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防災用品ショップに聞く、災害時に本当に必要な物とは?
2019年3月11日 09:15
いつ、どこで遭遇するかわからない災害。自宅、職場、通勤途中……。これを読んでいる時にも災害発生の可能性はある。そんな「いつか」に備えてどのようなものを用意しておくべきか、災害時、避難場所ではどんなアイテムが役に立つのか、40年の歴史がある防災用品専門のセレクトショップ「セイショップ」の平井敬也氏に話を聞いた。
災害時に転用できる物を普段使いに
取材では始めに、災害に備えて揃えておくべき物の質問から入ったのだが、平井氏の答えは、備えももちろん大事だが、その前に日常的に使用している物で災害時に役立つ物は何かを考えておく必要があるというものだった。
災害は日常の延長にあり、ある瞬間に非日常に変わるが、生きていくために必要な物はそう変わらない。普段から使っている物が災害時にも役立つ、というのがベストなのだ。だから、非常袋に入っているようなグッズを揃えることよりも、災害時に転用できるものを常用することから始めるのがいい、と話してくれた。
「例えばどんな時にも不可欠な水は、普段から大量の水を確保できるウォーターサーバーの利用が有効です。これに加えて備蓄用のペットボトルがあれば二重の危機管理ができます」
「最近はスマホやケータイが情報入手の大きな役割を担っているので、モバイルバッテリーも必要不可欠。大容量のバッテリーに変えたり、コンパクトなものに変えて2個持ちしたりと、多めに持ち歩くようにしましょう。常にフル充電にしておくことも忘れずに」
「さらに、マフラーをタオルマフラーに変えるのも有効。タオル生地は保温や保湿、吸水性に優れているので、マスク代わりになったり、傷の手当てに役立ったりと災害時は多彩な用途で使うことができますから。そのほか、持病がある方は薬が手に入らなくなり命に関わる危険性もあるので、日頃から多めに持っておくのがおすすめですね」
防災用品や備蓄品はしっかり管理して、常に使える状態を保つことも大事。賞味期限をチェックしたり、使えるかどうか定期的にテストしたり。それに対して日常的に使っているものならば、管理の必要なし! 災害時にも役立つものを普段から使っている方が楽だと言えるだろう。
命に関わる物、あったら便利な物の順に揃える
自宅での備えは、住宅事情により異なる。住んでいる場所が海の近くなのか、山の中なのか、マンションの低層階なのか高層階なのか。それぞれに必要な備えは違ってくるので、一概に“これを用意しておけば安心”とは言えない。
「だからこそ防災グッズはセットではなく、自分が住んでいる場所の環境に合わせて買い揃えるべきだと考えています。グッズを揃える時は、命に関わる物から始め、あったら便利な物を加えていくという形で選んでいくのがおすすめです」
ここからは、平井氏がセレクトした「備えておくべきアイテム」を紹介。商品の必要性や保存上の注意点に加えて、「セイショップ」のおすすめ商品も紹介してもらった。
水:備蓄水はダンボールから出さずに保存
備蓄用の水は長期保存ができるが、保存方法に注意点がある。
「水は備蓄している方も多いと思いますが、きちんとした保存方法をご存じですか? 長期保存可能なペットボトルの水は、箱買いが基本です。普通のペットボトルの水のダンボールには持ちやすいように取っ手の穴が空いていますが、備蓄水のダンボールには穴が空いていません。これは光やゴミ、虫などが入り込まないようにするためです。そのため保存もダンボールに入れたまま、しっかり封をして保存しておくことが大切です。また、壁にぴったり付けて置いておくと結露から箱や中身に影響が出る可能性があるので、壁から少し離したところに保管するようにしましょう」
セイショップでは15年保存可能な「カムイワッカ麗水」と5年保存の「富士ミネラルウォーター」を用意。長期保存できるよう、ボトル内には空気がまったく入っていないことが特徴。ボトル自体も丈夫なものを使用している。
15年保存の「カムイワッカ麗水」は500ml×24本(8,000円)と2L×6本(4,500円)、5年保存の「富士ミネラルウォーター」は500ml×24本(4,400円)、1L×12本(3,200円)、2L×6本(2,600円)が用意されている。
