文具知新

通販で届いた荷物をサクサク開梱! ミドリ「ダンボールカッター」

ネット通販は、今ではすっかり買い物の選択肢のひとつとして定着しました。コロナ禍に急速に需要が拡大し、日常生活が戻ってきた後も現在にいたるまで増加傾向が続いています。通販が増えているということは、私たちがダンボール箱を開ける機会も増えている、ということ。そんな背景もあって、文具業界ではここ数年、荷物を開けるための「開梱ツール」というジャンルが大きな盛り上がりを見せています。

私自身もネット通販を利用することが多いので、開梱ツールも気になったものは色々と購入して試しています。当たり前ですが、道具にはそれぞれ製作者が想定した利用シーン、得意な状況というものがあります。ですので、これさえあれば万人にオススメ! これひとつでオールOK! と言い切れるアイテムはありません。

しかし、自分はついついこれに手が伸びてしまうなあ、という道具があるのも確かで、私にとってミドリの「ダンボールカッター」(1,320円)はそんな文具のひとつなのです。

平たく丸いセラミック刃のカッター

ダンボールカッターは、直径が50mm、厚みが12.5mmの丸くて平たいコインのような形をしています。中心の割れ目から左右にパカッと開くと、中から白いセラミック製の刃が顔を出すという、いたってシンプルな作りです。

閉じるとシンプルなコイン型
白いセラミック製の刃

最大まで開くと、カチッと止まるようになっており、普通に使っている分には意図せずにフタが閉じてしまうということもありません。カラーバリエーションは黒、カーキ、ベージュの3色で、オフィスにも家庭にもなじむシンプルなデザインです。

2018年に発売されたアイテムですが、実は2020年10月に大幅なリニューアルを経ており、現在一般的に流通しているのはこの2代目のタイプです。私は初代の頃から愛用していましたが、リニューアル後は使いやすさが格段にアップして、文字通り手離せなくなってしまいました。

ダンボール箱の開梱に威力を発揮!

ダンボールカッターがとにかく便利なのは、テープでとめられたダンボール箱を開梱する時です。箱の上部の合わせ目、H型にテープが貼られている箇所にシャシャシャ、と3回軽く刃を滑らせるだけで簡単に開くことができます。

切って開けるだけなら普通のカッターナイフやハサミでもいいのでは? と思われるかもしれません。ですが、専用品だけあって刃の形状や角度、すべてが絶妙にちょうど良いのです。

ひとつは、刃の大きさ。カッターナイフって、つい刃を出し過ぎてうっかり中身の荷物まで刃が届いて傷がついてしまった、なんてことはありませんか? ダンボールカッターの刃は、ダンボール箱の厚みとちょうど同じくらいなので、中身を傷つけてしまう心配が少ないのです。

コントロールが効きやすい

また、カッターの刃は薄くてしなりがある分、フリーハンドで長い直線を切る時はブレやすいのも難点です。フタ部分の合わせ目に沿ってシャーッと動かしていたはずが、いつの間にか箱の上に刃が乗り上げてどんどんズレていってしまう、ということもままあります。

ダンボールカッターの刃は小さくてもしっかり厚みがありますし、根本もがっちりと押さえられているのでブレません。また、土台部分で抑えが効くため刃が浮き上がらず、フタの合わせ目の溝がちょうどガイドのようになって、最初から最後までまっすぐ引くことができるのです。

本体が適度に小さいのも安定感にひと役買っています。カッターナイフよりも、必然的に刃の近くを持つことになるので、コントロールが効きやすいのです。開いたフタの部分が持ち手の延長のようになるからか、小さ過ぎて持ちにくいということもありません。

持ちやすくコントロールが効きやすい

使わない時もスッキリ

カッターとして使用していない時のことも、良く考えられています。本体には強力なネオジム磁石が内蔵されていて、よく使う場所の近くにピタッと貼りつけておけます。私は、キッチンの換気扇につけています。他にも、玄関ドアや冷蔵庫、オフィスならデスクワゴンやロッカーの扉などにつけるのも良さそうです。

