いつモノコト

30年ぶりにG-SHOCKを買ってみた。伝統と革新に触れる

カシオ G-SHOCK GA-2000S-1AJF

G-SHOCKのニュース記事を作る機会が増え、ラインナップを眺めることも多くなったのですが、いくつか気になるモデルも出てきたので、私として久しぶりにG-SHOCKを買ってみました。私がG-SHOCKを使っていたのは中学生の頃だったと思いますので、約30年ぶりということになります。購入したのは「GA-2000S-1AJF」で、ヨドバシカメラでの価格は11,010円でした。また、Amazon.co.jpで別途購入したNATOベルトは1,980円でした。

一口にG-SHOCKといっても、現在は非常に多くのモデルがラインナップされています。今回購入したモデルは、その見た目の印象とは裏腹に、機能的にも価格的にもベーシックなモデルです。外装は伝統的な樹脂製で、ソーラー発電や電波修正機能は搭載せずボタン電池で駆動と、こだわりがある人なら物足りない内容だと思います。一方で、家電量販店ではポイント還元を考えると1万円フラットで買えてしまうなど気軽に手を出しやすいです。10代の学生でもお年玉やおこづかいを貯めれば買える価格帯でしょうし、プレゼントする場合にも選びやすいモデルです。

トヨタのヤリスやカローラ、フォルクスワーゲンのポロやゴルフといった庶民向けモデルには、高級品にはない独自の技術革新やノウハウが詰め込まれているものだと思います。今回は、“ちょっと気になったので買ってみよう”というカジュアルなスタンスからスタートしていますし、こうした入門価格のモデルにこそ、メーカーの底力が垣間見えるのではないかという目論見もありました。

ベーシックなモデルで、30年ぶりに手にするG-SHOCKですが、結果的には、伝統と革新が同時に感じられる、興味深い製品でした。

パッケージを開けたところ
後述するカーボンコアガード構造のタグも付いていました

カーボンコアガード構造がもたらすインパクト

GA-2000シリーズは2019年に発売されたモデルで、現在も販売されていますが、すでに直接的な後継モデルとしてGA-2200シリーズも登場しています。この2つは外観デザインのコンセプトも比較的似ているので、私はモノトーンであることや時分針の視認性の高さといった、個人的にこだわりたい条件でふるいにかけていった結果、最初のほうであるGA-2000S-1AJFを選びました。

さて、私がなぜGA-2000シリーズを選んだかというと、近年のG-SHOCKの中では非常に大きな変化といえる、“耐衝撃構造を根本的に変更したモデル”だからです。これはカーボンコアガード構造と名付けられており、2019年以降、さまざまなモデルで採用されています。店頭では、カーボンコアガード構造を採用したモデルにはタグが付けられ、分かりやすくなっています。

G-SHOCKは初代モデルのレガシーとして、“外装のケースで衝撃を吸収する”という構造を基本的に踏襲してきました。このことはG-SHOCKらしい見た目を実現する一方で、ボタンガードの存在や、バンドの付け根がケースと一体化されていることも含めて、デザイン面では制約になっているという一面がありました。

カーボンコアガード構造は、カーボンファイバー強化樹脂を使ってモジュール(ムーブメント)を保護するという構造で、耐衝撃構造をケースの内部でほとんど完結させてしまうものです。この結果、外装ケースのデザインの自由度は飛躍的に上がりました。

GA-2000シリーズのカーボンコアガード構造。外装ではなく内部で耐衝撃構造を実現しています(カシオのWebサイトより)
ボタンを覆い中央でサンドイッチされているのがカーボンファイバー強化樹脂製のパーツ。すこし模様がついています。ちなみにシルバーのボタンは回転するので表面の模様を揃えておくこともできます

特筆すべきは、ケースの強度の向上や構造の変化で、G-SHOCKのデザインの中でも一際特徴的だったボタンガードが不要になっている点です。ケースの形状でボタンを衝撃から守るボタンガードは、40年近いG-SHOCKの歴史の中で、ほとんどのモデルに共通するデザインです。ボタンガードがないスッキリとした円形ベゼルというだけでも新鮮に映りますし、GA-2000シリーズはむしろ大型のボタン自体が外に突出していて、これまでにないデザインが可能になったことを印象づけています。

さらにバンドも一般的なバネ棒で取り付ける構造が可能になったことで、ユーザーが自由に交換できるというカスタマイズ性も実現しています。

本モデルの裏蓋は二重構造で、外側はラグと一体化。バンドは一般的な腕時計のようにバネ棒を外して交換できます
バンドはケースと一体ではないので大きく開きます

GA-2000シリーズは、最初にカーボンコアガード構造を採用した4つのシリーズのうちのひとつで、最もベーシック(つまり安価)なモデルです。前述のようにケースは樹脂が主体で機能もベーシックですが、カーボンコアガード構造を採用していることでこれまでにないデザインを採用し、“変化量”は十分に感じられるモデルだと思います。

