キャッシュレス百景

第18回

京都でSuicaとカードの生活

お酒や醤油の本を書いている杉村啓といいます。あとグルメ漫画が好きすぎて本を出したり漫画の原作をやったり、漫画の監修をやったり、各話ごとのコラムを書いたりしていて、「むむさん」「むむ先生」とも呼ばれていたりします。

昔はIT系の記事なども手がけていたのですが、最近は上記のようなものが多くてあまりIT系を追いかけていないのと、生来の面倒くさがりが出てしまったためにキャッシュレスについてもあまり真面目に取り組んでいません。編集さんには本当に自分でいいんですか? と何度も確認してしまいました。

というわけで、多分ためになることはほとんどない、「意識低い」キャッシュレス生活についてお話させていただきます。

管理が面倒なので支払い方法を増やしたくない

どれぐらい面倒くさがりかというと、ポイントカードとかは作ったり残高を確認したり使ったりするのが面倒なので基本的には作りたくないし、アプリのインストールもしていません。Tポイントカードもポンタカードも一度も作らず生活をしております。お店のポイントカードも受け取りはするものの、適当に放置をしてすぐになくしてしまいます。

こういう性格なので、QRコードを使うなんたらペイ的なものも、何ひとつ使っていなかったりします。還元がどうのというお祭りにも一度も参加していません。このサービスがポイント還元がいいと言われても、それをわざわざ作って対応しているお店に買いに行って……と考えると、急に手が動かなくなりそのまま放置して今に至るのです。

世の中の多くの人には信じられないかもしれませんが、面倒くさいという理由でレンタルを延滞しまくって延滞料を払うタイプの人っているんですよ! 封筒に入れて投函するだけでしょと言われても、できないものはできないんです!

そんな難儀な性格の人が何のキャッシュレスを使っているのかというと、iPhoneに入れた「Suica」と、昔から持っているクレジットカードだけです。

基本的にはコンビニや細々とした買い物はSuicaで済ませています。クレジットカードはインターネット通販と、少し金額が大きい買い物用。というよりも、ATMに行くのも面倒だからクレジットカードで払っているという感じです。ただ、数が増えすぎると管理ができない(管理が面倒になる)ので、新しく作るのも極力避けています。

関西へ引っ越しを機に「Smart ICOCA」を導入

昔はカードの「Suica」とクレジットカードを使って関東に住んでいたのですが、6年ほど前に京都に引っ越しをしました。引っ越した理由は「淡口醤油の文化圏に住みたい」「観光をしたい」というものです。

京都の観光地は比較的密集してはいるものの、公共交通機関で移動するような場所もあります。そうなるとSuicaの出番になるのですが、何かトラブルがあったときはJR東日本の窓口に持っていかなければならない(と、当時言われたのです)のがちょっと面倒なので、JR西日本の交通系ICカード「ICOCA」の「SMART ICOCA」を導入することにしました。

「SMART ICOCA」はクレジットカードと紐付けることで、JR西日本の券売機だと現金なしにチャージができるのがポイントです。しかも紐付けるカードは、J-WESTのものでなくても大丈夫。WEBで利用履歴も見えます。万が一紛失しても再発行可能。もちろん交通系ICカードなので、対応しているお店だと普通に買い物ができます。

特に現金なしでチャージできるというのがとても良い!

対応している券売機にセットをすると「1,000円」「2,000円」「3,000円」「5,000円」のボタンが表示されるので、入れたい金額のボタンを押すとチャージされます。

JR西日本の券売機。右下にSMART ICOCAを載せてチャージできる。券売機の中にカードを挿入しないのでカードの印刷面が汚れなかったり、ステッカーを貼っても大丈夫というメリットも

