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人類は勝てない? ChatGPTで本格調査レポートを作成「deep research」を試した

2月3日、OpenAIが新たなAIエージェントを発表しました。それが、ChatGPTの新機能「deep research」です。

Webなどのオンライン情報から詳細な調査レポートを作成する機能で、ユーザーが質問をChatGPTに入力すると、数百のオンラインソースを検索・分析・統合し、包括的なレポートを作成してくれるというものです。

1万字を超える専門分野のレポートなどが、ものの10分程度で作成できるとのこと。ChatGPTの登場以来、AIの進歩や可能性は日々報じられ続けていますが、この新機能は相当にインパクトがありそうです。またこれが日本・東京で発表されたことも印象に残りました。

仕事・業務において、レポートを作成する機会が多い人も多いと思いますが、deep researchは、金融、科学、政策、工学などの分野などを中心に多くの専門分野をカバーできるとのこと。技術的には、Webブラウジングとデータ分析に最適化した次期バージョンのOpenAI o3モデルを採用し、推論を活用してインターネット上の大量のテキストや画像、PDFなどを、検索し解釈・分析しているとのことです。

筆者も、トレンドの分析や業界動向の振り返り、事業計画の作成などで調査を行なうことはありますが、その手間を大幅に削減できそうです。期待は高まります。

ただし、このdeep researchを使うには月額200ドル(税込で約3.4万円)の「ChatGPT Pro」プランの加入が必要です。ChatGPT Proは、推論モデルの「o1」を活用したProモードや、AIがパソコン画面を操作する「Operator」などProプランだけの機能は多いのですが、筆者にとってはこのdeep researchが最も魅力的に感じました。2月4日にChatGPT Proを契約し、試してみました。

3.4万円のChatGPT Proを契約 作成前の「確認」が良い

deep researchを使う前に、まずはChatGPT Plus(20ドル/3,400円)の契約をChatGPT Pro(200ドル/約3.4万円)に切り替えました。ChatGPT Proは「約3万円」と認識していましたが、1月からChatGPTの有料版に消費税が付加されるようになったため、さらに4,000円ほど高くなりました。なかなかの負担感です。

使い方はシンプルです。ChatGPTのチャット画面の下段に追加された「詳細なリサーチ」のボタンをクリックするとdeep researchがONになるようです。モデルによって、deep researchがONにならない場合もあるようで、その際にはo3-miniなどo3系のモデルを選ぶとdeep researchが使えました。

[詳細なリサーチ]ボタンが現れた
モデルによって詳細なリサーチボタンがでないことも

あとは、通常のChatGPTと同様にプロンプトを入れて決定(↑ボタン)を押すだけです。すると、問に対して、「ご依頼ありがとうございます。詳細な分析を行うため、以下の点を確認させてください。」といって確認事項が表示されます。なお、調査数は、現時点では「1カ月あたり100クエリ」とされています。

その方針が正しそうであれば、そのまま決定。追加したいことや方針変更したい場合は、ここで追加指示を行なう形です。相当の計算量を使うため、事前に調査方針を確認してくるわけですが、「この方針でいかがでしょう?」と聞いてくるあたり、「できる新人」といった印象で好感が持てます。

方針を決定し、調査を開始すると、deep researchは数百のオンラインソースを検索し、分析・統合してレポートを作成します。作成時間は5分から30分程度のようですが、時間や分量などに応じて変化するようです。レポートが生成されると、ChatGPTのメッセージ画面にレポートが表示されます。

驚異のクオリティと調査量

いくつか、deep researchに調査を依頼してみましたが、ある程度自分が理解しているジャンルのほうがレポートの品質は上がるようです。また、そのレポートの正しさを判断するにもある程度の業界やジャンルの知見が必要となります。後述しますが、「適切な問いを立てられる」というのがdeep research活用では重要になりそうです。

OpenAIによれば、レポートの主要な対象として、金融や科学、政策、工学などの分野が挙げられています。今回は一例として、筆者が取材を続けてきた「日本の動画配信サービス」をテーマに設定にしてみました。

日本の動画配信サービス2015-2025

2025年はNetflixが2015年9月に日本上陸してからちょうど10年。ということで、この10年の日本の動画配信サービスがどのような形で変わってきたのか、どのような出来事があったのか振り返りたいと考えました。そのため以下のようなプロンプトをChatGPTのdeep researchに依頼してみました。