普通の時計っぽい? 左右対称で円形ベゼルのデザイン

こうしたさまざまな要素が組み合わさり、結果として最もわかりやすい特徴になっているのは、前述のようにベゼルが真円形で、ボタンガードがなく大きなボタンがむき出しになっている、新世代の到来を予感させるデザインです。もちろんこれはG-SHOCKとして、です。5つのボタンと3つのサブダイヤルの配置は左右対称で、腕時計全般のデザインからすればむしろ王道的で安定感があるという見方もできます。

ダイヤルのデザインやディテールは、比較的安価なベーシックモデルということで高級感は期待できないのですが、GA-2000S-1AJFのインデックス(指標)はブラックで、樹脂の質感が分かりづらく、結果的にチープさが隠されています。

ただ同時に、インデックスやミニッツトラックは存在感が薄いという問題もあります。特に分表示のためのミニッツトラックは線が細いので、周囲が暗くなると見えづらくなります。例えば都市部の夜間の路上では、時分針はしっかり見えるため時計のライトを点灯させるほどではないのですが、ミニッツトラックはほぼ見えなくなるため、57分なのか58分なのかすぐに分からないという事が起こります。基本的にはカジュアル路線のデザインですし、アナログ表示の細かな視認性に過剰な期待は禁物といったところでしょうか。

ダイヤル上の印字は精緻で、液晶も細かいため、こうした部分には腕時計らしい精密感があります。3時位置のサブダイヤルの液晶は、数字が小さすぎる感はありますが……。30年前に初めてG-SHOCKを手にした時、小さな液晶に所狭しといろいろなことが表示されていて、ワクワクしながら眺めていたことを思い出しました。

6時と9時位置のサブダイヤルと時分針のセンター部分には蒸着処理が施され、腕時計を傾けるとキラっと光って、程よいアクセントになっています。

ベゼルの外側で6時位置にあるボタンは、ライトの点灯や針退避に使うボタンです。何か特殊な機能を持っていそうな雰囲気ですが(笑)、デザイン的には良いアクセントになっています。

ライトのボタンを押すとLEDライトと液晶バックライトが点灯します
時分針のみ蓄光塗料も塗られています

全体として樹脂パーツが基本になっていますが、表面処理は総じて丁寧です。ベゼルやボタンなど目につきやすいパーツはギリギリのところでチープさが抑えられています。あまり安っぽく見えないのはありがたいところで、むしろ価格帯を考えれば満足度の高い仕上がりです。

重さは実測で63gと軽量です。機械式の腕時計に慣れていた身には少し新鮮な部分で、その大きさに反して軽快な装着感です。1日中着けていても気になりません。

実測で63gでした

安価でもハイレベルな“伝統”

GA-2000シリーズはベーシックで、特殊な機能はない、ブランドの中ではカジュアル路線のモデルです。しかしそこはG-SHOCK。最低限満たしている性能が非常に高いので、普段使いでもアウトドアでも問題なく使えます。

防水性能は日常生活用強化防水の20気圧防水なので、雨や水仕事、水泳も問題ありません。耐衝撃に関しては、取扱説明書には「腕につけたままでチェーンソーなどの強い振動や、激しいスポーツ(モトクロスなど)でのショックを受けても時計には影響ありません」と記載されており、なんとも頼もしい限りです。

真に驚くべきは、これらが1万円そこそこのモデルでも実現されていることでしょうか。「G-SHOCKなら当たり前じゃん」と言われそうですが、広範なノウハウと技術力に支えられていることは想像に難くありません。

カーボンファイバー強化樹脂を使うカーボンコアガード構造についても、カーボンを使う素材の開発、新しい耐衝撃構造の開発と、さまざまにコストがかかったことは容易に想像できますが、特別に高額なモデルではないベーシックなモデルにも展開するあたり、カシオの意気込みや念持のようなものを感じます。

NATOベルトも相性抜群

バンドは手軽に交換可能で、カシオから純正品として交換用バンドも販売されています。私はほかの腕時計でもNATOベルトを愛用しているので、ここはユーザーカスタマイズとして、自己責任ではありますが、バンドを外しシンプルなバネ棒を取り付けて、NATOベルトを装着してみました。

NATOベルトはAmazon.co.jpで買える「time+」というブランドの、バリスティックナイロンを使った製品で、幅は24mm、金具はブラックのモデルです。NATOベルトに交換するとミリタリーテイストがグッと高まって、純正の樹脂バンドとはまた違った雰囲気が楽しめます。

NATOベルトに交換

今回買ってみたGA-2000S-1AJFは、カーボンコアガード構造という近年の大きな革新を最初に体現したモデルのうちのひとつです。全体として、ゴツいデザインの伝統的なG-SHOCKらしさを求める人には大人しく映るかもしれませんが、G-SHOCK“再デビュー”組の私には十分にゴツくて、バンドも自由に交換できて、よい塩梅に感じられています。

太田 亮三