ミニレビュー

文庫本好きのための電子書籍リーダー「BOOX Poke4 Lite」

文庫本感覚で持ち運べる、6型の電子書籍リーダー・Androidタブレット「BOOX Poke4 Lite」を買ってみました。ブラックは6月下旬、ホワイトは7月上旬に発売されています。今回はホワイトをSKTのオンラインストアで購入、価格は22,800円でした。

「BOOX Poke4 Lite」は電子書籍リーダーと呼ばれるジャンルの端末で、6インチの電子ペーパーディスプレイを搭載しています。サイズや性能は、アマゾンの「Kindle」や「Kindle Paperwhite」、楽天Koboの「kobo nia」といった端末と同種の製品です。

KindleやKoboといった製品との大きな違いは、特定のストア専用ではない“フリー"な端末であることです。中身はAndroid 11とSnapdragonを搭載したWi-Fiタブレットで、Google Playストアから好みの電子書籍ストアのアプリをダウンロードして電子書籍を読めます。プリインストールされているリーダーアプリでPDFや自炊のデータを読むこともできますし、スマホのように快適でないとはいえWebブラウザでオンラインの作品を読むことも可能です。

電源ボタン以外の物理ボタンは搭載されていないため、Androidの「戻る」「ホーム」といった操作は、最前面に表示されるボタン「ナビボール」で行ないます。操作しない時は自動的に隅に引っ込むという表示にもできます。

ほかにもディスプレイ解像度はやや低めの758×1,024ドット(212dpi)、ストレージは16GB(ユーザー領域は7GB)と、スペックはかなり取捨選択が行なわれた“Lite”なモデルです。

製品パッケージ
同梱品はケーブルのみとシンプルです
電子ペーパーは表示の維持に電力を使わないため、電源オフでも画像が表示されたままになります
背面。ロゴは薄く、目立ちません
下部はUSB Type-C端子。左はマイク用の穴です
ボタンは上部の電源ボタンのみ。インジケーターランプを備えています
画面と本体フレームの間には段差があります
片手や指2~3本で持つのも苦になりません
アプリ一覧画面。フロントライトが点灯した状態です
本体設定の画面
「戻る」「ホーム」といったボタン操作は最前面に表示される「ナビボール」から。スクロール用ボタンもあります

本体サイズは文庫本とほぼ同じで、厚さは言わずもがな文庫本より薄く、重さは実測で154.7gと、200ページを超えるような文庫本と比べれば十分に軽いという仕様です。

片手に収まる、まさに文庫本感覚で持ち出せる電子書籍リーダーです。私はすでに電子書籍リーダーを何台も使ってきましたが、本製品は小説を読むのにピッタリだと思い購入しました。

重さは実測で154.7gでした
文庫本と同サイズです。ハヤカワのトールサイズのため、本の背が高くなっていますが……
幅も文庫本と同じです

すこし寄り道をしてたどり着いたスタイル

私は直近では、2014年発売のKindle Voyage、電子書籍ストアをBOOK☆WALKERに移行した後は、2019年に7.8インチの「BOOX Nova Pro」を購入して使ってきました。ただBOOX Nova Proは片手で持つには大きく重かったので、外に持ち出す機会は減ってしまいました。

10年以上前から電子ペーパーの電子書籍リーダーを使ってきましたが、たどり着いた答えはシンプルで、私は、電子書籍リーダーでは小説など文字主体のコンテンツしか読まない、ということでした。BOOX Nova Proより機能はシンプルでいいので、もっと気軽に使うために、もっと軽く、もっと小型のものが欲しいと思うようになっていました。

左からKindle Voyage(2014)、BOOX Nova Pro(2019)、BOOX Poke4 Lite(2022)

ちなみにですが、私は電子書籍ストアでマンガもたくさん買っていますし、雑誌読み放題サービスにも加入しています。それらは、Webブラウザでサービスにアクセスして、27インチのデスクトップPCのモニターか、PCのサブモニターとしてつなげている55インチの液晶テレビに全画面表示で映して読んでいます。マンガは画面が大きいほど迫力が出ますし、雑誌の誌面が紙媒体以上に大きく表示されるのは、電子書籍ならではの楽しみ方だと思います。

かつて使っていたKindleも既存のBOOXシリーズもSDカードには対応していませんが、私はあまり問題に感じたことはありません。黎明期の低スペックな頃から使っている影響なのか、端末側には、その時読んでいる途中の数冊しかデータをダウンロードしない、読み終わったら端末からデータだけ削除する(本棚や書影はそのままです)、というスタイルが染み付いているのが大きいと思います。