この、定額がチャージされるというのがポイントでして。

ポストペイやオートチャージだと、どうしてもお金を使っている感覚が希薄になるので、自分の金銭感覚的にはとても危険なのです。面倒くさがりではあるものの、面倒を排除しすぎるとお金を使いすぎてしまうというわけですね。クレジットカードと二刀流でばんばん使うと翌月の請求が大変なことになってしまうので、なくなったら5,000円チャージをする、というスタイルにすることで抑制していたのです。

でも、この生活にもひとつだけ欠点がありました。

それは「住んでいるところの最寄り駅がJRの駅ではなかった」ことです。

ちょっと足りなさそうだからチャージしたいなと思っても、現金なしチャージをするためにはわざわざJRの駅まで歩いていかなければなりません。それも面倒で節制にはつながっていたものの、せっかくのSMART ICOCAなのに現金でチャージをしたりすることも多々ありました。

あと、当時は観光名所に行くには必須ともいえる京都市バスに交通系ICカードが対応していなかったため、安く便利に移動しようとするとプリペイドカードの「トラフィカ京カード」(1,000円で1,100円分、3,000円で3,300円分になるカード)を買った方が良いということもありました。もっとも、2015年11月に京都市バスが交通系ICカードに対応してくれたので、ここの不満はなくなります。しかも、同一日に京都市営地下鉄と京都市バスを同じ交通系ICカードで連続して使うと自動的に割引されるサービスもあり、むしろトラフィカ京カードはカードの絵柄のためだけに買うようになりました。

トラフィカ京カードや1日フリーパス券を上手に使うと、京都市内をお安く移動できます

iPhone 7にSuicaがきた!

クレジットカード以外は「SMART ICOCA」「トラフィカ京カード」の生活が変わったのは、2016年9月の「iPhone 7」発売です。FeliCaが導入されたことによってApple Payが使えるようになり、Suicaを登録してモバイルSuicaとして使えるようになったのです。

早速導入してみたところ、SMART ICOCAのようにわざわざチャージをしにいくのに歩いて駅まで行く必要がない!(当たり前) これは便利! でも便利すぎるから、オートチャージにはせず、一度にチャージする金額は3,000円にしとこう!

というわけで、現在ではiPhoneのモバイルSuicaを3,000円ずつチャージする生活をしています。以前よりチャージに行く面倒がなくなったので、一度にチャージする金額を少なくしたのでした。

足りなくなったらSuicaアプリで3,000円ずつチャージ。制約と誓約です

京都でもキャッシュレス対応の店舗は増えている

東京に比べると対応しているお店の幅は広くはないのですが、京都ではここ1~2年で対応しているお店がグッと増えた印象です。キャッシュレス施策のおかげでしょうか。個人商店でもSuicaでピッと支払えることが多くなってきたのはありがたいです。

ちょっと面白いのはよく行く酒屋さんが経営しているファミリーマートで、ここが日本酒がとても充実しているのです。しかもファミリーマートだからSuicaで買い物可能。夜中に「あっ、どうしても○○のお酒が飲みたくなってきた!」と思ったときでも、Suicaでサクッと買えてしまいます。

ちょっと反射して見にくいですが、お酒が充実している「ファミリーマートサカタニ京阪七条店」。Suicaで日本酒を買えます。お店の方に許可を得て撮影しています

老舗の醤油屋さんや酒蔵や醸造所では対応していないところもあるのですが、そこはそれ。現金やクレジットカードで支払っています。あと、お寺や神社も当然ですが対応していません。キャッシュレスお賽銭はなんかちょっと風情がなさそうなので、導入されても個人的には使わなさそうです。

というわけで「意識が低く」ても、交通系ICカードがあれば京都でもそれなりにキャッシュレス生活を楽しめています。

杉村 啓

醤油やお酒が大好きで、淡口醤油の文化圏に住みたいという雑な理由で京都へ引っ越したライター。お醤油やお酒の本を書いたり、調味料に関して記事を書いたり、漫画関係のあれこれをやったりしています。著書に「白熱日本酒教室」(星海社 / 新書とそれを原作にした漫画がある)、「醤油手帖」(河出書房新社)など。