小寺信良のシティ・カントリー・シティ
第18回
新型コロナで見えてきた都市部と地方のズレ
2020年5月27日 08:45
新型コロナの影響なし!?
テレビでもネットでも、ニュースに目を向ければ新型コロナウイルスの話ばかりで、うんざりしている方も多いことだろう。しかし地方に暮らしていると、飛び込んでくるニュースは東京および首都圏の話ばかりで、地方発の事情はほとんど報じられていないようにも思える。首都圏に住めば地方の事情には関心がないのも無理はないが、ここは少しご辛抱願いたい。
ここ宮崎県も、新型コロナ感染者はゼロではない。17人の感染が報告されている。ただ4月11日を最後に感染者が出ておらず、県庁所在地である宮崎市では、5月23日に感染者の最後の一人が無事退院し、死者はゼロである。
遡ること5月15日、政府は39県に限り緊急事態宣言を解除した。宮崎県ではそれに先だって、5月11日より知事が独自基準として休業要請を解除し、強い警戒態勢へ移行するという、実質的に自粛解除を行なっている。これまで自粛要請により閉店していた市内の各飲食店は営業を再開し、そこそこ人出もあるようだ。
市内の公立小中学校でも、5月18日よりクラスをAとBに分け、隔日登校とした。25日にはいよいよ平常授業となり、部活動も練習再開となる。
全国でもGWまでは自粛ムードだったため、宮崎市内でもマスク着用や手洗いうがいが奨励された。筆者は土地建物の登記申請業務を日常的におこなっているため、役所および建設業、ハウスメーカーとの付き合いが多い。東京に本社がある大手企業はGWを長めにとるなどの対策を取ったが、地元企業や役所関係の仕事スタイルは変わらなかった。つまりテレワークではなく、ほとんどが皆普通に出勤していた。
元々通勤は自家用車だし、満員電車に揺られる必要もない。三密に気をつけていれば十分という雰囲気であった。
その一方で、不足品は都市部と同じだった。地方ならマスクぐらい普通に売ってるだろうと思われるかもしれないが、やっぱりこちらでもマスクはどこを探してもなかった。加えて小麦粉やパスタといった、ちょっと凝った料理の材料が一気に消えた。これも首都圏と同じである。
首都圏も地方も暇になったらやることは同じ、というよりも、テレビやネットなど情報ソースが同じなので、興味関心も同じなのである。
GW明け、東京・新大久保あたりでマスクが出回り始めたというニュースが出たあたりから、徐々にドラッグストアでもマスクが並ぶようになった。感染者数が桁違いに少ないのに、消費者の動きは驚くほど都市部とシンクロしている。
影響はこれからだが…
地方において、大きなお金がコンスタントに動くのは、不動産業界である。3月末から、首都圏では多くの人が営業自粛で収入が減ったり、仕事を失ったりしているが、地方の不動産業界の仕事量は減らなかった。
それというのも、現在現場が回っている仕事は、今から3カ月~半年前に発生したものだからだ。したがって地方の不動産業界にコロナ禍の影響が出始めるのは、これからまだ3か月~半年後という事になる。現在は影響がないので、コロナ対応としての補助金や給付金が申請できないケースもあるだろう。こうしたディレイをうまく読んでやり過ごせるかどうかが、地方企業の生き残りを左右する。
一方で、地方の中小企業は資金力不足で、ほぼ自転車操業のようなところも少なくない。大手スーパーのイオンでは、専門店街として「イオンモール」を展開しているが、4月18日より全国的に臨時休業を行なってきた。
ゴールデンウイークも過ぎた5月13日より順次営業を再開し、ここ宮崎のイオンモールも無事営業再開となったが、すでに閉店を決めた店舗もあった。イオン側は臨時休業の間、テナント料は徴収していないはずだが、それでも国の手当が間に合わなかった格好だ。
特別定額給付金も、すでに都市部ではオンライン申請で給付金を受け取った人もあり、郵送組もようやく申請書が届きはじめているようだ。ところがここ宮崎では、オンライン申請のためにマイナンバーカードの発行を求める人が市役所に長蛇の列を作った。しかし新規発行まで2カ月ほどかかるという。
紙の申請書の方が早いと諫められて手続きせずに帰った人も多かったと言うが、執筆時点では郵送による申請書はまだ届いていない。さらに言えば、アベノマスクもまだ到着していない。
国の対応も遅いと言われているが、地方行政の動きはそれに輪をかけて遅い。消費活動は都市部と同じタイミングなのに、様々な援助が全く間に合わない。
このちぐはぐさが、地方の中小企業や個人事業者の体力を削っていく。都市部の人から見れば、「なぜこのタイミング?」と思われる時期に、地方企業の廃業や倒産が起こるだろう。感染者が少ないはずの地方が被るコロナ禍の影響は、都市部よりもずっと複雑な形をしている。