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“女子”をやめたワークマンはユニクロと真っ向勝負 格安ベーシック衣料拡大

ワークマンは、「#ワークマン女子」1号店であるコレットマーレ桜木町店を全面改装し、3月7日に「Workman Colors」(ワークマン カラーズ)としてオープンする。この首都圏初の「Workman Colors」の展開に先立ち、同社は説明会を開催、「#ワークマン女子」をやめた理由から海外進出の展望まで事業戦略が語られた。なお全国の一部では、新店や既存店の改修で「Workman Colors」の店舗がこの日からオープンしている。

「Workman Colors」とは、ワークマンが展開するベーシック衣料および店舗のブランド。「Colors」は「個性や特長」の意味で、“ワークマンらしさ”という意味を込めた。機能性を持たせ、デザインにこだわり、低価格なのが特徴。製品ラインナップ自体が「Workman Colors」のブランド名で展開され、これまでなかった男性向けベーシック衣料をラインナップに追加するほか、新たに女性向けトレンド衣料も含める。これらを取り扱う店舗のブランドも「Workman Colors」となり、ベーシック衣料の販売店であることを分かりやすくする。

「Workman Colors」の製品。男性向けベーシック衣料、女性向けトレンド衣料、キッズ向け衣料をそろえ、ファミリー層にも訴求する
「Workman Colors」のブランドタグ

ユニクロ真っ向勝負 男女で格安のベーシック/トレンド衣料を展開

最近のワークマンの展開は迷走している?……そんなイメージに対し、説明会に登壇したワークマン 専務取締役の土屋哲雄氏は「試行錯誤してきたが、Workman Colorsになってフォーマットが固まり、達成感がある」と冒頭に感想を述べ、今後はブランドや店舗展開を加速させる方針を語る。

ワークマン 専務取締役の土屋哲雄氏

機能性と格安を両立させた作業服で事業を拡大したワークマンは、見せ方を工夫したり見た目にこだわったりすることで売上を拡大、そこから機能性素材を応用したアウトドアウェアやスポーツウェア市場に進出したほか、キャンプギアも展開している。

男女兼用のアウトドアウェアを女性のマネキンに着せて販売したところ人気が出たため、2020年には一部で新ブランドの店舗「#ワークマン女子」をスタート。その後、女性向けの肌着を含むベーシック衣料もヒットし、現在も生産規模は拡大、女性客の獲得に成功している。

ワークマンの店舗展開の変遷。製品の進化によって形態を変化させてきたという
ワークマンの作業服
アクティブウェア/アウトドアウェア
女性向けベーシック衣料
新たに展開するWorkman Colorsブランド。男性、女性、子供とそろえた

今回のブランドリニューアルのポイントになったのは、「#ワークマン女子」というネーミングの強い吸引力と、男性向けラインナップとの“温度差”だ。これまで、こうした(作業着が中心でない)店舗において、男性向けは引き続き派手めのアウトドアウェアが中心だったため、ベーシック衣料も拡大していた女性向けとの“温度差”が課題になっていた。例えば郊外のショッピングモールに夫婦で買い物にきても、男性は女性と一緒に買うようなベーシック衣料が無いため、店の外で待っているというケースもあったという。

これから展開されるWorkman Colorsのブランドを掲げる店舗では、女性向けに加えて、男性向けのベーシック衣料を取り揃えるのが特徴。加えて女性向けでは、開発から量産までを1カ月といった短いサイクルで行ない、トレンドをスピーディに取り入れたデザインの衣料も投入する。さらに子供向け衣料も展開し、家族で来店して、全員がベーシック衣料やトレンド衣料を購入できる、という形にする。

これは、ユニクロやしまむら、無印良品といった、郊外でも展開する大手ブランドと真っ向勝負することを意味している。

注目の新作「万能パンツ」は1500円

ワークマンの従来製品は、開発から量産まで1年をかけるのが普通で、工場の閑散期を利用して生産するといった工夫により、高い機能性と低い価格を両立させてきたのが特徴。今回の新しいラインナップでも、例えば軽量でストレッチ性を持たせ、オンでもオフでも着られるデザインにした「万能パンツ」を1,500円という低価格で発売する。

「1,980円ならほかでもできる。1,500円はどう逆立ちしても(他社は)できない」(土屋氏)というように、大手ブランドを比べてもコストパフォーマンスに優れる製品になっていることをアピールしている。

