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クルマがある生活を身近に。手軽に使えるカーシェアの魅力

東京生まれ東京育ちの筆者にとって、外出時の移動手段はもっぱら電車が中心。バスも含めて公共交通機関が充実している東京都内では、移動手段として自動車を使うメリットがさほど大きくないのだが、それでもレジャーや買い物といった用途で時折自動車を使いたい、ということもある。

そんなときにこれまではレンタカーを利用していたのだが、ここ数年はカーシェアの利用が中心だ。使いたい時に使えて維持費も抑えられるカーシェアの魅力を、数年来のカーシェア愛用者である筆者が紹介したい。

ガソリン満タン返し不要、24時間いつでも好きな時に利用可能

自動車を所有せず使いたい時だけ使う、という点ではカーシェアもレンタカーも一緒なのだが、筆者にとって一番の違いは、カーシェアはガソリン満タンでの返却が不要ということ。帰り道に最寄りのガソリンスタンドを探す手間が省けるだけでなく、使用したガソリンも料金に含まれているので追加の課金が発生しないのが気軽でいい。

満タン返却をしないため借りた車のガソリンが少ない、という場合もあるのだが、車内備え付けのカードがあれば無料で満タンにできるだけでなく、ガソリンが空にならないような施策も提供されている(詳細は後述)。

利用時間もレンタカーの場合は数時間単位だが、カーシェアなら15分から利用できる。さすがに15分は現実的ではないかもしれないが、少し離れたスーパーやショッピングモールへの買い出しに1時間だけ借りる、というスポットでの使い方が可能だ。

カーシェア大手のタイムズカーシェアは15分から利用できる

対面不要、24時間いつでも利用可能というのも便利だ。レンタカーの場合は最初の手続きで数十分程度時間がかかってしまったり、営業時間内に返却しなければならないという制約があるが、カーシェアなら事前申し込みさえしておけば利用開始時間からすぐに使えるし、深夜でも早朝でも好きな時に借りて好きな時に返せる。

また、これは居住環境によるのだが、レンタカーの店舗は基本的に駅前にあるため、駅から離れた場所に住んでいるとアクセスにも時間がかかる。その点、カーシェアは近所にスポットさえあれば借りに行くまでの時間も大幅に短縮できる。


    【カーシェアの(個人的な)メリット】
  • ガソリン満タンでの返却が不要
  • 24時間利用可能で、対面手続き不要
  • 立地

逆にレンタカーを借りる時は利用期間が長期間の場合で、ガソリン代込みとはいえ時間課金のカーシェアは、長期間利用する場合に料金がかさんでしまう。最近は数千円台前半で利用できる低価格なレンタカーも増えてきていることもあり、旅行など長期にわたる場合はレンタカー、買い物など日常生活での利用はカーシェア、というのが筆者の使い分けだ。

ステーション数が圧倒的なタイムズカーシェア

国内のカーシェアサービスはタイムズカーシェア、オリックスカーシェア、カレコなど複数のサービスが存在する。自宅など利用したい場所のそばでどのサービスが展開しているか次第ではあるものの、筆者はタイムズカーシェアを利用している。その理由はカーシェアが利用できるステーション数が圧倒的だからだ。

カーシェア情報サイト「カーシェアリング比較360°」によれば、ステーション数1位のタイムズが1万を超えているのに対し、オリックスカーシェアとカレコは約2,000台程度と5倍近い差が開いている(2019年第一四半期:主要6社 カーシェアリング市場動向)。

タイムズカーシェアのサービス自体は、スマートフォンアプリでの解錠ができず物理カードが必要なことや、サイトの使いやすさなどに不満がないわけでもないのだが、台数というメリットの前では多少の不満は消し飛んでしまう。自宅付近だけでなく旅行先で使うということも考え、筆者はタイムズカーシェアを使っている。

もちろん、一番重要なのは「自分の最寄りにステーションがあるか」なので、住んでいる場所によって最適な選択肢は変わってくる。自宅マンションでカーシェアサービスが提供されている場合などはそのサービスを使えばよい。

利用料金は15分単位。早く返却すれば料金も安くなる

タイムズカーシェアの利用には、カード発行手数料として1,650円が最初に必要なほか、月額料金880円が毎月課金される。この月額料金は利用料金に充当できるため、月に880円以上利用するようであれば実質無料、ということになる。

一番安い「ベーシック」タイプの車を1時間借りると880円のため、月1時間以上利用するかどうかが分かれ目だ。まったく利用しない月は880円が無駄になるが、東京都内で車を持ったら毎月数万円の維持費がかかるのだから、このくらいは割り切ることにしている。

月額料金(2020年1月20日時点)