フタを閉じれば刃が完全に隠れますし、カチッとしっかり閉まって勝手に開くこともないので、持ち運びにも便利。カッターナイフなどはストッパーがあったとしてもポケットに入れたりするのは少々ドキドキしますが、その点でもダンボールカッターなら安心です。

ジーンズなどの前ポケットにも入るほどコンパクトなので、会社員時代には展示会などのイベント時に使う開梱ツールとしてかなり重宝しました。また私事で先日引っ越しをしたのですが、その際に40箱以上のダンボールを開けるのにも大変役立ちました。

紐を通すための穴もあるので、外で使う機会が多い人はストラップなどをつけても良さそうです。

刃を交換しながら長く使える

切れ味が落ちてきたなと感じたら、刃を保持している土台部分をドライバーで開いて、刃をひっくり返して新しいカドを出せば購入時の切れ味が復活します。また、別売りの替刃(638円)もあるので、刃そのものを交換することも可能です。

とはいえ、私も4年近くヘビーに使っていて切れ味の劣化をほとんど感じませんので、交換しなくてもかなり長く使えそうではあります。

また、開いた時のフラットな面を水平にあてれば、1枚切りカッターとしても使えます。私個人としてはそれほど登場する機会のない機能ですが、キッチンに置いている関係上、手ではがしにくいペットボトルのラベルにちょっと切り込みを入れるカッターとして使ったりすることはあります。手帳などに切り抜きをスクラップする人には便利なのではないでしょうか。

ただし、封筒型のものはちょっと苦手

さて、このようにとっても便利なダンボールカッターではありますが、冒頭に述べたように全てのシチュエーションで完璧な道具というものは存在しません。ダンボールカッターもその例外ではなく、箱系のものを開梱するツールとしては超有能なのですが、封筒系のものを開けるのはちょっと苦手です。

苦手なら無理はせず、その状況を得意とする別の道具に任せようということで、そのような時であれば私はオルファの「カイコーン」(オープン価格/実勢価格150円前後)を手に取ります。イカの耳のような、レーシングカーのフロントウィングのような、特徴的な形になっている先端の部分を、封筒のベロの折り返しにできたスキマに差し込んでスーッと引いて使います。

オルファの「カイコーン」
封筒類に威力を発揮

カッターナイフで有名なオルファの製品だけあって、小さい刃でも切れ味は抜群! いわゆるレターオープナーのようなものと違って、厚めのクッション付き封筒や、レターパックのような厚紙でできた封筒も難なく切り開くことができるのです。また、ラップフィルムがぴっちりと巻かれている時や、PPバンドなどを箱に傷をつけないように切り込みを入れて取り外すのにも重宝します。

構造上、狙って切ろうとしたもの以外には刃が当たらないようになっているので、中身の荷物や指先などをうっかり切りつけてしまう心配がないのも安心です。

適材適所の開梱ツールで快適な通販ライフを!

と、ちょっと苦手なシチュエーションはあるものの、ダンボールカッターは総じて大変使いやすい開梱ツールです。通販を使う機会は多いけれど、今のところ専用ツールは持っていないという方がいれば、初めて入手する開梱ツールとして自信を持っておすすめします。

一方で、封筒系の梱包でものを購入することが多い方は、カイコーンなどそのようなシーンに適したツールをもうひとつプラスすると、さらに快適になるでしょう。

今はお店に行くと開梱ツールもたくさんあってどれを選べばいいか迷ってしまうかもしれませんが、それぞれ特性を理解して自分の使用状況に合ったものを手に入れれば、もう普通のカッターやハサミには戻れません。通販を利用する機会が多い方は、ぜひお気に入りの開梱ツールを入手して、快適な通販ライフを送っていただければと思います。

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。文房具マニア。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。