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3つ折りスマホの時代は来るのか ファーウェイMate XTとグローバル再挑戦

HUAWEI Mate XT | ULTIMATE DESIGNがグローバルデビュー

Huawei(ファーウェイ)が中国で発売している世界初の3つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT | ULTIMATE DESIGN」のグローバル発表を行なった。マレーシア・クアラルンプールでの発表となり、まずは東南アジアでの発売。今後、欧州にも展開していく計画だ。

3つ折りスマートフォンのグローバル投入は、Huaweiの今後の世界展開を占う試金石となるかもしれない。

マレーシアの首都クアラルンプールでグローバル発表会が開催された。写真は実機が展示された商業施設パビリオン・クアラルンプール

世界初の3つ折りスマートフォンMate XT

Mate XTは、折りたたんだ状態ではスマートフォン、そこから開くと最大10.2型の大画面タブレットに変形する。2つ折りのスマートフォンはこれまでも存在していたが、Mate XTは3つ折りというのが特徴だ。

閉じた状態では一般的なスマートフォンとほとんど同じ
カラーはブラックとレッドの2色

屏風のように開いたり閉じたりするスタイルで、閉じた状態では6.4型のスマートフォンとして利用する。1回開くと、ディスプレイの2面を使うデュアルスクリーンモードになる。この場合は7.9型で、正方形に近いデザインなので、従来の2つ折り端末に近いスタイルとなる。

3分割されて屏風のように開閉する
シングルスクリーンモード
デュアルスクリーンモード
トリプルスクリーンモード

この2面を使う状態だと、残る1面をスタンド代わりにして自立させることもできる点は3つ折りならではの状態。正方形に近い2つ折りだと、写真、動画、電子書籍のいずれにおいても周囲に余白ができてしまうため、画面サイズをあまり生かすことができない。

3つ折りしているところ。厚みは結構あるので、このあたりは普通のスマートフォンに比べて使いにくいところではある
開いてみるととにかく薄い
2つ折りだとカメラの高さがあるのでフラットに見えなくもない
裏面から見た折りたたみの状況

それに対して、3つ折りの場合は10.2型という大型ディスプレイとなる。さらに横方向にディスプレイ面が増えるため、横長表示になってコンテンツの表示に適したアスペクト比(16:11)になる。Office系のドキュメントやWebサイト、SNS、手書きメモやイラスト制作など、2つ折りでも使い勝手は良いのだが、3つ折りになるとコンテンツの視聴に最適なスタイルになる。

10.2型の横長ディスプレイはまさにタブレット。広々と画面が使えるので、Webサイトの閲覧も容易
縦長の画面でも視認性が良い
1面を折りたたんで自立させることもできる
内側に1面を折りたたむと、手持ちでキーボード操作するときに適したスタイルになる。この背面にはカメラがあるため、自立は難しいことから、両手で支えて親指でキーボードを押す、という形になる

しかも3つ折りであれば、普段の持ち歩きではコンパクトになるし、スマートフォンとしても活用できる。カメラもハイエンドクラスの性能を備えていて、5,000万画素のメインカメラはF1.4~F4.0の可変絞りを搭載している点は強力。

カメラも高機能なもの。自撮りに適したスタイルでも利用できる
折りたたむことで自立する
3面を使うことでなかなか複雑に自立して三脚いらずで安定するし角度も変えやすい

Mate XTグローバル展開の意義

そんなハイエンドスマートフォンで世界初の3つ折りスマートフォンだが、今回発表された価格は3,499ユーロ(約55万円)となった。グローバル発表ということで、開催されたマレーシアのリンギットでもなく、欧州のユーロを使った価格で発表された。

発表会の会場となったMalaysian International Trade & Exhibition Centre(MITEC)
3面を開いてMate XTを紹介するHead of ProductのAndreas Zimmer氏
発表された価格は、メモリ16GB、ストレージ1TBで3,499ユーロ
「究極のデザイン、究極の美学、究極の体験、究極のイノベーション、そしてもちろん究極の写真」とアピール

このグローバル発表というのが、今回のポイントだ。日本円にすると約55万円。欧州なので税込価格だとすると、おおむね20%と考えればおそらく3,000ユーロ弱、45万円前後だろう。マレーシアでの価格は14,999リンギットだったので、これも税抜46万円前後のようだ。中国でも40万円程度だったため、やや高いぐらいに設定されている模様だ。

