トピック
大阪万博を歩いてきた 楽しい未来社会と暑さ・移動の注意点
2025年4月12日 10:00
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が、2025年4月13日から10月13日までの184日間にわたって開催されます。会場は、大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)。主催は2025年日本国際博覧会協会。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。博覧会国際事務局が認定する大規模な国際博覧会としては日本で3回目の開催となります(つくば科学万博や花博は特別博)。
開催まであと4日となった2025年4月9日には、プレスプレビューが開かれました。各企業パビリオンは独自に公開イベントを開催していることもあり、メディア関係者なら既に何度も足を運んでいる記者も少なくないのですが、筆者は今回が初めてです。ざっと会場内を歩いた感想をレポートしたいと思います。
会場へのアクセス 夢洲駅から会場へ
まず会場へのアクセスですが、新大阪駅からは地下鉄を使いました。まずは御堂筋(みどうすじ)線に乗り、本町(ほんまち)駅で中央線へと乗り換えます。中央線は今回の万博に合わせて延伸されており、夢洲駅が終点となります。
少し驚いたことに、中央線の車内は万博一色なんじゃないかと思っていたのですが、そんなことはなく、まったく宣伝されていませんでした。
万博会場には東ゲートと西ゲートがあります。西ゲートは主に団体用と設定されているようです。今回は西ゲートは使用されていませんでした。ちなみに会場全体への水上交通も活用される予定となっていますが、多くの一般の人は夢洲駅を使うことになると思います。
一つ注意事項としては、夢洲駅にもトイレはあるのですが、トイレの位置がゲート方面からかなり遠いです。お子さんがご一緒の場合はなかなか難しいだろうと思いますが、できれば地下鉄に乗る前にすませておいたほうがいいかもしれません。ただし、万博会場の入口付近にもトイレはあります。トイレについては大事だと思いますので、またあとで触れます。
ちなみに入り口近くのトイレのなかにも既にミャクミャクが溢れていました。こんな感じで会場のあちこちにはミャクミャク(コミャクと言うそうです)があふれています。
受付とセキュリティゲート
会場到着後は事前に発行された二次元コードで受付。その後、金属探知機を使ったセキュリティゲートをくぐって待機、という段取りでした。およそ4,500人の報道陣が、ぼーっと東ゲートで13時の開場を待ちます。ゲートを出てすぐのところにはコンビニのローソンなどもあるのですが、そちらも開場まではアクセスできませんでした。このへんはプレスデーならではの段取りですので、一般日はまた別の段取りとなります。
ちなみにNECは、万博会場で顔認証技術を活用した2つのシステムを提供する予定です。1つは入場ゲートでの本人確認で、シーズンパスやサマーパス購入者対象に、顔認証入場できる仕組みです。もう1つは会場内店舗でのハンズフリー決済で、こちらは入場チケット種類に限らず、EXPO2025デジタルウォレットの「ミャクペ!」登録者対象に顔を登録すればキャッシュレスで買い物が可能とのこと。これらは約50以上のゲートや店舗で導入され、利便性と安全性を両立した未来の社会インフラを体感できるとされています。
プレスデーは活用されていませんでしたが、それらしき機材はすでに置かれていました。技術好きならばあえてこれらを先取り体験したい人も多いでしょう。
会場内の暑さ、飲料について
一般日と共通している課題は、なんといっても天候です。この日は幸いにして晴天。そして夢洲は人工島、つまり海辺にあります。海辺ですので、日差しはきついです。自分は、最高気温は21℃と聞いていたので「長袖シャツでいいか」と思っていましたが、考えが甘かったです。受付直後の時点でさっさと脱いでTシャツ一枚になってしまいました。とにかく体温調節できる服装がおすすめです。
ちなみに、会場内のベンチは割とあります。大屋根リングの下はもちろん、通路部分にもかなりの数が設置されており、海外パビリオン撤退後に空いてしまったとおぼしき場所には「団体休憩所」も設置されています。ですが、ベンチがある=必ず日除けがついているわけではありません。そもそも屋外の日除けは日差しの向きによって、だいぶ効果が異なります。
暑さ寒さの体感は個人差があるので一概にはいえませんが、「屋外は海辺の日差しである」という前提で服装は選んだほうがいいと思います。真夏は……想像するだけでもかなり厳しいことになりそうです。
なお、飲料の自販機や、ウォーターサーバーは多数あります。値段も、案外普通です。少なくとも購入を躊躇するような値段ではありません。ちなみに会場内へはペットボトルやマイボトルでの飲料、おにぎりや弁当などの持ち込みはできます。アルコールは不可です。
コンビニはごく普通で嬉しい
コンビニでもドリンクは普通の値段で売られています。他の食品類も同様なので、万博会場のコンビニは庶民の味方、オアシスということになりそうです。なお、会場内のセブン-イレブンにはアバターロボットなどもありました。
技術関連の展示があるパビリオンは……?