プロンプトで依頼

日本における動画配信サービスの動向についてまとめてください

2015年から2025年までどのような変化が起きて、現状はどうなのか

対象となるサービスは
Amazon Prime Video、Netflix、Hulu、U-NEXT、ABEMA、TVer、Lemino、DAZN、

分析トピックは
・市場全体
・サービスごとの加入数とシェア推移
・コンテンツジャンル:ドラマ、映画、スポーツ、アニメ等
 各社がどのような戦略を取っていたか。現在、重要とされる施策はどのようなものか
・ビジネスモデル:サブスク(SVOD)、広告ありサブスク、広告(無料)、買い切り等の変化・価格戦略
・動画配信の拡大にあたって象徴的といえるタイトル
・今後の良さ億

冒頭に500字程度のサマリーがほしいです。

すると以下のように、確認が入ります。この確認が良くできた「アシスタント」という感じで非常に素晴らしいですし、自分の間違いにも気づきます。プロンプトでは「今後の予測」を「今後の良さ億」と誤入力しているのですが、確認画面では「今後の展望」と解釈されているので趣旨は伝わっていたようです。

調査前の方針確認

こうした事前確認により「自分が本当に聞きたかったこと」を思い出したり、追加できるようになるなど、自分だけではわからなかった気づきを与えてくれます。なお、同様の確認機能は、Google GeminiのDeep Researchにもあります。

日本の動画配信サービス市場の2015年から2025年までの動向について調査します。

確認したい点:

分析対象の8つのサービス(Amazon Prime Video、Netflix、Hulu、U-NEXT、ABEMA、TVer、Lemino、DAZN)について、
市場全体の変化
各サービスの加入者数とシェア推移
コンテンツジャンルごとの戦略(ドラマ、映画、スポーツ、アニメ等)
ビジネスモデルの変化(SVOD、広告ありサブスク、無料広告モデル、買い切りなど)
象徴的なタイトル
今後の展望
ご希望のレポートの形について、以下を教えてください。

データ範囲・詳細レベル:
可能な限り具体的な数値や市場調査データを含めるべきか、それともトレンドの概観を重視するか。

ビジュアル要素:
加入者数や市場シェアの推移を示すグラフや表を含めた方がよいか。

優先する視点:
例えば、特定のサービス(Netflixの戦略など)を詳しく知りたいか、広告ビジネスの影響に焦点を当てるべきか。
この点を教えていただけると、より詳細で適切なレポートを作成できます。

この確認について、以下のように追加しました。より自分が読みたいレポートに近づけるとともに、FODやDisney+、Apple TV+などのサービスを忘れていたので追加した形です。

調査前に追加指示を出せる

1 具体的な戦略を知りたい
2 グラフ等も入れてほしい
3 10年間の流れがわかるような整理を軸にしてほしい。その中で重要なサービスがあるのであれば、それをピックアップするのが望ましい。Netflix、Prime Video、U-NEXT、ABEMAあたりでしょうか

分析対象のサービスについて、Apple TV+、FOD、Disney+を追加してください

このやり取りを経て、約10分後に出力されたレポートが以下のURLになります。すべて紹介するのは誌面の都合上厳しいので、冒頭の「市場全体へ変化」を紹介しながら、全文のURLを入れておきます。内容的には、金額等については出典の精査は必要ですが、流れとしては正しく分析されているように見受けられます。

日本の動画配信2015~2025年(ChatGPT/deep researchで作成)

ちなみに文字数は、出典表記を除いて約1.2万文字。これだけの調査を15分で出力できる人類は存在しないでしょう。

レポートが出力された。1.2万文字

1. 市場全体の変化(2015~2025年)2015年頃の日本の動画配信市場規模は約1,400億円でした。当時はYouTubeやニコニコ動画など無料サービスが主流で、有料配信の利用者は限定的でした。しかしスマートフォンの普及とコンテンツ拡充により、定額見放題サービス(SVOD)のユーザーが2013年頃から増加し、2015年には北米発の主要SVODが日本上陸しました。

これ以降、市場は急成長を始めます。

2015年9月にNetflixとAmazonプライム・ビデオが相次いで参入し、国内企業も追随しました。特に2019年以降は競争が激化し、新規サービス参入や統合も進みました。2020年前後には新型コロナ禍の“巣ごもり需要”で利用が爆発的に伸び、市場規模は2020年に3,222億円(前年比+34.7%)、2021年に3,862億円(+19.9%)、2022年に4,508億円(+16.7%)と拡大しました。