トリプルディスプレイだと、動画の視聴でムダがなく大画面で視聴ができる
縦型のショートビデオも大画面で楽しめる、とアピール

いずれにしても、これは「Huaweiのスマートフォンがグローバルで登場する」という点が1つのポイントだ。現在の販売国は中国に加えて、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、香港、カンボジアの6カ国が発表されている。まだ東南アジアに限られているが、発表会には欧州メディアも招待されていた点、ユーロで代金が発表されていた点からも、欧州での登場を意図していることは間違いがない。

同時発表のMatePad Pro 13.2"では、OfficeツールとしてWPS Officeの紹介はあったが、Mate XTにおけるアプリの紹介はなかった。このあたりも同社の状況を示していると言えそう

もともと、米中経済摩擦に端を発したHuawei排除の流れで、欧州でもHuaweiのシェアは急激に低下した。大きな問題点はSoCとOSの利用ができなくなっていた点で、Huaweiは自社製のSoCとOSを開発することでこの問題に対処しようとしている。

ただ、現状でも米国の規制のためGMS(Google Mobile Service)のインストールができない。Google Playが利用できないため、Androidアプリのインストールが難しくなっているのだ。GoogleマップやGmailなど、Google製のアプリが使えないこともネックだ。

オープンソースのAndroid OSをベースにしたEMUIを搭載していたHuawei端末だと、Androidアプリのインストール自体は容易だった。専門家によれば、規制の及ばない端末の販売店がGoogleアプリなどをインストールして販売を行なうことに問題はないため、そうして販売している店は、東南アジアにはよくあるという。

Huaweiでは新たなOSとして「HarmonyOS NEXT」の開発をしており、中国版のMate XTではこれを採用している。HarmonyOS NEXTの場合、Androidアプリをそのままインストールすることはできないため、Googleアプリを含めてスマートフォンにインストールできないことになる。

実は中国国内に関してはそれほど問題ないとされている。これは、Huaweiが中国でかなりの投資を行なっているからだろう。多くのアプリがHarmonyOS NEXT対応をしており、米中の摩擦もあって中国国内ではHuaweiに対する支持もある。結果として、HarmonyOS NEXTが問題なく利用できるという。

それに対して中国国外ではそうはいかない。規制の関係上、Android+GMSをそのまま搭載することができないが、Androidアプリのインストールができないと、肝心のアプリが揃わないことになる。Huaweiもアプリ開発者に向けた取り組みは行なっているが、さすがに一社でカバーできる規模ではないため、いかにAndroidアプリを取り込めるかが鍵になっている。

そうした背景から、グローバル発表となったMate XTではHarmonyOS NEXTではなくEMUIを搭載する形となった。逆に言えば、これはHuaweiがグローバル展開への本気度を示していると言えるだろう。これまでも欧州での端末展開はあったが、象徴的な存在としての3つ折り端末をグローバル展開する意義は大きい。

EMUIではAndroidアプリをインストールすることは可能なので、アプリの不足を補うことができる。実際、現地発表会での説明員は、「HarmonyOS NEXTではマレーシアの銀行アプリなど大事なアプリが存在していない。中国ではアプリが揃っている」と話しており、アプリの存在によってOSが異なるという説明をしていた。

3つ折りスマートフォン自体は、約55万円という高額な端末。ヒンジが増えることで部品点数が増大し、故障する確率も上がる。耐久性も心配になるし、修理代金が高額になることも懸念される。

Mate XTでは自立させられるケースが付属するそうだ

手軽に購入できる端末ではなく、ある意味、象徴的な意味合いが強いだろう。アラブ諸国では高額な端末も売れるかもしれないが、今回の販売国には入っていない。順次拡大を予定しているとのことなので、今後は中近東、欧州といったエリアを拡大していけば、世界的に3つ折りが広まることになって、Huaweiのイメージ戦略の一環となりうる。

パビリオン・クアラルンプールにおける展示会場。1週間程度の設置とのこと

OSに関しても、EMUIでAndroidアプリを利用可能にしつつ、3つ折り端末というアイコンを手にHarmonyOS NEXT対応アプリの拡充を図るといった戦略もあるだろう。

米国で再度トランプ政権となったことで、Huaweiに対する制裁が解除される見込みはないだろう。同社は5Gモデムの開発も成功しているようだが、今回のMate XTに搭載されているのは4Gまでで、グローバルでの5G展開はまだ難しいのだと見受けられる。

今後は、いかにグローバルでの展開を拡大して、各国でどのような反応になるかが注目だ。同社は欧州での展開を目指しているが、それによって改めてHuaweiの復活を印象づけることができるだろう。

クアラルンプールといえばクアラルンプールタワー
同じくペトロナスツインタワー