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日本郵便「書類溶解サービス」を使ってみた 確定申告書類処分に最適?

日本郵便の「書類溶解サービス」。サイトを見る限り、成績表やはがき、手紙、通帳などの利用を想定しているようですが、後述するように個人事業主の利用などにも適しています。現時点での取り扱いは簡易郵便局を除いた東京都内の郵便局のみ

日本郵便が2018年から個人向けに試行販売しているのが「書類溶解サービス」です。不要な書類を破棄するに当たり、シュレッダーで細かく裁断するのではなく、薬品を使って書類そのものを溶かしてしまうことで、大量の書類を一気に処分できるサービスです。

まとまった量の紙を人の目に触れずに箱ごと処分できる書類溶解サービスは、法人向けには多数提供されていますが、個人が利用できるサービスはごくわずかです。そうした中で、日本郵便が自らこうしたサービスを始めたのは注目に値します。

現時点では試行販売であるせいか、申し込みはオンラインではなく書面の提出、さらに集荷はしてもらえず自分で郵便局に持ち込まなくてはいけないという不便な仕様ですが、正式提供になればきちんとしたシステムが導入されるであろうことを期待して、実際に試用してみました。

書類溶解サービス(個人のお客さま) - 日本郵便

郵便局の窓口で申し込み。送料込みで2880円固定

利用にあたっては、郵便局のホームページから申込書をダウンロードして記入し、郵便局の窓口へと提出します。郵便局にも同じ申込用紙が置いてありますので、現地で記入することも可能です。

現時点で取り扱いがあるのは、簡易郵便局を除いた東京都内の郵便局のみです。もっとも局内でもあまり周知されていないのか、筆者が窓口に出向いた郵便局では局内でたらい回しに遭い、申込完了までに40分もの時間を要しました。正式サービスとして提供するならば、こうしたオペレーションの改善は必須でしょう。

ちなみに費用は2,880円ですが、これは発送料が含まれます。仮にそれらが千円程度とすれば、実費は2千円前後という計算になります。後述する容量の問題はともかく、価格自体は民間の競合サービスと比較しても許容範囲です。

取扱郵便局の一覧(ホームページより)。現時点では簡易郵便局を除いた東京都内の郵便局のみ
2,880円は送料も含めたすべて込の価格。容量は「はがき2,500枚」とあまりピンと来ない書き方ですが、A4コピー用紙の束がおよそ3つぶんに相当します

ただし首をひねってしまうのが、用紙を詰め込んで送るためのキットは、申し込んだ郵便局ですぐ受領できるわけではなく、申込書に記した自宅宛に後日届けられるシステムであることです。

これで発送時にも自宅まで取りに来てくれるのなら分かるのですが、前述のように集荷には非対応で、自ら郵便局へと持ち込まなくてはいけません。申込みは窓口なのに現地では受領できず後日配達、さらに発送時の集荷はしないという、試行販売中とはいえ、ややちぐはぐな印象は拭えないシステムです。

実際に届いたキット。申し込みをした窓口ですぐもらえるわけではなく、数日経ってから郵送で届きます

容量は500枚入コピー用紙3束ぶん。クリップやホチキスはそのままで可

さて、数日経って届いた申込キットの箱のサイズは、実測で235×340×150mm。A4コピー用紙が、15cm積み上げられる高さです。市販の500枚入コピー用紙の束ひとつが、おおむね5cmの高さなので、3束分という計算になります。

家庭用のシュレッダーで裁断するには多すぎる量を箱に詰めて送るだけで一気に処分できるのが書類溶解サービスの強みで、この「500枚入コピー用紙3束ぶん」という量はそのラインはなんとかクリアしてはいますが、民間の競合サービスは2倍近い容積に対応しているので、もう少し余裕があってもいい印象です。