プリインストールされているBooxDropというアプリを起動しておけば、同一LAN内からブラウザ経由で端末のストレージにアクセスできます。ストレージを拡張できるわけではありませんが、かなり手軽にアクセスできます
画像を転送すれば、スリープや電源オフ時の画像に設定できます。もちろん画像以外も転送できます

最適化する・しないを選ぶ

さて、BOOX Poke4 Liteに搭載される機能やユーザーインターフェースは、私がこれまで使っていたBOOX Nova Proなどとおおむね同じなので、とくに迷うことなく使い始められました。システムとしてもう何年も提供されているものを水平展開しており、痒いところに手が届くさまざまな機能が用意されています。

パッケージを開封した状態では、Google Playストアのアプリがインストールされていませんが、有効化し登録する、という簡単な作業を行なうことで利用できるようになります。ほかに製品に同梱されていた日本の販売代理店であるSKTの初期設定マニュアルでは、Googleの日本語入力アプリ「Gboard」のインストールを推奨しています。Webブラウザは独自のものがプリインストールされているものの、一部で正しく動作しない場合があるとのことで、私はChromiumベースで軽快に動作する「Kiwi Browser」をインストールしておきました。

SKTによる初期設定マニュアル
簡単な手続きを行なうとGoogle Playストアを利用できるようになります
Google Playストア アプリ
Kiwi Browser

以下では、Androidタブレットとしてではなく、私が求めていた「小説を読むための電子書籍リーダー」としての使い方に絞って紹介してみたいと思います。

BOOXシリーズは電子ペーパー搭載でなおかつ、Androidのさまざまなアプリが動く、非常に自由度が高い仕様のため、見え方や挙動はアプリにより異なります。使いこなしのポイントの大半は、画面の描画設定に集中すると思います。

基本的な段階として、アプリそれぞれで「最適化スイッチ」のオン・オフが選べ、オフにすると電子ペーパー向けの最適化が行なわれていない状態になります。静止状態ではもっとも綺麗に表示されますが、スクロールや画面の遷移など“途中の描写”は、電子ペーパーの仕様が影響し、かなり乱れます。電子ペーパーに慣れていないと面食らいます。私は、Google Playストアのアプリなど、たまに使うだけのアプリは、静止時に画面やボタンがちゃんと見えることを優先したいので、オフにしています。

電子書籍アプリを開き、ナビボールから最適化メニューを呼び出したところ。右下に最適化スイッチがあります

初期設定では、アプリごとの最適化スイッチはオンです。最適化メニューでは、リフレッシュモードなどさまざまな設定を変更できます。アプリによって最適な解は異なるので、使いたいアプリを開いた上で、リフレッシュモードを変更して、一番気に入ったものを見つけるという作業が必要です。

リフレッシュモードを選ぶ

最適化スイッチがオンの場合、5種類のリフレッシュモードが選べます。リフレッシュモードは、ホーム画面やアプリ一覧画面など、システムの画面に向けた設定もありますが、アプリごとに個別に設定でき、そちらが試行錯誤の中心になります。アプリ一覧画面でアイコンを長押しするか、アプリの中でナビボールから最適化を選ぶと設定できます。

リフレッシュモードを変えると、アプリの画面全体が影響を受けます。階調表現が大幅に変わるほか、文字の輪郭をはじめ、画像やUIもすべて描写が変更されます。

リフレッシュモードで私が主に使っているのは「ノーマルモード」と、「スピードモード」(ロケットのマーク)です。

リフレッシュモード。左のグルグルマークがノーマルモード、中央のロケットマークがスピードモードです

ノーマルモードは、可能な限り綺麗に見たい場合に最適です。文字も画像も綺麗に表示されますが、ページをめくるという動作は、タップしてからワンテンポ遅れる感じになります。文字コンテンツに限れば、ページめくりで画面が大幅に乱れて表示されることは少ないと思います。文字の色の濃さは、階調を維持しているためか、黒ではなくグレーになります。

スピードモードは、とにかく軽快な動作を求める場合に最適です。階調表現が単純化され、文字の輪郭は、わら半紙に印刷した文字のようにガクガクになりますが、ページをめくる動作はスマホで見ているかのように軽快になります。画像は階調が減らされ、新聞紙の写真のようにザラザラになります。文字の色は濃くなります。

