(筆者は登録しておきました)。
送信は普通に完了
残るは申告書の送信です。主な手順は以下のとおりです。
- カードの読み取り(1回目):作成した申告書に電子署名を行なう
- カードの読み取り(2回目):証明書を読み取り、e-Taxにログインする
- データの送信 :電子署名を行なった申告書データを送信する
- 送信結果の確認 :送信結果を確認する
作成した申告書に電子署名を行なうため、「カードの読み取り(1回目)」画面で「次へ」をタップすると、マイナポータルアプリが起動し、カードをかざして署名用電子証明書のパスワード(6~16桁)入れてパスワードを入力します。すると、iPhoneではSafariが立ち上がり、次の画面に進みます(Androidの場合はそのまま進む)。6~16桁の長い方のパスワードを使うのはここだけです。
iPhoneの場合、Safariブラウザを使うため、たくさんタブが起動しているとどのタブを使うかわからなくなってしまいます。そのため申告作業前にタブをすべて閉じてから開始することをおすすめします。
次に「カードの読み取り(2回目)」となり、e-Taxにログインするために4桁のパスワードを入力し、マイナンバーカードをかざして次の画面に進みます。iPhoneの場合、マイナンバーカードをセットして「読み取り開始」をタップすると、読み取りが完了し、左上の「Safari」をタップすると次の画面に進めます。
e-Taxのログインが完了したら、「送信する」をタップして、確定申告書データを送信します。「正常に送信されました」と表示されていることを確認したら送信は完了です。その後、「送信票等送付書印刷」に進み、「帳票表示・印刷」でPDFデータを保存・印刷して、次へをタップすると終了となります。
戸惑うが未来を感じる「マイナポータル連携」。申告は余裕を持って
今回の記事では「マイナポータル連携」を試したので、難しく見えるかもしれません。実際マイナポータル連携はわかりにくい部分が多いのですが、それ以外の申告書類作成の部分は、昨年に比べても省力化が進み、使いやすくなったと感じます。
給与取得においても、カメラ読み取りにより源泉徴収票の転記の手間も減りましたし、その他のステップの説明もわかりやすくなっています。寄付金受領証明書のXMLデータ取得など、マイナポータル連携を使わない場合でも、「紙を使わない確定申告」に向かって周辺サービスや事業者が取り組んでいることが実感できます。
一方でマイナポータル連携は、やはりまだまだ課題があると感じます。「どのようなしくみで動いているのか」を理解するには慣れが必要で、今回の例で言えば、e-私書箱、ふるさとチョイスなど、それぞれで連携や申込みが必要で、「思ったときにすぐに」申告&完了できるという状況にはなっていません。
では、マイナポータル連携に否定的か? と言われるとそうではありません。まず、紙の証明書がなくても申請ができるのは魅力的です。ふるさと納税を多数している人は、寄付金受領証明書が多くの自治体から届くけど、確定申告時にそれらを揃えるのが大変ではないでしょうか?
筆者の場合は、年末調整の際に届く「保険」などの書類が見つからない、申告時に足りずに慌てるといったことを毎年繰り返しています。年末調整や確定申告の前準備として、「まず郵便で届いた書類を探し回る」ことに時間を取られている人も多いかと思います。
こうした書類やデータが、すべてマイナポータルから取得できるようになれば、毎年の年末調整や確定申告がより楽になっていくでしょう。そういう未来は確かに感じられます。未来のための仕込みに、まだ勉強・学習が必要というのが2022年の現状かと思います。
使っている側の慣れもあるかもしれませんが、確定申告がスマートフォンでできるようになって4年目、マイナンバーカードに対応して3年目で、少しずつ使いやすくなっていると感じます。とはいえ、まだ「誰もが使いやすい」というレベルではありません。デジタル庁が目指す「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」には課題は山積みです。ただし、デジタル化が着実に進んでいるという手応えは感じられました。