2022年時点で国内の動画配信サービス契約者数は延べ4,800万件を超え、コロナ禍で10倍近い成長を遂げたとも言われます。サービス数も十数社に増え市場は分散化しました。

近年は成長率こそ鈍化したものの市場拡大は続いており、2023年の日本のSVOD市場は約5,054億円規模(前年比+12.1%)に達しています。

有料動画配信市場全体(広告型や都度課金含む)では2025年に1.2兆円近くに達するとの予測もあります。

こうした成長の要因には、ブロードバンド・スマホ環境の整備、高品質なコンテンツ供給、そしてコロナ禍での需要拡大が挙げられます。一方でプレイヤー乱立による競争環境の激化も顕著で、国内外合わせて約11サービス以上がシェアを競い合う状態となりました。

調査レポートで助かるのは出典元のURLをすぐに辿れるようになっていること。「この情報はどこのものだ? 」となった時に、URLを辿ってその情報元が確認できるため、ユーザー側でその利用可否を判断できるようになります。

レポートの出典元となるURLなどが確認できる

レポートを細かく見ても、Netflix等のサービスごとの分析やビジネスモデルの変化については、微修正と事実確認を行なえば、ほとんどそのまま使えるレベルといえそうです。「市場拡大に貢献した象徴的なタイトル」については少し情報が古く感じましたが、2015年から2025年と10年間の動向を見ているので妥当なのかもしれません。

日本の動画配信サービス: 2024年の動向と2025年の予測(deep research)

1万字超えの高品質レポートが、事前のやり取りを含めて15分程度で作成できるのは衝撃的です。

ただ、上記のレポートは10年間のトレンド推移を軸にしたため、やや総花的というか一般論になってしまった印象もあります。調査対象に追加した、Disney+やApple TV+も日本展開が拡大してきているのはこの2-3年ですから、あまり意味はなかったかもしれません。

また、レポートの出典がGEM Partnersなどの調査会社が中心で、サービス企業の公式情報が少ないのが気になりました。そのため次の調査は、「日本の動画配信サービス: 2024年の動向と2025年の予測」といった内容に改め、会員数や情報の出典については、可能な限りサービス提供元のIR情報等をチェックするよう指定し、新たなレポートを依頼しました。

また、最近の動画配信サービスのトレンドとして「広告あり」がトレンドになっています。そのあたりの情報まとめを期待しながら、以下のようにプロンプトを入力しました。

プロンプト

日本の動画配信サービスで2024年に起きたこと、2025年に起きること

この1-2年の動画配信サービスのトレンドを分析し、今後の予測を行ってください

集計対象とするサービスは主にNetflix、Amazon Prime Video、U-NEXT、Hulu、Lemino、DAZN、ABEMA、TVerです。その他のサービスは必要があれば言及してください。

・サービスごとのシェア状況とその強み・弱みについて
・有料サブスクでも「広告」が増えているようです。その理由の分析してください
・TVerは無料ですが、放送コンテンツの充実で人気です。そのビジネスモデルについて個別に分析してください
・スポーツを重視するサービスも増えているようです。その理由を説明してください
・各サービスの価格・コンテンツ戦略を分析してください
・冒頭に500字程度のサマリーを作成してください

また、会員数や情報は見つかる限り、サービス提供元のIR情報等をチェックしてください

すると以下の確認がでてきます。

ご依頼ありがとうございます。詳細な分析を行うため、以下の点を確認させてください。

対象期間: 2024年と2025年に焦点を当てるとのことですが、過去のトレンド(2022年~2023年)にも少し触れた方がよいでしょうか?
競争環境の比較: 国内サービスと海外サービス(Disney+やApple TV+など)の比較も含めますか?
スポーツコンテンツの注力理由: Jリーグやプロ野球、NBA、欧州サッカー、F1などの具体的なスポーツコンテンツについても触れますか?
広告付きプランの詳細: 具体的な事例(NetflixやAmazonの広告付きプランの詳細)を分析に含めますか?
価格・コンテンツ戦略: 価格変動の推移や独自コンテンツ戦略(独占配信、オリジナル作品の強化など)についても詳細に掘り下げますか?
ご希望の詳細をお知らせいただければ、より的確な分析を行います!

