ミニレビュー
dマガジンと楽天マガジン、2大雑誌読み放題のそれぞれの魅力
2019年4月23日 08:15
動画ではNetflixやHulu、音楽ではSpofityやApple Musicなど、コンテンツの世界はサブスクリプションが主流となりつつあるが、電子雑誌の世界も、こうしたサブスクリプションが人気を集めている。
雑誌のサブスクリプションは、雑誌のみに特化したサービスと、本やコミックも含めたサービスとして展開しているサービスに二分できるが、雑誌の読み放題という点で2強とも言えるサービスが、NTTドコモの「dマガジン」と楽天の「楽天マガジン」だ。
どちらのサービスも月数百円で200以上の雑誌を読むことができ、ラインアップも書店やコンビニエンスストアで見かける有名なものから、趣味の世界に特化したニッチな雑誌まで幅広く取り揃えられている。雑誌1冊を購入する金額で、200冊以上が読み放題という点では非常にコストパフォーマンスの高いサービスだ。
利用端末もスマートフォンやタブレットを合計5台まで利用できるため、移動中はスマートフォン、家やオフィスでは画面の大きいタブレット、と使い分けできる。また、PCからブラウザで閲覧することも可能だ。文字が細かい雑誌の閲覧はスマートフォンよりも画面の大きいタブレットやPCが本領を発揮するサービスだろう。
なお、雑誌が読み放題といってもすべてのページが読める訳ではなく、紙の雑誌では読めるが読み放題では配信されない記事がある雑誌も多い。同じ電子版でも電子書籍として購入すれば、ほとんどの記事は読めるのだが、読み放題の雑誌はこうした制限があることは知っておきたい。
月額料金はわずかな差が、年間では1,000円以上の差
有料サービスで気になるのはその価格。月額料金で比較するとdマガジンは400円、楽天マガジンは380円とその差は20円。価格差だけを見れば楽天マガジンの方が安い、のだが、20円の差は、誤差の範疇といえる。
ただし、長期契約を前提としたトータルコストで考えると事情が変わってくる。というのは楽天マガジンの場合、年間契約のプランが用意されているからだ。
楽天マガジンの年額プランは税別3,600円で、月あたりの料金は300円。dマガジンには年間契約プランが用意されていないため、年額では4,800円とその差は1,200円となる。
年間契約は一度契約すると簡単に解約できないが、いつでも解約できる月額プラン、トータルで安価となる年額プランが用意されているという点で、料金プランの面では楽天マガジンのほうが魅力的だ。
対象雑誌はサービスごと一長一短
とはいえサービスは安ければいいというわけではない。雑誌読み放題サービスでもっとも重要なのは「読みたい雑誌があるか」だろう。
雑誌数だけで見るとdマガジンは公称200誌以上、楽天マガジンは公称250誌以上と楽天マガジンのほうが多いが、雑誌数がどんなに多くても自分が読みたい雑誌がないのでは意味がない。
下記は楽天マガジンとdマガジンの雑誌ラインアップを比較した表。細かな違いはあるもの過半数の雑誌は重複している。とはいえ重要なのは冊数よりも「読みたい雑誌があるかどうか」であり、むしろ重複していない雑誌のラインアップこそがサービス契約の鍵になるだろう。
公称雑誌数だけで見ると楽天マガジンのほうが充実しているように見えるが、比較してみるとdマガジンでしか配信していない雑誌も多い。以下は筆者の私見ではあるが、dマガジンではアニメージュ、VERY、東京カレンダーなど、各ジャンルでの著名な雑誌が配信されている印象だ。
ダウンロードが便利な楽天マガジン、雑誌の出会いはdマガジン
使ってみなければわからないのがサービスとしての使い勝手。筆者は、両サービスとも契約し、使い分けているため、それぞれのサービスの特徴をピックアップして紹介したい。
アプリとしての使い勝手が良いのは楽天マガジン。特に筆者が気に入っているのがダウンロード機能で、楽天マガジンは雑誌を読む前に複数の雑誌をまとめてダウンロードできる。雑誌はデータ容量も大きいため外出先などで携帯電話の回線を利用して読むには料金が心配だが、あらかじめ雑誌をダウンロードしておける楽天マガジンなら料金を気にせず楽しめる。
また、お気に入りの雑誌を登録しておくと、新刊が出るたびに自動でダウンロードしてくれる機能も搭載。ダウンロードはWi-Fiのみに設定できるため、知らない間に携帯電話の回線を使ってダウンロードされている、ということもない。
dマガジンにも、お気に入りの雑誌を自動でダウンロードする機能は用意されている。ただし、任意の雑誌のダウンロードでは、複数にまとめられず、1冊ずつ順番にダウンロードする必要がある。
ページの表示形式も細かな違いがある。楽天マガジン、dマガジンどちらも新しいページを表示すると粗めのデータで一度表示し、その後高精細なデータで再度読み込む、という仕様になっているのだが、dマガジンでは粗めのデータが文字を読めるレベルではなく、端末スペックによっては高精細データを読み込むまでにも時間がかかるため、1ページ1ページを読むのに時間がかかってしまう。
一方、楽天マガジンは最低限読める程度のデータで一度読み込み、その後に高精細データを表示するため、端末スペックが低めの端末でも読み進めやすい。
dマガジンはiOSとAndroidで挙動が異なり、前述のデータ読み込みはiOS端末だとほぼ気にならないが、Androidではミドルレンジの端末だと読み込みの遅さがはっきりとわかる。筆者の手持ち端末ではプロセッサにSnapdragon 650を搭載した「ZenPad 3 8.0」では読み込みが遅く、Snapdragon 835搭載の「HTC U11」でも、ページめくりが早すぎると粗いデータが一瞬読み込まれるのがわかる。
アプリの使い勝手という点では楽天が勝る一方、雑誌を読むという体験ではdマガジンに軍配が上がる。基本的に雑誌単位で読むことを想定している楽天マガジンに対し、dマガジンは記事単位で読む機能を搭載。雑誌の名前にかかわらず、気になる特集から雑誌を読める。
この記事だけを読む機能を利用してdマガジンでは「おすすめ」コーナーも用意されており、配信雑誌の中からdマガジン独自の特集やキーワードに基づいた記事を読むことができる。雑誌が読み放題といっても、ついつい知っている雑誌ばかり読んでしまいがちだが、こうした機能を活用すると普段読んでいない雑誌に触れられる機会も増える。
検索機能もdマガジンは記事単位での検索が可能。楽天は検索機能はあるものの、雑誌単位でしか検索できないという違いがある。
細かな違いが、雑誌の中で気に入ったページを登録できる機能。楽天マガジンは「ふせん」という機能で指定したページを登録できるが、該当雑誌の配信期間が終了すると見えなくなってしまう。一方、dマガジンは「クリッピング」という機能が提供されており、一度登録したページは配信期間終了後も閲覧可能だ。
重要なのは「読みたい雑誌」
雑誌の読み放題を提供しているサービスは他にもあるのだが、雑誌のラインアップが少ない、最新号よりも1つ古い雑誌しか読めないという制約があり、最新の雑誌をたくさん読みたい、という点ではdマガジンと楽天マガジンが2強と言える。
機能面に違いはあるものの、重要なのは雑誌のラインアップ。まずは読みたい雑誌があるかをチェックしてほしい。読みたい雑誌にあまり違いがないのであれば、価格面では楽天マガジンがお勧め。機能面ではダウンロード機能が充実した楽天マガジンか、記事単位で雑誌を楽しめるdマガジンといったあたりが選択のポイントといえる。