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話題の中国発AI「DeepSeek」はAIのゲームチェンジャーになるのか
2025年1月28日 16:13
中国のAI企業DeepSeekに注目が集まっている。24年12月に公開された大規模言語モデル(LLM)の「DeepSeek v3」が高い性能とコストパフォーマンスで話題となったが、1月に公開された「DeepSeek-R1」はOpenAIの高性能モデル「o1」に匹敵する性能を持つほか、低コストかつMITライセンスの下で自由に利用できることなどから、さらに話題となっている。
R1は、o1に匹敵するという性能を持ちながら、APIコストは数十分の1となるなど、低価格と高性能を両立。加えて、オープンなLLMなため、モデル自体をダウンロードしてユーザーの環境で試せる。この点はOpenAIやAnthropicのモデルとは違う大きな特徴といえる。
DeepSeekの課題としては、中国の政治事情などに配慮され、回答が得られない場合もある。例えば「天安門事件」などについてはDeepSeekからの回答は得られない。
一方で、オープンなLLMなため、サイバーエージェントなどが日本語データで追加学習した蒸留モデル(Distillation)を公開するなど、DeepSeekの弱点を補間するような取り組みも生まれている。オープンにモデル自体にアクセスできるため、第三者による拡張が行なわれ、結果としてDeepSeekを使った様々なサービスやエコシステムが生まれてきている。また、PerplexityなどのサービスでもモデルとしてDeepSeek R1は選択可能だ。
DeepSeekのアプリも公開されており、チャットAIによる対話や検索のほか、R1を使った「深く考える」機能も搭載している。o1に迫る能力を無料でも使えるとあり、AIサービスの新たな選択肢として人気を集めたようで、28日時点では、日本のApp Storeの無料アプリランキングにおいて「DeepSeek-AI」が「ChatGPT」を上回り1位となっている。
さらに28日にはマルチモーダルなAIモデル「Janus-Pro-1B」も公開。画像生成にも対応可能とした
これまで米国を中心としたビッグテック(とOpenAI)がリードしてきたAI開発における「ゲームチェンジャー」的な存在としてDeepSeekが急浮上している形だ。
また注目されているのが開発コストについて。モデルの開発費が560万ドル(約8.7億円)とする報道があり、既存のLLMの数十分の1のコストで開発していると話題になっている。一方、DeepSeekが大量のGPUを保有しており、560万ドルという金額はこれらを考慮していないとの指摘もなされている。
実際のところは外部からはわからないが、株式市場では、より低コストかつ効率的なモデル開発が可能になるとの観測が広がった。27日にはNVIDIA株が大幅下落するなど半導体を中心に、大きな株価下落に見舞われた。
これまで大量の学習データとNVIDIAのGPU、データセンターのリソースが必要とされ、ビッグテックや政府をあげたGPU獲得競争などが加熱していたが、この流れが変わるのではないか、という観測が市場に広がっているようだ。
今後の展開は未知数だが、22日にはソフトバンクグループやOpenAIらによる「Stargate Project」が米国のAIに4年で5,000億ドル(77兆円)の投資を発表したばかり。このように米国を中心としたAI開発の流れで動いていた市場が、中国からの強力な競合モデルの登場により揺さぶられている(ようにみえる)のが現状だ。
なお、OpenAIのサム・アルトマンCEOは28日にXへの投稿で「DeepSeekのR1は、価格に見合った機能を提供している。印象的なモデルだ」としながら、「私たちはより優れたモデルをお届けする。新しい競争相手がいるのは本当に刺激的で、いくつかの発表を予定している」と言及し、対抗していくことをアピールしている。
deepseek's r1 is an impressive model, particularly around what they're able to deliver for the price.
— Sam Altman (@sama)January 28, 2025
we will obviously deliver much better models and also it's legit invigorating to have a new competitor! we will pull up some releases.
DeepSeekが本当の「ゲームチェンジャー」になるかは現段階ではわからないが、技術的にも市場にも大きなインパクトを与えたようだ。DeepSeek自体の進化とともに、競合企業の対抗策にも注目したい。