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OpenAI、「AIネイティブ大学」を推進 滋賀大学がChatGPT Edu導入

OpenAI Japanは17日、「OpenAI Education Forum Tokyo」を開催した。同フォーラムでは、国内外の教育機関での具体的な生成AI活用事例や、今後の生成AI活用におけるパネルディスカッションが行なわれた。

世界中で毎週4億人が利用するChatGPT 35歳以下が8割

OpenAIは2015年にリサーチ企業として設立され、GPT-2やGPT-3などのフロンティアモデルを開発してきた。当初は研究機関、開発者に利用されていたモデルを、2022年には一般の人が使いやすいツールとして手を加え、「ChatGPT」として公開。

現在、世界では毎週4億人がChatGPTを利用しており、そのうちの5人に4人が35歳以下とされ、特に大学生の利用が多い状況だという。日本でも何百万人ものユーザーが毎週ChatGPTを活用しており、利用率が高いのは18~24歳の層で、大学生が中心となっているという。

OpenAI Japan 社長 長崎忠雄氏

AIを教育現場に統合する「AIネイティブ大学」

OpenAIは、AIを教育現場に深く統合する「AIネイティブ大学」という概念を推進している。AIをキャンパス全体に組み込み、学生や教職員が大学の集合知と対話しながら学びを深める環境を目指している。

AIネイティブ大学の最大の特徴は、教育、研究、大学運営のすべての領域においてAIが活用される点にある。学生はAIと対話しながら学習を進め、教員はカリキュラムの構築や授業運営をAIと共同で行なうことができる。さらに、研究者はAIを利用して膨大なデータを分析し、新たな知見を発見することが可能となる。

AIネイティブ大学の推進を支援するツールが「ChatGPT Edu」。大学向けに最適化されたAIツールで、学習・研究・業務の効率化を支援する。学生は個別最適化された学習や模擬面接が可能になり、教職員はカリキュラム作成や研究資料の管理に活用できる。すでにアメリカの大学では導入が進んでおり、教育のインフラとしての役割を強めている。

アリゾナ州立大学(ASU)では、24年初頭からChatGPT Eduを導入し、250以上のプロジェクトが実施されている。学生はAIを活用して模擬面接の練習を行ない、履歴書の作成やカリキュラムの改善にも利用している。ペンシルベニア大学ウォートンスクールでは、「Lecture Recall GPT(講義振り返りGPT)」というツールを開発し、学生が授業内容を振り返りながら学びを深めることができる環境を整備している。

こうして蓄積された学習・利用データは大学内のみで適切に扱い、学習には利用しないという。

滋賀大学がChatGPT Eduを全学導入

こうしたなか、日本では滋賀大学が4月1日から日本初の「ChatGPT Edu」を全学部に導入する。滋賀大学は、日本初のデータサイエンス学部・研究科を設置した大学であり、これまでも国内のデータサイエンス・AI教育の中核的存在として、AI技術の利活用を積極的に推進してきた背景がある。同大学では、ChatGPT Eduを活用例として、プログラミング教育の補助、語学学習支援、個別学習プランの提供、カスタムGPTを用いた学習支援サポートなどを挙げている。

フォーラムでは、生成AIと教育、研究の未来をテーマにしたパネルディスカッションも行なわれた。中央大学の須藤教授は「AIは人間の能力を引き出すツール」と述べ、AIが教育において創造性を高める役割を担うことに言及。Sakana AIの秋葉氏は「AIが学びの動機づけを担う時代が来る」とし、学生の学習意欲を引き出す可能性を指摘した。

左からSakana AI リサーチ サイエンティスト 秋葉 拓哉氏、中央大学 国際情報学部 須藤 修教授
左から慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 矢向 高弘教授、東京大学大学院情報理工学研究科 山崎 俊彦教授