ミニレビュー

コクヨ ファインライター ユニークな書き心地をノート3種で試してみた

コクヨから発売された、書き心地にこだわったという「WP-F100 ファインライター」が気になっていたので、買ってみました。コクヨ公式オンラインストアにて4,000円でした。

コクヨのWPシリーズはWriting Productsの頭文字をとったもので、書くことに集中できると謳うペンです。また、書き心地だけでなく、綺麗なデザインや素材にもこだわった高級ペンとして展開されています。リフィルはファインライター、ローラーボールのどちらも500円で、こちらも高級文具メーカーのリフィルに迫る、思い切った価格帯で展開されています。

なおリフィルの色は当初「ブルーブラック」のみでしたが、1月19日に「ブラック」と「ダークグリーン」が追加されています。

高級ペンとしてのデザイン

アルミ無垢材から作られたキャップ

アルミ製のボディ(胴軸)とキャップはアルミの無垢材から作られておりエッジがシャープで高級感のある仕上がりです。ブラスト加工のマットな質感で、高級ペンの雰囲気がしっかり出ています。一般的なペンのデザインと比較してキャップが大きく、境目がほぼペンの中央にあるのが少しユニークですね。キャップにあるバネ可動式のクリップも大きく、対象をしっかりとホールドできます。

ボディもアルミ製
定番的なペン(左)のデザインと比較してキャップが大きくなっています
可動式のクリップ

グリップ部分はアクリル製でややスモークの入った透明なパーツです。リフィルに施されている柄と色が透けて見えるのですが、これにより、文字を書かなくても何色のリフィルを入れているかを確認できます。このグリップ部分は、先端のパーツ(先金)まで断面がおにぎり型の、三角錐のような形になった三角グリップを採用しており、握りやすい形状です。

グリップはクリアパーツでリフィルの柄が見えます
ペン先まで一体のリフィル。これは標準搭載のブルーブラックで、インクの色がデザインにも反映されています

先金パーツは複雑な削り出し処理が行なわれていますが、明るい場所でしげしげと確認すると細かな凹みキズのようなものが複数あります。素材の性質上仕方がないのか、製造工程の品質管理の問題なのか不明ですが、唯一高級感が劣るというか、「4,000円する高級ペンのはずだけど」と残念に思った部分です。ただ、普段書いている時にペン先をしげしげと眺めることは少ないので、最終的にはあまり気にならない部分ではあります。

おにぎり断面がグリップから続く先金パーツ。4,000円のペンにしては少し仕上げが甘いような……?

書く時に持った際のバランスは、グリップとペン先が金属でないせいか、キャップを付けると、重心がやや後ろ側になるバランスです。この製品を紹介するWebサイトではキャップを付けない状態で書いている写真もありますし、軽い書き心地を堪能するならキャップを外して書くのもアリだと思います。

キャップを付けると重心は後ろ気味になります

細い字・太い字が自由自在

コクヨが展開している「ファインライター」とは、万年筆やボールペンとは異なる、内部にインクが通る微細なスリットが入った樹脂製チップを採用したペンのことです。毛細管現象でインクが染み出すので、強いて言えば万年筆に近いといえます。「WP-F100 ファインライター」のペン先はリフィルと一体なので、ボールペンのようにリフィルを交換するとペン先も替わります。

「WP-F100 ファインライター」はまず、この毛細管現象でインクが出るという仕組みにより、非常に軽い書き心地をを実現しています。不安になるほど低い筆圧でもスラスラと文字が書けてしまいます。

「WP-F100 ファインライター」のペン先。先端に微細なスリットが入っています

次に、ペン先は砲弾形状を採用しており、樹脂製のチップの先端がわずかにしなるのも特徴です。これにより、筆圧で線の細さ・太さをコントロールしたり、トメ・ハネ・はらいなどの抑揚をつけたりできます。こう書くとペン先がふにゃふにゃしてそうに思えますが、しなるのは先端だけ。筆圧でしなっても、ある程度までいくとペン先に接地感や安定感が出てくるという、ユニークで不思議な書き心地になっています。ペン尻にはバネが内蔵されていて、強い筆圧が加わるとリフィル全体がわずかに奥に沈み、書き心地を妨げないようになっています。