備蓄食:一度作ってみることと味を知っておくことが大事
平井氏は、普段食べているものと遜色のないおいしい食事があれば、被災時のストレスを和らげ、身体の免疫力を高める効果も期待できると話す。たしかに厳しい環境でも、食事がおいしければ、少しだけでも気持ちが和らぎそうだ。そのため、セイショップで取り扱っている25年保存の備蓄食「サバイバルフーズ」は、おいしさを追求し、さらに彩りや食感などにもこだわっているという。
「セイショップで取り扱っている物に限らず、どんな商品でもいざという時に困らないよう、調理方法、食べ方、味は事前にチェックしておくことが大切。避難所での生活を強いられた場合、救援物資として届くのはパンやおにぎりなどの炭水化物が中心となるため栄養不足にならないような保存食を選ぶといいでしょう。栄養を補うためのサプリを常備しておくことも有効です」
サバイバルフーズのラインアップは、チキンシチュー(大缶:8,400円、小缶:3,000円)、野菜シチュー(大缶:7,600円、小缶:2,800円)、洋風とり雑炊(大缶:8,500円、小缶:3,000円)、洋風えび雑炊(大缶:8,500円、小缶:3,000円)、クラッカー(大缶:4,000円、小缶:2,400円)の5種類。いずれも、大缶が10食相当、小缶が2.5食相当。
「サバイバルフーズは栄養バランスがいいだけでなく、調理された料理から特殊フリーズドライ製法で作られているので水なしでもそのまま食べられるのも利点です。シチューはパスタソースにしたり、雑炊は牛乳を入れてクリーミーに仕上げたりと、料理のアレンジもできます。こうした食べる工夫が被災生活のちょっとした楽しみになるかもしれませんね。どんな備蓄食でも、説明書きどおりの作り方をしなくてもいいんです」
そう話を伺い、そのままの状態で洋風えび雑炊を食べてみた。カリカリっとしたスナックのような食感で、ちょっとしたおつまみにもなりそうなしっかり味。子供のおやつにもなりそうだ。
さらに筆者が自宅で野菜シチューと洋風えび雑炊を試食。お湯を入れて混ぜ、5分待つだけでこのおいしさはすごい! 雑炊はエビがたっぷりでほっこりした味わい。シチューも具だくさんで洋風だしがおいしく、食感も彩りも楽しい。食べたい時、すぐにおいしい料理ができるので、私自身も忙しい時のために常備しておきたいと思ったほどだ。
トイレ用品:水が出なくなったときの備えを
災害に遭っても家が倒壊するとは限らず、自宅で被災生活を送る可能性は少なくない。しかし水道などのライフラインが止まっている可能性は高い。そう考えた時に必要なのがトイレグッズだ。断水時には、大便や小便を固めて、そのままビニール袋の口を縛って捨てられる「ほっ!トイレ タブレット」(10回分:2,000円、100回分:21,000円)が便利だと平井氏。
「自宅で生活できるなら、自宅のトイレを使うのが一番です。普段の生活に近い状態で過ごせることがストレス軽減になりますから。このタブレットは介護現場でも使われる商品で、吸水ポリマーが大量の水分を吸収し、薬剤が臭いや菌を除去してくれます。トイレの後、見ないで捨てられるのもいいところです」
耳栓:日常的に持っていても役立つ有能アイテム
避難所では周囲の音がストレスになることがあるため、耳栓を持っておくのもおすすめと平井氏。セイショップで取り扱う耳栓「クオリネ」(1,500円)は、スウェーデンで難聴防止のために開発されたアイテムとのこと。まったく聴こえなくなるのではなく、聴こえる音を小さくしてくれる。普段使いに取り入れやすい点も魅力だ。
「クオリネを装着していても、電話の音や近くの人の声、電車のアナウンスなどは聞こえます。ミニサイズなので着けたまま寝ることもできますし、洗えるので清潔な状態を保てます」
ちなみに平井氏は日常的にクオリネを使用しているヘビーユーザー。新幹線で近くの席の乗客が宴会を開いている時などに使用するそうで「すぐ後ろにいても、車両の遠くの端にいるような感覚になりますよ」とその効果を話してくれた。
マッチ:ライターよりも劣化しにくいというメリットが