こちらからの返答は以下の通り(誤字あり)。

確認して追加指示(誤字あり)

1.はい。必要に応じて2022年ごろまでの情報は使ってください2.海外サービスも参照してください。Disney+は2024年伸びたと思いますので、分析に追加してください
3.具体的なスポーツも分析に入れてください
4.舞台的な事例を入れてください
5.詳細な掘り下げおねがいします

すると、2.6万字を超える詳細なレポートができあがりました。2年間なので短くなるかなと思っていましたが、先程のレポートの倍以上の文量となっています。なお、出力時間は先程とほぼ同じで15分程度でした。

日本の動画配信サービス: 2024年の動向と2025年の予測(ChatGPT/deep researchで作成)

2.6万文字のレポートが作られている

プロンプトでは、「冒頭500字のサマリー作成」を指定しましたがスルーされています。そのため、出力結果からChatGPTに依頼し、以下のサマリーを出してもらいました。

2024年の日本動画配信市場は、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、Hulu、Lemino、DAZN、ABEMA、TVer、Disney+、Apple TV+など各社が独自の強みを活かしながら、競争激化と多様な料金・コンテンツ戦略を展開する時代となりました。Netflixはオリジナル作品と広告付きプランで低価格化を実現し、ユーザー層の拡大を狙っています。一方、Amazonはプライム会員全体の総合価値を武器に広告挿入を計画、U-NEXTは豊富なコンテンツと高付加価値でプレミアム層を堅持。Huluは日テレ系コンテンツに強みを持ち、ABEMAは無料サービスとオリジナル番組で若年層を取り込み、TVerは地上波放送の見逃し配信として圧倒的な利用者数を確保しています。スポーツ配信では、DAZNがJリーグやプロ野球、欧州サッカー、F1など独占契約を活かし成長、一方で各社もスポーツ中継やライブイベントの強化に注力。さらにDisney+やApple TV+は強力なIPとブランド力でファミリー層やコアファンを狙い、海外勢との競争を加速しています。2025年は各社が広告付きプランの定着、独自コンテンツ投資の強化、価格体系の柔軟化を図りながら、利用者囲い込みと収益最大化に挑む転換期となると予測され、市場は成熟と共に多角的な連携・再編が進む見通しです。

日本の動画配信サービスで2024年に起きたこと、2025年に起きること

サマリー自体は妥当な内容に見え、ツッコミどころはほとんどなさそうです。レポートも長大で、これを本当に作るとしたら何日かかるのだろか? というレベルです。

自分でもある程度このジャンルを追いかけてきたつもりですが、忘れていたことや、そこを拾うのか! という驚きもあり、詳しい人にとっても新鮮な体験と言えそうです。一例としては、Lemino(ドコモによる動画配信サービス)によるサッカーJ3の全試合を無料ライブ配信や、DAZNの他サービス連携の取り組みなど、そんな施策もやってたなーなどとを振り返りながら読めるので、説得力を感じました。DAZNの「月額料金が2024年に4,200円へ値上げされ非常に高額です。」とか、Leminoの「主要他社に比べ目玉コンテンツが少なく認知度も発展途上」といった厳し目の評価も率直で楽しく読めました。

ただし、ある程度、細かく読むと気になる部分はあります。

例えば、「ドコモは他にもdTVチャンネル(ライブTV配信)を持っている」とありますが2022年に終了しています。プライムビデオの人気番組が「ドキュメンタル」というチョイスも古さを感じますし、TVerでの言及における「東京五輪での配信実績を踏まえパリ五輪競技の見逃し配信やプロ野球クライマックスシリーズのハイライトなど、新分野に挑戦するかもしれません」など、ちょっと起こり得なさそうな予想も入っていたりします。

また、今回のテーマ設定が筆者の興味関心であり、媒体でも関連情報を取材していることもあり、Impress WatchやAV Watchで掲載した西田宗千佳氏の記事を予想以上によく拾っています。

ただ、2025年の市場予測などを含め、市場トレンドの把握は全体として妥当なものに感じます。というか、比類するレポートを作るのであれば、ある程度の専門性があっても数日はかかりそうです(この分量のレポートを求められる機会はそれほどなさそうですが)。

もちろんレポートして社内外に提出・公開する場合には、出力されたレポートを見たうえで、情報の精査や整理は必須となります。ただ、自分で調査を進めるうえでも、より詳細について調べていく際の羅針盤として大いに使えそうです。

なお、2.6万字と文字数が多すぎるので、「1万字」と指定し、再度依頼してみましたが、出力結果はほぼ同じ2.6万字でした。文字数指定より、レポート品質を優先しているようです。文字数等を指定したい場合は、出力されたレポートをChatGPT等で要約する形が良さそうです。

調査数は、現時点では「1カ月あたり100クエリ」とされています。並行して2つの調査を走らせることはできないようです。

「本当にすごい」 エージェントと働く時代の幕開け?