筆圧で線の細さ・太さをコントロールできます

また、ボールペンなどと異なるのは、鉛筆でラフに描くときのように、ペン先を寝かせても書けるという点です。ペン先の触れる面積が大きくなるので、筆圧を加えなくても太い線になります。

トメ・ハネ・はらいなどの抑揚をつけられるというのは、万年筆に近いともいえます。ただ個人的に大きく違う点だと指摘したいのは、その外観から一目瞭然ではあるのですが、ファインライターにはペン先の“表裏”や“正しい向き”“正しい角度”が存在しないということです。

例えば、サッと取り出して素早くメモを書きつけるとか、ペンを持った手でほかのことをしながら、何度も持ち直してメモを取る、そういう手元が忙しい使い方をする場合、万年筆のようにペン先に正しい向きや角度があると、書き始める度にいちいち向きを調整しなければならず、煩わしいと感じます。ファインライターならペン先の向きを気にすることなく書き始められるので、気楽に使うことができます。

“紙質”で激変? 書き心地もチェック

コクヨはどちらかというと、「キャンパスノート」など紙の製品が有名です。2018年に発表した「ペルパネプ」シリーズは、筆記具と相性のよい紙質のノートをラインナップするというもので、この中には、同時に発売したファインライター(PER-FWE035W)に最適と謳う、「TSURU TSURU」(ツルツル)という超高平滑のオリジナル原紙を使ったノートがラインナップされています。

そこで、このペルパネプのツルツルと、定番のキャンパスノート、手元にあったマルマンのクロッキーブック(白クロッキー紙、52.3m2)の3種類で、「WP-F100 ファインライター」の書き心地を試してみました。

ペルパネプのツルツルの組み合わせですが、さすがに紙がファインライターに最適化されているだけあって、接地感がありつつも、今まで体験したことがないような、飛ぶような軽さ・滑らかさです。この組み合わせの軽快さを知ってしまうと、ほかの紙質のノートは選びづらくなるかもしれません。ファインライターを入手したら、ぜひ試してほしい組み合わせです。

ペルパネプのツルツルには超高平滑のオリジナル原紙が使われています

キャンパスノートとの組み合わせも、十分に軽快です。ただし、「ツルツル」と比べてしまうと、ストロークなどに紙の表面のわずかなザラザラ感や抵抗を感じ取ってしまいます。比較しなければ、十分に滑らかに書けると思えるのですが、それだけ「ツルツル」の平滑度がすごいということなのでしょう。

マルマンのクロッキーブックとの組み合わせは、紙質がラフな肌合いということもあり、程よい手応えのある書き心地になります。すべるような滑らかさはありませんが、ボールが転がるわけではないファインライターのペン先は確かな接地感を生み出します。万年筆ほどではないにせよ、ガリガリと書く感触が心地いいです。

左からペルパネプのツルツル、キャンパスノート、クロッキーブック

総じてユニーク、ぜひ試し書きを

「WP-F100 ファインライター」は、滑らかに、軽快に書けるペンです。その上で、筆圧次第で細くも太くも書けて、トメ・ハネ・はらいも容易です。筆圧に気持ちを乗せて、文字に“表情”を付けられます。それが「書くことに集中する」につながると感じます。

「これは補足なので小さく細く」「これは重要なので大きく太く」そういった書き分けを、1本のペンで実現できるのがユニークです。そう書くと筆ペンのようですが、線を極端に太くできるわけではなく、ペンとしての硬質な手応えがしっかりと残っています。

逆に、そうした「どちらもできる」ことが不要な場合、どっちつかずであやふやな、頼りない印象になる可能性があります。常に筆圧が高い人も、常に太字になってしまい、使いづらいと感じるかもしれません。

いずれにしても、かなりユニークな書き心地を実現しているペンであることは間違いありません。店頭で販売している店舗は限られているようですが、ぜひ試し書きをして、書き心地を体験してもらいたいですね。

太田 亮三