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ティーンアカウント開始 子供のインスタ利用をどうするか

10代のSNS利用に関して、規制を強める動きが加速しています。SNSの閲覧による、メンタルヘルスへの影響が問題視されていることが主な理由です。オーストラリアでは2024年11月に16歳未満のSNS禁止法案が可決、アメリカの一部やフランスでも法規制が始まっています。

そんななか、Instagramは10代の安全な利用のために「ティーンアカウント」を開始しました。アメリカやイギリスなどでは2024年9月から、日本では2025年1月から、13~17歳のアカウントに順次実装されています(12歳以下はアカウント開設不可)。

日本国内でもティーンアカウントが開始されました

Instagramがティーンアカウントを開始した理由のひとつは、10代のメンタルヘルスに対してSNSが悪影響を及ぼすと言われているからです。アメリカでは、Metaが若者のメンタルヘルスの危機を助長したとして訴訟を起こされています

アメリカの調査期間ピュー研究所(Pew Research Center)が2024年12月に発表した調査によると、2024年にアメリカの13歳から17歳の若者からもっとも人気があるSNSはYouTube(90%)、続いてTikTok(63%)、Instagram(61%)、Snapchat(55%)の順です。動画視聴がメインのYouTubeやTikTokに次いで、交流がメインのInstagramが入っています。

アメリカのティーンにもInstagramは人気(出典:Pew Research Center)

Instagramを運営するMetaをはじめ、TikTok、Discord、Snap(Snapchat)、Xの大手5社はSNSの未成年保護について米上院公聴会に呼ばれ、特に追及を受けたMetaのマーク・ザッカーバーグ氏はSNSの影響で自傷・自殺した遺族に対して謝罪を行なっています。米上院公聴会に呼ばれたなかでTikTok、Discord、Snapはすでに10代を保護する機能を実装しており、Instagramも追随する形となりました。

日本国内の10代にも、Instagramはよく利用されています。総務省「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、10代のSNS利用率トップはLINE(95%)、続いてYouTube(94.3%)、Instagram(72.9%)となっています。

日本でもInstagramは若年層に人気が高い(出典:総務省「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」)

日本におけるSNSに関連する問題としては、性被害が挙げられます。知らない大人からメッセージが来て、わいせつな画像のやり取りを強要されたり、実際に会うことを求められます。また、過激なダイエットにより摂食障害を患っている10代に「まだ太ってる」とコメントする人、美容整形にはまる10代に向けて容姿を非難するメッセージを送る人も後を絶ちません。

こうしたトラブルから10代を遠ざける機能として、Instagramは「ティーンアカウント」を開始したのです。

ティーンアカウントでDM制限、投稿はフィルタリング

ティーンアカウントの導入により何が変わるのか、具体的にはまず、13歳から17歳のアカウントは自動的に非公開設定になります。

また、不適切なコンテンツ(人々が戦う様子や美容整形を勧める内容など)の表示は制限。コメントやメッセージ内に攻撃的な言葉やフレーズが入っている場合は、フィルタリングが行なわれます。

他のユーザーとのやり取りについても制限。メッセージ(DM)を送り合える人は、本人がフォローしている相手のみ。ティーンアカウントをタグ付け、またはメンションできるのも、本人がフォローしているアカウントのみになります。

前述したように、Instagramには女子中高生を狙ってメッセージを送ってくる大人が多くいます。

10代のInstagramは、フィード(アカウントのホーム画面)にほぼ投稿を残さず、24時間で投稿が消えるストーリーズを使うのが主流。そのため、投稿にコメントして近づくのではなく、メッセージを送りつけて水面下で動きます。

Instagramを入り口に、メッセージ経由でLINEアカウントの交換を求め、より熱心にやり取りをしようとする大人もいます。そうした事態を、ティーンアカウントは予防しようとしているのです。

非公開アカウントに設定され、変更するにはペアレンタルコントロールの設定が必要です。DMを送り合える人は、本人がフォローしている相手のみ(出典:Meta)