災害時には、水道とともに、ガスも止まる可能性がある。そこで必要なのが火をおこす道具だが、平井氏はライターよりもマッチをおすすめする。
「ライターは放っておくとガスが揮発してしまう可能性があり、さらにサビなどで使えなくなることも考えられますが、マッチなら、よほど湿気るようなことがない限り使用できます。100均ショップなどで売っているマッチでも十分です」
セイショップでは、燃料アルコールを使用するストーブやマグポットなどがセットになった「EVERNEW チタンポット500アルコールストーブセット」(11,700円)を取り扱っている。湯沸かしも調理も可能なアイテムだ。
「このストーブセットは、アルコールを使っているところがポイント。災害時はガソリンや電池など燃料系が供給不足になります。一方で私の経験も含めて、過去の震災では燃料アルコールだけは在庫がなくならなかったという実例があるんです。燃料アルコールはドラッグストアやコーヒーショップで入手できるので、マッチと合わせてこのストーブセットも持っておくと便利です」
キャリーバッグ:災害時には水を運ぶという作業が発生
断水時には給水所から水を運搬する、という作業が発生する。水は相当重いため、キャリーバッグを使う機会が出てくるという。普段旅行などで使用している物でも良いとのことだ。
セイショップでは、キャリーフレームとバッグと非常用給水袋がセットになった「ROLSER NS-T2(トートバッグ)」(13,600円~16,600円)を取り扱っている。バッグは10リットルの給水袋がすっぽり入るサイズと、いかにも非常用というデザインではなく日常でも使える遊び心のあるデザインが特徴。普段使いの物を災害時に使うことが第一と考える、セイショップらしいアイテムだ。
遊び道具・嗜好品:大人用と子供用を用意しておこう
生活に必要な物のほか、遊び道具なども、特に避難所などでは役立つという。
「避難所にいると、先のことをネガティブにいろいろと考えてしまうものです。しかし遊び道具があれば気を紛らせることができます。特に子どもは大人のように我慢ができませんから、なおさらおもちゃなどの遊び道具が必要になります。また、救援物資にはお酒やタバコなどの嗜好品は一切ないので、各自での用意が必要です。私はウイスキーの小瓶を自宅の棚に並べています(笑)。日常的に嗜んでいる物は、避難所でのストレス解消に効果的でしょう」
大人も子供も遊べる物としてトランプや花札などコンパクトに持ち歩ける物を非常用のバッグに入れておくとともに、乳幼児が喜ぶようなおもちゃやお菓子を持っておくとよいと教えてくれた。
日常とのギャップをなくす備えを心がける
災害が起きると、日常生活とのギャップが一番のストレスになると平井氏。そのギャップをなるべく少なくするための備えを考えることが大切だと語る。
「防災を意識せずに備えられているのが理想です。そのためにも最初にお話ししたように、災害時にも転用できるものを普段から使うことが大切。今までお話した以外にも、例えばアウトドア用品やウェアを日常的に使っていれば災害時も役に立ちますし、ハンカチを手ぬぐいに変えるだけでも災害時の用途が増えます」
平井氏の話を聞いていく中で、キーワードの1つに“慣れ”があるように感じた。日常生活の中でも使ったことがない物を使う時、そこにストレスが発生する。それが非常時となればなおさらだ。
「銀色の非常袋がありますが、防火用のバッグでなくてはいけないということはありません。普段使わないものを使うだけでストレスになりますから、むしろ使い慣れている普通のバッグに必要なものを詰めた方がいいのではないかと思います。そしてもう1つ、普段使いではない防災グッズは、買って終わりではありません。試せるものは必ず1度使ってみる、使い方を覚えておくことが大切です」
災害は日常の延長にあるもので、災害後の生活を少しでも日常に近づけること。そのように考えてみると、普段便利だと感じるものは、災害時にも便利に使えるように思えてくる。防災グッズを特別な物と考えず、日常生活を意識しながら選ぶことが得策のようだ。
防災のセレクトショップ セイショップ
オンラインショップ:https://www.seishop.jp/
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