いつモノコト

動画編集を専用コントローラで時短 「DaVinci Resolve Speed Editor」

最近は動画編集をする人も多いと思いますが、なかなか時間がかかって大変な作業です。筆者も企業のプロモーション動画や趣味の映像制作で動画編集をしているのですが、いつも使っている大変便利なアイテムがあるので紹介したいと思います。

それが動画編集専用のコントローラー「DaVinci Resolve Speed Editor」です。映画撮影用のカメラなどで知られるオーストラリアBlackmagic Designの製品で、同社の動画編集ソフト「DaVinci Resolve」シリーズで使うことができます。

DaVinci Resolve Speed Editor

DaVinci Resolveシリーズには、無料版の「DaVinci Resolve」と高機能な有料版の「DaVinci Resolve Studio」があり、Speed Editorはいずれでも使用可能です。

価格は59,980円ですが、DaVinci Resolve Studio(44,980円)が付属しますので、Speed Editorの分は実質15,000円とも言えます。またAmazonなどでは、DaVinci Resolve Studioが付属しないバージョンが25,000円ほどで売られています。

まずDaVinci Resolveシリーズですが、これはハリウッド映画でも使われているという編集ソフトで、強力な色調整機能、音声編集機能、モーショングラフィックス機能などを搭載しているのが特徴です。プロ向けの動画編集ソフトの中では比較的後発ですが、高機能なのに加えて無料版があることで国内でもユーザーが増えているようです。

Speed Editorの使用例。組み合わせているPCは、高性能・大画面16型ノートで薄型軽量を実現したマウスコンピューターのクリエーターPC「DAIV 6H」

Bluetoothでワイヤレス接続

動画編集の基本的な流れは、素材のクリップから使うところを選んでタイムラインに並べていき、タイムライン上のクリップの長さを調整したりして大まかな内容ができあがるというものでしょう。これを「カット編集」といいますが、必要な箇所がどの素材クリップに含まれているのか探すのが大変ですし、タイムラインのスケールを拡大したり縮小したりして微調整するので時間が掛かります。

Speed Editorは、こうした面倒な作業を専用のインターフェースで高速に行なおうというアイテムです。43のキーとサーチダイヤルからなり、大きさは245×156mm。厚さは44mmとなっています。

16型ノートPC(マウスコンピューター DAIV 6H)との比較

バッテリーは内蔵で、USB Type-Cで充電できます。PCとはUSB Type-CかBluetoothで接続します。重さは780gありますが、業務用として通用する作りの良さや安定感があり、本体がぐらつくことも無くキーも軽くて押しやすいタイプが採用されています。

マウスを使わずにサクサク編集

Speed Editorを使ったカット編集の流れをざっと見てみましょう。DaVinci Resolveにはカット編集に特化した「カットページ」があり、Speed Editorは主にこのページで使用します。

まず素材をDaVinci Resolveに読み込んだら、カットページでSpeed Editorの「SOURCE」ボタンを押します。すると読み込んだ素材クリップがあたかも1つに繋がったような表示になります。ここで威力を発揮するのがサーチダイヤルで、これを回すと繋がって表示されている素材クリップを自在に移動できます。

SOURCEとTIMELINEボタンでどちらを動かすかを決める
SOURCEボタンで全ての素材クリップが連続して表示された(画面右上)
サーチダイヤルは慣性回転も可能

サーチダイヤルの上にある3つの白いボタンでサーチダイヤルで移動できるスピードなどを調節できます。これによって素材が少なくても多くてもちょうど良いスピードで探すことができます。

使いたい部分が見つかったら「IN」ボタンでイン点(始まり)を指定し、再生しながら「OUT」ボタンでアウト点(終わり)を指定します。そして「APPND」ボタンを押すと使いたい部分のクリップがタイムラインの末尾に配置されます。

イン点とアウト点ボタンはよく使うので大きく目立つデザインに
APPNDボタンでクリップがタイムラインに並ぶ。タイムラインを上書きしたり最上位トラックに配置するボタンもある

これを繰り返していくとタイムラインに採用部分がどんどん並んでいき、大まかな配置ができあがります。さらに「TIMELINE」ボタンを押すと素材を選ぶモードからタイムラインを操作するモードに移ります。すると、サーチダイヤルと組み合わせてタイムライン上のクリップの長さを変えたり場所をずらしたりの調整できます。必要であれば「DIS」キーでディゾルブ(画面がなだらかかに変化する)も追加できます。

画面下半分のタイムライン表示にクリップが並んでくる。画面中央の青いバーの部分は尺全体を表示していて分かりやすい
トリムやロールといった調整用のボタンがも並ぶ。ディゾルブもこのブロックで設定可能

Speed Editorを使った編集の利点のひとつは、これらの操作がマウスに触れずにできるということでしょう。従来のキーボードとマウスによる操作はそれぞれを手が行き来するので煩雑でした。また、フレーム単位の調整など細かいことをしようとすると、タイムラインの拡大をしてまた戻したりと面倒でした。

Speed Editorでは、サーチダイヤルのおかげで素早い移動もフレーム単位での調整もシームレスにできるのがありがたいところです。これらが動画編集の時短に繋がります。

マルチカム編集も効率的になる

以上は1台のカメラで撮影した映像のカット編集でしたが、Speed Editorはマルチカム編集でも威力を発揮します。

マルチカム編集は複数のカメラで同時に撮影しておき、編集時に切り換えて1つの動画にするものです。PCの処理能力も向上し、一般の方でもマルチカム編集で動画を作ることは珍しくない時代になりました。

カットページでは素材を選択して「クリップを同期」ボタンを押すと、音声などを元に簡単に同期がとれるようになりました。あとは同期している複数の画面を見ながら、採用したいカメラの番号をSpeed Editorのテンキーで押しながらサーチダイヤルを回していくと、進んだ分だけタイムラインにその映像が配置されていきます。これもマウス操作よりも格段に速いというのが実感です。

SYNC BINボタンを押すと同期したマルチカム素材が表示される
採用カメラがテンキーで選べるのが便利だ

このようにSpeed Editorは、例えばイベント撮影の素材を短くまとめたいときや、インタビューのマルチカム編集などではその効果が実感できるでしょう。業務用の製品なのでそれなりの金額ですが、筆者は購入早々に元は取れたと考えています。本格的に動画編集をするなら、ぜひ検討して欲しいアイテムと申し上げておきます。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。