利用時間についても通知され、1日当たりの利用時間が60分を超えたときにはアプリを閉じるように通知が届きます。

また、22時から7時まではスリープモードが適用され、通知が来ない仕様。メッセージを受信した場合は、自動返信メッセージが送信されます。

おおまかにまとめると、友人とのやり取りはできるけれども知らない人とのやり取りは制限され、利用時間や時間帯についての通知が来るようになる、といった機能です。長時間利用については保護者の多くが頭を悩ませていますが、通知がくるだけなので、継続して使用することは可能です。

ティーンアカウントを避けたいがために、年齢を偽る可能性もあります。Instagramは18歳未満から18歳以上になるように変更しようとすると、「本人確認書類のアップロード」、または「セルフィー動画の録画」いずれかの方法により年齢認証を行ないます。国内ではまだテスト段階とのことです。

ただ、新規のアカウントを作る際には本人確認書類のアップロードは必要ないため、生年月日を偽ることができます。この点については、成年で登録していても10代の利用者だと判定する技術を開発中だそうです。

年齢認証に「本人確認書類のアップロード」が求められることも(出典:Meta)

夜間の利用禁止にはペアレンタルコントロール

このほかの方法で保護を強化したい場合、ティーンアカウントと保護者のアカウントをペアレンタルコントロール機能で紐づけると、制限を強められます。ペアレンタルコントロール機能は、16歳以上でも利用可能です。

もしティーンアカウントの制限を緩めたいという場合にも、16才未満の場合はペアレンタルコントロールを設定しなければなりません。16才未満の子どもを無防備な状態にはしないという姿勢だと思われます。

ペアレンタルコントロールでは、子供が過去7日間にメッセージを送った相手を確認できます。ただし、メッセージの内容は読めません。また、1日の利用時間を保護者が設定できるようになり、時間に達するとアプリにアクセスできなくなります。時間帯に関しても、夜間などの利用をブロックすることができます。10代が閲覧しているトピックも把握可能ですす。

ペアレンタルコントロールを設定すると、さらに制限を強められる(出典:Meta)

Instagramのペアレンタルコントロールは2022年6月から日本で実装されていますが、保護者と10代の双方が利用に同意しなければならず、10代が一方的にオフにすることができるため、あまり利用されていないように感じています。

利用時間や時間帯を制限するのであれば、スマホ開発会社が提供しているフィルタリングである、iOSの「スクリーンタイム」と「ファミリー共有」、Androidの「Digital Wellbeing」と「ファミリーリンク」などの機能を利用した方が、規制の効果は高いでしょう。

ティーンアカウントに対する10代の反応

ティーンアカウントではデフォルトで非公開アカウントになりますが、10代からするとその仕様はそれほど反発はないと思います。Studyplusトレンド研究所の調査によると、高校生の約半数がInstagramのすべてのアカウントを非公開で運用しています。10代は幼い頃からITリテラシー教育を受けているため、情報を発信する相手を常に厳選しているのです。

Instagramですべて非公開アカウントに設定している人は半数以上(出典:Studyplusトレンド研究所調査)

利用時間や時間帯の制限は10代に影響しそうですが、通知を無視して使うこともできますし、LINEなどでもやり取りできます。

こうしたことから、ティーンアカウントになることに対して、当事者は大きな抵抗を持たないように思います。

ある男子高校生に聞いてみたところ、ティーンアカウントについて「知らない」と答えていました。まだアカウントに実装されておらず、大人ほど関心がないのだと思いますが、ティーンアカウントになっても友人との交流に支障はないため、問題視しない人も多そうです。

ただ、親目線としては、ペアレンタルコントロールなど設定したほうがいいのか気になるところだと思います。

前述のとおり、10代をSNSのリスクから保護するには、Instagramのように各サービスが提供している保護機能以外にも、スマホの標準機能として備えられているフィルタリングを利用する方法があります。

10代が利用しているアプリをすべて保護者が把握することは大変ですが、それでもどんなサービスやアプリを利用していて、どんなリスクがあるのかを確認しておくことが大切です。

フィルタリングを設定しておけば、子供がどんなアプリを利用しているか把握することもできます。ぜひ安全のための機能を組み合わせて、リスクの少ない環境を作ってあげてほしいと思います。

鈴木 朋子

ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 身近なITサービスやスマホの使い方に関連する記事を多く手がける。SNSを中心に、10代が生み出すデジタルカルチャーに詳しい。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。