歴史的に見れば、かつては端末の処理性能や電子ペーパーの描写速度が追いついておらず、スピードモードなどは、緩慢なページ送りの動作や、スクロール中のもたつきや表示の乱れをなんとかして高速化したい、という開発の背景があったと思います。BOOX Poke4 LiteはチップセットにSnapdragon 630を搭載しており、昔の製品より性能は向上していますし、ノーマルモードでもページ送りの動作は電子ペーパーの端末として常識の範囲内だと感じます。ノーマルモードはスピードモードよりワンテンポ遅れますが、正直なところ「紙の本のページをめくるのはこれぐらいのスピードでは」と思いますし、読書体験を損なっているとまでは感じません。

私の電子書籍のメインアプリであるBOOK☆WALKERは、近年の大幅リニューアルでシンプル方面に綺麗になったこともあり、本棚やUIを含めて、全体的に電子ペーパーディスプレイでも見やすくなりました。ノーマルモードかスピードモードかは、どちらでも致命的な問題はないと感じられ、悩ましいところです。

例えばノーマルモードは画像が綺麗に表示されるので、書影から本を選ぶ際にイラストやデザインが分かりやすく、メリットがあると感じられます。スピードモードでも書影は問題なく判別できますが、階調は大幅に少なくなり、そのままだとコントラストが強い(暗部がより黒くなる)ので、見た目の残念感は拭えません。ただし動作は軽快です。

画像の見え方はともかく、私はとにかく小説をたくさん読みたいと思って買ったので、長時間目に触れる文字の綺麗さは、やはり重視したいところ。なので、ひとまず電子書籍のアプリはノーマルモードを選択しています。

なお、前述のスピードモードで文字の輪郭がガタガタになる、という部分ですが、これは画面との物理的な距離(=使用者の視力)で印象が変わります。距離が離れ、視力的にクッキリ見える範囲を外れると、輪郭の粗さはだんだんと目立たなくなっていくので、気にならなくなる可能性があります。私はメガネをかけて視力1.0ぐらいですが、普段の起きている時に使う画面との距離は20cm程度で、スピードモードの文字の粗さがギリギリ認識できてしまうという塩梅です。ちなみにルビはガタガタにならずなんとか読めるので、スピードモードの実用性が大きく劣るわけではありません。

スピードモードは輪郭が粗いですが、画面と距離が離れると意外に目立たなくなります

ここで悩ましいことに、BOOXシステムのさまざまな設定項目が、条件をさらに複雑にしてくれます。最適化メニューの中には「APPのデフォルトのDPIを使用する」という設定があり、これをオンにすると、最適化スイッチのオンによって低くなっていたDPIが、アプリ本来の設定値に戻ります。これにより文字がそれまでより高解像度になり、文字の輪郭のガタつきも、少しだけマシになります。

小説は基本的に想像力に訴えるコンテンツですが、文字は唯一かつ直接的な媒体であり、見え方にわずかでも違和感を覚えると、読書体験がストレスフルなものになっていきます。設定はいろいろありますが、アプリごとの最適化のオン・オフと、ノーマルモードかスピードモードかという設定を変更するだけでも、BOOX Poke4 Liteの利用の大部分では、好みの見た目に近づけられるのではないかと思います。

電子書籍リーダーの第三勢力

2019年に購入したBOOX Nova Proは、2022年6月30日にも最新のファームウェアが提供されるなど長期間にわたってサポートされています。これはほかの機種も同様のようで、不具体への対応や今後の機能の進化には期待がもてます。

一方、BOOXのシステムの設定項目は、進化の過程で多数の機能が追加されているものの、ユーザー自身の目的にどの設定が必要なのか、分かりにくくなっています。例えば「小説向けモード」「マンガ向けモード」など、意味をもったまとまりで一括して設定を変更できると、より分かりやすいのではないかと思います。

BOOX Poke4 Liteは、好きな電子書籍ストアのアプリを入れられるという自由度の高さが、セットアップや設定の複雑さにつながっている面はありますが、最適解を見つけた後は安定運用が可能です。文庫本を欠かさず持ち歩いているような人にはピッタリの、軽くて薄い“フリー”な電子書籍リーダーです。KindleやKobo以外のサービスを使っている活字中毒な人は、チェックしてみてはいかがでしょうか。

太田 亮三