トピック

意外と安い宅配ボックスで再配達問題を解決? (検討編)

自分も宅配業者もハッピーになれる宅配ボックスの選び方を探る

ECサイトに加え、ヤフオク!やメルカリなどによる個人売買が広がり、さらには社会問題にまで発展している人材・労働力不足もあいまって、宅配業者の負荷が高まっていると言われる。このままでは遅配や値上げにつながってしまうかもしれない。そうなる前に、利用者としてもできる範囲で負荷軽減に協力したいところだ。その方法の1つが、留守中でも荷物を受け取ることができ、再配達を減らせる宅配ボックスの活用だろう。

しかし、多くの住居が最初から宅配ボックスを備えているわけではない。ないからといって新たに宅配ボックスを設置しようと思っても、賃貸住宅はもちろん自己所有のマンションでも勝手なことはできないし、戸建てであっても何をどうすれば宅配ボックスを利用できるのかわからない人もいるはずだ。

そこで、ここでは簡単に使い始められる宅配ボックスに的を絞って、その種類や選び方、実際に設置したときの効用について紹介していきたい。前編の今回は、宅配ボックスの種類と選び方。あくまでも「後付で」「簡単に」がテーマなので、住宅新築時の導入を前提としたハウスメーカー・住設メーカー製の宅配ボックスは考慮していない点、ご理解いただきたい。

用途と環境に応じて選ぶ

宅配ボックスというと、筆者もそうなのだが、集合住宅に設置しているのを見かける大型のものを思い浮かべがち。個人が購入して設置するものとしてはハードルが高すぎるものだ。

こちらはパナソニックの戸建て向け宅配ボックス。一般的に新築時の設置が前提の製品で、価格も十数万円以上となる

ところが、最近ではそう高価なものばかりではない。自宅への宅配ボックス設置ニーズの高まりからか、数千円からの低コストで導入できる宅配ボックスや宅配ボックス代わりの仕組みがいくつか登場してきている。

これらを導入することで、賃貸か自己所有か、あるいは集合住宅か戸建てかにかかわらず、ほとんどの住宅で荷物の再配達を減らすことにつながるだろう。では、今、リーズナブルに手に入れられる宅配ボックスにはどういった種類があるのだろうか。そして、それらをどういった基準で選ぶべきか、考えてみよう。

まず宅配ボックスは、下記の通り大まかに3種類に分類される。

・据え置き型ボックス
・仮置き型バッグ
・共有型宅配便ロッカー

「据え置き型ボックス」は、みなさんが想像するいわゆる宅配ボックスに近いもの。今回は「簡単に」設置できるものを想定しているが、それでもサイズはそこそこ大きいため、使用しないときも常に宅配業者がアクセスしやすい玄関先や目立ちやすい屋外に置いておくことになる。なので、主に戸建てで利用するタイプと言える。荷物預入時に宅配業者が使うための認印を入れておけるようになっているものや、ダイヤル錠で施錠管理を行なうものもあり、こうしたタイプは対応できる宅配業者、荷物種別の幅が広い。

導入コストはおおよそ1万円台から数万円というイメージ。やや高額なぶん、屋外に常時設置していても問題のないセキュリティや耐候性を備えていることも多い。留守中に荷物を受け取れるだけでなく、荷物の発送に対応できる場合もある。頑丈な箱形ということもあって、信頼性という面では最も安心できるタイプと言えるだろう。

据え置き型の場合は認印を入れておく場所が用意されていることも

「仮置き型バッグ」は、使わないときに小さく折りたたむなどして目立たないサイズにしておける袋タイプのもの。荷物を届けに来た宅配業者がバッグを大きく広げ、そのなかに荷物を入れて閉じ、備え付けのダイヤル式ロックなどで施錠する。荷物を取り出したら再びコンパクトに畳んでしまっておく、といった使い方になるので、共有部の廊下が狭い集合住宅などでも都合が良さそうだ。

