ミニレビュー
8mmフィルム風に撮れるムービーカメラ「Fragment 8 Retro Camera」
2021年2月4日 08:30
「8mmフィルム風の映像を再現する」という触れ込みのムービーカメラがクラウドファンディングサイト「GREEN FOUNDING」に登場した。出荷前だが、実際に製品を試す機会があったのでレポートしたい。
「Fragment 8 Retro Camera」と名付けられたこのカメラは、レトロな外観を纏ったデジタルの動画カメラである。1月7日にクラウドファンディングをスタートし、現在は目標金額の50万円を超える200万円以上を集めて、プロジェクトが成立している。製品の出荷は4月中旬からだ。実施者はセブンシーズ・パスタ。
記事執筆時点では、22,600円で本体が手に入るプランなどがある。今回お借りしたシルバーの他に、ブラックも用意される。
ノスタルジックな映像が撮れる
最初に見つけたときは、まずはその見た目に惹かれた。筆者は本物の8mmカメラを使ったことはないものの、昭和の時代を思わせるこのカメラなら楽しく動画撮影ができるだろうと思いを馳せたのである。
現代は動画撮影といえばスマホであり、画質を追求するならミラーレスカメラなどもある。しかし、映像が綺麗すぎてなんとなく物足りないという見方もできる。その証拠に、スマホアプリではレトロな映像に加工するフィルターが流行っているという状況だ。
このカメラは2メガピクセルの1/3型CMOSセンサーを搭載し、720pの動画が記録できる。レンズはズームができない単焦点レンズで、明るさはF2となっている。ピントも固定式だ。画質からもわかる通り、トイカメラのスペックだが、それがまた良い雰囲気の絵になっているように感じた。
面白いのは、フレームレートが24fpsと9fpsの切替式になっている点だ。24fpsは映画の標準的なフレームレートだが、9fpsは実際の8mmカメラ(16fpsが多い)より少ないコマ数だ。試してみるとかなりカクカクした映像になるが、これはこれでノスタルジックなイメージに合っていると感じた。
またループする4秒間のGIFアニメも記録できるので、SNSなどにアップするには便利な機能となっている。
撮影してみた。片手で手軽にどんどん撮れる
本体には8mmカメラよろしくグリップが付いており、前面のスイッチを入れるだけで記録が開始される。片手でオペレーションできるので、スマホに比べてかなり動画を撮りやすい。難しい設定もないので、とにかく撮りたいものをファインダーで見て、どんどん撮影できる。1回の撮影時間は120秒という制限がある。
液晶モニターは付いていないので、家に帰ってSDカードの中身を見るまで何が映っているのかわからない。以前にレビューしたキヤノンの「iNSPiC REC」もそうだったが、映ったものを見られるまでにタイムラグがあるのもフィルムカメラを思わせるところだ。
このカメラで撮影したクリップを1本の動画にカット編集してみた。写真のスナップ撮影のように、気になるものがあったらカメラを向け、数秒だけ録画するというスタイルで撮っている。それなりにクリップ数を集めれば、イベントやどこかに行った記録的な動画も作れそうだ。
なお、本機には録音機能が無いようで音声は記録されなかった。映像は無声映画のような雰囲気になったが、編集でローファイな音楽を加えたところ多少様になったと思う。
明るさやホワイトバランスはすべてオートだが、それなりに破綻なく撮影できていた。逆光のシーンではゴーストやフレアが盛大に出るが、このあたりは映りの味ということで、プラスに受け取っておきたいと思う。
撮影中は本体からフィルムが回っているような効果音が出てくるので、そのスタイルと併せて、本当に8mmカメラで撮影しているような気分になるのもいい。
一方、カメラを素早くパンしたり歩きながら撮るとローリング歪が現れやすく、画面が見づらくなってしまった。立ち止まって構えるなど、カメラが揺れないようにして撮るのが1つのコツと言えそうだ。
上部にハンドルが付いているので移動中は手に提げておけるし、撮影したいときはすぐにグリップを引き出して撮影できる。もちろんグリップは出さなくても撮影は可能だ。
ちなみに、一応フルHDサイズの静止画も撮れる。ただし、画質はきれいとは言い難いものなので、注意したい。
クロススクリーンなど3種類のフィルターが付属
そしてこのカメラのもう1つの楽しみ方が、付属のフィルターが使えるところだ。なんと本体にフィルターの収納部があり、ターレットレンズのように本体に装着できる。
種類としては「万華鏡フィルター」、「クロススクリーンフィルター」、「ラジアルフィルター」の3つ。いずれもフィルター自体の回転が可能なので、例えばクロススクリーンであれば光条の方向を変えられる。
このフィルターを本体内から取り出して撮影状態にセットするのは、ちょっとした組立作業になるので、少々面倒だったという面はあるが、いろいろな表現ができるという点では楽しい装備だろう。はじめから本体についている「効果のないフィルター」もターレットのディスクにつけることもできた。
撮り手のセンスが試される
一般的なカメラに比べると作りがチープでトイカメラ感が満載だが、そこがいいと感じるならきっと楽しめるアイテムになると思う。デザインはおしゃれなので、話のネタにもなりそうだ。
日常を記録する映像として昨今話題となっている「Vlog」をこうしたカメラで撮影するのも新鮮だろう。それに、撮影が上手な人ならちょとしたミュージックビデオや映像作品を撮るのもありだと思う。カメラの佇まいというのは撮れる絵に影響を与えると思うので、このスタイルがプラスになれば面白い作品ができそうな気がする。