さて本題です。プレスプレビューではありますが、入りたい放題というわけではなく、時間制限や入場制限、会場全体の広さそのほか諸々の制約や事情があり、見られるパビリオンは限られています。そこで筆者は事前にある程度、候補を絞り込みました。当日の事情により実際には見られなかったものもあるのですが、以下のようなところを回りたいと考えました。
基準は未来、技術といったところです。「もはや技術自体を展示する時代ではない」とも言われていますが、やはり技術を活用したパビリオン、少しでも未来を感じさせてくれそうなところを見たいなと思って選びました。
NTTが提供するアプリ「EXPO2025 Personal Agent」、または書店で売っている「大阪・関西万博ぴあ」などについている地図を片手に、ご覧いただければ参考になるかもしれません。また、地図については実はGoogleマップが有用です。これも後述します。
東ゲートゾーン
各ゾーンごとにわけてご紹介します。まずは「東ゲートゾーン」から。
大阪ヘルスケアパビリオン
「REBORN」をテーマに、未来に実現を目指すヘルスケアや都市生活の体験、iPS細胞をテーマにした再生医療の可能性の発信、屋外ステージでのイベントやなどさまざま情報を発信。「ミライ人間洗濯機」のほか、「ミライの食と文化ゾーン」には、エア・ウォーターによるロボットを使ったスムージー、日世による乳・卵を使用していないアレルギーフリーソフトクリームなども販売されています。
シグネチャーゾーン
シグネチャーゾーンとは8人のプロデューサーが主導するパビリオンで、全体で「いのちの輝きプロジェクト」と呼ばれています。詳細はこちら。以下のようなパビリオンがあります。どれだけ回れるかは時間次第です。筆者は実際には石黒館しか入れませんでした。
石黒浩プロデューサー シグネチャーパビリオン「いのちの未来」
エンパワーリングゾーン
セービングゾーン
コネクティングゾーン
サスティナブルフードコート 大阪のれんめぐり〜食と祭EXPO
リングサイドマーケットプレイス西(リングの北北西部)にある、白ハト食品工業を中心にした「道頓堀」的なフードコードです。座席数は約1,000席と万博会場中最大。「祭り」がテーマとなっていて、入り口には青森ねぶたが飾られているなど、楽しい施設に仕上がっていました。
「ロボットとヒトが協働する未来の社会を映しだす次世代の飲食店モデルを体感できるエリア」とされており、「たこ家道頓堀くくる」では、大阪のロボットシステムインテグレーターのHCIによる「たこ焼お助けロボット」がソースやマヨネーズをかけたりしています。また、「大阪王将」では、TechMagicの調理ロボット「I-Robo2」が、主にチャーハンを作るのに使われています。そのほか会場内では配膳ロボットがウロウロしていました。
ORA外食パビリオン『宴~UTAGE~』
2階建ての建物で、1階には象印マホービンの最上位モデルの炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊かれたご飯と、鈴茂器工が開発した、おにぎりを半自動で製造するシステム「ふんわりおむすびロボット」を活用したおにぎり専門店があります。2階には前述のHCIによるドリンクバー協働&配膳ロボットシステムが出展されています。会期中には新規に開発した「モバイルマニピュレーションAIロボット」の操作なども行なわれるとのことです。
西ゲートゾーン
GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION
横浜の「動くガンダム」の外装を再利用した膝をついたガンダム像があるパビリオンです。イメージパースとは微妙に違うポーズが気にならなくはありませんが、会場の雰囲気向上には大いに貢献していると思いました。なお、パビリオンに入った人は、出るときにガンダムの足裏を見ることができます。
大阪・関西万博 PASONA NATUREVERSE
パソナによる「いのち、ありがとう。」をコンセプトにした巻貝のようなパビリオン。先端には鉄腕アトムが乗っています。「からだ・こころ・きずな」をテーマにした技術展示が行なわれています。売りは、iPS細胞から作成した心筋シートを使った「動くiPS心臓」です。
フューチャーライフゾーン
未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」
「Society 5.0」をテーマにした12の企業による合同出展パビリオンで、『未来の都市』を構成する複数の視点を提示しています。川崎重工が発表したばかりの4脚乗用ロボット「CORLEO(コルレオ)」のモックアップのほか、クボタが提案する2台の農業用「汎用プラットフォームロボット」などが出展されています。
歩き回りにはGoogleマップが有用
これらのパビリオンをできるだけ回ることを目標に、会場内をウロウロしました。すでに色んな人が言っているように、会場内はとにかく歩かされます。それは仕方ないのですが、残念な点が一つありました。パビリオンとパビリオンのあいだは、必ず通路があるわけではない、という点です。