導入コストは数千円程度からと安価。戸建てと集合住宅の両方で利用できる。ただし、集合住宅の場合、共有エントランス部がオートロックになっていると、こうした玄関先に仮置きするタイプは宅配業者がたどり着けないため利用できない可能性が高い。オーナーや管理会社に相談して、玄関のドアノブではなく共有部にある各戸の郵便受けに取り付けておくようなやり方が許されるのであれば別だが、一般的には難しいだろう。

最後の「共有型宅配ロッカー」は、自宅に設置するものではなく、各地に点在しているロッカー型の宅配ボックスを一時利用するもの。通常の宅配ボックスが(据え置き型、仮置き型ともに)導入不可能な集合住宅に住む人でも利用でき、しかも導入コストがかからないというメリットがある。荷物の受け取りと発送の両方に対応するが、いずれにしても、たいていは離れたところにある宅配ロッカーまで足を運ばなければいけないのがネック。反対に言うと、自宅のごく近所にあればコスト面でも利便性の面でもメリットが大きい。

各タイプ別の製品・サービスの例

以上の3つのタイプで分類した宅配ボックス。それぞれで代表的な製品やサービスをいくつか挙げてみよう。

小~中サイズの荷物受け取りと、発送にも対応するナスタ「スマポ」

住宅向けのポストや宅配ボックスを古くから手がけているナスタが、リーズナブルな家庭向け宅配ボックスとして販売しているモデルが「スマポ」。大型のメール便(受け取り時の押印が不要なもの)まで対応するコンパクトなポストタイプと、中サイズ(42×33×25cmまで)の荷物を受け取れるスタンダードな宅配ボックスタイプという2種類を用意している。それぞれ3~5色のボディカラーから選べるポップなデザインも特徴だ。

ナスタ「スマポ」のWebサイトより

設置は付属するワイヤーとダイヤル式の南京錠で周辺のポールや重量物に結びつけるだけ。または付属の接着剤で地面のコンクリートなどに固定することができる。もしくは別売の専用フレームである「スマポラック」や「スマポスタンド」でスタイリッシュに設置することも可能だ。屋外設置を前提としているので、当然ながらある程度の耐水性能を備え、中の荷物の水濡れを防いでくれる。

宅配ボックスタイプはダイヤル錠とシリンダー錠の2モデルがあり、ダイヤル錠を選ぶと荷物の発送にも対応する。ポストタイプはシリンダー錠のモデルのみなので受け取り専用となるが、通常の郵便ポストには入らない厚み4cmまでの大ぶりなメール便を複数投入可能なので、雑誌や書籍をネット注文することの多い人だと役に立つ機会は多そうだ。

【価格】
ポストタイプ:14,800円
宅配ボックスタイプ:19,800円

大サイズ対応で、踏み台にもなる「HOUSE BAGGAGE」

住設メーカーの北恵と、建設資材メーカーの城東テクノという関西企業同士がタッグを組んで開発した宅配ボックスが「HOUSE BAGGAGE」だ。フタを閉めた状態だと耐荷重100kgの頑丈な踏み台もしくは腰掛けとして利用できるので、自宅の掃き出し窓と外とを行き来するような時の足場にもなれば、シンプルなベンチにもなるというユニークなもの。

踏み台やベンチにもなる宅配ボックス「HOUSE BAGGAGE」

上開きの構造で、ダイヤル式の南京錠でロックできる。内部には認め印を収納する場所も用意。中サイズと大サイズの2種類をラインアップしており、大サイズだと内部は仕切られているものの最大で48×48×27cmまでの荷物を収納可。さらに小物も別途入れておくことができる。例として、「米10kg+ビールケース(350ml缶48本)×2+小物」がすべて収まるとしているほどの大容量だ。

