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働く場所に困るテレワーク。最新マンションの仕事空間はどうなっている?

三菱地所グループが展開する「箱の間」

コロナ禍による自粛期間を経て、すっかり「新しい生活様式」のひとつとなったテレワーク。大手企業を中心に、ワクチンや治療薬が開発されたとしても、テレワークは継続していく、という話も多い。

確かに通勤する必要がないし、なんとなく会社にいる、という無駄な時間もなくなるので会社も社員もともにいいことづくめではあるが、ここにきて「自宅で仕事するのも大変なんだよね……」という声が聞こえ始めた。小さな子どもが走り回っていたり、クライアントに「なるほどですね〜」なんていってる姿を妻に見られてバツが悪いこともあるだろう。

ということで、最新の住まいではどのように仕事空間を提案しているのだろうか、との疑問をいだきつつ大手分譲マンションデベロッパーの三菱地所レジデンスを訪ねた。

テレワークで変化する住まいへのニーズ

「コロナ禍によるテレワークが進み、住まいへのニーズが多様化していると思います。テレワークにメリットを感じている方はイヤホンや椅子を新調するなど積極的にテレワーク環境を整えています。一方、自宅で仕事をすることにストレスを感じている方もいます。その双方に快適に暮らしていく住まいを提供していくことが求められています」

そう解説してくれるのは三菱地所レジデンス 経営企画部 新事業・機能創造室長の中村一成さん。

三菱地所レジデンス 経営企画部 新事業・機能創造室長 兼 DX推進室長 中村一成さん

同社の新規住宅購入検討者への調査によると、ほかにも「睡眠時間や運動時間が増えた」「家事をすることで家族から感謝された」などの意見も多かったという。テレワークになったことで仕事のモチベーションや生産性が上がった人も多いということだろう。そして、テレワーク賛成派を中心にマンション選びも変化してきているという。

「資産価値を考えれば都心の物件への関心が高いことは変わりませんが、駅からの距離など通勤の便を妥協しても広い住戸を求める方が増えています。例えば、急行停車駅のひとつ、ふたつ駅が離れた各駅利用のエリアにすることで予算を抑え、より広い住戸を選択肢に加えているといった印象です」

自宅で働く場所を確保するには、住まいの広さを求めるのが一番わかりやすい解決策だ。しかし、広くなれば価格もあがる。交通利便性を多少犠牲にして希望の購入額に近い物件を探す人たちが増えてきているのだろう。こういったニーズの流れとは別の案として、三菱地所レジデンスでは従来の広さ、間取りの中に“働く場所”を用意するプランを提案し始めた。つまり、仕事部屋をもう一部屋求めるという発想ではなく、2LDK、3LDKの間取りの中にテレワークスペースを設ける発想だ。

収納スペースをテレワークスペースに変える「“work” in closet」

本当は3LDKで十分なのに仕事部屋のために4LDKを選択する、といったことを回避するために同社が着目したのは「収納スペース」だ。仕事をするための“籠もり部屋”なら窓がなくとも、コンパクトな空間でもかまわない。むしろ集中するには都合のよい場所でもある。

「当社の分譲マンション『ザ・パークハウス 武蔵野境南町』ではウォークインクローゼットをテレワークスペースに無償で変更できるメニュープランのご提案を6月5日から開始しました。その名も『“work” in closet』。生活スペースを犠牲にすることなく、自宅での仕事環境を整えられます。今後、他の『ザ・パークハウス』にも展開していきたいと考えています」

さらにオプション(有償)プランとして共働きの夫婦を想定して収納スペースにデスクカウンターを設置する「妻ラボ」、洋室の一部屋にデスクを設置する「夫ラボ」など、夫婦共にテレワークが可能なプランも提案している。

ウォークインクローゼットを「“work” in closet」として提案する「ザ・パークハウス 武蔵野境南町」の例
収納スペースにカウンターを設置した「妻ラボ」

そしてもうひとつ、ウォークインクローゼットなどを活用するプラン以外に「箱の間」という部屋の中に置く木の小部屋についても教えてくれた。これは新築分譲マンションでなくとも、つまりすでに住まいを所有している人や賃貸の人にも参考になるアイデアだ。