会場内の地図を見ていただければわかるのですが、距離自体は近いのですが、パビリオン自体が密接配置されているために大屋根リング円周に沿って大回りをせざるを得ないときが度々ありました。「リングの直径方向に歩けない場合が多い」という点は頭のなかに入れておいて会場内を動いたほうがいいと思います。
会場内を歩くときに筆者がもっとも見たのは会場マップではなく、スマホで開くGoogleマップでした。実際に開いてもらえればわかるのですが、Googleマップには各パビリオンやレストランの位置などが既に掲載されています。方向感覚を失いがちな万博会場ですが、見慣れた画面で「自分がいまどこにいるのか」「目的地はどちらの方向なのか」を調べることができるだけで、だいぶ違います。
トイレ問題について
会場内のトイレ問題について、テストランの感想を検索すると、「いっぱいあった」という意見がある一方で、「わかりにくい」という正反対の意見もあります。実際に足を運んでみて、筆者個人としては「どちらの意見もわかる」と感じました。
まず、それなりの数のトイレが設置されていることは間違いありません。リング内であれば、ちょっと歩けば、まず間違いなくトイレに当たります。
ただし一方で「わかりにくい」のも確かです。まず、万博内のパビリオンはきれいに整列しているわけではありませんので、「あの角を曲がれば必ずトイレがある」といった具合にはいきません。脳内地図が作りにくいのです。
また、会場内の「トイレ」は多種多様なデザインになっています。それはそれで楽しいのですが、デザインが統一されていないため、初見の人間がトイレを探すためのランドマークというか、脳内イメージのようなものを作りにくいのです。
「こういうデザインの場所がトイレだ」というイメージが持てないため、切羽詰まった状況で探すのは厳しいかもしれません。万博の様々な色やかたちのパビリオンを背景としているため、よけい目立ちにくいという事情もあります。早め早めにトイレに行くようにしておいたほうがいいと思います。
日除け対策は必須
そして、しつこいようですが、日除け対策は必須です。これは個人としての来場者だけではなく、パビリオン側、万博運営側、それぞれに対策が必要だと思いました。まず今回の万博は、「行列させない」と言いつつ、「割と行列しないといけない」ことがテストランで明らかになっています。ですが、行列する場所に日除けがありません。これは各パビリオンでぜひ考えてもらいたいところです。そもそも設計段階で考えてほしいと思いますけども……。
また、パビリオン間にあるベンチには、多くはなんらかの日差し避けがついてはいましたが、もっと必要だなと思いました。4月の太陽で既にキツイのですから、今後どうなるかはもう目に見えています。
各個人は事前にそれらを頭に入れて対策しておくべきです。そしてそもそも夏の昼間に行くことは、とてもおすすめできないなと思いました。真夏ならば夜間に行くほうが無難でしょう。万博ならではの、斬新かつ有効な暑さ対策を希望したいところです。
大屋根リングからの夕景はきれいだが……
プレスプレビューのときは大屋根リングの上まで上がるエスカレーターはなぜか停められていましたが、2回上がってみました。特に夕方は沈む夕陽がとても美しいなと思いましたが、実はそうとも言えない要素もありました。
それは、大量の羽虫です。人を刺すタイプではないのですが、大きめのムシがとにかく大量に蚊柱を作って飛び回っていました。ムシが嫌いな人は夕方になったら水際方面には近づかないほうがいいかもしれません。
珍しいかたちの建物ばかりの会場内は割と楽しい
一般入場料は7,500円と高い万博ですが、それをのぞけば、会場内をぶらぶら歩くのは割と楽しいです。いわば、新しい街中や、ショッピングモールを歩きまわるような感覚です。もちろん、天候が許せば、そして何度もしつこいですが入場料の問題があるけれど……といった話ではあります。
筆者はいちおう目的を持ってまわっていたので、あまり色んなパビリオンを訪れることができませんでした。特に海外パビリオンは楽しそうで、かつ、空いてそうだったので、残念でした。海外パビリオンだけを目的に万博を回るのはありかもしれません。
海外パビリオンのなかには、それぞれの国の食事を提供するレストランを併設しているところもあります。通期パスを使って足繁く通う人も出てくるかもしれません。
ロボットはもっと使えるのでは?
なお、万博全体では「未来社会ショーケース事業」を推進しており、ロボットなどの実証実験も行なわれるとなっています。実際、会場には「ロボット・モビリティステーション」なども置かれており、いくつか電気スクーターみたいなものも動いていました。ただ、会場規模の割にはまったく目立っていませんでした。
今は20年前の愛知万博とは技術も時代も大きく変わりました。案内だけでなく、搬送や清掃など、種類も数も、もっと色々なロボットが使えるはずです。今後、実証実験では順次いろいろなロボットが投入されていく予定とは聞いていますが、ロボットに関する取材執筆を行なっている筆者としてはやや残念に思いました。
「ポケモンGO」ともコラボ
大阪万博は位置情報利用ゲーム「ポケモンGO」ともコラボしているとのことで、会場内にはところどころにポケモンのオブジェも置かれています。アプリ内の「GOスナップショット」機能を使うと面白い写真を撮ることもできるそうです。プレイヤーには嬉しいのではないでしょうか。