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STORES、お店DX全部入り新プラン 月3300円でクレカ1.98%
2025年3月28日 10:00
STORESは、店舗運営やDX支援のサービスをひとつにまとめ、新プランとして提供を開始した。「スタンダードプラン」が月額3,300円で、対面のクレジットカード決済手数料は1.98%。一部に制限がある無料の「フリープラン」も用意され、こちらの決済手数料は2.48%となる。
店舗運営やDXを支援するSTORESの主要な7つのサービスがまとめられ、新プランとして提供される。各サービスを個別に契約するより大幅に安い価格に設定した戦略的なプラン。ひとつのプランにまとめたことで、申し込みから契約、管理画面、サポート窓口も一元化され、分かりやすくなった。
新プランに含まれるのは、「ネットショップ」「キャッシュレス決済」「POSレジ」「予約システム」「請求書決済」「モバイルオーダー」「データ分析」の7つ。特定の業種に特化せず、幅広い業種・業態で導入できる内容。開始から1年で数万件の獲得を目指す。
今後発表される新サービスも、この新プランの中に含めていく方針。例えば今春以降、事業者の資金繰りや事業投資を支援する新サービスを計画中で、新プランに追加する形を検討している。
一方、「STORES ブランドアプリ」などの、使いこなしに知識や専門性が必要という一部のサービスは新プランに含まれず、オプションとして提供される。
新プランの対象は中小事業者。個人や家族で営む1店舗だけの形から、中小企業・スタートアップなど、小規模な店舗運営がターゲット。成長して規模が大きくなった場合には、手数料の割引などを含む、個別にカスタムしたプランの提供にも対応する。
対面で利用するクレジットカードの決済手数料は、カード各社が近年、コード決済への対抗策として引き下げていることを反映。有料のスタンダードプランは1.98%、無料のフリープランでも2.48%とし、店舗DXにも有効なキャッシュレス決済の拡大を図る。
売上規模の小さい中小の店舗では、長年クレジットカードの手数料がネックとされてきたが、すでにコード決済と同等水準に下がっていることで、中小の店舗運営の現場でも注目度が高まっているという。
“運営スキル”を支援 黒字化で戦略的投資へ
STORES 代表取締役社長の佐藤裕介氏は、AIの発展などを含む、近年のテクノロジーの進化を鑑みると、事業の管理や運営はコモディティ化・陳腐化すると予測する。「何かを始める動機、執念のようなもの、人間が生み出すエナジーこそが、希少な財。運営スキルが足りず事業を持続できないのなら、そこを支援していくのがSTORES」(佐藤氏)と、同社の基本的な方針を語る。
STORESは2018年2月にスタートして以来、ネットショップ、予約システム、モバイルオーダーなど、さまざまにサービスを充実させてきた。コロナ禍の2021年は中小の店舗の経営が苦しくなる中、新サービスの開発などに積極的に投資して支援を一層拡大。こうした策が功を奏し、2024年は通期で初の黒字に転換したという。
「持続可能な会社になってきた。売上規模は170~180億円で、未上場スタートアップとしては規模が大きい部類に入ってきた。今年は勝負をする。新しい付加価値の提供に、リスクをとって挑戦していく」(佐藤氏)。
新プランの価格設定は「悩まないでいいレベルの価格であることが重要」(佐藤氏)とし、他社と比較せずとも選ばれるような、相対的に大幅に低い価格であることをアピール。財務面では挑戦的であり、今年、積極的に勝負を仕掛ける策の一環であるとしている。
生成AIなどの最新技術も今後、積極的に導入していく方針。注文や売上の分析のほか、会員の管理・分析など、AIが得意とする分野は多岐にわたる。こうした業務支援でAIを活用するサービスは開発中で、テストでも有効な結果が出ているという。
「中小の店舗運営の課題は“本部”機能の層が薄いこと。こうした数字の分析ができる人材は、AIが代替できる。早期に実現していきたい。フリープランで使える内容は限定的になるかもしれないが、すべての顧客に提供していきたい」(佐藤氏)としている。
変わる中小店舗 活路は“混合業態”
STORESが対象とするような中小の店舗は、コロナ禍による一時的な苦境のみならず、現在も厳しい環境にさらされている。解消見込みの薄い長期の人手不足をはじめ、コスト高騰や集客難易度の上昇による売上や利益の減少、予約やモバイルオーダーといったユーザー行動の変化への対応、といった課題に直面している。都心部以外の、商圏人口の増加が見込めない多くの地域では、こうした課題が影響し、中小の店舗運営は以前より難易度が上がっているという。
佐藤氏は、実店舗を運営する上で現在求められているのは、さらなる効率化と指摘。空いている時間を別の業態で埋めるなど、販売チャネルを多角化することが求められているという。
例えばカフェの場合、コーヒーだけでなく、パンや軽食を提供して、コーヒーを飲むというひとつの理由以外にも、朝食・昼食で店に足を運んでもらう動機を作ることがポイントになるという。これらに加えて、テイクアウトへの対応、混雑時に並びたくないというユーザーに対応する予約システムやモバイルオーダーの導入、さらには店に来られない人にネットショップで商品やグッズを販売するといった“混合業態”が、今後の主流になっていくとしている。店舗が空いている時間は通販の作業にあてるなど、店舗ひとつでさまざまな業務に対応し、業務密度を向上させることがカギになるとする。
一方、ひとつの店舗で混合業態の運営をすると、経営の難易度は上がってしまう。そうした経営の複雑さや難しさを助けるのがSTORESの各サービスやツールになる。
例えば予約システムは、人手不足に対応するツールとしても活用されている。あるガソリンスタンドでは、自動車のメンテナンスサービスを始めたものの、対応できる人員の確保が難しかったという。そこでSTORESの予約システムを使い完全予約制にすることで、メンテナンスに対応できる人員をスポットで手配できるようになったという。
予約システムを最大限活用し、中小の店舗であっても「完全予約制」で運営するスタイルも増加している。あるアパレルブランドは完全予約制で店舗を運営、スタッフが丁寧に接客でき顧客満足度を高められるほか、訪れた客が購入する率も非常に高くなるとのことだった。無駄になる時間が少なく、経営効率が高くなるため、業種によっては中小の店舗でも広がっているという。