万能パンツ
土屋氏も着用して登壇

都会でヒット 郊外で勝負

土屋氏は、ワークマンの方針について「決まった方針はない」と説明する。「社是は“声のするほうに、進化する”。仮説検証経営で、小さな成功事例を拡大していく。成功事例が方針になる。やってみて成功したものが方針」。

例えば女性向けの肌着の展開。発売前は、競合が多く難しい展開になると予想したというが、発売してみるとヒットを記録し、生産数は1年目が60万着、秋冬で195万着、この春夏向けは300万着と、着実に拡大している。また、仮にヒットしなかったとしても、店頭の展示やポップ紹介など各店で足並みを揃えた集中的な紹介により、生産した分を売り切るぐらいの自信はあるといい、そうした“セーフティネット”の存在も、挑戦や小さな成功を支えているとした。

土屋氏はまた、「商品の進化で、店舗や店名が進化する」と、機能性の強化やベーシック衣料への参入など、取り組むジャンルの拡大でブランドが変遷してきたことも紹介。ワークマンの歴史の中では第4形態にあたるWorkman Colorsは、男女のベーシック衣料・トレンド衣料をまとめるブランドとしてたどり着いた形だとした。

女子の名前を返上、男性向けベーシック衣料も投入する

群馬県で起業し作業服が主力商品だったワークマンは、ロードサイド店が多く、(打診があると断りづらいという)ショッピングモールなどへ出店しても、衣料品ブランドとしてユニクロなど大手と競うことは難しかった。しかし、「#ワークマン女子」を首都圏でも展開して成功させたことで、「都会でヒットしたブランド」というイメージ作りに成功したという。

Workman Colorsでは、こうしたポジティブなイメージと、ワークマンならではの機能性、男女のベーシック衣料やトレンド衣料といった王道的なラインナップ、競争力のある価格を組み合わせて、主戦場である郊外やショッピングモールなどでユニクロなどと真っ向勝負をする形になる。

最大手にも負けない、と自信をみせた
他社との比較
アパレルブランドは都心が中心のため、ワークマンは逆張り経営のようになっている

Workman Colorsは2032年までに400店体制が目標

店舗展開も、この迷いが晴れた店舗ブランドの構築により、加速させる方針。「Workman Colors」ブランドの店舗は、2月~6月に新規で25店舗の出店を計画する。11月末までに新店は40店に拡大、改装店は13店になる見込みで、その後も毎年40店を新規出店し、2032年までに400店体制にするのが目標。また、「#ワークマン女子」ブランドは終了し「Workman Colors」に改装、2月20日には一部店舗が「Workman Colors」として営業を開始している。

全国の一部では2月20日から「Workman Colors」がオープン
首都圏ではWorkman Colors コレットマーレ桜木町店が3月7日にオープンする
新規出店を継続していく

なお、東京・銀座の「Workman Colors イグジットメルサ銀座店」は実験店舗という位置付けで、すでに店舗名称が「Workman Colors」に改称されているが、上記の“新生Workman Colors”に合わせた取り扱いラインナップの刷新や改装は、桜木町店がオープンした後に実施される。

作業服は開発強化し海外進出へ

「Workman Colors」ブランドでの取り組みとは異なる、「ワークマン」店舗で販売している作業服についても、「ワーク強靱化」として開発を強化する。一連のワークマン女子の人気で社内のリソース配分が偏ってしまっていたといい、今後2年をかけて、作業服についてもさまざまな新製品や、画期的な新素材を用いた製品を開発していく。

作業服も「ワーク強靱化」として開発を強化

さらに、現在はアクティブウェア/アウトドアウェアのラインナップを展開している店舗ブランド「Workman Plus」をベースにした海外進出も計画する。「将来は“機能性ワークカジュアル”で海外に行く。これが次の目標」(土屋氏)とし、上記のワークウェアの新規開発は海外進出も念頭において行なわれているとした。

Workman Colors 一部ラインナップ

女性向けはトレンド衣料を投入する
Tシャツは冷感など機能性も特徴
カーゴパンツ 1,900円
メッシュニットシャツ 1,780円
ニットカーディガン 1,900円
シューズ 2,900円
防水パーカー 2,900円

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