石野純也のモバイル通信SE
第66回
2025年は折りたたみスマホ元年になる?
2025年1月16日 08:20
中国大手メーカーのZTEは、ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイル向けに「nubia Flip 2」を発表した。同モデルは、縦に折りたためるフリップ型のスマートフォン。24年に発売された、同メーカーの「nubia Flip 5G/Libero Flip(ワイモバイル版)」の後継機に位置づけられる。
サブディスプレイの形状を見直したほか、後述のようにヒンジなどを大きく改良し、耐久性を向上させているのが特徴だ。
10万円を切るフォルダブル 新料金プランも後押し
それ以上にnubia Flip 2が他のフリップ型フォルダブルスマホと大きく差別化されているのは、価格にあると言っていいだろう。
ワイモバイルオンラインストアでの価格が85,680円と安い。しかも新規契約やMNPでは21,600円の割引を受けられ、その価格は64,080円まで下がる。フォルダブルスマホも徐々にミッドレンジに広がってはいるものの、10万円を下回っているのは今のところ同シリーズだけだ。
この価格を武器に、先代のnubia Flip 5G/Libero Flipは「フォルダブルスマホでナンバー2」(ZTEジャパン EVP モバイルターミナルビジネスCEO 黄凱華氏)の売れ行きを達成したという。
日本市場では、サムスン電子やモトローラがフリップ型のフォルダブルスマホを投入し、しのぎを削っているが、24年に初めて同タイプの端末を発売したZTEがいきなりその競争に割って入った構図になる。それほどまでに、価格はフォルダブルスマホを買い控える要因になるということだ。
折りたためる有機ELを搭載しなければならないほか、ヒンジも搭載しなければならず、メカニカルな機構が増えるため、折りたたみスマホは一般的な板状のスマホよりもコストがかさみやすい。
さらに、当初はハイエンドモデルが中心だったこともあり、価格が高止まりしていた。
ZTEのnubia Flip 2も近いスペックの通常スマホと比べると高いが、ミッドレンジに性能を抑えたことで低価格を実現できている。
一方で、円安ドル高の為替レートは変わっておらず、部材費も高騰している。nubia Flip 2も、63,000円で発売された先代モデルより、本体価格が上がっている。23年12月と24年12月の2年に渡って電気通信事業法で定められているガイドラインが改正され、キャリアの割引にも大きく規制がかかった。
そこで、ワイモバイルはnubia Flip 2の発売に合わせてソフトバンクと同じ「新トクするサポート(A)」を導入。2年後の端末下取りを条件に、新規、MNPの場合の実質価格を2万円以下に抑えた。
「壊れやすい」という不安に対応 必要なのは“できること”訴求
フォルダブルスマホを購入する際の障壁になっていた価格という課題を解決したZTEとワイモバイルだが、ユーザーが同タイプの端末の購入を躊躇する理由は、もう1つある。
「折りたたみ端末が壊れやすいという先入観がある」(ZTEジャパン 商品企画本部長 鄧鵬氏)というのが、それだ。
実際、同様の課題はソフトバンクがモトローラのフォルダブルスマホを導入する際にも語られていた。
そこでZTEは、nubia Flip 2の耐久性を先代モデルから大きく向上させた。まず、負荷がかかりやすいヒンジ部分を先代から25%フラットになるように改善。30万回の開閉試験も行なった。また、折り曲げられるメインディスプレイも素材を変え、傷への耐性が2倍に強化されたという。落下時の耐衝撃性能も3倍に向上させ、発表会ではあえて端末を床に落とすパフォーマンスも披露したほどだ。
こうした耐久性能の向上を通じて、「壊れやすいという印象が変わったと感じていただけるようにしていきたい」(同)という。
正直なところ、これだけではユーザーが抱く不安感を完全に払しょくできるとは思えないが、故障時の即時修理などを組み合わせていけば、より普通のスマホと同じような感覚で利用できるようになるだろう。
この点では、ワイモバイルには故障時に端末をすぐに交換できる「故障安心パックプラス」がある。こうしたサービスをもっと訴求していけば、フォルダブルスマホの安心感を醸成しやすいはずだ。
iCrackedの店舗で即時修理が可能なモトローラ製の端末や、一部ドコモショップや自社ショップで即時修理を受け付けているサムスン電子製の端末と比べるとややサポートが手薄な印象は受けるが、ZTEも「日本での10年以上の経験を活かし、アフターサービスは協力会社と一緒に、より万全の体制にしていきたい」(同)という。
発表会では語られていなかったが、特にフリップ型のフォルダブルスマホについては、コンパクトになる以上のメリットを十分伝えきれていないのも、解決すべき課題と言えそうだ。
実際には、置いたまま撮影ができたり、ビデオ会議に参加しやすかったりといった利点はあるが、それを必要とする層にまで届いていない印象を受ける。
特に前者は、TikTokやInstagramで縦動画を撮る若年層とも相性がいいため、実例を交えたプロモーションを強化していけば、大化けする可能性もゼロではない。nubia Flip 2はメインディスプレイと同じ縦長の外側ディスプレイを搭載し、半開きのまま縦位置の動画が撮りやすいため、こうした使い方との相性もいい。
調査会社MM総研が24年10月に発表した調査データによると、23年度のフォルダブルスマホの出荷台数は22.5万台で、全体のわずか0.9%にとどまっている。一方で、24年度は、モトローラがドコモから「motorola razr 50s」を発売しているほか、今回取り上げたnubia Flip 2が発売されているため、出荷台数が伸びることも予想される。
課題となっていた価格や壊れやすさは徐々に解消へと向かっている。同タイプのスマホでトップシェアを持つサムスン電子の動向に左右される側面も大きいが、25年は本格的な普及も期待できる1年になりそうだ。