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タイミーとメルカリ ハロで働いてきた 「働く」って難しい

空いた時間を活用して仕事ができると今話題のスポットワーク(スキマバイト)。アルバイトやパートでもなく、応募に履歴書も要らない新たな働き方として注目され、2024年には大きな話題になりました。

最大手のタイミーは900万人以上が利用するなど、日本に定着したサービスになりつつありますが、一方で最近は「闇バイト」の求人などに悪用されるなどの暗いニュースも耳にするようになりました。実際の現場はどうなっているのか。スポットワーク未経験の筆者が実際にアプリを使って仕事をしてきました。

今回利用したスポットワークアプリは「タイミー」と「メルカリ ハロ」の2つ。アプリの違いを比較してみようとの思いから2つを使いわけてみたのですが、結論から言うと募集している仕事が違うのは当然として、機能面では細かな違いはあるものの、大まかな使い勝手はほとんど変わりませんでした。

タイミー

働きたい! でもなかなか働けない問題

タイミーとメルカリ ハロ、どちらも共通しているのは本人確認。いざスポットワークをしようと思い立っても、本人確認をしなければどの仕事も申し込むことができません。筆者の場合、正しい身分証明書で本人確認しているにもかかわらず「本人確認に不備がありました」とのメールで確認がやり直しになり、最初に申し込もうと思っていた仕事の期限に間に合いませんでした。

スポットワークに興味のある方は気になる仕事をすぐに申し込めるよう、早めに本人確認しておくことをお勧めします。

メルカリ ハロ

また、いざ本人確認を済ませても、好きな仕事を選べるわけではありません。たとえばコンビニやファーストフードなどの仕事は「経験者限定」などの文言が記載されており、過去に同じ仕事をした人のみが対象です。これ以外に過去にスポットワークで働いた経験が必要な場合もあり、「GOODが4回以上」などの条件が課されていることもあります。実際に筆者が申し込んだ仕事では、GOOD数が足りないためかキャンセルされてしまったこともありました。

ファミマも「経験者限定」

仕事を選ぶという点では、タイミーもメルカリハロも基本的に月日から仕事を選ぶ画面構成になっており、好きな仕事基準で空いている日を探すことができません。若い頃にはアルバイトに励んでいたものの最近はごぶさただった筆者としては、ある程度簡単な業務を探して空いている日に申し込みたかったのですが、実際には曜日をひたすら見てその中から自分の希望に合う仕事を探す必要があるため、ずっとスマホをスクロールし続けて仕事を探すのが大変でした。

本人確認は当然として、まったくの初心者にとって経験者限定ではなく、GOOD率(働いた評価)も必要とされず、そして希望の仕事を探すのはなかなか大変です。GOODがゼロでも申し込める仕事や、初めての人を歓迎している仕事に絞り込む機能も欲しいと感じました。

GOOD率を求められるので、本当の初心者にはハードルが高い

荷物の仕分けと飲食店の洗い場 「働く」の難しさ

そんな条件の中で筆者が申し込んだのが、荷物の仕分けと飲食店の洗い物という2つの仕事でした。アプリから条件を確認した上で申し込み、いざ当日を待ちます。以前にGOOD数が足りず先方がキャンセルされた経験があるため前日までドキドキしていましたが、今回はキャンセルされることもなく当日を迎えることができました。

最初に入った荷物の仕分け仕事で感じたのは、スポットワークのルールと実際の職場でのルールが別であること。荷物の仕分け仕事では、スポットワークで申し込んだ内容とは別に紙で申込書や個人情報提供についての承諾、業務に関するチェックシートを確認するといった初回の事務作業が必要でした。一方、飲食店ではアプリのチェックインだけで他に書類などは必要ありませんでしたが、職場によってはスポットワークのユーザー登録とは別に手続きが必要なこともあるようです。

また、スポットワークは基本的に仕事始めと終わりにQRコードを読み込んで勤務時間をチェックするのですが、筆者はそのルールを把握しておらず初回チェックする場所がわからないまま仕事を始めてしまい、帰り際に気がついて修正申告することになりました。

その後に働いた飲食店では一度経験していたことに加えてQRコードをお店の人が出してくれたのでスムーズにやりとりできましたが、「スポットワークの仕事始めはかならずQRコードを読み込むこと」は覚えておくことをお勧めします。

実際の職場は、GOODの数が必要とされない職場を選んだということもあり、スポットワーク初心者にはとても優しい職場でした。

荷物の仕分けについては、運ばれてきた荷物を住所の丁目単位で仕分けるというのが大まかな内容です。作業自体はとてもシンプルなものの、仕分けした荷物を運ぶ場所は数字通りに並んでいるわけではなく、「1丁目は部屋の中央だけど2丁目は部屋の端」というように規則性もなく配置されているため、場所を覚えるだけで一苦労。やっと全体の場所を覚えた頃には仕事時間が終わっていたという塩梅でした。