何はともあれ、箱を組み立てて、その中に不要な書類をガンガン放り込んでいきます。クリップやホチキスの取り外しは不要なのはもちろん、競合サービスではNGの「ビニール袋に入ったまま」でもよいとされています。さすがに書類を融解するにあたってムラができそうなのでビニール袋からは出したほうがよさそうに思えますが、全体的に融通は効く印象です。

申込キット。内容物を取り出したあと、外箱をそのまま梱包として使用します
内容物は説明書のほか、封印テープ、さらにはエコバッグが付属します
クリップやホチキスを外す必要はなく、さらにビニール袋に入っていても対応可能とのこと

書類を詰め終わったら、同梱の封印テープを使い、指定通りに梱包します。お菓子の詰め放題サービスではありませんが、箱がパンパンに膨れ上がっていても、最終的にテープで封ができればOKのようです。

完了したらオンラインで集荷を申し込み……といきたいのですが、冒頭にも記したように、現時点では試行販売であるせいか、集荷はしてもらえず自分で郵便局に持ち込まなくてはいけません。いかんせん「500枚入コピー用紙3束ぶん」の量だけに、重量的にはかなり酷です。このままの仕様でサービスが正式化されてもユーザに受け入れられるとは思えず、集荷に対応するのは必須でしょう。

ちなみに発送に用いるゆうパックのラベルには、依頼主の名前もあらかじめ印字されていますので、ユーザ側で記入する必要はありません(オンライン集荷に対応していればそれで済む話なのですが)。このラベルの有効期限は1年なので、後述するような確定申告の書類を年1回処分するような用途だと、2~3年分をまとめて買っておくことができません。こちらももう少し融通を利かせてほしいところです。

書類を詰めて梱包を終えた状態。同梱のテープを使って封印できればOK
ラベルはあらかじめ印字されており、ユーザ側で記入の必要はありません。ちなみに持ち込みは必ずしも申込をした局でなくとも、最寄りの郵便局で受け付けてもらえます
同梱のエコバッグはどうやら郵便局への持ち込みの時に使ってほしいという意図のようですが、何かが根本的に間違っている気がしなくもありません

なお民間の競合サービスではつきものの、融解完了の証明書の発行(郵送)は、本サービスには付属していません。あくまでも家庭用のサービスであるため、そこまでする必要はないという解釈なのでしょう。個人事業主からすると発送してハイ終わりではなく、郵送で届いたほうが安心できるのですが、通常のゆうパックの荷物と同様に追跡サービスは使えるので、こちらはなくとも許容範囲という印象です。

ブランドに信頼感あり。オンライン対応すれば使える

以上がざっと使ってみた印象ですが、現実的な使い方としては、フリーランスで確定申告を行なっているユーザが、保存期限が過ぎた書類をまとめて処分するケースに適しているように感じます。

筆者も今回、これを目的に書類を申し込んだのですが、わざわざシュレッダーを使うことなく一括処分できるのは確かに便利です。というのもこうした書類は、同じ厚みの紙ばかりが大量にあるのではなく、紙質もサイズもバラバラだからです。これらを気にせずに箱に放り込み、送るだけで処分完了というのは、事務作業の軽減につながります。

今回は保管期限が過ぎた確定申告関連の書類を詰め込んで処分しました

今回見てきたように、現時点では「申し込み」と「発送」がオンラインに対応していないという課題があるわけですが、名前すら聞いたことがない民間業者が提供するサービスは「もしかすると山中に投棄されたり埋められているのでは」と心配し始めるとキリがないのに比べ、日本郵便というブランドで提供されるのは信頼感あるのは事実です。

したがって、「申し込み」と「発送」、この2つがオンラインで可能になれば、筆者としては年に1回、保管期限が過ぎた確定申告の書類を処分するために、欠かさず使うサービスになりそうです。試行販売が始まってからすでに5年が経過しようとしている本サービス、そろそろ何らかの動きはあるのでしょうか? 今後に要注目です。

山口真弘