空間の中の私空間「箱の間」で働く新スタイル

箱の間は、サービスルーム(納戸)やリビング・ダイニング、寝室などを仕切り、働く・勉強する・趣味に没頭する、という使い方ができる小部屋。サービスルームなどの閉ざされた空間を仕事に集中できる場所として活用するもよし、生活空間で家族の気配を感じながら、時間を共有しながら仕事をする一角として活用するもよし。それぞれのライフスタイルに合わせた柔軟な空間づくりが可能となる。

また、部屋の中に置いても圧迫感がないうえ、中に入っても心地よい広さを感じられるサイズに設計しているという。

箱の間の、仕切りとデスクとして利用するタイプと箱の中に入り集中するタイプ
サービスルーム(納戸)に箱の間を設置した間取り例

箱の間は、現在販売中および今後販売を開始するプロジェクトでオプション(有償)プランとして導入。また単体での販売も三菱地所ホームで行なっており、現在の住まいに箱の間を導入することができる。

「三菱地所ホームでは、箱の間を取り入れたリノベーションプランも今後展開していく予定です。新築分譲マンションで蓄えたテレワークスペースの知見を既存の住まいにも生かし、さまざまなテレワークニーズにお応えしていきます」

箱の間のカタログにある、リビングの中央に設置した例。箱の間の販売価格は62万円と67万円の2プラン
寝室に設置した場合のイメージイラスト

コロナ禍以前から考えられていた集合住宅のワークスペース

新築分譲マンションにおける、それぞれの住戸で可能なテレワークスペースについて話を伺ってきたが、そもそも三菱地所レジデンスではコロナ禍以前から職場以外のワークスペースを集合住宅に取り入れてきている。その職場でも自宅でもない第3のワークスペースとして着目したのがエントランスホールやラウンジと呼ばれるマンションの共用スペースだ。

「もともとマンションにワークスペースがほしいというご要望が多いことは認識していました。そのため当社の分譲マンションには、デスクなどで仕事や勉強に取り組めるラウンジなど共用部分を用意しているものもあります」

中でも「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」(11月下旬販売開始予定)は、全体の25%の住戸でリビング・ダイニングや主寝室にデスクカウンターが設置されているだけではなく、共用施設内にも「コ・ワーキングラウンジ」と呼ぶワークスペースを備えている。

「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラはワークスペースだけではなく、パーティー・集会スペースやブックカフェ、キッズスペースやフィットネススタジオも備え、集合住宅における快適な住まいのあり方を追求しています」

ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラのコ・ワーキングラウンジ。Wi-Fiを備え、個室のように仕切られたデスクスペースやロングテーブル、ソファなどをシーンに合わせて利用できる

そのほか、三菱地所レジデンスでは賃貸マンションの1階にコ・ワーキングスペースを併設した「ザ・パークハビオ ソーホー 大手町」を9月1日に着工。グループ内外の企業と協力し、個室型スマートワークブース「テレキューブ」を既存のマンション共用スペースへ導入するサービスも検討するなど、アフターコロナ社会の多様なワークスタイルへの対応を進めている。

「ザ・パークハビオ ソーホー 大手町」のコ・ワーキングスペース完成予想図
テレキューブ。写真は新丸の内ビルに設置されているもの

コロナ禍でライフスタイル、ワークスタイルが変化したことから、住み替えを検討する人が増えているという。そのような中で、テレワーク対応を特徴としたマンションが増えている。一方で、アフターコロナまで考えた住まいのあり方についても、中村さんは話してくれた。

「購入した住まいは、20年、30年、もしくはそれ以上の長い間住んでいただく『一生もの』と考えています。その時々で、移り変わるお客様の生活に応じて、柔軟に使い方を変えられるような商品企画や提案を行なっています。例えば箱の間は、コロナ以前からあった『家の中で籠れる場所が欲しい』等のニーズに応えるために開発したものですので、仕事場として使わなくなったとしても、お子様の勉強部屋や大人の書斎、ホビースペースといった多様な使い方ができます」

暮らしと仕事、そのどちらにもストレスを感じさせない快適な住まいが、新しい生活様式に求められている。その先にある、新しい住まい方まで想像しながら仕事環境を作っていくことで、末永く自分や家族に合った生活空間が出来上がるのかもしれない。