このほか、利用時間が6時間を超えた場合は走行距離1kmにつき16円が課金される。これは6時間を超えた時間ではなく、最初の利用時間から適用となる。また、事故時のNOC(ノンオペレーションチャージ)やタイヤの実費、レッカー搬送の費用などが無料になる安心補償サービスが、1回330円のオプションとして用意されている。

例えば往復100kmの距離を6時間で走行した場合、走行距離の料金は1,600円、利用料金は5,280円で、これに安心保証サービスを加えた合計は7,210円。23区内なら駐車場代は1万円でも激安という相場を考えると「駐車場代以下の維持費用で車に乗れる」というのが筆者の考えだ。

また、地味に嬉しいのが返却時間。予約時間より早く返却した場合は実際の返却時間で課金される。

レンタカーを借りる時は「何時まで借りるか」を考えるのが面倒だったり、返却時間が迫ってきて慌てたり、ということも少なくないが、タイムズカーシェアの場合は「さすがにこんなに遅くならないだろう」という時間まで借りておけば、そんな心配も不要だ。

なお、利用開始は予約時間から適用されるため、「予約した時間より遅れて利用し始めた」という場合は、しっかり課金される。また、あまりないケースと思われるが、24時間以上予約したにもかかわらず2時間未満しか使わない、という場合には2時間分がミニマムチャージとして課金される。24時間以内の予約なら適用されないので気にしないでおこう。

予約はアプリが便利。荷物運搬用途には「バネット」がお勧め

タイムズカーシェアの予約は、Webサイトもしくはアプリが用意されているが、使い勝手は圧倒的にアプリが上。Webサイトはログインに会員番号とパスワードが必要なのだが、タイムズカーシェアの会員番号はハイフンで分けられた2つの番号からできているため、ブラウザのパスワード記録機能が使えない、という細かなところに加えて、肝心のサイトも「エリアを指定しつつ車種も指定したい」という複数条件での検索ができない。

タイムズカーシェアのログインは2つに分けられた会員番号が必要
PCのステーション検索は検索条件の組み合わせができない

一方アプリは一度ログインしてしまえば予約の際に再度IDを入力する必要はない。検索も複数条件を同時に指定できるほか、「地図範囲内でどこのステーションが空いているのか」が地図上で見られるので視認性も高い。

スマートフォンアプリでの検索。地図で空き状況がわかる
車種やクラスを組み合わせて検索できる

また、利用料金は車種の「ベーシック」「ミドル」「プレミアム」という3段階で異なる。基本的に車種で選ぶというよりは最寄りで使える車を選ぶことになると思うが、1つお勧めしておきたい車種が「NV200 バネット」。後部座席がとても広く、最大600kgまで積載できる積載性の高さながら、料金としては一番安価なベーシックで利用できるのだ。

NV200 バネット

IKEAに家具を買いに行く、といったサイズが大きめの買い物では、後部座席に入りきるかどうかが悩みの種だが、NV200なら後部座席をたためば2m近い長さでも収容可能。助手席のスペースを使えばそれより長い荷物にも対応できる。ステーションとしては住宅地よりもビジネス街に配車されている印象だが、買い物前提で利用する時のために覚えておいて損はない。

運転前に設定しておきたい同乗者登録やカーナビ目的地設定

また、家族や知人もタイムズカーシェア会員の場合、同乗者として登録することで運転手を交代できる。ただし、利用開始や返却は予約した本人以外はできないため、利用時に知人に車を取ってきてもらい、帰りは自分で返す、といった分担はできない。あくまで事故が起きた時の保険や安全保障サービスの対象になるかどうかがポイントだ。

車の予約が終わって実際に利用するまでに設定しておきたいのが「カーナビ目的地設定」と「ドライブチェックイン」。カーナビ目的地設定は予約時にあらかじめ目的地を設定できるため、利用時の手間を減らすことができる。ただし、有料道路回避やルート指定など細かい設定ができないので、通行したいルートがある時は手動がお勧めだ。

予約後に設定できる「カーナビ目的地設定」と「ドライブチェックイン」
事前に行き先を設定できる「カーナビ目的地設定」

ドライブチェックインは、特定のショッピングモールなどを目的地に設定し、指定された条件に従って駐車するとポイントがもらえるサービス。ショッピングモールや行楽地に行く時に設定しておくといいだろう。

特定のショッピングモールなどに駐車することでチケットがもらえる「ドライブチェックイン」

利用開始は予約の15分前から。ガソリン給油や洗車でオトクになる制度も

実際に車を利用する際のコツや便利な使い方も紹介しておきたい。

まずは利用開始時間。タイムズカーシェアでは、実は予約時間の15分前から利用が可能だ。カーシェアの場合は自分の車と違いミラーやシートの調整、カーナビの設定などが人によって異なるため、自家用車よりも事前準備が多くなりがち。準備時間として15分前から利用できるのはありがたい。