記事を書いているのはdeep researchを使い始めて半日時点ですが、感想としては「すごい」の一言です。

1万字を超えるレポートを10分で作れるのは、人間には真似できないことですし、その品質も相当高いと思います。

ただし、使用に注意が必要な部分もあります。例えば、あまり自分に知見がないジャンルや業界などでは、プロンプトにいれる質問がうまくできず、やや怪しいレポートが出来上がる印象です。ある程度ベースとなる知識がしっかりしていないと、レポートもふわっとしたものになりがちです。

限りなく知識がゼロの状態だと、そもそも適切な設問が作れないので、ある程度ジャンルや業界について学習したり、検索やChatGPTを通じてざっくりでも頭の中に「地図」を作ったうえで、deep researchに頼るのが良いでしょう。

目標とする成果が100だとすると、20から30ぐらいの理解度でも、deep researchに頼ると70近くまで引き上げてくれるという感触です。もともとの理解度が50~60ぐらいであれば、80から90以上まで一気に引き上げることも可能かと思います。そのため、調査のための前提知識(適切な問いを作る)という部分においては人間のスキルは引き続き必要になると思います。また、そのサポートはChatGPTなどでも得られるでしょう。

簡単な質問でも数千字のレポートを作れるのが、deep researchのすごいところではありますが、使い方はケースバイケースです。

例えば「神保町でおいしいカレーを食べたい。」といった、カジュアルな質問でも数千字のレポートを作ってくれます。カレーの種類を指定したり、お店の混雑具合などもレポートに入れてくれたりと、それ自体には価値はあると思うのですが、「すぐに食べに行きたい」というニーズであれば、検索したりChatGPTに尋ねるほうがいいでしょう。deep researchでは10分ほどは待たされます。

前述のように、頭の中に「業界地図」や前提知識があると、プロンプトや質問を通じてレポートの精度は向上すると思います。

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前提知識が重要なのは、レポートの品質のためだけではありません。deep researchの出力レポートの文章は非常に「もっともらしい」ので、間違えている場合はその誤りに気づくのはかなり難しいと感じます。出典を辿れるのは素晴らしいのですが、すべてをチェックしながらその真正性を確認するのは大変です。その意味でも、人間側に、ある程度の常識や業界や事業・業務などについての知識(ドメイン知識)は必要で、レポートの“違和感”に気づくことが人間の最大の仕事と言えるかもしれません。

ChatGPT Proの月額3.4万円は確かに高額ではありますが、これだけのものが作れるのであれば、必要な人にとっては安いぐらいだと思います。例えば、業界ヒアリングやユーザーインタビューなどを行なう場合でも、準備やインタビュー回数の削減に繋がりそうですし、その品質向上にも役立ちそうです。

常に業界分析等のレポートを作成する人以外でも、新規事業の立ち上げ時や事業戦略の検討などには強力に役立ちそうです。ただし、その正しさを確認し、アウトプットとして使う責任は人間です。AIが発展した未来の予測として、よく語られるジョークで「人間の最後の仕事は責任を取ること」などと言われますが、deep researchを使ってみると「その通りになりそう」と実感できました。

なお、現在はChatGPT Proユーザー向けですが、今後、Plus(月額20ドル/約3,500円)とTeamユーザーや、Enterpriseユーザーにも展開予定で、早ければ1カ月後にはPlusで対応する可能性があるとのこと。また、2月中にモバイルとデスクトップアプリにも対応予定のほか、今後はより専門性の高いデータソースへの接続も予定しているとのことです。

この先、特にネット情報を活用した「調査」を行なう場合は、こうしたAIに調べてもらうことが増えていくことは間違いなさそうです。また、専門性の高いデータソースに接続することで、より高度かつニッチな業務においても活用の幅は広がっていきそうです。

OpenAIは、deep research発表時に「次世代エージェント」と表現していました。人間の大変な作業を代行してくれるエージェントとして、とても納得感のあるサービスです。これからの働き方は、こうしたサービスと共存していく必要があるのだろうな、と感じています。

臼田勤哉