現場にはスポットワークの人が非常に多く、その中でも同じ職場に何度も来ていると思われる人が先輩となって指示をしていきます。実際に働いてみてもこれは2回、3回と同じ職場で働いたほうが経験が活かせそうと感じました。

皿洗いの職場は、夕方のピーク前からラストオーダーが入る最後までひたすら皿を洗い、さらにキッチンとフロアで大まかにお皿を仕分けするところまでが仕事です。最初のうちは客も少ないので洗い方や洗った皿の配置場所を聞く余裕もありましたが、ピークを過ぎるとキッチンも忙しくなり、人に聞こうにもその場に人がいないこともあるだけでなく、下げられてきた皿の量も非常に多くなるため、洗い場が溢れないようひたすら効率よく洗うのに必死でした。

筆者は学生時代に飲食店でアルバイトをしていたので皿洗いの経験もあったのですが、皿洗いはそのお店でどのお皿がよく使われるのか、そしてどのお皿がどれだけ在庫があるのかを把握していないと効率よく回すことができません。今回は初めての職場ということもあり、どのお皿を順番に洗っていけばいいかの感覚がつかめず、下げられたお皿で洗い場が溢れないようにするので必死でした。

「働く」は疲れる スポットワークで動く社会

2つの異なる仕事をしてみて、直接的な負荷が高かったのは皿洗いです。自分の動きが悪いと洗い場はもちろん、キッチンで使うお皿や道具が足りなくなるという緊張感と、ひっきりなしに下げられてくる皿を時間内に洗い終わらなければいけないというプレッシャーはかなりのもので、終わった後はスポーツ後のようにくたくたになりました。

一方、荷物の仕分けも職場内をひたすら歩いて荷物を運ぶという点では体力仕事であるものの、この時間までに片付けなければいけないというプレッシャーが1人に課されることはありません。

とはいえこれは決められた時間で交代しているから気がつかないだけで、実際にはスポットワークのメンバーが期待された仕事量をこなさなければ、実際に配送するドライバーの方達には迷惑がかかっているはず。実際、荷物の仕分けをしているそばから新しい荷物がひっきりなしにやってくる現場を目の当たりにして、ニュースでは聞いていた物流業の大変さが身にしみました。

また、数字を分ける単純作業といえど、1つの住所を間違えるだけでその住所の人には間違って届いてしまうかもしれません。実際には大まかに分けた荷物をさらに現場の方々がチェックしてから正しく仕分けてくれてはいるものの、ミスが多ければダブルチェックの負担も大きくなっているわけで、スポットワークといえど重要な立ち位置を担っているのだと改めて理解しました。

そして何より、スポットワークが今の日本の労働環境に与える影響の大きさを実際に働いてみて実感しました。荷物の仕分けは半数近い人数がスポットワークと思われ、毎時間ごと次々に新しい人が職場に入ってきます。簡単な仕分け業務とは言えこの人数がいなければ配送はさらに負荷がかかるでしょう。

皿洗いもたった1人のポジションではあるものの、洗い物担当がいなければキッチンの人が料理の合間に洗い物をしなければいけないなど、他のポジションにかかる負荷も高くなります。筆者がアルバイトしていたときに洗い場担当がいなかった時は、ピークの忙しいキッチンを抜けて最低限の洗い物をしてからキッチンへ戻るという往復が非常に大変だったことを思い出しました。

一方、スポットワークが必要な職場だからこそ、これからはスポットワークに向けて職場を整えることも必要になってくると感じました。

荷物の仕分けでは、仕事を把握していない新人のために都度場所を指示する監督役の人がいたのですが、荷物をどこに仕分ければいいかが部屋内に表示されていれば指示する人の負荷も減りますし精度も上げられます。職場をそのために作り替えるのは大変ですが、一目でわかる部屋のレイアウトを掲示しておくなどの工夫で効率は上げられそうです。

皿洗いも、キッチンとフロアでどの皿を使うのかという判別が難しかったのですが、色や形で置く場所が決まっている、どのお皿を重点的に洗うべきかが掲示されているなど、ちょっとした工夫があると初めての職場でも迷惑をかけずに働けるのではないかと感じました。

これから先労働人口の減少は避けられない中、スポットワークの需要は今後も高まりそうです。一方でスポットワークでもちゃんとパフォーマンスを出せるよう、環境の充実も必要になるでしょう。コロナ禍でモバイルオーダーやキャッシュレスが求められるようになったように、スポットワークでも効果を出せるような職場環境がこれからは必要になるのかもしれません。

そして一度自分がスポットワークで働いたことで、いろいろな場面で出会う、スポットワークであろうと思われるスタッフの人にも目が行くようになりました。これからも時間があればスポットワークで役に立ちたいと思います。

楓 真

楓 真(かえで しん)