あわせて運転前に確認しておきたいのは、カーナビの設定。基本的にはそのままでいいのだが、たまに地図の向きが変更されていたり、ナビの条件が「有料道路回避」になっていることもある。「地図方位設定」「有料道路使用条件」「音声ガイドの音量」あたりは最初にしっかり見ておきたい。

前の利用者が変更している可能性があるためカーナビ設定は運転前にチェック

運転を始めれば、レンタカーと使い勝手はかわらないが、タイムズカーシェアならではの特徴が運転者の利用状況に応じて還元が受けられる制度だ。例えば20リットル以上の給油や洗車時には30分の料金が割り引かれる。

冒頭で「ガソリンが空にならないような施策」と書いたのはこのことで、おかげで使いたいときにガソリンがほぼ空だった、というケースはほとんどない。なお、ガソリンは給油するだけでいいが、洗車は給油した後センターへ電話で連絡する必要があるため、若干手間がかかる。

また、直接割引にならないが、走行距離やガソリンの給油によって独自ポイント「カーシェアポイント(cp)」が付与される「TCPプログラム」という制度も用意されている。ポイントが貯まるとステージが上がり、予約が3週間前から可能になる、プレミアムクラスの車をミドルクラスの料金で借りられるなどの特典が利用可能だ。

安全運転も対象となっており、急発進や急減速がそれぞれ1回以内の場合や、車の利用アンケートで評価が高かった場合にポイントが付与されるなど、ユーザーの利用状況もポイントに還元されるという仕組みも面白い。

返却時はカーナビのメニューから「返却地案内」を選択すると住所の入力など不要でナビを設定してくれる。ただしこちらも目的地設定と同様で有料道路回避やルート選択ができないため、ルートを選びたい場合は最寄り駅を指定しておき、近づいたら改めて返却地を設定するのがおすすめだ。

返却地はTimesメニューから簡単に設定できる

なお、カーシェアと直接関係ないが、お勧めしたいのがスマートスピーカーの利用だ。Google Home MiniやEcho Dotの旧モデルはMicro USB給電に対応しており、シガーソケットからの給電やモバイルバッテリーで運用できる。テザリングなどのモバイル回線も必要にはなるものの、YouTube MusicやSpotifyなどの音楽配信サービスを車内で流しておくと、手が離せない時も音声で操作できるので便利。運転手だけでなく助手席や後部座席の同乗者も気軽に操作できるのがいい。

ドライブ中の音楽鑑賞に便利なGoogle Home Mini

カーシェアのおかげで車の利用率が向上

免許を取得してから10数年、レンタカーなど車自体は利用したことはあるものの、自動車を所有したことは一度も無い。自動車の利便性は重々承知しているが、クルマの費用だけでなく駐車場や車検などの維持費も必要で、バスや電車、タクシーが充実している東京都内では、高いコストを支払ってまでのメリットが自分の中に見つからなかったからだ。

しかしカーシェアを使うようになって車の利用率は飛躍的に上がった。これまでは長距離の旅行だったり、電車で持ち帰るのが難しい大型の荷物を買いに行くときだけレンタカーを借りていたが、カーシェアに慣れてからは、電車でいけるような場所でも車を使うようになりつつある。

電車やバスより費用は高くつくが、自分のペースで移動できるし飲食しながら目的地に向かうこともできる。電車やバスだと面倒な乗り換えや徒歩も車なら不要だ。傘が苦手な筆者は、外出時に雨が降っているととたんに気が滅入るのだが、車での移動なら傘を使う時間も圧倒的に減らすことができる。

また、レンタカーしか借りていない時は駐車も苦手だったのだが、カーシェアのおかげで利用頻度も上がり、最近では駐車も以前ほどは怖くなくなった。毎月料金がかかっていることで、「せっかくだから毎月使おう」という気持ちになっているのも大きい。

幸い、筆者の自宅周辺はカーシェアのステーションが多く、徒歩10分圏内で空いている車が見つからないということはほとんどない。最近ではマンションの駐車場をカーシェアとして提供しているケースも多く、次に引っ越すときはカーシェアが完備されているかどうかも基準にしたい、と思うほどだ。

筆者が利用しているタイムズカーシェアは2019年10月にリニューアルを実施しており、空港での乗り捨てサービスやドライブレコーダの全車両設置といったサービスの拡充も予定されている。車を持つほどではないがレンタカーも手間、という人は、ぜひ手軽に利用できて安価に維持できるカーシェアを試してみて欲しい。