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ヤマトと富士通、共同輸配送プラットフォーム 荷主と物流業者をマッチング

ヤマトホールディングス傘下のSustainable Shared Transport(SST)と富士通は、2月1日から荷主企業・物流事業者向けの共同輸配送システムの稼働を開始。また、SSTはオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービス「SST便」の提供を開始する。

SSTは、持続可能なサプライチェーンの構築に向け共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する会社として、24年5月21日に設立。標準パレット輸送(リアル)と標準化された商流・物流情報の連携(デジタル)によるオープンプラットフォームの提供準備を進めてきた。

SST便は、幹線輸送をベースに共同輸配送システム上であらゆる荷主企業と物流事業者をマッチングするオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービスとして提供する。

取り組みの背景には、輸送力不足や気候変動への対応など物流業界が直面している社会課題がある。物流事業者だけでなく荷主企業も含めたあらゆる事業者は、物流の効率化や職場環境の整備に向けた変革が求められている。

25年4月以降は、「物資の流通の効率化に関する法律」に基づき、荷主企業・物流事業者は、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課せられるなど、法改正への対応も必要になっている。

しかし、業種・業界ごとにシステムや規格、商慣習などが異なることから、一部の荷主企業や物流事業者のみでの課題解決には限界があるという。そこでヤマトグループは企業間の垣根を越えた物流効率化に向けて新会社SSTを設立。富士通とともに企業の枠組みを越えてデータを連携するための基盤システムを構築した。

共同輸配送を支えるシステムは、富士通のオファリング「Fujitsu Unified Logistics」によるデータ基盤を活用。荷主企業の出荷計画や梱包の状態(荷姿)、荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画をもとに、最適な輸配送計画を作成する。

荷主企業は共同輸配送のパートナーを自ら探すことなく共同輸配送に取り組めるとともに、同一区間でも複数の時間帯・複数の輸送手段の中から標準パレットスペース単位で最適な輸送方法を選択できる。

物流事業者は、復路の空車走行の減少(帰り荷の確保)などによる積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減や処遇改善を図れるとしている。

プラットフォームは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期 スマート物流サービス」プロジェクトにより策定された「物流情報標準ガイドライン」に準拠。業種・企業間で定義の異なるデータの連携が容易となり、荷主企業や物流事業者は運送手段やドライバー配置計画など輸配送に関する意思決定を迅速化できるとともに、物流効率化に向けた企業間の協力を促進する。

富士通の保有するブロックチェーンなどの技術やサイバーセキュリティの知見を活用することで外部からの閲覧を防止。また、データ変更のログを取ることにより第三者からの改ざんに対して検知・対応・復旧を可能としている。

共同輸配送システムの配車予約管理画面イメージ

SSTは、宮城県から福岡県間において1日16便の運行で、標準パレットスペース単位で利用できる「定時運行」「中継輸送」「混載」による幹線輸送を提供。また、地域の物流事業者と連携し、利用荷主企業の要望に応じた「域内配送」を合わせて提供する。幹線輸送の提供区間は順次拡大予定。

幹線輸送の提供区間

今後、SSTと富士通は、ヤマトグループの法人顧客・物流事業者とのパートナーシップ、輸配送ネットワークやオペレーション構築のノウハウと、富士通の持つ製造・流通分野の業務知見やシステム構築のノウハウを組み合わせた、業界の垣根を越えた持続可能なサプライチェーンの実現を目指す。

さらに、商流情報と物流情報を連携するデジタル基盤の構築、関連機関・団体のサービス・プラットフォームとのデータ連携の推進による、サプライチェーン全体の最適化・強靭化に貢献するとしている。

オープンプラットフォームから創出する価値イメージ

SSTは、対象地域やダイヤの拡充、トラック輸送だけではなく鉄道や船舶なども含めたマルチモーダルを推進し、26年3月末を目途に80線便まで路線を拡大する計画を掲げている。