大サイズ(左)は内部に仕切りがあり、48×48×27cmまでの荷物+小物を収納可能

設置にあたってはもちろん工事の必要はなし。宅配ボックス自体の重量が15kgとそこそこあるので、盗難の心配もあまりなさそうだ。それでも不安なら付属のペグか接着剤で固定することもできる。想定売価が64,500円からと比較的高額に設定されているものの、これは工務店や施工会社を経由した際の目安価格。場合によってはより安価に入手できる可能性がある。

【価格(目安)】
TBX-J8060-LG(大):75,000円
TBX-J6040-LG(中):64,500円

使わないときはおしゃれに小さくたためる「置き配バッグOKIPPA」

「置き配バッグOKIPPA」は、その名の通り不在時の宅配物をバッグで受け取れる製品。小さく折りたたんだ状態で玄関のドアノブなどに取り付けておき、不在時は宅配業者がOKIPPAを開いてバッグの中に荷物を入れ、ダイヤル錠で鍵をかける、というシンプルな仕組み。

集合住宅に住む人にとっては普段の置き場所に困ることがなく、4,000円弱という価格の安さも魅力だ。

「置き配バッグOKIPPA」

オンラインストアで購入した自分宛ての商品の荷物追跡などが行なえる公式アプリも用意している。このアプリでは、OKIPPAに収納された荷物が万が一盗難に遭ったとしても補償される「置き配保険」に加入できるという独自サービスを利用できるのもうれしいところだ。

ただし、認印を収納する仕組みにはなっていないことから、利用可能な宅配業者や荷物の種類が限定される可能性がある。また、荷物を入れたバッグはそのまま地面の上に置く形になり、バッグ自体には撥水加工があるものの防水性能は高くないため、雨天の場合に中身が濡れてしまう恐れもある。宅配業者がビニールをかぶせるなどの対策を取る場合もあるようだが、悪天候時は持ち帰ってしまうことがある点も念頭に置いておきたい。

【価格】
3,685円

宅配ボックス導入が困難な人に「PUDOステーション」

宅配ボックスのないオートロックのマンションで、独自に宅配ボックスなどの導入が難しいとき利用を検討したいのが、パックシティ ジャパンが提供する宅配ロッカーサービス「PUDO(プドー)ステーション」だ。北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に多数の宅配ロッカーが設置されており、ここで荷物の受け取りと発送が可能になっている。

「PUDOステーション」

受け取り時は、宅配業者が提供している荷物受け取りサービスで受け取り場所を指定し、ロッカーに備え付けのディスプレイで所定のパスワードを入力するだけ。発送は「ヤフネコ!パック」と「らくらくメルカリ便」利用時のみ対応し、それぞれヤフオク!とメルカリから発行されるバーコードを読み取らせるなどして、ディスプレイに表示される指示に従い操作する。

画面の指示に従って操作していけば受け取り・発送が簡単にできる

荷物サイズは最大44×55×37cmと比較的大きなものまで対応するのがメリットだが、やはり自宅近くにPUDOステーションがあるかどうかが鍵となる。今やコンビニエンスストアなどでも荷物の受け取り・発送が可能なため、どちらが自宅に近いか、あるいは帰宅時などに寄りやすいかで利用の可否が決まってくると考えられそうだ。

フローチャートで自分にぴったりの宅配ボックスをチェック

宅配ボックスや類似の仕組みは、近年になってその選択肢が増えてきた。とはいえ、以上のことを踏まえると、自宅に導入する際には集合住宅か戸建てか、集合住宅の場合はオートロックがあるかどうかで利用できるものはほとんど自ずと限られてくる。これをフローチャートにまとめてみたので、目安にしてほしい。

宅配ボックス選択フローチャート

筆者の場合、これに当てはめると「スマポ」か「HOUSE BAGGAGE」のいずれかが有力な候補となる。

では、これを自宅に導入してみるとどんな風に使えるのだろうか。次回は宅配ボックスの設置から利用までの実際の様子をご覧に入れたい。